多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

校則ゼロで学力も伸びる!~桜丘中学を視察して

校則ゼロで学力も伸びる!~桜丘中学を視察して

いつも読んでいただき,ありがとうございます。

先日,多治見市の教育委員会の視察で,今話題の校則ゼロの公立中,世田谷区立桜丘中学校に視察に行きました。
また,多治見市でも今後検討されている「義務教育学校」,品川区荏原平塚学園,
多治見市よりも少ない人口ながら,民間学習塾と連携した「フューチャースクール」による指導をしている東京都瑞穂町のお話も聞きました。

中でも,桜丘の制度は,私の「学校」というイメージを大きく変えるもので,1番印象に残りました。
どの地域も教育資金に使えるお金が潤沢,という背景を感じましたが・・・
何か一つでも我が子の教育環境のため,多治見の子ども達の教育環境のため活かせないかと考えました・・。

その中で,私が我が子や多治見の子ども達のために出来ること,あるといいなと思った「教育環境」について,考えたことをお伝えします。

1 目がキラキラ~桜丘中学

「子どもたちが来て,楽しく過ごす」のが1番。
西郷校長先生の目指す学校の姿は明確だった。

「成績は上がらなかったとしても,まずは,学校が楽しい,と子どもたちが言ってくれたら,親御さんも嬉しい。」
…確かに。

不登校の子の半分以上は,発達障がいがあった。
どうしたら,この子たちが学校に来られるようになるのか・・
困っている生徒たちを何とかしてあげたい。

そのために,障がいとなる校則を無すことになった・・
最初から校則をなくそう,ということではなくて,子どもたちが楽しく過ごすための方法を考えた結果としてこうなった。
(確かに,うちの子も,ルールが厳しいほど,負担が大きくなる)

服装も自由。金髪に染めてくる子もいるらしい。とてもやさしいいい子だ,と言ってた。
授業に遅刻すると,それなら休む,という子もいるので,遅刻を取るのもやめた(登校時間も自由)。
教室に入れない子は,廊下にある机で勉強していた。

見学中に,校長先生が「生徒に話を聞いて下さい」と言った。

私:「この学校のいいところは何ですか?」
中三女子:「やって欲しい,といったことを本当にやってくれること。1年生のときは,スマホはダメだったけど,2年生になって,スマホを使ったらどういう問題があるかを話し合って,提案したら,OKになった。今は,授業でも,調べ物をするときに使っている」

自分たちが提案したことが形になって,自分たちの学校環境を変えていける・・
とても自信を高める体験だと思う。

‥話した生徒の目がめっちゃキラキラしてた。

私立中進学率の高い東京都世田谷区で「越境してでも行きたい」と人気になっている桜丘中学。
いじめも激減,校内暴力も消え,有名校進学数,平均学力も区のトップレベルという・・

子どもたちを信じて任せると,自分で考える力が身に付き,本当に伸びるべき子は学力も伸びていくんだろうな,と改めて思った。

年2回,生徒が好きな先生を指名して語り合える「ゆうゆうタイム」。
ここで,本当に信頼して話をしてくれるから,大きな問題となる前に対応も出来る,と言ってた。

・・指名制だと,生徒から人気のない先生にはつらいのでは?と言うと,
「厳しいけれど,反省する。」「子どもたちが好きだから,どうしたら信頼してもらえるのかを考える」とのこと。

発達障がいのあるうちの子にとっては,理想的な学校だった・・
これなら,必要以上に負担を感じず,学校に行けるだろうな。

学力も伸びているから,PTAや世田谷区から文句も言われないのだろうけれど・・・
その背景には,発達障がいの子等も含めて,みんなが楽しく学校に来られるようにしたい,という思いがあることに心が温かくなった。

いきなり,校則ゼロにするのは難しいにしても・・・

本当にこの校則は必要なのか?と子どもたちが自分たちで考え,議論する機会を多治見市の中学校でも持ってほしいな,と思った。
以前のブログにも書いて,岐阜県内でも同じような仕組みで成果も出ているから,信頼できる先生と語り合える「ゆうゆうタイム」のような時間は大切だと思う。
先生も忙しいと思うけれど,これは多治見市でも取り組んでもらえたらありがたい,と思った。

自分が子どもの頃は,校則が苦しい,なんて考えたこともなかったけど・・
自分で学校の環境を変えられるのだとしたら,とてもワクワクする。
校則のない学校,ゆうゆうタイム,皆さんはどう思いますか?

2 中1ギャップを無くす~荏原平塚学園

第一印象は,桜丘中学とは対称的な学校。
「義務教育学校」ということで,一般的な小学校6年間と中学3年間の合計9年間を同じ学び舎で過ごす。

大雑把な言い方になりますが・・・

以前は小学校,中学校の連携がとれておらず,
小学校の教諭は,「あの子はあんなにいい子だったのに,中学校でひどいことになった」
中学校の教諭は,「小学校でちゃんと指導しないから,中学校で大変」

とお互いに不信感があったよう。

これを問題と考えた品川区の教育長が小中学校の垣根を超え,子どもたちを良くしていくために連携が必要と考えた。

その一環として,この「義務教育学校」もある。

私:「品川区全体が,今は小学校,中学校の連携がある,ということですが,特に同じところで学ぶこの義務教育学校の良さは何ですか?」
先生:「人間関係が同じ環境で9年過ごせること。小学校のときに関わった先生が卒業後も悩んでいるときに声をかけられる。部活動も成長を長いスパンで見られる」
とのこと。

一人一人の成長を,「切り取らず」,どこで躓いたのかも振り返りながら長期的に見ていけるのがいいところなのかな,と思った。

品川区独自に「市民科」という科目を設置していて,キッザニアでするような仕事の体験,経営者としての体験,生活設計の体験などキャリア教育が充実しているのも印象的だった。
社会に出たら必要になることをあらかじめ体験しておける,というのはとても魅力的だった。

茶道部もあったりして,畳の部屋があり,とても優雅だった。
お母さんたちが,ボランティアスタッフとして,○つけに参加したり,と学校活動そのものを支援しているのも印象的だった。

まだ,学習効果については,まだ移行してから年数が少ないのもあって,明確なものはない。
学年が進むにつれて,弱かった点が伸びていっている印象はある。

私:「多治見市だと,小学校のうちは服装とかも自由ですが,中学に行くとルールが厳しくなる,というのもギャップがあると感じていますが,この学校ではどうですか?」
先生:「中学でルールが厳しくなる,ということはない。最初からルールがしっかりしている」(というようなこと)

・・そういえば,確かにこの学校の子どもたちは1年生から,とても可愛らしい制服を着てる。
礼儀も正しい。決められたことを守る,ルール,マナーを身に着けることは社会生活を生きていく上では避けて通れないから,ここでは確かにこの能力が磨かれる気がする。

今は白い靴下だけれど,紺色の靴下の方がいいのでは?という話が出て,これからは紺色の靴下になる・・とも。
そうすると,「白い靴下の方が良かったな」という子はどうなるんだろう・・と余計なことを考えた。

うちの子は,もしかしたら,この学校はつらいかも・・・と思ったけれど,
こういう環境が合う子には伸びていく仕組みがあるな~と思った。

多治見市で活かせること・・・
お母さんなどの地域の方に積極的に授業も含め,活動の支援を依頼していたのが印象的だった。
予算を付けて職員を増やすのは難しいと思うのだけど,保護者や地域の人の力を借りる,という方法がもっと進んで行くといいと思った。

授業自体に保護者が入るのは先生としては嫌かもしれませんが・・・
自分のこのクラスは受け持たないなどで,少しずつでも出来ることがあるといいな,と思った。

あとは,品川区も各学校色々と特色を出すことを求められていて,選べる,ということだったので,
多治見市内でも,それぞれ特徴のある学校が作られたら,自分の子どもの特質にあったところを選べたらいいのにな・・・と思った。

多治見で義務教育学校が作られたら,とりあえず,9年間同じ所で学びます,ということではなくて,やっぱり,どんな理念でどんな子供たちの姿を目指すのか,ということが大切になるだろうな・・・と思った。

義務教育学校,皆さんはどうあるとこどもたちにいいと思いますか?

3 学習塾との連携~東京都瑞穂町

人口約3万人の町。瑞穂町。
横田基地があるため,交付金で財政が潤沢。

東京都内では学力低めの地域。
携帯電話・スマホなどを長時間みて,学校外での学習時間が少ない傾向。

そこで,学習時間の確保のために取り組んだのがフューチャースクール。
学習塾に委託して,放課後や土曜日に授業をしてもらう。

受けた生徒には学力の向上も見られたとのこと。

私:「フューチャースクールをやってよかったことは何ですか?」
職員さん:「発展問題にも意欲的に取り組めるようになった。学習塾の先生は私立・都立校の入試のために普段から教えているので解説が上手い」

・・なるほど。

受け身になりがちな授業となるのが課題。

まとめる時間や友達に教える時間を取る方向に考えている。
学校でも伸びているクラスは,持ってきた宿題を単に,ハンコを押すのではなくて,評価を加えている。

親としても,子どもが自分で○つけして宿題をするのを放置するのではなくて,ちゃんとやった過程を認めて,成長を認めていくことが大事なんだな・・と思った。

学校は漢方薬の様にじわじわきき,人間的な成長もカバーする学習過程。
塾は,学力向上に特化し,短時間で成果を出す「特効薬」

・・でも,やっぱり,特効薬だけでは,本当の意味での学力向上にもすぐにはつながらない・・
という問題意識をもっているのも感じた。

多治見市で何が活かせるのか・・・
予算的な問題もあって難しそうだけれど,
民間の指導のいい面を活かす場所があるといいな,と思いました。

継続的な指導を民間学習塾に委託するのは難しいにしても,
発展問題を面白く解説してくれる学習塾の先生,受験のために必要な学習方法に詳しい先生をよんで,単発的に授業をしてもらって,学校の先生も一緒にその様子を見る,と指導方法で学べるところもあるのかな,と思った。

民間の知恵を使って,公教育に活かせそうなことは何でしょうか?

まとめ

色々な場所を見て,やっぱり印象的だったのは,
桜丘中学の中三女子のキラキラした目。

自分の意見をはっきり言えて,
意見を言えば,自分の環境も変えていくことが出来る,
と自信がある子どもたちの目は輝いてた。

素敵だなあ。

義務教育学校の平塚学園。

通常の授業背景はあまり見られなかったけれど,
きっと市民課の授業で,自分で家計を考えたり,経営を考えたり,と,
自分の頭で解決策を考えているときって,キラキラしているんじゃないかな・・と思う。

桜丘中学の威力は,それが単にシュミレーションじゃなくて,
「現実」に自分たちの生活を変える実感があるところに,そのすごさがある,と思う。

教室に入れない子もいたけれど,
それぞれに「ニコニコ」と笑顔がいっぱいで,校長先生に誰もが気軽に話しかけてくることも印象的だった。

自由を十分に満喫した子どもたちは,高校で校則が厳しくても,それなりに「楽しむ」ことが出来るらしいけれど,発達障がいのような特性があって,桜丘中学を卒業した後の高校の規制についていけずに,不登校になってしまうこともあるという・・

社会では守らないといけないマナー,ルールもある程度存在するから,そことどう折り合いをつけていくのか,その力をどう身に着けていくのかも,やはり大事な視点だと思った。

一緒に視察に行ってくれた先生に
「もし校長先生になったら,どんなことをしたいですか?」
と聞いたら,

「どんなテーマでもいいから,親子で話をする」
ということをしたい,というような話をしてくれた。

・・・確かに話をすることで,自分の考えを改めて振り返ったり,
相手の意見を聞いて調整したりする力がつく。
とても素敵なことだな・・と思った。

最近・・・

「○○と言われたから○○をする」
「××とは言われていないから××はしない」という

他人任せ,他人の指示待ちの「考え方」だったり,

反対に,
「○○は納得いかないのでしません」
(事前に決めたルールでさえ,勝手にやらなくなる・・・)

という一方的な「考え方」に遭遇して驚くことがある。

誰かから言われなくても,やはり,自分の頭で考えて行動して欲しいし,
反対の意見も考慮しながら,どう行動すべきか,今の状況を的確にとらえて,
バランスよく考えられる大人に私はなって欲しい。

自分の意見を言えるには,自分の意見を言ってもいいんだ!と安心できる環境がまず必要。
だから,最初は何でも話せる人間関係の構築。ゆうゆうタイムのような時間を確保して欲しい,と改めて思ったので,
まずは,これを多治見市でも何らかの形で活かせるようにこれからも伝えていきたい。

・・まじめに考えて落ちがなくすみません(笑)。

子どものときに与えられる影響がとても大きいこと,大人になってから変わるのはとても難しいこと・・が分かっているので,
この「教育」に関われる役割を与えてもらえたことには心から感謝しています。

このブログを読んで下さったみなさまにも,これからの地域,日本そのものの未来を担う子ども達にどんな大人になってもらいたいか,
そのためにどんな教育環境があればいいのか,何をしたらいいのか
考えるきっかけとなりますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!