多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

やってあげると子が自立できない?後悔しないために知って欲しいこと~親野智可等先生講演会

やってあげると子が自立できない?後悔しないために知って欲しいこと~親野智可等先生講演会

何でもやってあげると,子どもは自立できなくなる!
だから,親に頼らずに,自分で出来ることはさせなきゃ。
親だって,病気になったりするから,そういうときに子ども本人が困るから,自分でやれるようにならなきゃダメだと思う。

これは,つい先日,私の夫が私の娘(高校生)と私に言った言葉。
娘が遠方で大学の試験を受けるのだけれど,一人で行くのは心配。だから,親についてきて欲しい。
でも,私も夫も外出予定の行事が入っていて,ついていくなら,どちらかが予定を調整するしかない。

・・でも,私は方向音痴。ついていくのはいいのだけれど,全く知らない場所で安心して案内するのは,はっきり言って自信がない(笑)
だから,「地図の読める」安心できる父親,頼りになる夫に出来れば娘について行って欲しい。

私:「お母さんがついていってもいいのだけれど,お父さんの方が安心だろうから,お父さんに頼んだら?」
娘:「でも,お父さんは,そもそもついていく必要があるの?自分で行け,って言われそうで言えない」
私:「そっか,じゃあ,お母さんから言ってみるね」

という経過で,私か夫に頼んでみたところ,言われた言葉が冒頭の言葉でした。
私:「そうは言っても,子供が不安な時,サポートを求めているときは,してあげることが安心につながるから,お願いしたい」

これを聞いて,娘は目に涙を浮かべ・・・
「お母さんが言ってくれなかったら,お父さん大嫌い,っていうところだった」と教えてくれた。

親として,子供に自立して欲しい,そのためには,自分で出来るようになって欲しい・・・それは確かに「正しい」「正論」な気もする。
でも,これでは,私が子どもだったら,親を頼れなくなってしまうと思う。信頼を失ってしまう・・

どうしたら,夫にも分かってもらえるのだろう。
それとも,私が思っていることは,子どもの自立という意味では,やっぱりよくないのだろうか・・?

そんな時ちょうど,申し込んでいた「子どもの権利条例制定20周年記念 多治見市こどもの権利セミナー」で聞いたお話,長年の教師経験を持ち,「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣,「ドラゴン桜」わが子の「東大合格力」を引き出す7つの親力など,多くの著書をもつ親野智可等先生の講演「子どもの人権を守るために大人にできること~身近なところがおろそかになっていませんか」でお話を聞いて,とってもスッキリ悩みが解決されましたのでお伝えします♪

親がいろいろやってあげると,子どもは自立できないのか?
子どもが不安そうで,困っていても,頑張ればやれるはず!と思ったら,させた方がいいのか?

お話を聞いて,注意しなければいけないと思ったよくある子育ての誤解,「やってあげると子どもは自立が出来ないのか」という不安をスッキリ解消できた3つの理由をお伝えします。

1 やってあげると自立が出来ないというのは罪深い迷信

先生が紹介されたエピソード。
NHKの番組で内田伸子先生の研究を紹介してくださった。

とある幼稚園の年少の2クラスを1年間研究観察した。
1組の先生は,子どもがボタンをはめられないときははめてあげ,靴下を履けないときは履かせてあげるなど,何でも優しく手伝ってあげていた。
2組の先生は,困っている子がいても「幼稚園生なのだから,自分のことは自分でやりましょう」と言うだけで,決して手伝ったりやってあげたりはしなかった。

では,1年後,自分たちで自立して出来るようになっていたのはどちらのクラスだったのか・・・?
それは,手伝ったりやってあげたりする1組の子どもたちのほうが,自立度合いが上がって自分で着替えたり靴下が履けたりできるようになったのです!

2つのクラスの子どもたちは,最初は同じ程度の自立度合いだったけれど,1年経つとはっきりした違いが出たとのこと。
反対に,2組の子どもたちには,1年経っても「自分から着替えよう」という自主的な行動はあまり見られなかった。

つまり,世間で言われていることと正反対の結果が出た。

この実験は,年少期の子ども達に関するものだけれど,小学校,中学校などの他の年齢の子ども達でも同様の結果が出ていることは,世界の心理学研究からはっきりしているとのこと。

わお!そうなんだ。
これで,データ,実験結果という客観的なものからも,「やってあげて大丈夫」「それこそが,自立を育てる」と,自信を持って夫に話せる。

先生のレジュメに書かれていた「やってあげると自立が出来ないというのは罪深い迷信」という言葉。
本当にそう・・・沢山の大人が今でもそう思っているんじゃないかな。「3歳児神話」などもそうですが,昔はこれが正しい,と考えられていた教育方法もどんどん「迷信」だったことが分かって,変わってきているんだな,と思った。

これまで信じてきた子育てはこうあるべき,迷信って知っていましたか?

2 嫌いな人のために頑張れない・好きな人のために頑張る

でも,自分でやらせないと,いつまでも自分で出来るようにならないのでは?なぜ,手伝ったり,やってあげた方が自立するのか,納得できない・・・
なぜそうなるのかと不思議に思う人も多いと思います♪

この点も,先生のお話を聞いて,とてもスッキリしました。

それは,私なりの理解で,ひと言で言えば,「子どもは好きな人のためにしか頑張れない」

1組の子どもたちは,困っていたら助けてくれる,優しい先生のことを信頼していて大好き。
その大好きな先生に,自分が靴下を履けるカッコイイ姿を見てもらいたい,先生の期待に応えたいという強い気持ちを持っている。

でも,最初は,能力が伴わないのでうまくいかない,そういうときも先生はガミガミ叱ったりしないで,優しく手伝ってくれたり履かせてくれたりする。
そういう子どもたちは先生のことがますます大好きになり,ますます期待に応えたくなってがんばる。
こういう積み重ねで,1年も経つと大きく成長する・・・

なるほど!と思いました。
確かに娘は,父から冒頭の言葉を聞いたとき「嫌い」と思った,と私に打ち明けてくれた。

嫌いな人の言うことって・・・大人でもやっぱり聞きたくない。
その人のために頑張ろうなんて・・・思えない。

本当は,自立して欲しい,頑張って欲しい,っていう親の「愛情」からの言葉のはずなのに・・
それは伝わらずに,嫌われてしまった上に,自立して欲しい,という願いとは,全く反対の方向に行ってしまうとしたら・・思いもよらない悲しいこと。

娘は,本当に頑張ってる。私は働く母だから,正直,娘の受験に関することとか,あまり調べてあげられてない。
だから,基本的なことは全部自分で娘が調べてる。

それでも不安なことだけを・・・仕事もあって忙しいだろうと思いつつ,恐る恐るサポートして欲しい,って私たち親にお願いしたんだ。
だから,私も親としてそのサポートをしたいと思った。

私も大学生になってからでも,司法試験の勉強,口述試験の勉強のために,毎日のように電話をかけて,付き合ってくれた母親に勇気づけられたから。
お母さんから愛されているって分かって・・・勇気が出て,もっと,頑張ろうと思えたから。

自分の発する言葉は,子供に好きになってもらえそうな言葉ですか?

3 人が困っていたら助ける優しい人になる

さらに,先生が言われたこの言葉。

自分が出来ないとき,一人では難しいと思ったときに人に助けてもらった人は,将来困っている人がいたら助けようと思う,優しい人になる,ということ。

あ・・・これこそ,まさに,私が子どもになって欲しい理想的な姿だな,と思った。

自分が出来ることが増えた方がいい・・・確かにそれはそうだし,親としてはそれを望んでしまう。

でも,どこまでいっても,大人になっても,人って一人で全部のことは完ぺきにできないんじゃないかな・・
少なくとも私は方向音痴であり(しつこい,笑),出来ることなら旅行に行くときとか行事に行くときとか,方向感覚に自身がある人が調べてくれてついていくだけだったらいいな・・と今でも思います。

お仕事だって,他の人にとっては難しいことが得意な人,専門的なスキルを持つ人がいるから代わりに出来たり,サポート出来たりして成り立っている。
私の弁護士,という仕事も改めてそうだな・・と思う。

一方で,本当に苦手なことだってめっちゃ多い私。
自転車だって,実は,大人になってから練習して乗れるようになったところで,あんまり今でも交通量の多いところで乗る自信はない・・・テヘ。

自分が困っているときに代わりにやってもらったり,助けてもらったりすると,安心して,嬉しい!を実感できるから,自分も人に対して,そうしようと思う。
それは,確かに,と思った。

反対に,いつも,自分で頑張れ,と言われ,苦手なこともなんとか自分でやらなきゃ,なんで私は他の人のように出来ないんだ・・って責めながら,乗り越えてきた人は,自分に対しても厳しい分,人に対しても,頑張ればできるはずだから,頑張れよ,と厳しく突き放しがちになりそう。
でも,そういう人の近くにいるのはしんどいから・・・人間関係をうまく構築するのは難しくなって,人が離れていってしまいそう・・

誰でも得意なことと不得意なこと,出来ることと出来ないことがあって,それでいいんだ,助け合っていけばいいんだ,と思える方が,優しくて温かい人に囲まれる,と思った。

子どもが自分でやりたい!と思っているときに,手出しをして,どんどん親の都合で決めてしまう,進めてしまう・・というのは,自立を妨げることにはなるんだと思うけれど,それとは違って,子供がサポートを求めるとき,不安を伝えてくれているときは,自信を持って手伝っていいんだ!と思った。
これでまた一つ,夫にサポートして大丈夫なんだよ!その方が優しくて周りにも愛される子に育つんだってよ!って自信もって伝えられる♪

みなさんは,子どもさんがどんな大人になって欲しいと思いますか?どうしたら,そうなってくれそうですか?

まとめ 思い込みと勘違いこそ親子関係破壊の原因

先生のレジュメに書いてあった言葉・・

親の「思い込みと勘違いこそが,親子の人間関係を崩壊させる最大の原因」
「親子関係が崩壊すると,しつけや教育どころでは」ない。
「子どもの人格形成にも影響し」,「親子で長い間苦しむことにもな」る。
「でも,親にはそれが見えてい」ない。

実際の事例として60歳の男性の話も紹介されていた。
「世間に後ろ指をさされないきちんとした人間にしたい。大人になって本人が恥ずかしい思いをしないようにしっかりしつけたい」そういう気持ちがあったとのこと。
それで,ちいさいときから「また,○○してない。なんで○○しないんだ」と息子を毎日叱って育てた。
好き嫌いをなくそうと毎日嫌いなものを食卓に出して無理やり食べさせたり,正直な人間に育てたくて,ちょっとでも嘘をつくと徹底的に追究して叱った。
使ったものを片付けてないと,作りかけのプラモデルや遊び途中のボードゲームを庭に捨てた。

・・その後,息子は父親のことが大嫌いで,父親から離れたい一心で遠くの大学に進学して,そのままそちらで就職。
結婚後も,父親がいない日を母親に教えてもらって家に帰り,父親とは何年も会っていない。両親ともに自分の住所は知らせていない。

父親は,「叱りすぎた。もう一度息子がゼロ歳のときからやり直せたら」と嘆いているとのこと・・

「この子のため」「しつけのため」が,親の思い込みと勘違いで,子供との人間関係を破壊させてしまうことが少なくない・・・

私は弁護士として,離婚後の面会交流が上手く行かない事例なども見ているけれど・・・この点での「思い込みと勘違い」のために関係が悪化してしまっていることが原因なのではないかな,と思える事例も少ないな・・と改めて思った。

まだ整理しきれていないかもだけれど・・・

私が娘とのやり取りで感じたことは,自分が子どもだったら,という思い。
子どもだったら,どうして欲しいと思うのか,どうしてもらったら安心できたのか,親の愛情を感じられたのか・・・という気持ち。

大人になると,自分が子どもの頃にどうして欲しかったのか・・・忘れてしまうこともあると思うし,特に厳しく育てられた場合には,自分の子どもにもそれを求めてしまうこともあるのかな,と思った。

でも,あれ,この言葉って,この行動って,子どもだったらどう思うんだろう?
こういう発言をする,こういう行動をする相手のこと,自分なら好きになれそうかな・・?と考えてみることが出来たら,視点が変わるかな,と思う。

男性(父親)の場合には,職場で上司から,サポートを求められた時に同じような言葉(自分でやれよ!とか)が言えるのか・・と考えてみたとき,それは言えないな・・と思ったら,子どもだから言っていいと思っていないのか,親だから許されると思っていないのか,振り返ってみるきっかけになるんじゃないかな,と思った。

私自身も,自分が育ってきた教育が正しい,とやっぱり思ってしまうことはあるので・・・
「思い込みや勘違い」がないか,学びを続けながら,いつも気をつけていきたい,と改めて思いました!
子育ての思い込みや勘違いに気づかせてくれる親野智可等先生のお話,お勧めです♪

この話も伝えて,夫も納得して,娘に付き添ってくれることになり,みんな安心できそうです。両親共々娘に嫌われなくて良かったです♪
夫は,この点で,自分が思う「正しい」の意見を伝えることはあっても,それに固執続けることはなく,冷静に,穏やかに,そして柔軟に私や子供たちの意見,気持ちも大切にしてくれるところがありがたいです。大好きです(テヘ)

これからも,うちに相談に来て下さる依頼者の方々のため,そして自分自身の子ども達,家族,友人,仲間のため,弁護士として,母として,子どもも,女性も男性も魅力的に生き,仲間との良い関係も築いていけるための方法,学んでいきたいと思います。

また,引き続き,研究発表,致します!

それでは,

このブログを読んで下さった子育て中のお父さん,お母さんが,「やってあげると自立が出来ない」という迷信から離れて自信をもって子育てをするためのヒントになりますように。
また,子どもさんと大人になってからも長期的に良い関係を築いていくためのヒントになりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!