
DV,モラハラ被害者(特に女性)を支援している弁護士や支援団体からは甘い・・と言われそうなのだけれど,やはり,私は,どんな人も「自分自身で」本気で変わりたいと思って,学んで,少しずつでも実践して行ったら,変われる,と信じたいな・・・と思っています。
なぜかと言うと,私自身も完璧ではなく,「モラハラ」と言えるような傾向があったということを自認して,「子育て」の考え方も,「子育て」の仕方も少しずつ変わってきたのではないかなと思うから。
今回「子どもとの関係が変わる自分の親に読んで欲しかった本」(世界40ヵ国以上で翻訳出版)を読んで,また,改めてそう思いました。著者のフィリッパ・ペリーさんは,イギリスの心理療法士です。
本書では,「私たちがどう育てられ,それが私たち自身の子育てにどう影響するか,親としてどんな間違いをおかし,その中でも最悪の間違いはどれか,それにどう対処したらいいのかを書きました」とされ,子育て中の親,かつて子どもだった人から共感の声が続々!とされていて,興味深く読みました。
この本を読んで,「私の人生を変えた息子の言葉」「愛情の伝え方の間違いに気づいた娘の言葉」とか「モラハラをする背景とモラハラ夫・父が変わるために最も大切なこと~99%離婚 離婚した毒父は変われるか」で書いたように,私の人生って本当に親の言動で影響をされてきたんだな・・・と改めて思った。
親からされたことは「愛情」と受け取りやすくて,それがいいものとして無条件に子どもにもしてしまいがち・・
以前だったら,多くの家で当たり前のようになされた「しつけ」としての言動は,許されないものが多い。
今は明確に法律上「子の人格を尊重するとともに,子の年齢及び発達の程度に配慮しなければならず,かつ,体罰等の,子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないものとする(民法821条)」とされ、子どもを一人の人間として人格を尊重することや「体罰」を「しつけ」名目でしてはいけないことも明示されている。
・・それはなぜかと言えば,そのやり方は,やっぱり「子育て」の方法として,そして「子どもの人権」という意味でも,よくなかったということが分かってきているから。
それでは,今の考え方で良いと思われている「子育て」って何なのだろう?
子どもとあまり上手くいっていない,と感じる親が子と良い関係になるにはどうしたらいいのか?
これから子育てをする親は,どんな間違いを避けるべきなのか?最悪の間違いは何なのか?
子どもにとって,こんな親であってほしい,という理想的な親としての関わり方は?
私が思ったことを3つ,お伝えします。
1 議論の仕方
ある調査で10代の子供達とその親を対象に,「両親の仲がうまくいってることは,子どもが幸せに育つために最も重要な要素の一つである」という記述に同意するかしないかを尋ねたところ,10代の子どもの70%はこれに同意すると答えたが,親の同意は33%にとどまった。
親が思っている以上に,夫婦の仲が良いことは子との関係に影響する。
だから,夫婦喧嘩の場面,意見が異な部場面でどう振る舞うのか,「議論の仕方」は大事。
よくある失敗しがちなやりとりとして例示があった。
妻:「困るのはね,皿を洗わないで置いておくと汚れが固まって落ちづらくなること。だからすぐにやって」
夫:「日中は貯めておいて,一度にまとめてやったほうがうまく時間が使えるから。」
妻:「汚れた皿を放置するのは不衛生でしょう。」
夫:「洗ってしまえばバクテリアなんて全部死ぬでしょ。」
妻:「汚れた皿にハエがたかるから」
夫:「今は冬だからハエなんかいないよ」
これをファクトテニス(テニスをするときの撃合い)と表現してしています。
そうではなくて,「攻撃や非難」ではなく,その問題についてあなたがどう感じているかを話すことから始めることが大事。
妻:「朝皿洗いをしてから出かけたのに,帰ってきたときにまた皿が汚れているのを見るとうんざりする。自分で使ったものは,昼間のうちに洗っておいてもらえると本当に嬉しいんだけど」
夫:「あーごめん。うんざりさせたいわけじゃないんだ。今日はすごくたくさんやることがあって。帰宅してこんな家の中は見たくないよね。」
妻:「そうか,あなた忙しいものね。気にしないで。じゃあ,洗ってくれたら私が拭くから。」
議論して上手くいくことが多いのは,「あなた」を主語にするのではなく,「私」を主語にした場合。
例えば相手がスマートフォンをいじっていて,話を聞いてくれないと感じるとき,「スマートフォンをいじっているとき,あなたはいつも私のことを無視するんだから」ではなく,「スマートフォンをいじっていて,何か言っても答えてもらえないと私は傷つく」のように言う方が良い。
以前何かの話で,相手に「不満」を伝える際には,「you」メッセージではなく,「I」メッセージで伝えた方が良いと聞いたのを思い出した。
「あなた」が悪い,と言われると言われた方は攻撃されたようで反発したくなるけれど,「私」は悲しく感じる,と言われると,落ち着いて話が聞ける。
改めて「議論の仕方」を意識するのは大事だな・・と思った。
みなさんは,夫婦で意見が違った場合,相手にやって欲しいことがある場合など,どのように解決していますか?
2 感情に向き合う
どんな「感情も受け入れる」ことが大事と分かるエピソード(事例)の紹介があった。
2019年出版の「ランとタンポポ」
著者のドクター・トム・ボイスは,サンフランシスコ地震が起こったときのことを記している。
震災後,地震の絵を書くように依頼した時,一部の子は明るい楽しそうな災害の絵を描いた。
ほかの子は絵の中に苦しみを込め,地震の悲惨な様子を描いた。
その後,どちらのグループの子どもがより健康的だったか?
地震について,楽しそうな絵を書いた子どもたちには不安や家事,死,災難を表現した子どもたちよりも呼吸器系の病気が長く続く傾向があった。
物語や芸術の創造を通じて内面を表現するのは,大昔からの人間の特徴であり,私たちに恐怖をもたらす物事を支配する方法の一つなのだと述べられている。
つらく苦しい感情も,「表現する」ことによって恐怖が減る。
私たちが辛いのを我慢しながら,悲しみを表現するのは,表現するたびに悲しみが小さくなるから。
免疫システムが「感情に向き合う」ことがで作動する。
しんどい気持ちや,苦しい思いを子が言葉や絵で表現されると,それを見聞きする側,親は心配になったりする。
でも,ありのままの「感情」をどんな「感情」であっても,表現できることは,心身の回復のために重要なのだなと改めて思った。
「暗い話は止めて」「そんなマイナスなこと言わないで」などと言って,感情を表現することをやめさせたり,過度に心配して「大丈夫かしら」と親の心配を伝えたりすることで,子どもが感情を表現しづらくしてしまうのは,避けた方がいい。
どんな感情も表現できるのは,親に対して,どんな表現をしても「安心」「安全」だと感じているからだろうな・・と思う。
だから,「こわれた関係のなおし方~人間関係を修復できれば,あなたはもっと楽になれる(イルセ・サン著)」にも記載したけれど,離婚手続きをするときに,子どもたちが不安に感じて親に激しい言葉をかけたりすることもあったりして,親としては戸惑ってしまうこともあるけれど,子どもが全く何も言わず,明るくしているよりも,苦しい気持ちもありのまま表現できていることの方が大切で,親も安心していい。
子から爆発するような激しい怒りや,悲しみを表現されると,親としても避けたい・・・と感じることもあると思うけれど,自分(親)が攻撃されているわけじゃない,子どもが乗り越えていくために「感情に向き合う」ことをしているんだと思って,受け止めるだけでいい。「そうだよね,つらいよね」と。そして,寄り添って一緒にいてあげる。
成長するにつれて・・感情表現もそのまま特に「怒り」を示してしまうと,相手方との関係が悪くなってしまうことを学び,表現の仕方,議論の仕方を学んでいくのだと思うから,感情を見聞きすることで,こちらもしんどいなと感じるときは,「I」メッセージで「私は自分が攻撃されているように感じて,辛く思ってしまいます」というように,感情は出してもいい,ただ伝え方,出す場所や方法には意識しようね,ということを徐々に伝えて行けばいいのかなと思った。
みなさんは,お子さんがつらく苦しい感情を表現したとき,どのように対応していますか?
また,ご自身がつらく苦しいとき,どのように対応していますか?
3 影響を受け入れる
「人間関係において一番ストレスがたまるのは,自分が相手に何の影響を与えられない時」
「何を言っても何をしても相手に聞き入れてもらえないと,私たちは望みをなくし.孤立した気分になり,反抗的にさえな」る。
「だから,親が子どもからの影響を受け入れることは重要」
「相手の影響を受けるとどうなるかという見本を示すことにもなり,子どももあなたからの影響を受け入れやすくな」る。
夫婦として一緒にいるとき,相手が「すべて自分が正しい」と思っていて,何を言っても受け入れてもらえなかったら,自分って居る意味あるのかな・・と自分の存在意義さえ疑う。
「どうせ,何を言っても聞いてくれない」と思うと,話す気力もなくなって,この人と一緒にいる意味はないのでは・・と感じて離婚を考え始める。
これは「モラハラ」と言われるケースでよくあること。
夫婦関係よりも,さらに子どもとの関係では,親は,子どもよりも自分の方が人生でよく経験しているから,「正しい」生き方を指導できると思いがち。
そのために,一方的に「こうすべき」と親から子の方へ「影響」を与えようとしてしまう。
でも,そうではなくて,子の方から影響を受けることの方がずっと,親子関係を上手くいかせるには大事なのだと改めて思った。
「私の人生を変えた息子の言葉」「愛情の伝え方の間違いに気づいた娘の言葉」で書いたけれど,子どもたちって,考えてみたら,私たち親とは異なる本当にすごい発想を持っている。
そして,その「子どもからの影響」を受け入れたら,私自身もとても幸せな気持ちになって,子どもとの関係もすごくよくなった。
そもそも「生き方」「子育ての在り方」って,私自身が間違って学んでしまってきたことだって多い。
それは結局多くは関わった大人たち,特に自分の親の「価値観」から影響されてしまっている。
親が生きてきた当時は,「正しい」と考えられていた「子育て」の方法だったかもしれないけれど,冒頭や「やってあげると子が自立できない?後悔しないために知って欲しいこと~親野智可等先生講演会」で書いたように,今では許されないもの,良くないとわかってきているのも実は沢山ある。
無理やり親の「正しい」と思うことを押し付けて「影響」を与えようとするよりも,こちらが「子どもからの影響」を受け入れて,より子どもにとっていい方向に変化することが,本当に必要な時に,自分だけで決めずに人の意見を聞くことの効果を知ることにつながり,親のことも信頼してくれて,「親の意見も聞いてみようかな?」と思ってもらえるんだな・・と思った。
みなさんは,子どもさんから,どんな影響を受けていますか?
まとめ 子どもとの関係を宝物に
ひと言でいうと,「子どもとの関係を宝物のように大切にする」ということが大事。
「安全で,愛情に満ち,頼りになり,受け入れてもらえる親子関係がほかの何より必要」
これは,「ご存知のとおり」と言われる。
でも・・・まだまだ意外と「ご存じ」ではなくて,「やってあげると子が自立できない?後悔しないために知って欲しいこと~親野智可等先生講演会」で書いたように「きちんと指導」「しっかりしつけ」が何よりも大事と思われているのではないかな・・と自分も含めて思う。
この子が将来困らないように「きちんと」育てなければいけない,という気持ちが強すぎて,その結果親子関係を破壊してしまいがち。
そのために,「安全で安心できる」「親子関係」を破壊してしまうことこそが,「最悪の間違い」かなと思った。
子の「おむつが取れない」と,他の子はもうおむつが取れているのに・・と他の子どもと比べて不安に思う。
そういう「しつけ」が出来ない親,「子育てが下手な親」と思われるのではないか,自分自身の評価も気になってしまう。私自身がそうだった。
私自身も,「箸の持ち方」を厳しく父親に指導されて・・上手く持てないと,「ピシッ」と手を叩かれていたのを今でも覚えている。
嫌だったけど,そのおかげで「上手く箸が持てるようになった」と思い込んでいた部分もあったけど・・これは今の「子育て」では許されないと言わざるを得ない。
娘に「(叩かれたから上手く箸を持てるようになった)なんて,そんなことない」「私はそんなことされてないけど,ちゃんと箸を持てる」と言われて,確かにと思う。
焦らなくても,いつかは,おむつだって取れる,んだよね。
子どもたちが大きくなってきた今なら冷静に思える。
現在の子育てで大事なのって,子どもから「私のお母さん,お父さんなら安心して何でも言える,困ったとき頼りになる,どんな自分でも受け入れてくれる」と思ってもらえる親になること。
そのために,どんなことを親がしたらいいのか,何をしてはいけないのか・・これからも私自身が学び続けて,伝えていきたいなと思います。
その他に,子どもとの関係をよいものとするために何をしたらいいのか,どんなことはしてはいけないのか,
この本には,具体例でイメージしやすいように書かれていますので,本も是非読んで欲しいと思います。
うちに相談に来て下さる依頼者の方々のため,そして自分自身の子ども達,家族,友人のため,弁護士として,母として,幸せに生きるための方法,考えていきたいと思います。
また,研究発表,致しますね!
それでは,
このブログを読んで下さった皆さまにとって,人間関係を構築するためのヒント,親子関係,夫,妻や子との関係を在り方を良いものとしていきたいと考えている方のヒントとなりますように。
今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!