多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

著作権とは?著作権侵害による犯罪行為・刑事処罰

著作権とは?著作権侵害による犯罪行為・刑事処罰

いつも読んでいただき,ありがとうございます。
今回は,私自身の経験から,身近にあって知らないうちに侵害してしまいがちな「著作権」について,
注意が必要だと感じましたので,再度お伝えしたいと思います。

知らなかった・・・と言っても,
著作権を侵害すれば,訴えられて,損害賠償請求をされることがあることは,
想定外の損害賠償も~ダウンロードするデジタル「著作物」の注意点で以前お伝えしました。

PDFなどの形式でダウンロードして利用することが当たり前になってきた「デジタルコンテンツ」
楽曲,歌,音声,映像のダウンロード。写真データ。電子書籍。

インターネット経由で配信されるメールマガジンも,著作物として,著作権保護の対象となります。

インターネットの普及によって,個人でも,自分の著作物を公表することが簡単に出来るようになっており,とても便利な世の中になっていると思います。
しかし,一方で,インターネットの普及により,著作物の侵害をすること,その損害も,短時間で大きなものとなり,問題化しています。

そのため,著作権侵害は,民事的な損害賠償義務を負うだけでなく,刑事処罰の対象,つまり「犯罪行為」になります。

今回は,どのような著作権法違反をすると,処罰対象となるの?
刑罰を受ける場合には,どのような刑を受けることになるの?
そもそも,著作権法で保護されている著作物って何?

3つ,お伝えします。

1 著作権・著作物とは

著作権とは,著作権法により認められた権利で,著作物を独占,排他的に利用して利益を受ける権利です。

そして,「著作物」とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであつて,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」です(同法2条1号)

ちょっと分かりづらいので,子どもにもわかりやすく解説している「みんなのための著作権教室」の定義によると,「自分の考えや気持ちを他人の作品のまねでなく自分で工夫して,言葉や文字,形や色,音楽(作詞・作曲)というかたちで表現したもの」ということになります。

私が関係しているもので言いますと,PDFなどの形式でダウンロードして利用することが出来るアドバイスブックなどの「デジタルコンテンツ」
YouTube配信している動画(音声,映像)のダウンロード。写真データ。電子書籍。
このブログの記事やホームページの記事,メルマガで記載している文章。

全てが他人の作品のまねでなく自分で工夫して「言葉」や「音声」「映像」で表現しているので,私自身の「著作物」で,著作者である私の権利の保護対象,ということになります。

2 著作物侵害による刑事処罰

最近は著作権法に関する改正が続いていますが,これは,デジタル化・ネットワーク化による侵害の被害が拡大していることに大きな理由があります。

文化庁によると,「デジタル化・ネットワーク化といった急速な技術革新の進展の中で,大量かつ高品質の著作物のコピーが容易に作成され,流通することにより,権利侵害の機会と規模が増大しています。
また,知的財産の保護を強化し,政府全体で取組んでいる知的財産立国の実現を目指すため,平成18年通常国会における法改正により,特許法等の産業財産権法における罰則が強化され」た,としています。

著作権法の改正により,刑事処罰の法定刑もこれに伴って引き上げられています。

現在の「著作権・出版権・著作隣接権の侵害」違反による刑事処罰の法定刑は,

10年以下の懲役
1,000万円以下の罰金(両方科される場合もある)です(著作権法119条1項)

私自身で言いますと,kindle本として,電子書籍を出版していますので,これをプリントアウトしたり,
キャプチャーなどをして,データとして販売すれば,「譲渡権」「複製権」の侵害になり,この刑事処罰の対象になります。

アドバイスブック,メルマガ,ホームページ,ブログの無断転載,無断アップロードなども著作権法認められている例外を除いて,この刑事処罰の対象になります。
販売して利益を得ている場合だけではなく,無料で提供,掲載した場合であっても,刑事処罰の対象行為になります。

ブログやメールマガジン,ホームページの記載を,自分が公表しているホームページにそのまま貼り付けること(表現の内容に一切手を加えないいわゆるデッドコピー)も,もちろんこの刑事処罰の対象行為です。

これらは,著作権法上,著作者(≒製作者)が権利を保持している著作物の「譲渡権」「複製権」を侵害するからです。

また,著作物をホームページにアップロードする行為は,「公衆送信権」の侵害にもなります。
「公衆送信権」とは,インターネットなどによる著作物の送信に関する権利です。

ホームページに著作物をのせて,だれかからアクセスがあれば,いつでも送信できる状態にすること自体で権利侵害になります。
アクセスがあれば実際に著作物の送信を行うことももちろん,この公衆送信権侵害ですが,実際の送信の有無にかかわらず,送信可能になった時点で権利侵害となるので,その点も注意が必要です。

言葉,音声,だけでなく,撮影された写真も著作物の対象です。
写真家の方もこの権利侵害について指摘していますので,▼改めて注意してもらえたらと思います。

Q:公衆送信権とはどんな権利ですか?

 

3 ダウンロード行為の処罰対象化
(著作権法119 条第3項第2号等)

2で記載したような,違法なアップロード・送信と知ってダウンロードする行為は,平成21年改正により違法となり,平成24年には刑事処罰の対象となりました。

違法な音楽配信サイト,ファイル共有サービスなどの増加などによって,アップロードをする側(送信する側)のみを処罰対象として規制するだけでは,著作権の侵害を抑止出来ないと考えられたためです。

著作者でないものが著作者に無断で掲載,アップロードしている著作物の場合,それが違法な行為であることは,容易に分かりますから,「違法なアップロードとは知りませんでした」ということは簡単には通らないので,気をつけましょう。

もっとも,いわゆる「海賊版」と知らずにダウンロードするような場合もあるため,処罰範囲が広がりすぎないよう,例外規定も整理されました。

例えば,

漫画の1コマ~数コマなど,軽微なダウンロード
二次創作・パロディーのダウンロード
権利者の利益を不当に害しない「特別な事情」がある場合

にあてはまる場合には,例外的に処罰対象とならないよう配慮されています。
但し,これらも「例外規定」となるので,違法な著作物を入手することは避けましょう。

この場合は,直接著作権侵害をしている著作物を送信する側よりは悪質性は低いので,
正規版が有償で提供されている著作物の海賊版を反復・継続してダウンロードした場合,権利者が告訴すれば,
2年以下の懲役・200万円以下の罰金として,刑事処罰される可能性があることになります。

また,令和2年に新設された著作権侵害として,「リーチサイト規制」もあります。
これは違法コンテンツへのリンクを掲載するサイトも著作権侵害と見なすという規定で,「リンクは著作物そのものではない」とする法の抜け穴を埋めたことになります。
つまり,自分自身のサイトでは,直接著作権侵害行為をしていなくても,著作権侵害行為をしているページのリンクを貼る人も,著作権侵害となり,処罰対象となります。

侵害コンテンツへのリンク情報等を集約してユーザーを侵害コンテンツに誘導する「リーチサイト」や「リーチアプリ」を規制するものになります。

具体的には,悪質なリーチサイト・リーチアプリを「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するもの」及び「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるもの」として規定した上で,リーチサイト運営行為及びリーチアプリ提供行為を刑事罰(5年以下の懲役等:親告罪)の対象とするとともに,リーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツへのリンク等を提供する行為を,著作権等を侵害する行為とみなし,民事措置及び刑事罰(3年以下の懲役等:親告罪)の対象としています。

これにより,Twitter,Facebook,Instagram,LINE等のSNSでリンク先に誘導する投稿も,悪質なものは著作権違法として,処罰対象になり得るようになりました。
処罰対象でなくとも,著作権侵害をしているページについてリンクを貼って拡散をすれば,それによって,著作者の著作権が侵害されることを知って違法行為をしたことになりますから,不法行為として損害賠償請求の対象にはなるでしょう。

まとめ 著作権侵害の被害は拡大している

今回,私自身の経験を通じて,著作権侵害による損害の拡大がものすごいスピードでなされることを実感した。
著作権侵害については,刑事告訴をしたので,あとは警察官の捜査にゆだねることになります。

民事の損害賠償請求については,さすがに自分自身のことを自分でするのはしんどいので,
他の依頼者の方々を支援するエネルギーを保ち続けるために,弁護士さんに別途依頼しました。

警察官が「しっかり捜査します」と言って,くれたとき・・・
弁護士が,私がやります,と言ってくれたとき・・

誰かが自分のことを守ってくれていると思えて・・・

心から安心した。

私も,誰かのためにそう思ってもらえるような弁護士でありたい。

…全然別の話になるけど,他の弁護士さんが作った研修資料を使いたくて,
「この研修資料,他の研修資料として私が研修する際に使ってもいいですか?」と気楽に聞いてみたところ,
「勘弁してほしい」「○○の研修用のものだから自分の一存で決められない」と言われた。

…そりゃそうですね。一生懸命時間をかけて作られたものですから。本当にすみません。
それぐらい,著作物を作るのって大変だし,熱意込めて作ってるから・・・法律が守ってくれる。

ふと,私の電子書籍をとても分析的に評価してくれて,めっちゃ嬉しい評価をしている方を見つけた。
内容としては,「ネタバレ」要素もあるけれど,全文を掲載しているわけではないし,なにせ,著者が喜ぶコメントだから・・・・私が著作権侵害などというわけはない。

以前も,書きましたが,究極的に考えると,著作権者がその行為を嬉しく思うか,嬉しく思わないか,
で考えれば,刑事告訴をされてしまう,損害賠償請求をされてしまうような失敗をする,というようなこと,
その判断をあまり間違えることは無いのかな,と思っています。

本の内容すべてをそのままコピペするようなブログやYouTubeは,
著作権者の本を買ってくれる人を減らしてしまうから,著作権者は喜ばないでしょう・・・

でも,うまく一部を引用して,紹介し,結果として本の購入者が増えるのであれば,
著作権者は嬉しいことが多いと思います。

この場合,もし,形式的には著作権法上違法となるとしても,
著作権者が喜ぶのであれば,訴えられる,ということは無いと思います。

なので,誰かが作った「著作物」を自分が譲渡していいのか,
複製していいのか?と迷ったら,まず,その行為によって,
著作権者(≒製作者)がどのように感じるのだろう?ということを意識してもらえるといいかなと思います。

それは,販売している方式(公に販売しているものか,限られた人にだけ販売しているのか),その内容,販売価格などによっても,著作者がどのようなことを考え,どのようなことは嫌なのか,想像することはできるのではないかと思います。

そして,その態様,侵害行為の目的などよって,刑事処罰の重さも損害賠償請求される金額も変わってくると思います。
注意した上で行うことがご自身を守るためにも重要になります~

これからも,自分自身の経験も通じながら,
身近だけれど,弁護士として,注意して欲しい点を伝えていきたいと思います。

今回,犯罪被害者となる体験までしたけれど・・・
それでも,弁護士さんや警察官に守られつつ,ふわふわ~と
明るく立ち直っていく姿を見せられたらいいな,と思っています~

法律は,あなたの権利を守るために作られているものですから,
あなたの権利が侵害されて困ったとき,本当に怖いと感じるときは,自分だけで立ち向かわないで大丈夫です。
専門家である弁護士や警察官を頼ってくださいね。

それでは,
このブログを読んで下さった音楽,絵画,写真,書籍など誰かの「創作的」な表現を楽しんでいる方が,その作ってくれた方の権利を侵害しないように注意し,
間違っても犯罪行為をしたり,犯罪行為に加担してしまったり,損害賠償請求などに巻き込まれないようにするためのヒントとなりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!