多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

ネット上に写真を投稿する際の注意~肖像権侵害とは

ネット上に写真を投稿する際の注意~肖像権侵害とは

いつも読んでいただき,ありがとうございます。
今回は,私自身の経験から,意外と知られていない「肖像権」について,
注意が必要だと感じましたので,お伝えしたいと思います。

誰かの写真を利用した場合に問題となる肖像権。知らなかった・・・と言っても,
肖像権を侵害すれば,訴えられて,損害賠償請求をされることも・・・

今回私自身の事案で肖像権侵害が認められ,損害賠償請求が認められましたので,
ご紹介しながら,どんな場合に「肖像権」侵害となってしまうのか?についてお話します。

肖像権って,そもそも何?
肖像権侵害になるのは,どのような場合?
肖像権侵害による損害賠償金額は?

3つ,お伝えします。

1 肖像権とは

肖像権とは,一般的には「承諾なしに自分の容貌や姿態を撮影されたり,撮影された写真を無断で公表・利用されたりしない権利」です。
肖像は,個人の人格の象徴であるため,人格権に由来するものとして,自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない権利だけではなく,これをみだりに「利用」されない権利も含みます。

そのため,容ぼうを撮影した写真が既に公表されている場合であっても,無断で「利用」することは肖像権侵害になりうるので注意が必要です。
典型的には,例えば,芸能人の方の顔写真と別の人の裸の写真を合成するような場合になりますが・・・
今回の私の事案も,既に公表されている写真データを利用し,合成した写真でしたが,その肖像を利用された私の承諾を得るものでなく,違法行為と認定されたことになります。

また,「著作権とは?著作権侵害による犯罪行為・刑事処罰」でもお伝えしていますが,写真の無断利用は,著作権侵害にも該当しますので,注意が必要です。

撮影したアイドルなどの写真,勝手にSNS投稿してもいいと思っていませんか?
公表されている写真を,勝手に自分のために利用してもいいと思っていませんか?

2 肖像権侵害の判断基準

肖像権侵害に該当するかどうか,について,判例では,「被撮影者の社会的地位,撮影された活動内容,撮影場所,撮影目的,撮影態様,撮影の必要性などを総合的に考慮し,人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えているかを判断して決めるべき」とされています。

今回の私の事案も,この基準に基づいて判断されましたが,やはり,他の人との写真を合成していた,という点,その合成の必要性がない点やその合成写真の与える印象の悪質性から,社会生活上受任すべき限度を超えている,と判断されたものと思います。

しかし,合成していない写真であっても,撮影した写真や画像を家族や友達などに見せる程度の場合と比べて,不特定多数の人が閲覧できるSNSやインターネット掲示板などに掲載されている場合は,拡散性が高いと判断されて肖像権侵害が認められる可能性が高くなるので注意しましょう。

どのような場合に肖像権侵害になるのか,知っていましたか?
特に,SNSやインターネット上に無断で人の容ぼうを撮影した写真を載せるのは違法になりやすいこと,知っていましたか?

3 損害賠償金額

今回の私の事案では,肖像権侵害による慰謝料請求について,20万円が認められ,合成された人の肖像権侵害についても,別途20万円が認められました。(行為時から支払うまで年3%の遅延損害金も別途発生します)
肖像権侵害による,精神的苦痛に関する慰謝料としての損害賠償金は,10~50万円程度が多いとされていますが,女優さんの合成写真の場合では,一人80万円の慰謝料が認められているものもあります。

また,芸能人の場合,パブリシティ権侵害による財産的な損害賠償金が請求され,この場合には,数100万円を越える損害賠償金が認められ,1000万円としたものなどもありますので,注意しましょう。

有名人の写真(肖像)などは,それ自体が売られることがあることからも分かりますが,それ自体に商品価値があります。
そこで法的に「パブリシティ権」として認められています。
そのため,無断で有名人の写真を商用利用するとパブリシティ権の侵害となり,差止請求や損害賠償請求が認められますので注意しましょう。
「商用利用」とは,例えば,有名人の写真を勝手に販売することだけでなく,自分のHPに無断で利用することによって,注意を惹きつけるような行為も「有名人の肖像が有するファンを惹きつける力の利用を目的とする場合」として,当たり得ますので,注意しましょう。

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まとめ 肖像権者が嬉しいか,嬉しくないか

すべての権利侵害の判断の基本は,権利を有する方がその行為を嬉しいと感じるか,嬉しくないと感じるか,と考えると判断を間違えにくいと思います。
合成写真などは,それが特別に肖像権を有する人の価値を上げるような合成写真でない限り,基本的には嫌だと感じるものでしょうから,肖像権侵害になりやすいでしょう。

合成していないそのままの写真であっても,プライベートの写真などを無断で撮影して,インターネット上に公開するなどの行為も通常は嫌ですから,肖像権侵害になりやすいでしょう。

芸能人などの有名人に関しては,肖像そのものが大事な商品ですから,これを無断で利用されること自体が通常は嫌でしょう。
時々講演会やイベントなどで芸能人の方ご自身が,写真撮影,SNS投稿大丈夫です,と言われることがありますが,このような明確な「承諾」がない限り,肖像権侵害になり得ますから,注意しましょう。このような承諾がある場合であっても,有料での写真販売や,自分自身の販売ページなどに商品の広告として利用するなどは承諾の範囲外になり得ますから,避けるべきでしょう。

なので,これは「肖像権侵害になるのか」と迷ったら,まず,その行為によって,肖像権者がどのように感じるのだろう?ということを意識してもらえるといいかなと思います。

私の場合も,今回の私の写真はYouTubeで話をしている場面を切り取って他の人の写真と合成したもので,全く私の意図していない形で,その利用者が自分のページに惹きつけるために利用されたことでしたから,とても憤りと精神的苦痛を感じたため,訴えたものになります。
(現在はすでに合成写真は掲示されていませんが…別の問題が生じていますので,その点はまた別の機会にご報告します~)

これからも,自分自身の経験も通じながら,
身近だけれど,弁護士として,注意して欲しい点を伝えていきたいと思います。

法律も,元々は誰かの権利を守るために作られているものですから,
どんなことをされたら嫌なのかな・・・困るのかな・・と考えていくと,その解釈は弁護士という法律の専門職でなくとも,大まかには予測できる,ということも面白い点だと私は思っているので,引き続き,分かりやすく伝えていきたいな,と思っています!

それでは,
このブログを読んで下さった方が,安易に誰かの肖像権の侵害をしないように注意し,損害賠償請求などに巻き込まれないようにするためのヒントとなりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!