多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

想定外の損害賠償も~ダウンロードするデジタル「著作物」の注意点

想定外の損害賠償も~ダウンロードするデジタル「著作物」の注意点

いつも読んでいただき,ありがとうございます。
今回は,私自身の経験から,身近にあって知らないうちに侵害してしまいがちな「著作権」について,
注意が必要だと感じましたので,お伝えしたいと思います。

知らなかった・・・と言っても,
著作権を侵害すれば,訴えられて,損害賠償請求をされることも・・・

PDFなどの形式でダウンロードして利用することが当たり前になってきた「デジタルコンテンツ」
楽曲,歌,音声,映像のダウンロード。写真データ。電子書籍。

従来の,手に取って触れる「物」に関する著作権とは違う意識が必要です。

これらのデータ,自分が購入したら,勝手に売っていいの?
「中古の本」「CDやDVD」「写真集」だって,必要なくなったら売れるのだから,
メルカリで売っていいのでは?

知らないまま著作権侵害してしまった場合,損害賠償請求で支払わないといけない金額はどうなる?

3つ,お伝えします。

1 ダウンロード著作物全体の注意点

PDFなどの形式でダウンロードして利用することが当たり前になってきた「デジタルコンテンツ」
楽曲,歌,音声,映像のダウンロード。写真データ。電子書籍。

結論から言いますと・・・
これらは,基本的に不要になったからと言って,
勝手に購入者が売却(譲渡)することはできません。

著作権法上,著作者(≒製作者)が権利を保持している著作物の「譲渡権」「複製権」を侵害するからです。

え,でも,中古の本やCD,DVDは自由に販売できるよね?
なぜ,ダウンロードされる形式の場合はダメなの?
(と,お思いでしょうか?)

それは,これらの中古の本などの再販売が許されているのは,著作権法上の例外規定があるからなのですが,
ダウンロード形式の著作物は,これらの例外規定が適用されないからです。

もう少し私なりに解釈すると・・
「紙媒体の本」「CD」「DVD」であれば,「そのもの」を売却すれば,手元にはその商品(著作物)は無くなりますが,ダウンロード形式の著作物の場合,誰かにそれを売却(譲渡)しても,手元にそのダウンロードデータが残ります。

なので,これを許せばドンドン複製可能になり,著作権者の権利の侵害程度が許容範囲を越えるからだと思います。

例えば倉木麻衣さんのような(特別な意味はありませんが,私が好きだから挙げました,笑)有名歌手の音楽データを有料購入してダウンロードをしたのち,その音声データを勝手に売ったらいけない,というのは何となく感覚として分かる人も多いと思うのですが・・

有名人でない方による写真や「文字」によるデジタルコンテンツの場合,段々とその認識が薄くなるのを実感します。しかし,有名人かどうかに関わりなく,「著作物」は保護されますので,注意が必要です。

例えば,今は,ホームページやチラシなどに使うために写真データを有料購入したりすることもあると思いますが,写真家でない素人の方の作品であったとしても,それを使わなくなったからと言って,勝手に売ってはいけません!

電子書籍の場合,製作者である著作権者(製作者)から,販売会社が著作権の譲渡を受けていることが一般的ですが,(Amazonの電子書籍をイメージしてもらえたらと思います)電子書籍の購入者が,その電子書籍を勝手に売ってはいけません。
(kindleの場合,データを譲渡しただけでは読めなくなっていると思いますが)。

こちらにも記載がありますので,▼改めて注意してもらえたらと思います。

https://www.seshop.com/help/detail/h346

ダウンロードによる著作物,同じように中古販売できると思っていませんか?
あなたの身近には,どんなダウンロード型の著作物がありそうですか?

2 私に起こったこと(言語の著作物侵害)

私自身もkindle本として,電子書籍を出版していますので,これをプリントアウトしたり,
キャプチャーなどをして,データとして販売すれば,「譲渡権」「複製権」の侵害になります。

そして,最近驚いたことが・・・
私が「kindle本」の形ではなく,作成しているアドバイスブックのダウンロードデータが「メルカリ」で売られていたこと!

音声,写真よりも「本」の形態に近いので,中古の本の販売と同じ感覚で
著作権侵害の認識が薄くなってしまうのでしょうが・・・違法です。

メルカリさんにもその旨連絡しましたが・・・
今のところ,同様の販売がされています。
(見つけた場合には,悪気はない方も多いと思いますから,皆さんも忠告していただけるとありがたいです)

私のアドバイスブックを購入してくださった方ということになると思いますので,お客さんとしてありがたいのですが・・・この点は注意していただきたいな,と思いました。

メルカリさんでは,やはり同様の問題があって,損害賠償請求をされたり,
退会などの対応されたりもしているようです▼

https://www.mercari.com/jp/box/q2e66aec1b5104c04/

ご本人は,もしかしたら,購入したデータそのものを譲渡しているつもりなのかもしれないのですが,
これはダウンロードをして閲覧する形式であるので,その時点で元のデータとは違って「複製」されます。
そして,それを自分で使用する目的でなく,売却により,「譲渡」すれば,「譲渡権」の侵害になるのです。

メルカリの場合,プリントアウトして,譲渡する形式になりますから,もちろん「複製権」「譲渡権」侵害になります。

ダウンロードによるデータ販売の違法性を考えたことありますか?
音声,写真(画像)データと同じように,言語による著作物も,複製,譲渡は違法になるって知っていましたか?

3 損害賠償金額

著作権法侵害をしたうえで,利益を得ると,これによって得た利益は,著作権者の損害として推定されますので,
その売却金相当額は少なくとも損害として著作権者から請求されます(著作権法114条2項)。

さらに,著作権を侵害する販売方法により,著作権者が自分で売ったなら,受け取れるはずの金額(定価の金額)を受け取ることが出来なかったと言い得るので,著作権侵害によって売った販売金額よりも定価による販売金額の方が高い場合には,定価を基にした販売金額が損害金として請求されえます。

なので,手にしたお金以上の損害賠償金を支払わないといけない場合が一般的になりますから,注意が必要です。

私自身も今回とても驚いたのですが・・・

以前は,購入者が直接他の消費者の方に「売る」という方法が限られていたため,あまり問題にならなかったと思いますが,「メルカリ」さんの様に便利なサービスができてきたために,このような問題が顕在化したのだと思います。

普段は事業をしていない方であっても,何かを売る,とするのであれば,「知らなかった」ではすまないので,
やはり,ご自身で,事業主と同じように販売にあたって順守すべき法律を守り,思わぬ責任を負わないよう意識することが重要です。

こっちはあまり考えられないと思いますが・・・
例えば私が書いた訴状,調停申立書の「書面」を複製して売る,というのももちろん著作権法違反です(笑)
無償(タダ)で渡す場合にも,「譲渡権」侵害になりますから,注意しましょう。

このように,特に注意をされていなくとも,ダウンロードの方式による著作物の複製,販売は違法になりますが,
私自身も,今後誤解があることが分かったダウンロードの方式による著作物について販売する際には,複製,譲渡が著作権侵害になることを改めて伝えていこうと思います。

最近は,動画などをDVDなどに収録せずに,ネットを通じてダウンロードしたり,閲覧する方式が一般的になっています。
学習教材についても,今後はこのような形式での教材提供がますます進んで行くでしょう。
しかし,これらのデータ(デジタルコンテンツ)についても,もちろん,勝手に誰かに販売してはいけないので,注意が必要になります。

誰かが作った著作物を,譲渡,複製するときには,著作権侵害にならないか,
注意が必要なことを知っていましたか?
特に,言語による著作物は,知らずに著作権侵害をしてしまいがちなので,注意が必要なことを知っていますか?

まとめ 著作権者が嬉しいか,嬉しくないか

私自身も,他の方が書いた本の内容をブログでご紹介したり,YouTubeなどでもご紹介していますし,
芸能人を始めとして,今は多くの方がこのようなことをしています。

もちろん,その紹介は「著作権」侵害にならないかどうかを意識しながら,
行っていることになると思いますが・・・

究極的に考えると,著作権者がその行為を嬉しく思うか,嬉しく思わないか,
で考えれば,損害賠償請求をされてしまうような失敗をする,というようなこと,
その判断をあまり間違えることは無いのかな,と思っています。

本の内容すべてをそのままコピペするようなブログやYouTubeは,
著作権者の本を買ってくれる人を減らしてしまうから,著作権者は喜ばないでしょう・・・

でも,うまく一部を引用して,紹介し,結果として本の購入者が増えるのであれば,
著作権者は嬉しいことが多いと思います。

この場合,もし,形式的には著作権法上違法となるとしても,
著作権者が喜ぶのであれば,訴えられる,ということは無いと思います。

なので,誰かが作った「著作物」を自分が譲渡していいのか,
複製していいのか?と迷ったら,まず,その行為によって,
著作権者(≒製作者)がどのように感じるのだろう?ということを意識してもらえるといいかなと思います。

それは,販売している方式(公に販売しているものか,限られた人にだけ販売しているのか),その内容,販売価格などによっても,著作者がどのようなことを考え,どのようなことは嫌なのか,想像することはできるのではないかと思います。

私の場合も,今回のアドバイスブックは,しっかりと私との信頼関係を持ってくださった方,
その使い方もしっかり学んでくださっていると思える方だけに向けて
ご案内していたアドバイスブックであったため,特に,このような形で販売されていることに驚き,残念に思いました。

一方で商品の流通が阻害される,という部分もあって,紙媒体による書籍やCDなどの中古品販売は著作権法上の例外として譲渡することが認められています。

なので,著作権者はもしかしたら嫌がるかも・・と思われる場合には,それでも例外的に許される規定があるのか,注意した上で行うことがご自身を守るためにも重要になります~

これからも,自分自身の経験も通じながら,
身近だけれど,弁護士として,注意して欲しい点を伝えていきたいと思います。

法律も,元々は誰かの権利を守るために作られているものですから,
どんなことをされたら嫌なのかな・・・困るのかな・・と考えていくと,その解釈は弁護士という法律の専門職でなくとも,大まかには予測できる,ということも面白い点だと私は思っているので,引き続き,分かりやすく伝えていきたいな,と思っています!

それでは,
このブログを読んで下さった音楽,絵画,写真,書籍など誰かの「創作的」な表現を楽しんでいる方が,その作ってくれた方の権利を侵害しないように注意し,損害賠償請求などに巻き込まれないようにするためのヒントとなりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!