みなさま,おはようございます!
今回は,中津川法人会にて,「親族内承継の進め方と重要ポイント」をテーマに講演をしましたので,シェアします♪
いつもは,税理士さんをを中心にした事業承継の話が多いけれども,税務面にかたよりがちなところもあったので「弁護士」の講師を探した,とのことでした。
以前に多治見法人会で「事業承継」のお話をさせていただいたことから,私のことを知っていただいたようです。
「親族内承継」を進める場合,何から,どのように手を付けたらいいのでしょうか?
親族(息子,娘)に承継する場合,何に気をつけたら成功するのでしょうか?
実際に裁判などの争いになったケースは,何が問題となっているのでしょうか?
1 親族内承継のポイント
事業承継を考えるとき・・・に限らないと思いますが,具体的な手続きを進めるために必要なのは,以下の点だと思います。
誰に
何を
いつ
どのように
承継するか??
このうち「誰に」の部分については,親族内承継の場合,「親族」となります。
息子のうちの誰にするのか?それとも娘か?娘婿か?
私は,大切なのは「理念が共有できること」「変革気質をもつこと」とお伝えしました。
先日のジャパネットたかたさんの話もそうですが,帝国データバンクが長寿企業4000社に実施したアンケートにおいても「今後生き残っていくために何が必要だとお考えですか?」という質問の答えは,第1位が信頼の維持,第2位が「進取の気性」≒チャレンジ精神です。
つまり,変えないもの(信頼,理念)を継承しつつ,変えるべきものを変えていく力が後継者には必要なのだと思います。
皆さんの会社の後継者となろうとする方は,どうでしょうか??
理念に共感しつつ,チャレンジしてくれそうですか?
2 いつから事業承継を始める?
「いつ」事業承継に着手するのか?もとても大切なポイントです。
ブログでは以前書きましたが,現在は,事業承継の時期が理想的な時期よりも遅れている傾向にあるようです。
先日,事業承継の相談の中で,2代目の社長さんが,自分自身も40代には承継していたので,その頃には承継しないとやる気が出ないと思うから,後継者がその歳になる頃には承継させたい,と言われていました。
私も,親から子への承継の場合,その年齢差にもよりますが,先代が60代,後継者が30代から承継に着手をして,40代には完了するのが望ましいのではないか,というお話をしました。
その理由は,以前に書いたブログの通りですが,年齢を重ねると一般的に利益が減少傾向になります。
他方,年齢がはやいうちに事業承継をした場合には,業績が上向く傾向があります。
さらに,中小企業庁が委託した調査によれば「年齢が若い世代ほど」新たな取組をする傾向≒チャレンジ精神があり,それによって,業績が上昇傾向にあることも現れています。
つまり,若くして事業承継をした方が,チャレンジをする後継者が多く,結果として業績も上がりやすい,ということなのですね。
皆さんの後継予定者の方は,30代になっていますか?もしそうでしたら,そろそろ事業承継着手の時期ではないでしょうか?
3 何を どのように進める?
「何を」承継するか?・・
はもちろん「事業」なわけですが,これだけだと,具体的に何を承継させていったらいいのか漠然としています。
そこで,「事業」を分解して考えるのが大切です。
色々な分解の仕方はあるのですが,どの順番で進めていくといいか,という意味で分けるとすれば,以下の分け方がいいと思います。
① 経営
② 経営権=株式
③ 事業用資産(個人の資産も含む不動産,動産,運転資金など)
そして,この順番で承継をさせるのがいいと思います。
①の「経営」とは目に見えない「ノウハウ」の部分です。顧客との付き合い方だったり,技術の承継,経営理念の承継などです。
できれば,後継者が20代の頃から,営業,経理,製造,など事業の様々な部署の現場を担当してもらって,次第に決定権のある役職をしてもらいながら,最終的に社長(代表取締役)になってもらう,といいと思います。
そして,その力量を見ながら,これなら後継者として安心というときに②,③を進めていく,というのが弁護士目線で言うといいと思います。
なぜかというと,②の株式や③の事業用資産の承継を同時に進めてしまったけれど,あとで経営能力に問題があり,後継者を変更したい,ついては,株式や事業用資産を取り戻したい,というケースのご相談,裁判案件もあるからです。
信じて,経営権も承継させることも,もちろん大切なのですが,一旦株式や事業用資産を渡してしまうと,あとで取り戻すのは困難です。
株式を譲渡しなくとも,代表者になってもらうことは出来るので,まずは①からすすめていくのがいいと思います。
他方で,せっかく社長となって,業績を上げても,経営権の承継がされなければ,ある日突然,社長を解任されることもあります。
突然,先代の社長が亡くなって,それまで,株式は持たないものの事実上,経営者として経営をしていた後継者が経営できなくなってしまったケースも実際にあります。
このようなことを想定すると,経営権,事業用の資産が万一の場合には確実に後継者に承継されるよう,すぐに②,③の承継に着手していない場合であっても,まずは「遺言」を作成しておくことが必要だとお伝えしました。
まとめ
普段から紛争場面を取り扱っている弁護士の視点と,そうではない公認会計士,税理士,中小企業診断士との視点では,どのように「事業承継」をすすめていくのがいいのか,何を重視すべきかも観点が違うと思います。
大事なことは,いろいろな「士業」「専門家」の視点があるなかで,ご自身の「事業承継」ケースがどのようなケースで,どのような可
能性が高いケースなのかをしり,それによって,何を重点的に進めていったらいいのか,把握しておくことです。
まずは,「事業承継」に着手すべきタイミングとなったら,中小企業を支援してくれる身近な支援機関である商工会議所,商工会,取引先金融機関にご相談下さい。
顧問税理士さんがいる場合には,顧問税理士さんにまずは,相談してみるのもいいと思います。
具体的な個別の株式や資産の承継については,弁護士,税理士などの各専門家に相談してすすめていくとしても,最初は,全体のイメージをつかむことが大切です。私も事業承継コーディネーターをしてから,全体のイメージがつかめるようになりましたので,一般的には全体的な事業承継のイメージがつかめている専門家は多くないように思います。
その場合には,中小企業庁がだしているひな形「事業承継計画表」にあてはめてみると(インターネットで検索すると出てきます),より具体的なイメージを持って事業承継が進めていけるので,こんな表を作って進めたいのだけど~と「事業承継計画表」を持参して,支援機関,顧問税理士さんにご相談いただけるといいと思います。
どうしても,事業承継全般のイメージがつかめない,という方,身近な支援機関がない,という方は,中小機構中部でも事業承継に関する窓口相談を月1回(無料)行っていますので,利用していただけたらと思います。
私は地元の役に立ちたい,と思って,多治見で弁護士を16年間やってきました。
少し離れてはおりますが,中津川は東濃地区という意味では,地元と思っています。以前は,加子母村,付知,福岡町の社会福祉協議会への相談も行っておりましたので,とても親近感もあります。
中津川法人会に所属する地元経営者の方々にお話しさせていただくことができて,本当に幸せでした。
倒産事件に弁護士として関わっていると,事業承継時に先代のときのように融資していただけなかった,顧客先が以前と同じような条件で取引をしてくれなかった,ということが倒産の大きな理由となった,と言われたこともあります。
事業承継を成功させるお手伝いをすることで,地元の企業が継続,発展し,雇用が確保され,地元に人が居続けてくれる,活気ある地元を残すことに少しでも役にたちたい,と思っています。
女性の参加者の方から「とても分かりやすかった」と言っていただけたのも,本当に嬉しかったです。
これからも,是非,講師としてもよんで下さいませ。
このブログが,60歳を越えた経営者の方々,30歳を越えた後継予定者がいる方にとって,事業承継で具体的に何から手を付けていいか,のヒントとなりますように~
今回も,最後まで読んで下さって,ありがとうございました!