多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

インターネットによる著作権侵害をやめさせるには?裁判所での削除仮処分

インターネットによる著作権侵害をやめさせるには?裁判所での削除仮処分

いつも読んでいただき,ありがとうございます。
今回は,引続き,私自身の著作権を侵害する文章が掲載されたことによって,私が実際に行っている(かなり実践的な,笑)法的手続きから,身近にあって知らないうちに侵害してしまいがちな「著作権」が侵害された場合に出来ること,特にインターネット上で侵害行為が行われている場合に侵害をやめさせるために出来ることについて,お伝えしたいと思います。

知らなかった・・・と言っても,

著作権を侵害すれば,訴えられて,損害賠償請求をされることがあることは,
想定外の損害賠償も~ダウンロードするデジタル「著作物」の注意点,
刑事処罰されることがあることは,
著作権とは?著作権侵害による犯罪行為・刑事処罰

で以前お伝えしました。

インターネット上の誰かが管理するサイトで著作物を無断公開されてしまう場合には,短期間で多数の人に閲覧されることになり,その侵害速度の速さや侵害される範囲の大きさなどから,早期の侵害防止措置が必要になるところです。

一方で,誰かのHPなどのサイトで,著作権侵害行為が分かったとしても,インターネットのサイトは,匿名でも作ることが出来るため,被害者にとって,加害者であるサイト管理者の特定は困難です。

このような場合,著作権侵害行為をとめるためにインターネットの記事を削除,閲覧不可能とするためにはどうしたらいいのでしょうか?

今回私が私の代理人弁護士に依頼して行っていること,削除等の仮処分が認められた経緯についてご紹介することで,同じような被害に遭われた方が参考にしていただけたらと思います。

インターネットによる著作権侵害行為をとめたい場合,どんな方法があるの?
最も効果的な著作権侵害行為防止措置は何?
実際にやってみて分かった避けて欲しい私の失敗談

3つ,お伝えします。

1 レンタルサーバー会社への削除請求

インターネットを使った侵害行為の防止,という観点から,著作権侵害行為をしているサイト管理者だけでなく,そのようなことをレンタルサーバーを利用させることによって可能にしているレンタルサーバー会社にも,「条理上」(≒信義則上)当該侵害行為をしている記事の削除,閲覧不可能とする措置を取るように著作権者は法的に請求することができます。

一方で,インターネットで何かを掲載することは,その人の行為として守らなければならない部分もあるので,誰かから削除請求をされたからと言って,全てレンタルサーバー会社が削除することは認められません。

そのため,このようなトラブルを調整するために「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称:プロバイダ責任制限法)が出来,レンタルサーバー会社などを「プロバイダ等」として,分かりやすく,削除の根拠となる権利毎に分類して,どんな権利の侵害を理由とする削除請求については,どのように行動すべきか,行動基準をガイドラインとして定めています▼

http://www.isplaw.jp/

著作権関係のガイラインもここに定められているので,この手続きに従って対応することを,レンタルサーバー会社も求められることになります。

そのため,私も当初は,この手続きを利用して,レンタル―サーバー会社(仮にG社とします)に対して,当該著作権侵害をしているページについて削除請求をしました。
その際,G社は,削除請求できるインターネットフォームにを設置していましたので,そのフォームを利用て削除請求をしました。

ところが…G社は私の有料著作物が違法アップロードされた状態を放置し続け,何ら対応をしなかったのです。

G社は大手上場企業ですし,著作権侵害行為は明らかでしたから,インターネット削除請求を専門にされている他の弁護士さんが書かれている本によれば,「削除に要する期間は1日から1週間」とされていたので,これを待っていたのですが…全く削除されることはありませんでした。

なので,少なくとも私のケースの場合には,この手続きでは速やかに削除されませんでしたから,次の措置を取りました。

みなさんも,このフォームで削除請求すれば,削除してもらえる…と安易に考えると失敗しますので,注意しましょう。

2 著作権侵害による刑事告訴

実は,1のレンタルサーバーへの削除請求をする以前に私は,著作権侵害を理由に刑事処罰を求めるため,サイト管理者(犯人は不明で告訴しましたが,便宜上,この方をM氏と言います)に対し,刑事告訴をしていました。

このとき,M氏の犯罪を刑事事件として立件,処罰するには,M氏のサイトが設置できるようにサーバーをレンタルしているG社から,M氏の違法アップロードについて,正確,客観的な情報を得る必要があります。

そのため,警察としては,G社にその情報を提供するように依頼をしてくれていますが,未だに私が知る限りではG社は警察に情報提供していないようです。

記事の削除の問題と,犯罪としての処罰の問題は別ではありますが,警察からG社に問い合わせがいけば,速やかに削除対応しなければいけないことはG社にも明確に分かるでしょうし,速やかに捜査が進んで,M氏本人への聴取も始まれば,犯罪行為である著作権侵害行為も止まるだろう,と私は考えていました。

しかし,G社の捜査協力がないままでは捜査を進めて行くことが難しいようで,これによって,M氏による私の著作権侵害行為は次々に増えていきました…

犯罪被害の拡大防止に協力しないG社に私は今とても驚いており,このような状況が続くと,多くの人のインターネット上での著作権侵害行為が放置されてしまうことが恐ろしい,と思いました。

こちらは現在も捜査継続中ですが,インターネットによる犯罪では,こういったレンタルサーバー会社の協力もないと捜査が進んでいかないことを初めて知りました。

みなさんも,刑事告訴するだけでは,速やかに,著作権侵害行為は止められないようですので,注意しましょう。

3 裁判所での削除仮処分

1,2では著作権侵害行為となる文書等が削除がされませんでしたので,遅くなりましたが,行ったのが,冒頭の写真の裁判所に対する削除等の仮処分です。

今回は,私の著作物である説得力アップブックの説明として作成した文書,メールマガジン,裁判所に提出するための主張書面案がいずれも,著作権者である私に無断で掲載されているところ,加害者であるサイト管理者が特定できていなかったため,レンタルサーバー管理者に対して,記事の削除または閲覧不可能とする措置を求めたものになります。

少しでも早く決定をしてもらわなければ侵害行為による被害が続いていますので,早期の判断として仮に判断してもらうために「仮処分」となっています。

いずれも,裁判所は,前記私の文書が,著作物として,著作権保護の対象となることを明確に認めて下さり,決定をしてくれました。

これにより,レンタルサーバー会社は,当該著作権侵害をしているページについて,削除等によって,他者から閲覧を不可能とする措置を取らなければいけないことになります。

しかしながら,この処分が出たことを私の代理人弁護士からG社の代理人に伝え,実際にG社の代理人もこの仮処分決定を受け取ったにもかかわらず,未だに削除等の閲覧不可能とする措置をする対応をされていません…

このままの状況が続けば,裁判所の命令違反になりますから,間接強制などの強制執行(削除しないのであれば,金銭を支払わなければならない)によりG社に対して強制力を持った責任追及をすることになります。

今でもまだ,削除はされていませんが,裁判所の決定を得ることで,やっと著作権侵害の被害者は,強制力を持って相手に削除請求していくことが出来るようになります。

なので,振り返ってみると,1,2の手続きをしてただただ待っているのではなく,速やかに強制力のある裁判所への請求をしなければいけなかったことが分かります。

みなさんも,著作権侵害による削除請求をしたい場合には,直接レンタルサーバー会社への削除請求や警察への刑事告訴だけでなく,この裁判所への仮処分を速やかにされることをお勧めします。

まとめ 最後はサイト管理者本人への請求

今回,私自身の経験を通じて,著作権侵害による被害回復の手続きの選択,進め方には注意が必要なことを改めて実感しています。

レンタルサーバー会社に対して削除請求は認められましたが,サイト管理者が回避する方法はありえますから,そういう行動をとって,裁判所の命令に従わない加害者であれば,この方法だけでは解決することは出来ません。

そうすると,最後は,サイト管理者である加害者本人を特定し,本人に対して損害賠償請求,削除請求をしていくしかないでしょう。

メルマガ読者さんの中には,今私がどのような状況なのだろう…と心配してくださっている方も多いですし,
著作権侵害行為をされる,知らないうちに著作権侵害をしてしまう,ということは,今の世の中であれば,多くの方が経験し得ることでしょうから,
今後の私自身の著作権侵害行為に対する回復措置の行動経過と注意点,著作権侵害をした人に発生する責任などについては,順次お伝えできればと思います。

裁判所の命令も聞かずに,違法行為を続けるサイト管理者は,私の弁護士業務に対する業務妨害とも言えますから,この点については,別途警察にも相談しようと思っています。

今回,ふと頭をよぎったのは,私の大好きな斎藤一人さんのお言葉「昔,火縄銃。今マシンガン」です。
一人さんは,YouTubeで誰もが情報発信できる今の状況を,ポジティブな意味で,誰でも威力のあるマシンガンを手に出来る時代,という意味で伝えて下さっています。私もその恩恵を受けていますし,本当にその意味で,今はいい時代だな,と思います。

しかし,一方で,「インターネット」という情報発信と拡大に物凄く威力のある,危険なマシンガンを誰でも簡単に持ててしまう時代。
使う人が悪い人であれば,何千倍もの被害があっという間に生じてしまう時代だなあ…と今改めて思っています。

だから,マシンガンというある意味では危険な道具を与えているレンタルサーバー会社は,お金をもらってそれを与えている以上,自分が与えたマシンガンで他人の権利の侵害を拡大させていないのかについて常に注視し,適切に管理することで,与えた人物が危険人物と分かったら,直ぐに回収して欲しい,それが,誰もが安心してインターネットの環境を利用できるために,レンタルサーバー会社に求められる責任だと私は思っています。

しかしながら,それが,速やかになされないことに,本当に忸怩たる思いがあります…

今私がしているのは,現在は「著作権侵害」に関するものですが,インターネットによる名誉棄損行為,誹謗中傷行為による被害も甚大です。これによって,自殺者が出てしまったたことも,まだそんなに遠くない過去にあったことです。

少し前には,氷川きよしさんも,ネットの誹謗中傷について法的措置を検討するという記事もありましたが,芸能人のみならず,学校におけるいじめなど,一般の他の方,子どもたちにも同様のことが起こりうると思うと,本当に恐ろしいことだなと思います。

自分自身の経験を通じて思うのは,こうしたインターネットという道具が使われた被害については,その拡大スピードと範囲の拡大が著しい一方,速やかな被害回復,被害防止までの時間や手間(弁護士に依頼すれば,もちろん弁護士費用も)がかかりすぎるので,もう少し,今の時代にあった,速やかで軽い手続きで回復できるよう,法的に整備していって欲しいと思うところです。

まずは私自身は…
今の制度で法的に出来ることを淡々とやっていきたいと思います。

これからも,自分自身の経験,失敗談も通じながら,
身近だけれど,弁護士として,注意して欲しい点を伝えていきたいと思います。

今回,犯罪被害者となる体験までし・・・
そして,犯罪被害者に対して,こんな対応ありなの?と憤慨するようなこともあったけれど・・・

それでも,弁護士,裁判所,警察官に守られつつ,根気強く,明るく立ち直っていく姿を見せられたらいいな,と思っています~

法律は,あなたの権利を守るために作られているものですから,
あなたの権利が侵害されて困ったとき,本当に怖いと感じるときは,自分だけで立ち向かわないで大丈夫です。
専門家である弁護士や警察官を頼ってくださいね。

それでは,
このブログを読んで下さった音楽,絵画,写真,書籍など誰かの「創作的」な表現を楽しんでいる方が,その作ってくれた方の権利を侵害しないように注意し,間違っても犯罪行為をしたり,犯罪行為に加担してしまったり,損害賠償請求などに巻き込まれないようにするためのヒントとなりますように。

そして,万一,自分の著作権が侵害されてしまった場合には,失敗せず,速やかに回復できるための手続きの選択の参考になりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!