多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

モラハラ夫から逃げるために取得すべき3つのもの~モラニゲ・モラハラ夫から逃げた妻たち

モラハラ夫から逃げるために取得すべき3つのもの~モラニゲ・モラハラ夫から逃げた妻たち

いつも読んでいただき,ありがとうございます。
今回は,少し前に読んだ大貫弁護士と共にモラハラ夫たちの実態を描いた4コマ漫画「モラ夫バスター」をSNS上で発信している榎本まみさんの本「モラニゲ~モラハラ夫から逃げた妻たち」から学んだモラハラでとてもつらい思いをしている方が,どのようにして,モラハラ夫から逃げて離婚することが出来たのか,モラハラ夫から逃げるために必要なことは何なのか,お伝えしたいと思います。

「モラハラ」は妻が夫にする場合も確かにありますが,
多治見ききょう法律事務所に離婚の相談に来られる方,メールマガジンの読者の方は,
弁護士木下が女性であることもあって,夫からのモラハラで悩んでいる方が多いです。

娘さんが夫からモラハラを受けている,ということで,心配したご両親がご相談に来られたり,
メールマガジンを読んで,学んでくださっている方も少なくない。
友人の方が心配して,代わりにメルマガに登録して下さって,ご紹介してくださる方もいます。

ご相談を受けていて感じているのは・・・
以前「離れたくても離れられないあの人からの攻撃がなくなる本」のご紹介のときにも書きましたが,

モラハラのケースでは,「離婚すること」「別居すること」を決断するまでに,とても時間がかかるケースが多いということ。

弁護士の私としては,一刻も早く別居して,本来の自分,安心して生活できる自分を取り戻してほしい,と思うのですが,ご相談を受けていると,すぐには「離れられない」ということも多いと実感します。

今回ご紹介する「モラニゲ」の本でも,臨床心理士の本田りえ先生が
「モラハラ」からは(簡単に)逃げられないのが「当たり前」と話されているのが印象的でした。

モラハラ夫から逃げる場合の妻の心配は,経済的な不安を理由にされることが多いけれど,それだけではない・・
家や貯金,一緒に暮らしてきた思い出,地元の人たちとの関係,ママ友や子供の友達などの人間関係・・どれも大切な立派な「財産」。
逃げればこれらを全部手放すことになってしまう・・・だから,簡単には決断できない。

なので,逃げられない場合には,以前ご紹介した「離れたくても離れられないあの人からの攻撃がなくなる本」も参考にしていただきたいのですが,逃げるための選択,についても今回知ってもらえたらと思います。

今回ご紹介する本では,
「(モラハラ夫から)逃げて良かった」
「逃げ出した今のこの生活の方が楽しいしずっと幸せ」
「子どもと二人大声で笑って暮らせています」

実際にモラハラ夫から逃げて離婚した女性から取材を受けて紹介してくださっています。

どうしたら,モラハラ夫から逃げるための行動が出来るのか?
モラハラ夫から逃げるために必要な持っておくと良い3つのものは?

モラハラ夫から逃げるために手にしておくと良いと思うものを3つ,お伝えします。

1 モラハラの情報・知識

「モラハラ」,「モラルハラスメント」は,今でこそ,社会で浸透しつつある言葉だと思いますが,
今でもまだ,その実態については理解してもらうのが難しい,自分でも気づきにくいもの,とご相談を受けていて感じます。

この本の中で,逃げようと思ったきっかけを尋ねている場面。
近所の人に話したら「それは旦那さんがおかしいんじゃない?」と言われた。
「相談員さんとか弁護士さんに相談して夫のおかしいところがやっと客観視できた」

Twitterで発信したら,友達が励ましてくれたり,「いい弁護士を紹介する」と言ってくれた。

また,「別居しても婚姻費用を請求できると知っていたらもっと早く逃げられたかも」
   「財産分与とか婚姻費用とかの知識を持っているだけでもだいぶ逃げる勇気が出るんじゃないかと思う」
と話されている場面もあります。

モラハラは,「相手をコントロールすることで相手の自信を奪う」という特徴があるので,
相手と一緒に閉鎖的な空間にいると,どんどん相手の言うことだけが「正しいのか?」と錯覚してしまうことがあるのではないかな,と思います。

でも,周りの人にこちらから話したり,インターネットなどで情報,知識を得たり,弁護士などの専門家に相談したりすることで,離婚に関する正確な知識や「モラハラに関する知識,情報」も得られると,これまで見方が変わって,逃げる勇気に繋がるのではないかな,と思いました。

情報,知識を得るには,自分から発信していくこと,助けを求めていくことが大切ですが・・・
その元気さえ奪われ,その必要性にさえ気づいていない方も多いと思います。

そういう場合には・・・・

直ぐには動けない,逃げられないのも当たり前と思って,焦らず,根気強く,気づいた周りの方が情報や知識を伝えて行ってもらえたら嬉しいなと思います。
実際に逃げ出すための行動を始めた方のご相談を聞いていると,以前は,「離婚した方がいい」「離れた方がいい」と言われたけれど,分からなかった,
こんなに幼い子がいるのに,別れられるはずがない・・・と思っていた,と言われることがあります。

なので!直ぐにそのときは逃げ出せないとしても,そうやって周りの方からかけてもらった言葉は,かけられた方の心にしっかりと残って,行動するまでのエネルギーとして蓄積されているのではないかな,と思っています。

モラハラを受けていると感じている方,良く分からないけれど,配偶者から責められていてつらい,と感じる方,周りに助けを求めてみませんか?
友人,親族,近所の方などで「モラハラを受けているのでは?」と気になる言動をする方はいらっしゃいますか?

2 モラハラに理解ある弁護士

この本を読んで,やはり,モラハラを受けた方にとっては,本当に「モラハラ」を理解してくれる弁護士の存在が大事,ということ。

モラハラ夫から逃げて離婚でき,取材を受けている方の話の中での言葉。

「ネットで弁護士事務所を探して相談に行きました」
「田舎だからあんまりモラハラに理解のある法律家がいなかった」
「役所の無料相談のようなところに行った」けれど,そこにいた弁護士が「奥さんも我慢しなきゃ」みたいなことを言う人でショックだったのを覚えています。

モラ夫バスターとして著者と一緒にSNS発信をしている大貫弁護士も
「弁護士によっても,得意案件に個性があって,離婚案件は色々と手間がかかるので受けない弁護士もいる」
「弁護士によってモラハラに理解のある人とそうでない人がいるので会ってみて自分に合う人を見つけた方が良い」
と話されています。

多治見ききょう法律事務所に相談に来られる方も,他の弁護士に相談して,モラハラを理解してもらえずつらい思いをした,という方も少なくありませんし,
メルマガ読者の方の中にも,実は依頼した弁護士があまりモラハラに理解をしてくれる方ではなくて,つらい,というお話をされる方もあります。

私(弁護士木下)も,まだまだ未熟で研究中なので,十分にモラハラを理解している,と自信を持って言えるわけではないですし,
他の弁護士事務所で「モラハラ離婚に強い」,と言いながら,実はモラハラ離婚を取り扱ったことはない,ということもあるようなので,
やはり,依頼する場合には,実際に会ってみて,話してみるのが大事かな,と思います。

費用の問題もあり,弁護士を依頼せず,離婚調停などを自分だけで進めるケースもあると思いますが,モラハラのケースでは,途中でしんどくなってしまい,弁護士を依頼する場合もご相談を受けていると多いです。
少なくとも,モラハラの事案では,代理人として弁護士を依頼しないとしても,継続的に安心して相談できる弁護士が見つかると自信を持って進めて行けるのではないかなと思います。

弁護士をどんな基準で選びますか?
弁護士に相談したのに,心がさらに重くなったりしていませんか?

3 お金・仕事

モラハラ夫から逃げられない理由は経済的な不安だけではない・・・

それは,確かにそうなのだけれど,やはり,ご相談で話を聞いていると,

今モラハラ夫から離れられない理由として経済的な不安,「幼い子を抱えて生活していけるのか?」「子どもたちに十分な進学環境,学習環境を用意できるのか?」という不安が大きいのを感じます。

一方でご相談を受けていると,お金が十分溜まったと感じた,働いているから何とかなると思った,
ということがきっかけで,モラハラ夫から逃げる行動を始めた方のお話を聞くことも多いです。

この本を読んでいて,やはり,モラハラ夫から逃げるには,この「お金,仕事」を持つことの大切さを感じた。

「10年以上ぶりに自分の稼いだお金で買ったカフェオレが」「本当においしかった」
「はじめは時給850円のパートの仕事についた」
「友達が仕事を依頼してくれて」「突発的にまとまったお金が手元に入っ」て逃げられるな・・・と思った。
「経済的に自立していたから弁護士も雇えたし別居にも踏み切れ」た。
「夫には家事を優先するため仕事をやめるかパートに変えるよう言われてた」が,「モラハラのアンテナが立ったからこそ絶対辞めないぞ」と思えた。
「夫がお金をくれないから家で出来る仕事を始めた」「離婚には何はなくても先立つものは必要」
「稼げていたおかげでいい弁護士も雇えたし 夫から逃げられた」

‥モラハラ夫から逃げた方が話している内容を読んで,やっぱり,仕事をすること,お金を得ることは,
モラハラ夫から逃げるためにはとても重要だと思った。

夫からモラハラを受けている,と言われるケースでは,確かに妻が働くのを禁止して自分のお金がなければ生活できないと思わせた上で,実際に「俺のお金のおかげで生活できている」と言われたりしているケースも多い。

夫が気に入らない相手(友人,職場,家族など)との接触場面を出来るだけ封じることによって,妻が夫に依存せざるを得ないような環境,依存しないと生活できないのではないかと不安に思うような環境を作っているのではないか・・・と思わされることが多いです。

仕事することで自分で自由になるお金を得ることは,受け取るお金の金額そのものも確かに重要だけれど,
自分の力を信じられること,自信を取り戻すためにも大事だな・・・と取材を受けている方がの言葉を読んで思った。

自分が働くことで,誰かのお役に立てて,その対価としてお金ももらえる・・
これは,自信に繋がることなんじゃないかなと思う。

仕事をするようになると,職場の人とも触れることも増え,夫以外の価値観の人の考え方にも触れられるから,
情報,知識としても,モラハラ夫から逃げるために必要なものが入りやすいと思う。

もちろん,専業主婦の状態でも,実家などを頼って逃げられる場合に,直ぐに無理をして働く必要はない,と思う。
もし,一方で経済的な問題で逃げられないな・・・と思っているような場合には,まずは,短時間でも働いて自分でお金を得る,という体験はモラハラ夫から逃げるために重要かなと思う。

もし,経済的な不安があるとしたら,まずは小さな一歩としてお仕事を始めてみませんか?
自分自身で働いたお金で,少額でいいので,好きなものを買い,好きなものを飲んだりしてみませんか?

まとめ 立ち去るという大事な選択

以前にも書きましたが,弁護士である私自身は,モラハラを受けながら,その夫との生活を続けるのはしんどいのではないかな・・と思ってしまいます。

モラハラ夫への対策をすることで,以前とは関係性が大きく変わり,ありのままの自分も出せるようになればいいと思うのですが・・
自分自身の感情を出さないようにして,「無表情」に生きていくというのは,やはりつらいのではないかなと思ってしまいます。

「子どもの脳を傷つける親の行動,発達を促す親の行動」のブログで書いたように,モラハラを見ているお子さんへの脳に対する大きな影響も分かってきています。
次第に子ども自体もモラハラを受けている親(多くは母)をバカにするような態度をし,モラハラ的な行動をしてしまう・・というお話もご相談の中でお聞きするので,やはり,夫婦間の問題だけでなく,モラハラを受けている環境で人間が過ごすのは,悪影響も大きいのではないかな,と思っています。

その点,この本で一番お伝えしたいな,と共感したのは,
「あなたは逃げ去るんじゃなくて立ち去るというすごく大事な選択をした」というお話の部分です。

モラハラ夫から逃げた妻がシェルターの方に言われた印象に残っている言葉として紹介されているのですが,
逃げることはネガティブな印象だったけれど,「逃げる決意にも立ち向かう決意と同じくらい大きな決意と勇気が必要」と今なら思える,とのこと。

…本当にそうだと思います。どんな決断も,本当に大きな決断。
逃げようと決意した,準備を始めた,その時点で,とてもすごい!一歩だと私は思います。
決してネガティブなことではなくて,積極的な選択,勇気ある大きな決断です。

一方で,今は逃げられない・・・と思っている方もどうか逃げられない自分はダメなのか?と自分を責めないで欲しい,と思います。

それも今出来る自分の大きな決断。例えば,いつか出て行くために,計画的に準備しているんだ・・・
今のこの夫からさらに学ぶことがあるから,今は自分で選んでここにいるけれど,必要がなくなれば私の方から出て行くんだ・・・とか。
今夫との生活を続けることも,積極的な決断の一つだと,思ってもらえるといいな,と思っています。

今の自分はダメなんだ・・・と思ってしまうと,行動する勇気,考える気力まで奪われてしまう,と感じているので,まずは,今の自分の状況を積極的なものとして捉えられたらいいな,そのためのサポートを出来たらいいな,と思っています。

逃げた方がいい,離れた方がいい,と周りの人に言われても動けないときもある。
言われれば言われるほど,動けない自分を責めてしまって,やっぱり動けない私っておかしいのかな?ダメなのかな・・・と責めてしまうことも多いと感じます。

でも,自分で今出来ることを十分頑張ってる。自分で選んで,こっちの方がいいと思ってるからそうしてる,って本当に思えたら・・・
次に本当に必要なタイミングが来れば・・・動き出す勇気は人から言われなくても,自分自身の内側から出てくるものだと,思う。
周りの方は「今のままでいいよ」っていう必要はないと思うけれど,今頑張っている姿を認めて,根気強く,焦らず,何度も,「愛」をもって伝えてもらえたら嬉しいな,と思います。

今逃げられないと感じている方も・・・
今逃げようと決断した方も・・・充分今出来ることを頑張っている,と私は思います。

・・自分らしく人生を生きるために,どうすべきなのかは人によって違うと思いますが,
まずは,それをじっくり考えるためにも心の余裕がいる。

だからこそ,状況に応じて必要な本も色々あって,必要な場面でお役に立つのだと思います。

ご紹介した本では,大貫弁護士が,モラハラの事案で弁護士を選ぶときのポイントなどについても解説していますし,臨床心理士の本田先生,元女性相談センター相談員の熊谷さんによる早期の相談の必要性などのお話もありますので,多くのヒントがあります。
実際にモラハラ夫からどのようにして逃げたのか,離婚したのか,ということが,モラハラ夫から逃げた妻に取材する形で様々なケースで紹介されていますので,自分自身のケースに近いものをイメージしながら,具体的にモラハラ夫から逃げるための行動をするために準備すること,参考になったこと,逃げた後のこと等参考になると思います。お勧めです~

これからも,うちに相談に来て下さる依頼者の方々のため,
そして自分自身の子ども達,家族,友人のため,弁護士として,
母として,母子ともに「幸せに生きるための方法」学んでいきたいと思います。

引き続き,研究報告,活動発表,致します♡

それでは,
このブログを読んで下さったモラハラを受けていると感じている方が,今の辛い状況を抜け出すためのヒントとなりますように。
そして,家族,友人などで,「モラハラ」を受けて,辛い思いをしていたり,自信を無くしてしまっていそうな方が周りにいらっしゃる方が,その方をサポートするためのヒントとなりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!