多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

女性職員8割で売上60億以上の製造業~株式会社テルミック

女性職員8割で売上60億以上の製造業~株式会社テルミック

休憩時間ではなく,勤務時間中に当然のようにトイレに行く。
始業時に,15分くらい話をして,やっと仕事を始めるかと思ったら・・コーヒーを飲みに行く。

そんな職員に,イライラすることもなく,自分から「新しいコーヒー出来るようにして置いたよ」と言ってます,と話してくれた田中社長(57歳)。
お茶目で素敵でした~

平成生まれの職員(25歳~35歳中心)を雇用する株式会社テルミック。
金属部品の加工業で,以前なら,「男性」の仕事のイメージの製造業。

今は,職員の8割は女性。
働いてもらうための人材確保に一人当たり200万円程度をかけるのが一般的と言われる中・・
主として,就職希望の連絡は,TikTok,Instagram,YouTubeなどを観て,ということで連絡があり,職員の確保には困っていない。

業績は,コロナ期の2021年には約23億に一度売上が落ちたものの,V字回復をして2025年は62億を越えている。
2022年から職員の数は増やしていない,とのことで,一人当たり1000万円売上を上げているイメージになるとのこと。

今回は,十六銀行と取引があり,多治見を中心に活動する経営者を会員とした「陶都多治見十六会」の会社視察で「株式会社テルミック」で学んだことのシェアをします。

私も弁護士として「ハラスメント研修」をさせていただくことがあるのですが・・
「ハラスメント」を避けるという消極的な取り組みだけでなく,女性がより心地よく,自分から働きたいと思える環境を積極的に作れたらすごい。

実際の現場でどのような工夫をすると女性が働きやすく過ごせるのか?
労働者を確保することが難しい,と言われる中,何を工夫したら働きたい,と思ってもらえるのか?
少人数でも売上,利益を確保するために必要なことは何なのか?

私が感じたポイントを3つお伝えします。

1 3つのゼロ

テルミックは,3つのゼロを推進している。

①紙ゼロ(ペーパーレス)
②ルーティーンゼロ
③残業ゼロ

①紙ゼロ
紙でプリントアウトすることによる経費削減効果はざっとで4000万円以上。
以前は,大事な図面をタバコを吸いながら見て作業することで,図面が焦げ付いたりすることもあった現場状況。
端末でデータとしてみることで,大切に扱える。

②ルーティンゼロ
誰でもできる作業を人にやらせることを減らす,という感覚かなと思った。
そのための仕組みづくりとしてRPAがある。

③残業ゼロ
4年前から残業ゼロを目指すようになった。
ダラダラ話をして終業時間を延ばされ,タイムカードを押されると社長としてはしんどい。
定時に同じグループの職員2人が他部署の職員を誘って帰れば,1500円支給するという取組を実施していた。

最近私も少しずつ,紙ゼロ(ゼロは無理だけど削減)を意識したばかり。
残業はうちのスタッフに関しては基本的に元々ゼロに近いと思うけれど,自分が子育て中に早くに帰りたかったら・・・
やっぱり子育て中の女性にとっては,その働き方は大事かなと思ってた。

今は,子育て中とかに関わらず,未婚女性も,男性も仕事以外の時間の充実も大事。残業は避けたい方向なんだな~と実感した。

2 女性の働きやすい環境

職場見学をさせてもらったとき,感じたこと。
図面のチェックをパソコンでしている女性職員のスペース。

なんか,夜のお店っぽい。

・・と言っても,「性的」ないやらしい感じではなくて・・
社長の表現で言うと「バーカウンター」をイメージ。

確かに,以前観たディズニー映画の「カーズ」で夜になるとネオンサインが光るんだけど・・そんな感じのバーっぽいネオンサインが事務作業をするスペースにも飾られている。
・・なんかかわいい。穏やかに落ち着く感じ。

部屋ごとに違う香水が噴射される仕組みがある。いい香り。
トイレはウォシュレット付き。実際入らせてもらったけれど,きれい。

机の配置も男性課長が混じってしまうと,雰囲気が悪くなりがちだから,女性だけの空間も意識している(というようなこと)を言っていた。
金属加工業なのに,安全帽,安全靴は身に付けなくていい。服装も自由。

昼ご飯は支給される。
昼フレックスで少し多めにランチ時間を取って,外に食べに行くことも出来る。
3人目出産で会社から100万円支給。

私が一番すごいな~と思ったのは営業。
外に営業スタッフを出さない,とのこと。外回りさせるのは時間の無駄・・というのもあるのだけれど,女性スタッフの場合「セクハラ」に合いやすいと言っていたのが印象的だった。

WEBマーケティングを外部コンサルタントに来てもらって学びながら,パソコンを使っての効率的な営業。なるほど。

経営者とか役員になると,「ランチミーティング」と言ってゆっくりランチをしながらお話とかできるけれど,一般のスタッフって確かになかなかこれをしづらい。
営業も外に出ないで出来る,というのは画期的だな~と思った。

3 RPA

恥ずかしながら,初めて聞く言葉だったのだけれど,3つのゼロ,過ごしやすい職場環境を保つために随所に使われている「RPA」ツール。
「ロボットによる業務自動化」,定型業務をソフトウェアロボットによって自動化できる。

一般的には,人間が来てから今日の出荷は何があるかな,と確認して,商品が発送できる状況化を確認して,梱包して・・となるけれど,
「RPA」で,人間が稼働していない時間帯もコンピューターで自動集計作業がされ,翌日人が出勤した際には,発送作業から始まる。
日中はずっと出荷作業をしている感じ。

ルーティン(定型)作業はロボットがやってくれるから,人間しかできない仕事をできる。
この業界はいわゆる「3K」と言われるけれど,その部分に関わらなくていい。

そして,この「自動集計」を活かして,1秒ごとに売上が変わる様子が大きな電光表示板で示されていく。
その様子は,「カジノ」のようで,どんどんお金が生み出されている感じが視覚的に分かる。興奮する感じ。

ネオンサインが「静」のイメージだとすると,「動」を感じて何となくワクワクする。
入り口には,ユーフォーキャッチャーが置いてあったり,スターバックス風のカフェスペースがあったりもして,ロボットが飲み物も作ってくれる。
(以前行った「シリコンバレー・San Franciscoに行って気付いたこと~事業発展・人口増の秘訣~」で書いたGoogleの小規模版のような感じを受けました。写真は入口スペースにあった地球の形の電光表示)

大きな契約をすると,スタッフの名前も表示されて,順位も表示されたりしている。
それを見ると自分も嬉しいし,自分で「すごいでしょ!」と言うのは日本人的に少しためらわれるけれど,表示されることで他の職員にも自然と知られ,モチベーションも上がる。

コスト的にいわゆる大企業しか,ロボットの導入によって人の雇用を少なくする,という取組はできないのかな,と思っていたけれど,部分的には中小企業でも使えるものはあるのかも,と思った。

まとめ 心を動かす

製造業じゃないから,自分の事業には活かせない。
売上がそこまで大きくないから,自分の会社では利用できない。
うちの業界は違う。

・・それは確かにそうなんだけど,そのまま利用するんじゃなくて,自社で利用できるところを取り入れることはできるかな,と思う。

私も,弁護士として離婚調停での話し方,準備の仕方を説明すると,その事例と自分の事例は違うから,自分の事例で使えることを・・と言われることもある。
個別相談であれば確かに,その方にあった「オーダーメイド」の方法を説明するのだけれど,費用もかかる。
他の人の事例から,自分の事例にも活かせることを考えるのは面白いと思うし,実際に活かせることはあるだろうな,と思ってYouTubeなどでお伝えしています。

今回は,企画して下さった十六銀行さんの支店長も言われていたけれど,「心を動かす」ことの取組みとして活かせるところが沢山ありそう,と思った。

以前のように「ノルマだから」「とにかくこのようにやって下さい」と一方的に命令しても,動いてもらうのは難しい。
そもそも,働いてください,と言っても,働く会社として選んでもらうのが難しい。

だからこそ,どうしたら,この会社で働いてくれるのだろう?
どうしたら,自分でやる気になって営業しようと思ってくれるのだろう?
どうしたら,働き続けたいと思ってくれるのだろう?
どうしたら,残業はせずに,それでもしっかりやるべき仕事はしようと思ってくれるのだろう?

と,命令じゃない形で相手の心を動かす方法のヒントとして使えることはあるんじゃないかな・・と思う。

私は,離婚調停を申立てられたけれど,離婚したくない方のサポートをすることが多いけれど,それも「戻るべき」「やり直して欲しい」と言ってみても難しいから・・
どうしたら,「やり直してもいいかな」と心を動かしてもらうことが出来るのか・・
「心を動かす」ヒントには共通点があると思うから,その方法をこれからも様々な場面を通じて研究していきたいと思いました♪

このブログを読んで下さったみなさまが,誰かの心を動かす方法を考えるヒントになりますように…
経営者の方が,職員,特に女性スタッフにも進んで仕事をしてもらうためのヒントとなりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!