多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

良心をもたない人への対処法~モラハラ・精神的虐待をする相手にしてはいけないこと

良心をもたない人への対処法~モラハラ・精神的虐待をする相手にしてはいけないこと

いつも読んでいただき,ありがとうございます。
今回は,私が書いた電子書籍「離婚調停は話し方で変わる」を読んで下さった読者の方が,ご自身がモラハラ夫から逃げて離婚が出来るまでに読んだ沢山の本から,モラハラ夫・DV夫との親権争いに役立つ本 3選の中から選んでいらっしゃった本「良心をもたない人たちへの対処法(マーサ・スタウト著)」から,モラハラを受けているケースでの親権争い,面会交流での有効な対処法です。

弁護士をしていて,ご相談,ご依頼を受けていると,時々,本当にこのような親と面会させて,子どもの利益になるのだろうか?大丈夫なのだろうか?と懸念することがあります。
それは,相手から精神的な虐待≒モラハラ,を受けたと言われるケースです。

この本では,著者が心理学者として,ソシオパシー(反社会性パーソナリティ障害)の研究を続け,この素質を持つ「ソシオパス」≒良心をもたない人のせいで心に傷を負った被害者の治療に携わり,沢山の体験談を知る中で,こういう人たちへの対処法をまとめくださっています。
著書の中で,ソシオパスは,「怒りや混乱や恐怖をあおることで,他者を支配している実感を得ようと躍起になっている」「他者に対する愛着や良心の欠落」のために「相手の心に深刻な傷を負わせながら」「やましさを全く感じていない」という特徴がある,と説明されています。

特に,問題となるものの一つとして,「法廷のソシオパス~親権をめぐる戦い」として,親権争いでの有効な対処法がとりあげられています。
「子どもの幸せが最優先されてしかるべき親権争いの場で,相手を支配しようとする」ソシオパス。
この中では,親権だけでなく,別居親と子どもの交流である面会交流の問題や対処法についても,参考になることが多く書かれており,具体例を通じて,ソシオパスと子どもとの接触は避けるべきことが分かります。

モラハラをした,と言われている方の全てがソシオパスに該当するわけではないですし,過去にモラハラをしていたことに気付いて言動に気をつけていらっしゃる方に弁護士として関わらせていただいますので,全ての「モラハラ」を原因とする離婚で,子との接触を避けるべき,ということではないと思います。

しかし,この本を読んでいると,私の体験,「モラハラ」について書かれた書籍を読んでも,「モラハラ」をする方には,「支配」「心に深刻な傷を負わせる」など,ソシオパスと共通する特徴があることが多い,と思いました。
そのために,この本がモラハラ夫から逃げて離婚された方が読んでみて,役に立つ,と言われているのも納得できるところです。

以前に「子どもの脳を傷つける親の行動,発達を促す親の行動」でも書きましたが,
「モラハラ」によって,子どもの脳などに与える影響はとても大きいにもかかわらず,目に見えづらいために軽視されていることが気になっていました。

そのために,身体的な暴力に比べて,精神的な暴力であるモラハラでは,モラハラをしていた親の面会交流を制限する必要性があることを裁判所に理解してもらうのは難しい。

しかし,この本を読んで,裁判所に理解してもらうのは難しいから,と諦めて,本来は面会交流を制限すべき場合に面会交流を実施してしまうと,
本当に子どもにとっては過酷な事態が生じてしまうことが,とても重みをもって伝わってきました。

とても,とても難しいけれど,子どもを守るためには,裁判所に勇気をもって伝えていかないといけない場合がある,裁判所にも是非,面会交流を避けるべき場合もある,ということ見抜いて,判断して欲しい,と改めて思いました。

私自身も,面会交流に関わって,ソシオパスの行動と一致する激しい攻撃を受けて,実感していることもありますので,その体験も踏まえて,対処法と注意点をお伝えします。

相手が精神的虐待(モラハラ)している場合で,面会交流をすると,子どもにどのような問題が生じているのか?
相手がモラハラをしてくるケースでは,離婚を進めるにあたって,親権,面会交流でどのような注意をすべきか?
相手がモラハラをしてくるケースでは,どのような対応を絶対避けるべきなのか?

気づいたことを3つ,お伝えします。

1 精神的な配慮が出来ない親との接触の危険性

両親が自分が小さいころに離婚し,共同親権(海外で言う共同親権は,日本で今言われているものとは違う意味ですが,これはまた改めてお伝えしたいと思います)のため,週末ごとに父の家で過ごしていたけれど,29歳になって,高校入学直後に,父の支配から逃れ,かなりの年月が経った。
しかし,未だに父の影響に苦しんでいる,と述べる子供の声の紹介があります。

今でも素直に人を信じることが出来ない,うつ病を抱え,不安障害の発作にも見舞われている。

「もしも誰かが父の行為をとめてくれていたら,今の自分はどんな自分になっていただろう。そもそもどうして父のような人間が子供に近づくことが許されているのだろう」

…これを読んで,とても重い言葉だと思いました。

この事案は,子への性的虐待もあった事案なので,純粋なモラハラ事案とは違いますが,子や配偶者など,自分自身以外の人間が精神的に苦しむことに配慮できない親,良心をもたない親,
と言える点では共通していると思います。もし,弁護士,裁判所,など関わる人の誰かがそれが見抜けて,この子との接触を避けられていたなら…と思いました。

…なぜ,このようなことが起きてしまうか,について,著者は,「ソシオパス」は,容易に周囲に溶け込むことができ,面談したカウンセラーなども見抜けないことによって,
子供を守りたいと心から願っているにもかかわらず,結果として,虐待する側を守ることに力を貸してしまっている,としています。

事例を読んでいると,ソシオパスの話術は,とても優れていて,見抜けず,騙されてしまう様子が分かります…

どうしたらこれを防げるか…

とても難しいと思うのですが,面会交流することが本当に不適切な場合があり得るということ,人の苦しみ,心の傷を与えることに躊躇がない人である場合,このようなとても重大な悪影響が子どもにも生じることを意識して,本当に面会交流など,そのような性質の人との接触をさせても良いのか,ということを弁護士も,子どもを主に監護する同居親も,調停委員,調査官,裁判所も丁寧に,真剣に考えていかなければいけない,と思いました。

面会交流は,円滑になされるのであれば,子どもの利益になる,と言われているところですが…
そうではない,面会交流を実施することが,子に深刻な悪影響を与えてしまう事案があるのを知っていますか?

2 精神的な虐待による接触・面会交流制限の難しさ

この本を読んで知ったのは,やはり,海外でも,「精神的な虐待」,モラハラによる接触制限(面会交流の制限)をするのは,困難であるという事実。

紹介されている事案では,身体的虐待や性的な虐待がなく,精神的な虐待を理由に相手と子との接触を拒むのは根拠として十分でなかった,と説明されています。

15歳になる長女は,ソーシャルワーカーが娘本人の意志を優先して,面会をしなくてよくなったけれど,9歳の次女,12歳の長男は幼い,と判断され,自分で決められないとされ,
面会が許された。

その結果,面会を続けていた二人のストレスは高まり,次女は拒食症で入院,長男はまともに眠らず,ひきこもってしまった。

離婚後3年たって,長女はまずまず順調だけれど,次女の体重は安定せず,摂食障害の治療を受けている。
長男は,夜も眠らずにテレビゲームをして,学校の成績もひどくなる一方。

日本でも,15歳を一つの目途として,子どもの意思を重視するところがありますが,やはり,改めて年齢がそれよりも低くても,子どもの意思の尊重という視点は大切であること,
また,意思の表明が出来ない場合,不十分な場合であっても,相手方が「精神的虐待」をする人である場合には,やはりこれを軽視してはいけない,
そのことによる子供の心身への悪影響は大きい,と改めて思いました。

なので‥

私はこれからも,精神的虐待による子への影響について,いつも意識して親権,面会交流が争われている事案では対応していきたいなと思っています。
つらい思いをするのは子どもさんだから。

分かりづらいとは思うし,なぜかこの話をすると,別居親の方,団体で激しく非難する方もいるのですが…

ネット世界特有の匿名でのあまりの激しい言動に,それ自体,他者である私への攻撃によって私が受ける心の傷,精神的苦しみに配慮をしない方,
非難して侮辱的な言葉を並べることで,怒りや恐怖を感じさせ,思い通りに意見を変えさせるよう,私を支配しようとしている方,なのかなと思えます。

実際に,この本にも書かれていますが,攻撃対象を苦しめるためなら,違法行為,犯罪行為を厭わない方もいるので,攻撃をうまくかわしつつ,諦めず,淡々と冷静に精神的な虐待≒モラハラが与える影響の深さを伝え続けていきたいと思います。

精神的な虐待による面会交流の制限は難しい,と感じていませんか?
実際に難しいのですが…,一緒にお子さんを守るために出来ること,学んでいきませんか?

3 反応を示さない

ずっと,思ってきた面会交流をすることは,どんな場合でも,絶対にいいことなのか,という疑問。
確かに,円滑で子どもも気を遣わない面会交流が出来るのであれば,面会交流をしない場合よりも「子の利益」になる。

でも,ただ,面会交流はすべきですよ,というだけではやっぱりうまくいかなくて,ただただ面会交流をすべきというような原則「面会交流実施論」的な運用は,日本でも見直されている(面会交流調停事件の新たな運営モデル(東京家庭裁判所面会交流プロジェクトチーム))

私自身も,攻撃的で違法行為を厭わないような親との面会が本当に子にとっていいのか…ずっと疑問もあり,相談や依頼事件を進めて行く中で,面会交流を制限すべき場合には,しっかりと,「話し方」を工夫して調停委員や裁判所に分かってもらう必要が,「子の利益」のためにどうしてもある,と思いました。

それで,面会交流を制限すべき場合もあって,それを本当に必要としているケースがあるという思いから話し方のアドバイスブックを作ったのだけれど,それを知った一部の人たちから激しい攻撃を受けた。

この本では,ネット世界でのソシオパスの行動についても触れているけれど,まさにこの方々の攻撃方法は,それだった。

その後,この本を読んで初期対応に失敗した,と気づいたことがあった。
それは…相手が喜ぶ「反応を示して」しまったということ。

最初の激しい非難にあったときに,「私自身が人から責められるという経験をし,とても,とてもつらい思いをした」「そのことを考えると,笑えなくなり,子どもの前でも涙が自然と流れてしまったりして」などと不用意に書いたことで,相手は,それをネット上に掲載し,更に攻撃を激しくした。

これは本当に対応として間違いらしい…

ソシオパスに「怒ったり,混乱したり,傷ついたりした姿を不用意に見せ,相手の支配欲を満たすような反応を示してはいけない」

この本には「ソシオパスと戦うための10のガイドライン」が記載されているのだけれど,そのガイドライン⑤に記載がある。
相手に「望みのものを与えてはならない」。

これに反した行動を私がしてしまったことで,相手の支配欲が満たされて喜び,更に攻撃を激化した可能性があることに気づきました。
振返って思い出すと,確かにモラハラ「離れたくても離れられないあの人からの攻撃がなくなる本」でも,「無表情」「穏やか」「感情の起伏がない」対応が大事,「相手の攻撃意欲を徐々に萎えさせる」が大事と書かれていたのに…!

…ということなので,他にも対応方法でこの本に書かれている重要なことはあるのだけれど,相手がモラハラの方のケース,ソシオパスの傾向があるケースでは,相手が喜ぶような反応を見せることは避けましょう。

相手からの激しい攻撃,本当につらいですよね…感情を押し殺すのもしんどいことだと思います。
けれど,私自身に向けてのアドバイスでもありますが,相手の前だけでも,なんとか冷静に対応していきましょうね!

まとめ 正しき側に立つ自信で辛抱強く・理性的に

自分自身の体験も通じて思うのは,本当にモラハラをする人,ソシオパスからは,逃げられるなら逃げていい,ということです。

しかし,この本のガイドラインにも書かれていますが,「自分は正しき側に立ち,最後まで戦いぬく決意を固める」ことが大事とのことなので,離婚や親権を決める場面,面会交流の調整をする場面では,逃げるだけでは解決できないこともありますから,私のように,弁護士や警察官の力を得ながら,冷静に,しなやかなに,しぶとく,戦っていきましょう。

私自身も,離婚調停は話合いの場なので,戦うのではなく,話し合って解決することをお勧めしていて,そのための方法も伝えているところですが,
ソシオパスのように,どこまでも分かり合えない…それでは解決できない相手方がいるのを改めて今実感しています!
話合いで無理な場合は,裁判所で戦って解決するためにサポートするのが弁護士ですから,感情的にはならず,理性的に辛抱強く,そして明るく,希望をもって,戦い抜こうと思います。

繰り返しになりますが,モラハラの場合,逃げた方がいい,離れた方がいい,と周りの人に言われても動けないときもある。
でも,私は,本当に必要なタイミングが来れば・・・動き出す勇気は人から言われなくても,自分自身の内側から出てくるものだと,思っています。
他の方が乗り越えてきた道のりを参考に,今頑張っていることを認めながら,一緒に自信を持って歩いていきましょう。

ご紹介した本では,「ソシオパスと戦うための10のガイドライン」があって,精神的な苦痛を与えてくる人が相手の場合に,十分に知った上で対応した方がいいことがたくさん書いてあるので,読んでいただくと良いと思います。

具体的な対処法も記載されていますので,私のように失敗しないよう,読んで対処していただけたらと思います。
お勧めです。

これからも,うちに相談に来て下さる依頼者の方々のため,
そして自分自身の子ども達,家族,友人のため,弁護士として,
母として,母子ともに「幸せに生きるための方法」学んでいきたいと思います。

引き続き,研究報告,活動発表,致します!

それでは,
このブログを読んで下さったモラハラを受けていると感じている方,相手の精神的にダメージを与える攻撃がつらい,と感じている方が,今の辛い状況を抜け出すためのヒントとなりますように。
そして,家族,友人などで,「モラハラ」を受けて,辛い思いをしていたり,自信を無くしてしまっていそうな方が周りにいらっしゃる方が,その方をサポートするためのヒントとなりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!