多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

承継後に最高の利益~ジャパタカ前社長の事業承継

承継後に最高の利益~ジャパタカ前社長の事業承継

004みなさま,おはようございます!
今回は,株式会社ジャパネットたかた前社長「高田明」さんの講演をききましたので,シェアします♪
昨年の1月に社長を退任して,長男さんに事業承継をした高田前社長。

新社長の体制となって,29年間社長をやった最高売上げ1759億円当時の経常利益135億円を事業承継後に更新しているとのこと。


親族(息子)に承継する場合,何に気をつけたら成功するのでしょうか?

ひと言で言うと,
ビジョンを引継ぎ,やり方は任せる」のがポイントのようです。

 

具体的に,どんなことに高田社長は気をつけていたのでしょうか??

 

 

1 やっぱり,今でしょ
 

高田前社長が大事にしているのは,「今を生きる」こと。
以前,私も紹介した林先生の「今でしょ」の流行語をだしながら,私は「10年以上前から,今を生きることの大切さを言ってきた」と言われていました。

自分は,カメラやさんで,40歳まで写真を撮る仕事をしてきた。
自社でテレビスタジオを作る,と決めたら,派遣もお願いしながら,なんとしてでもやり遂げた。

いつも「今」の仕事に命をかけてやる。

未来のことを考えて,不安にならない。
過去を振り返って,たちどまらない。


「自助論」の中でも「成功者」は,みんな特別なことはやっていない,一生懸命やり続けるだけ,と言っているとのこと。


長男さんとの対談コメントを読むと,長男さんは,
「父の下で働くようになってから,つらいことや一見つまらなそうなことでも思いを持って取り組めば,その先にそれを超える喜びがある」と学びました。
自分を含めて、熱くなることが苦手な人はつらさやつまらなさばかりフォーカスしてしまいがちなんです。でも、その先の喜びに目を向けられればどんなことでも“熱”を持てると思います」と言われていた。


やはり,息子に事業承継をする場合,父親は「熱意」を伝えることが大事なようです。
高田前社長の「今」を真剣に生きる生き方が,長男さんにも届いていたのですね。

 


2 理念(ミッション)の共有
 

事業承継で大事なポイントとして,高田前社長は「理念(ミッション)」を後継者(息子)と共有すること」と言われていた。
息子さんとの対談を見ると,ジャパネットたかたが大事にしている理念は,
本当にいいモノを見つけること,そのことをお客さまにきちんと伝えること」のようです。


今回の講演の中では出ませんでしたが,息子さんとの対談の中で,前社長は
「モノを売るだけでなく“言葉”を売っているのだと思います。旭人をはじめ,社員がそれを共有しているからこそ私もすんなり社長を退任することができたんです」

と言われていました。


講演の中では「伝えたつもり」になってはいけない,伝われば,お客さんは買ってくれるということも言われていました。


「モノにはつくった人の思いが込められています。通販とは、そういう思いやメッセージを伝えることなんですよ」と対談で話している高田前社長。


その理念を後継者,社員の皆さんにどれだけ,浸透させるかが息子さんに承継をする上で,とても大事なことなのですね。
そのためには,いつも社長が思いを語り,熱意で行動に表す姿をみせること,が大事なのだろうな・・・と思いました。

 


 

3 やりかたは任せる

過去最高利益を上げながら,2014年には2年以内に社長を退任する,と言った高田前社長。

10年以上一緒にやってきて,長男が一番「優秀だから」任せた,と言い切っていました。
(日本では,このような言い方をするのはあまりないでしょうが・・・と言いつつ)


長男さんが発案した,その日1日で一つの商品を売り切る「チャレンジデー」。
莫大な広告費をかけて行う,このやり方に,当初高田前社長は反対したそうです。

しかし,熱心に頼む長男に根負けして,了解したところ・・・

結果は大成功


その他にも,自分の頃には,手を付けていなかったような,社員の職場環境の改善。
9日間連続で職員に休みを取らせる,なども,当初は,とても無理・・・と思っていたそうですが,
長男さんが次々に改革して,実施し,
社員のモチベーションを上げているようです。


高田前社長が、退任するときに挙げた1年間の会社のテーマは「不易流行」。

いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと

「(心配もあるけれど),若い者にまかせてみるのもよい」という考え方が,とても心に残りました。

 

息子さんのことを心から信頼し,他人にも堂々と言える姿は,息子さんとしても,本当にモチベーションが上がるだろうな,と思いました。
そして,「まかせてみる」ことで,自分では気づかない,新しい視点を会社に取り入れられ,社員にも新社長が認めてもらえる,ということなのでしょうね。

 

 


まとめ

親族,特に息子さんに承継する場合には,やはり
お父さん(経営者)の仕事に対する熱意,理念が伝わっていること,
そして,事業を承継させる者は,後継者を見守り,任せることが出来る度量があることが必要だと思いました。


企業が大きくなると,東芝でもシャープでも,オーナー経営者に雇われる形で就任する社長(サラリーマン社長)となることが多い。
しかし,前社長の機嫌を取って社長の座を得たような場合,前社長の方針に背くことは難しい・・・
この点,ファミリー経営は,「ワンマン経営」「公私混同」などとも言われがちですが,実は,「虚偽記載」などの粉飾不祥事は,一般企業の3分の2の水準にとどまっているとか。


親子の場合,父の方針に背いても,親子としての縁は切れない,絶対的な信頼があるので,真剣に意見を戦わせ,変革を断行していくことが出来そうですね。


事業承継当時,前社長は67歳,現社長は37歳だったようですが,みなさんの会社はいかがですか?
高田前社長は,退任を発表してから,実際に承継するまでは比較的短期間でしたが,10年以上息子さんとは仕事を一緒にしてきて,意見をたたかわせてもきたのですね。


事業承継の準備期間は,5~10年程度はかかる,と考えている経営者が多いようです。
そして,年齢が高くなるほど,利益も減少傾向になることが多いのが実態・・・(こちらの記事に書きました)
60歳をこえた経営者の方には,是非本格的に事業承継の準備を始めて戴けるといいと思います。

 

親族内承継の場合,すでに,子どもさんが小さい頃から,「経営者の理念・熱意を伝える」という準備は始まっているのですね。
そして,子どもさんの個性を活かすことも大事ですね(長男がなぜ事業承継を決意したか,はこちら

まだ,子どもさんが幼い経営者の皆さんには,是非是非,お父さん,お母さんの熱意,理念を伝えていってもらえたらと思います。

高田社長は,そのストーリーを知って,大ファンになりましたが,テレビとは違う「渋い声」に,またまた好きになりました!
 

 

このブログが,子育て中の経営者のお父様,お母様,息子,娘に事業承継を考えている経営者の方々のお役に立てますように~

今回も,最後まで読んで下さって,ありがとうございました!