多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

交通事故で加害者が任意保険に入っていなかったら?傷害,後遺障害,死亡による損害賠償請求

交通事故で加害者が任意保険に入っていなかったら?傷害,後遺障害,死亡による損害賠償請求

いつも読んでいただきありがとうございます♪今回は,交通事故による人身事故(傷害,後遺障害,死亡)事案で,自賠責保険の被害者請求をする場合についてお伝えします。

交通事故による傷害,また,これによって後遺障害が生じた場合,また,死亡事故の場合に,加害者が任意保険に加入していないと,自賠責保険(法律で加入が義務づけられている自動車損害賠償責任保険)へ,直接被害者が支払いを請求する「被害者請求」を考えることになります。その支払い基準はどうなっているのでしょうか?

死亡事故の場合,どのような基準で,どのようなお金を支払ってもらえるのでしょうか?

加害者が任意保険に加入していない場合に,十分に補償してもらえるのか心配なところだと思いますが…
自賠責保険で支払ってもらえる最高限度額は,傷害,後遺障害,死亡の場合でそれぞれいくらでしょうか?

令和2年4月1日以降の事故の場合,適用される支払い基準の金額が改正されています。
なぜ改正され,どのように変わったのでしょうか?

1 傷害による損害保険金支払い基準

傷害による損害として,積極損害(治療関係費,文書料,その他の費用,例えば医療機関まで被害者を搬送するための費用等),休業損害(休業による収入の減少があった場合の補償)および慰謝料が支払いの対象となります。

令和2年4月1日以降に発生した事故の場合,支払い基準が改正されています。
例えば,入院慰謝料が一日当たり4200円→4300円,休業損害が5700円→6100円となっています。

平均余命年数,物価水準及び賃金水準の変動を支払い基準に反映させる必要があることによる改正とされています。

傷害の場合の保険金額(保険者が支払うべき最高限度額)は,120万円です。

2 後遺障害による損害保険金支払い基準

後遺障害(後遺障害とは何かについては,交通事故で「むち打ち」。補償してもらうためのポイントは?に記載しています)による損害として,逸失利益(逸失利益とは何か,については,若年女性の交通事故による逸失利益~損しない算定方法に記載しています)と慰謝料(精神的苦痛に対する損害賠償金)があります。

逸失利益は,年間収入額に該当等級の労働能力喪失率と後遺障害確定時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数(ライプニッツ係数については,民法改正による交通事故の損害賠償金の増額と必要な備えに記載しています)を乗じて算出した金額を基準として計算されます。

慰謝料は,該当等級ごとに支払い基準が決められています。
第1級で1100万円であったのが,改正により1150万円になるなどの変更があります。

後遺障害による損害保険金額は,等級に応じて75万円~4000万円です。

3 死亡の場合による損害保険金支払い基準

死亡による損害としては,葬儀費,逸失利益,死亡本人の慰謝料及び遺族の慰謝料があります。

改正により,葬儀費が60万円→100万円に,死亡本人の慰謝料が350万円→400万円に増額されています。
死亡による損害保険金額は,3000万円です。

死亡の場合に必ず3000万円が支払われるわけではなく,自賠責基準での葬儀費,慰謝料(本人,遺族),死亡逸失利益の合計金額が保険金として支払われるので,この合計金が3000万円よりも低い場合には,その合計金額が限度になります。

また,今後お伝えする予定ですが,被害者側に重大な過失があった場合には,減額されることがあります。

ケガ(傷害)が生じたのち,死亡する,という経過をたどる場合には,死亡に至るまでの傷害による損害が発生しますが,この時の支払い基準は,原則として傷害による損害の場合の支払い基準で支払われます。

なお,加害車が複数の場合,共同不法行為となる場合には,保険金額×自賠責保険がついた加害車の台数の金額が支払限度額として請求が可能になります。

まとめ 疑問解消で心を軽く・安心を

私は,交通事故の被害を受けた場合,どのように損害が計算されるのか,どのように手続きは進められていくのか,まず,最初に何をすべきなのか,などを知っておくことで,不安や疑問が解消して,安心して進めていけるといいな,と思って伝えています。

傷害,死亡事故による心身の苦痛はとても大きいと思いますが,そんなときに,加害者が任意保険に入っていないと知ると・・・不安も増大するのではないかと思います。そのような場合に,今回お伝えした自賠責保険による補償内容が,参考になったらと思います。

傷害状況によっては,直ぐに弁護士に相談に行くことも出来ない状況のこともあると思いますし,出来るだけ時間を短くして弁護士に相談したい,と思う場合,予め知識を得て,解消できる疑問点は解消しておけるといいかなと思っています。

それでも,不明なところや分かりづらいところはあると思いますので,その際には,遠慮なく弁護士に質問して,疑問を解消することで心を少しでも軽くしてもらえたらと思います。

また,自賠責保険で保険金お支払いの対象となるのは人身事故による損害に限られ,物損事故による損害は対象となりませんので,物損の損害賠償請求については,加害者本人にしていくことになります。

このような補償対象や損害賠償請求の流れなどを知っておくことで,被害の回復までの道のりを安心して進むことが出来,必要な損害賠償請求を効率的,効果的に過不足なく請求出来ることに繋がります。

また,知っておくことで,防ぐことが出来る事故,適切な任意保険に加入するなどにより,避けられる損害賠償の負担もあります。

これからも,そのための「知識」についてお伝えできればと思います。

それでは,今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました!!