多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

妻の怒りの理由と対応の仕方が分からず離婚になるのを防ぐには~空気が読めない夫と突然キレる妻の心理学(滝口のぞみさん)

妻の怒りの理由と対応の仕方が分からず離婚になるのを防ぐには~空気が読めない夫と突然キレる妻の心理学(滝口のぞみさん)

「妻がなぜか不機嫌で,家に帰るのが憂鬱なんです」
「妻がすぐに怒るので,怖くて話をしたくない」

今回ご紹介する本の著者であり,臨床心理士でもある滝口のぞみ先生のところには,そう言ってカウンセリングに来る「夫」がいる。

「なぜ,妻がキレるのか分からない」

そのまま放置していると,ある日,妻が子どもを連れて家を出てしまうこともある。

「離婚して欲しい」と言われ,離婚調停を申立てられることもある。
妻は,「あなたと一緒にいるのは無理」,「しんどい」と言う。
妻から「あなたのしたことは,モラハラです」と言われることも・・

その時点で,私の事務所(多治見ききょう法律事務所)にも相談に来られる「夫」もいる。
もしかしたら,自分にも問題があったのかもしれない,子どももいるし,妻を愛してもいるから,修復したい。

どうしたらいいのか・・?

別居や離婚調停をされてからでも,確かに夫婦関係修復のために,出来ることはある。
けれど,その時点では,それまでに妻は悩みに悩んだ挙句に,決断しているので関係を修復するのはとても難しい。

もし,もっと前に「妻がキレる」理由,不機嫌になる理由,怒る理由について気づけていたら・・・
「なぜか」分からない,と放置しなかったら,関係を修復できる可能性はずっと,ずっと上がるのに。

この本を読んで,妻の怒りの理由が分かり,どうしたらいいのか,その対応方法が分かれば,別居,離婚と進む前に,関係修復できる可能性が高くなる,妻と夫婦円満で過ごすためのヒントが沢山あると思いました。

妻にとっても,「なぜ夫は,自分の気持ちを分かってくれないのか?」「なんとなく,夫といるといつもしんどい。イライラする。それはなぜなのか?」
自分がなぜしんどくなったり,怒りを感じるのか,別居,離婚を考える前に,妻に出来ることはあるのか?を考えるヒントもあると思います。

妻が怒る理由は?
妻が怒っていたら,これ以上関係が悪化しないために,夫はどう対応したらいいのか?

その中でも,滝口のぞみ先生の著書「「空気が読めない夫と突然キレる妻」の心理学」から気づいた,夫が妻の「怒り」の原因に出来るだけ早めに気付くために大切なこと,気づいたときに出来ること,をお話します。

1 理由は「空気が読めない」から

夫にとって,なぜ怒るのか,よく分からないと感じる妻の怒りの理由・・
それは,ひと言で言えば,夫が「空気が読めない」から。

(この本で30頁から紹介されている事例概要から)

帰宅と同時に子どものことを言ってくる妻。
既に怒っていると分かる口ぶり。話が始まると終わらない。
仕事で疲れているし,明日も早いのに・・・
関係のない過去の話を持ち出し,くどくど責められる。
「なんでちゃんと聞いてくれないの?」と言われる。
嵐が去るまで話を聞かないとさらに荒れる。

その時のことを,妻の視点で見てみると?

息子が最近ゲームばかりやっていて心配。
なかなか起きられず,遅刻が続いている。
2時間かかってやっと学校に行ってくれたけれど,帰宅後はまたゲームをしている
息子の勉強への無気力やゲームへの依存が不登校や引きこもりになるのではないか,心配。
自分だけではどうしようもなく,夫の力を借りたい。

なのに・・・夫に相談すると,
「息子だってゲームしたいときがあるんだろう」
「起きないのは,息子を(妻が)起こしてやるからなんじゃないか」と言い・・

とても不快で面倒くさそうな顔をして
「その話長い?」と言われ,強いショックを受ける。

妻が疲れ切って言葉が出なくなると,ちらっと横目で時計を見て,リモコンでテレビのチャンネルを変え,毎週見ている夜のコメディ番組を見始めた。

このやり取りを読むと,女性,妻の立場となる方は,「それは分かってもらえなくてしんどいよね・・・」とその空気感を感じると思うのですが,男性の方,夫の方はどうでしょうか?
そうは言っても,仕事もあって疲れているんだし,くどくど話を続けられて,怒られても,解決なんてできないし・・と感じるでしょうか?

この夫の「空気が読めない」というのが,女性,妻にとっては繰り返されることで,とてもしんどくなってしまう出来事。
でも,「空気が読めない」って具体的にどういう意味?「空気が読めない」となぜ,妻はしんどくなり,怒りを感じてしまうのでしょうか?

2 「なぜ」に向き合わないから

「空気が読めない」って,具体的にはどういうことなのでしょうか?
「空気を読む」というのは,「その場の雰囲気を察し,暗黙のうちに要求されていることを把握して履行すること」とされるので,それが出来ない,ということ。

夫婦間で言えば,夫が,1のような日常のやり取りの中で,妻がどのようなことを思い,はっきりと要求しなくても,どのようなことをして欲しいのか把握し,やろうとしてくれないこと,と言えると思います。

夫からすると「突然キレる」と感じる妻の怒りは,なぜ,「空気を読まない」と生じてしまうのでしょうか?

・・それは,「夫は,子どものことに関心があるのだろうか,家族を愛しているのだろうか」という疑問と不安が生じるから。
つまり,家族としてこのままやっていくような信頼関係や愛情関係が私たちにはあるのだろうか?という,家族の根幹,夫婦として一緒にやっていくことに関わる大きな点に,不安や疑問がわき出るから。

夫はこれまでも,いつも自分に「無関心」。そのとき,どれだけ自分が不安でつらく,悲しかったことを分かって欲しかった。
今回は,とても大切な自分たちの子どものことで,自分だけでは抱えきれない不安に押しつぶされそうになり,夫に相談したかった。
なのに,夫が「くどくど続く愚痴」程度にしか受け取ってくれなかった。

「怒り」は,本当は,妻が傷つき,苦しみ,悲しんでいて,困っている,という気持ちの表れ。
怒りにまで至ったこころの傷と「なぜ!?」から生まれた不安を抱えきれず,困り,苦しみ,夫にその「なぜ」に応え,助けて欲しい,と言っている。

「なぜ」夫は,私が傷つくようなことをするのか,夫が何を考えているのか分からない。
「なぜ」夫は,私の気持ちが分からないのだろうか?そもそも,分かろうとしてくれているのだろうか?
夫にとって,私はいったい何なのだろう?私は,「なぜ」こんな目に合わなければならないのだろう

このまま「なぜ」こうなったのか,分からないと,また,同じことが繰り返されるのではないかと不安・・

この本の著者の滝口先生は,分からなさが妻にたまっていってもやもやとしている状態を「不安の雲」と表現されていて,イメージしやすいと思いました。

では,ここまで読んで,妻の怒りは,つらさや傷ついたこと,不安の表れ,だとしたら,夫としては,妻を傷つけないために,また不安にしないために,どのようにしたら良いのでしょうか?

3 想像して口に出す

1のやり取りで妻は一体何を求めていたのか・・?
「言ってくれなければ分からない」,「言ってくれれば分かるのに」よく,男性,夫からは言われる言葉です。
分からないから「何したらいい?」と聞いたら,妻に「そんなことくらい自分で考えて,と言われた」という話も聞き,妻を理解しようと努力しようとしているのに,可愛そうだな,と思う場面もあります。

では,なぜ,妻は「空気を読む」ことを求めがちで,明確に要求を伝えないのでしょうか・・?

それは,要求することで,「夫の見ている世界に妻(自分)はいない」という悲しさを感じて,とてもしんどくなってしまうから。
愛している人なら,その人がどう思っているのか,何が嫌なのか,想像してくれるはず,興味を持ってくれるはず(実際,女性,妻の場合,夫がどう考えているのか想像して対応しているケースは多いと思います)なのに,全く考えもせずに,尋ねてくる夫。本当に私に興味があるの?愛してくれているの?という疑問が生じる。
一緒にいるのに,まるで一人でいるような孤独感を感じる。

いつも言わないとやってくれないことが続くと,自分ばかりが,要請して相手が応えるという「消極的」な対応になって,まるで,「妻の望んでいることを叶えてあげている」「妻の要請に応える夫の善行」のパターンになりやすい。

やってもらうために,妻が要請を続けないといけないことで,妻は要請が厳しい,注文の多い,文句ばかり言う人にさせられてしまう。
夫はそこまで言わないと分かろうとしてくれないほど,私に興味がないのか,好きではないのか?・・という現実,自分は夫にとって価値はないのでは,と感じて,とてもしんどい。

だから,そうではなくて,言わなくても自ら考えて,愛する妻のために,もっと「積極的」に(やりたくて)やって欲しい,それでこそ愛情は伝わるのに・・と思うから,あまり自分から要求ばかりを出したくはない。

では,夫はどうしたらいいのか・・?
「何をしたらいい?」と聞く前に,妻が「なぜ」このような話をするのだろう,と想像し,何をして欲しいのかな,と想像してみる

そうすることで,1のやり取りでも,妻は本当にしんどくて,一緒に話を聞いて子どものことを考えて欲しいから話を聞いてほしいのかな?と想像も出来てきて,ならば,「そっか,それはしんどいよね。子どもが学校に行かなくなるのは不安だよね。」とテレビのリモコンやスマホをいじりながらではなく,妻の眼を見て,時間をかけて話を聞くことが出来るかな,と思います。

男性,夫と女性,妻になぜずれが生じてしまうのか・・?女性,妻が求めているのはそこではない!というのはなぜ生じるのか?に関しては,

妻,女性の話の多くは,「解決策」を求めているわけではない,まずは,話を聞いて「共感」して欲しい・・と,昨今はよく言われるようになってきたところでもあります。
この本でも,「共感」の大切さに触れられています。

愚痴のようなおしゃべりは無駄に感じるかもしれない。でも,無駄なものが大切なもの。
分かって欲しい,関心を持ってほしい,優しく声をかけて欲しい,(多くの場面で)一人で子育てをしていることを理解し,時には助け,ねぎらって欲しい

誰もが生存のためにではなく,「愛し愛され幸せになりたくて結婚した」。

そういう思いで妻が話している場面も多いのではないか,と想像してみることで,かける言葉も,話を聞く時の態度も違ってくるかなと思います。

私の場合,今日は課題を解決したい,と思っているときは,「○○ってどうしたらいいと思う?」と明確に聞くことを心がける一方,何となく話を聞いてほしいだけのときは,「そう考えるのはおかしい。気にしなくていいんじゃない」などを言われると嫌なので,「今日は,しんどいと思う気持ちを聞いてほしいから,アドバイスを求めているわけじゃない」と伝えてから夫に話すこともあります。

もし,このブログを読んで下さる方が女性,妻の立場の方の場合,自分の怒り,不安がなぜ生じるのか,もやもやと分からず不安な理由が,少し「言葉」にして夫にも伝えやすくなるかなと思うので,気持ちを伝える際のヒントになれば・・お互いに歩み寄れて理解が進みやすいかな,と思います。

そして!妻の「怒り」が「なぜ」なのか分からない,という場合には,その場の嵐がとりあえず収まればいい・・という対応では,どんどん妻の「不安の雲」が膨らんで夫婦関係は破綻,離婚の方に向かって行ってしまうので,これを放置せず,「なぜ」妻が「怒り」を感じるほどに痛みがあるのがを想像し,それを理解したことを伝えることで,もう同じことはしない,起こらない,と妻に安心感を与えて欲しい,と思います。

この安心感がない状態で続けていく夫婦,家族の関係を,著者は夫が穴をあけた船,不安定な船をとりあえず,穴をふさげばいいとして進んでいるような不安感であり,いつ,どこでまた穴が開くか分からないから不安になって,妻はしんどくなる,と伝えていて,とても分かりやすいです。是非,本も読んでいただきたいと思います!

そうすることで,夫婦関係は,それ以上悪化せず,修復する方向に向かって行けると思います。

まとめ 分かろうとして言葉にしてみる

この本を紹介して下さったのは,私の無料メールマガジンを読んで下さっている男性読者の方です。

私が,メルマガで書いた内容である

「同居親で母親の立場の方は,自分が嫌いだから元夫に子を会わせたくない,という方からいただくメッセージはなく,相手にモラハラ傾向がある場合に,それでもやっぱり,子の父親だから会わせた方がいいのではないか,いや,でも,会わせると子にとって良くない「価値観」,息子には,相手が女性の場合に,相手である女性を尊重せず人間関係を破壊する「価値観」,娘には,自分は女性だから「劣っている」傷つけられても仕方ない,という誤った「価値観」を植え付けることになってしまうのではないか,と心配され,悩まれていることを感じます」ということについて,

「今の私は,メルマガでの母親の立場の女性の気持ちを理解できます。
しかし以前なら,第三者の私は恐らく無関心で,加害者の私は女性の気持ちを信じなかったと思います。
それ程,私の価値観は歪んでいました。」
「自らを変える難しさの要因の一つは,こうした「価値観」の歪みに気づけなかったからだと思います。」
「今は子育てをしながら生きている元妻に,そして元妻と一緒に生きている子供たちに感謝しています。」

と書いて下さって,その気持ちの変化のきっかけとなった本のひとつとして,ご紹介して下さった本です。

離婚するという結果になったとしても,その後に面会交流などを通じて,お子さんや元妻との関係は続いていくので,こうした「妻から見たらどうだったのだろう?」という視点,「関心」をもってみることで,「自分は悪くない」「問題ない」「正しい」という価値観から抜け出して,関係を再構築するためにも,とても参考になる本だと思います。

この本の内容について,高校生となる娘と話していた時・・
娘は「夫の気持ちも妻の気持ちも分かる」と話していました。

だから,妻としても,すべて「察して」「空気を読んで動く」を要求するのは厳しすぎる,私も言われないと分からないこともあるし,想像してやって間違えることもあるから,・・相手が言わないとなかなか分からないだろうということも想像して,「言葉」にしてみる,というのが大事かも,と改めて思いました。

一方で,じゃあ,夫の方がなんでも「言ってくれないと分からない」「言ってくれ」と言われても,「何も考えようとしてくれないのか?」と妻はしんどくなるから,妻の気持ちを想像して,「どうしたらいい?」とは丸投げせずに,「こんな方法どうだろう?」と提案してみるといいのでは?と考えてくれました。
自分と人とは違うから,想像しても,間違っていることも多いから,妻に聞いた方が早いんだけれど,そればかりされると,「想像しようともしてくれない」ということに疲れてしまうので,まずはいきなりやってみるのではなくて,このあたりを希望しているのかな,と「想像」して,「言葉」にする,提案がいいかも!とのこと。

娘の意見になるほど,と思ったので採用して,ブログに書いてみました♪

私自身も,私が怒り始めると旦那は黙ってしまうことも多く,これまでも振り返ると私が分かってくれない・・とそのうち黙り,ということもありました。でも,それだと,私はまた同じことが起きそうなので,解決したくてモヤモヤ。
最近は,夫が,気持ちを「言葉」にしてくれ,なるほど!と分かることも多くて,不安も解消されるので,やっぱり,知りたいな,と思っています。

なので!これからも,「怒り」につながりそうだ・・と思ったときは,それだけ傷ついたんだ,と自分を理解して,どう感じて傷ついたのか,なぜそういうことをするのか聞きたいんだ,と「言葉」にして話していきたいと思います。

この本は,具体的な事例も多く,すれ違ってきた二人を再建するヒントとして,「変わりたい」と思った場合の具体的なアクション,「言葉」にすることが難しい人でも出来ることなども詳しく書かれています。また,夫がアスペルガータイプと思われる場合の対応などについても,書かれていたので,私自身,息子の子育てやこれからの人間関係の構築の仕方を考える上でも,とても学びがありました。
是非,異性の気持ちが分からない,相手と良い関係を築くためにはどうしたらいいのか知りたい,という方には読んでもらえると,沢山の実践的なヒントがあると思います!

これからも,うちに相談に来て下さる依頼者の方々のため,そして自分自身の子ども達,家族,友人のため,弁護士として,母として,子どもも,女性も男性もお互いを理解し合いながら幸せを感じられる人間関係を構築するための方法,「幸せに生きるための方法」学んでいきたいと思います。

また,引き続き,研究発表,致します!

それでは,

このブログを読んで下さった男性にとって,妻の気持ちを理解して,関係を修復,再構築するためのヒント,夫婦円満であり続けるためのヒント,女性にとって,なぜ夫に伝わらずに辛い思いになるのか,どうしたら,少し夫との関係が楽で良いものになりそうか,を考えるヒント,となりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!