多治見の子ども達に受けさせたい教育とクレーム対応

いつも読んでいただき,ありがとうございます。

先日,昨年11月からスタートした岐阜市と岐阜県弁護士会とが連携して市内の小学校で行っている法教育の授業を見学しました。

また,関わっているいじめ防止等対策委員会での「ブラック校則」の話題,
矢野弁護士の実践的なクレーム対応から改めて考えさせられた教育現場に求められるクレーム対応能力。

問題となった「いじめアンケート」閲覧への対応には,学校現場,行政現場においても適切なクレーム対応に繋げる力の必要性を感じます。

これらのことから改めて我が子を含む多治見の子供たちに受けさせてあげたい教育とこうあって欲しいと思う教育環境について考えました~

その中で,私が我が子や多治見の子ども達のために出来ること,あるといいなと思った「教育環境」について,考えたことをお伝えします。

1 法教育授業

岐阜市で行われている法教育授業がどのようなものなのか,見学させてもらいました。

対象は6年生,テーマは,写真掲載の教材から学校側が選択した「本当に犯人?三角ロジックで考えよう」でした。

子どもたちが,「三角ロジック」に対して,弁護士もビックリするような理解をしていることに感心しました。

データ・主張・理由づけの見分け方の説明では,子どもたちが「「主張」は主語ではなく述語に注目する」「「理由づけ」には固有名詞が入らない」と,違いを自分なりに考えて,見つけている点にすごい!と感心しました。

「○○君は,犯人なのかどうか?」,犯人と考えるグループと犯人ではないと考えるグループに分かれて,
話し合って,それを裏付ける理由づけと事実を探していく・・

子供たちは,話合いながら,理由や事実を紙に書き出していました。

伝えたいテーマとしては,「同じ事実からでも理由づけによって反対の推論(主張)が出来ること」にあったのですが,
教材やマグネット,板書を使いながら,この点も子供たちに気づいてもらえたと思います。

最後に学校の担任の先生が,ドラマの話をしながら,決めつけてはいけない,事実からしっかりと判断しなければいけない,ということが先生の頭の中でつながった,だから,決めつけると人権を侵害してしまう,普段の道徳の話にもつながる,とお話をつないで下さったのも,とてもよかったと思いました。

突然来た弁護士のにわか先生よりも,やはり普段から接している担任の先生からの言葉でフォローしてもらえると,子供たちにも届きやすいので,ありがたいと思いました。

学校現場としては,ただでさえ教えないといけないことが増えてきている中,とても忙しいのに,市の取り組みとして法教育を導入せよ,と言われてどうなのかな・・・と思っていましたし,

学校現場では,正解は一つ,と考えがちなので,いろいろな結論を前提とする「法教育」の意義を共有するのが難しいのかな・・・と思っていましたが,教材があらかじめあり,学校側からどのテーマでやってほしいか要望を聞いて実施しているということで,学習によって求めるゴールがおよそ共有されていることがいいな,と思いました。

教材の内容も良いと思いました!

グローバルな社会で,AIとは違う能力で仕事を見つけていくこれからの子供たちにとって,答えの分からない問題を自分の頭で考えていく力,
多角的に物事を見て,仲間と話し合いながら,説得的な結論を出していける力,
論理的に考え,分析し,説得的に説明する力(ロジカルシンキング)は,とても大切だと思います。

なので!法教育授業を,多治見市でも導入出来たらな・・と思いました。

しかし,弁護士は教えることのプロではないから,先生の協力がないと子供たちの心に届く授業にはなりにくい気がします・・・
先生が選んでくれた題材で,学校の先生と協力しながら行われる法教育授業,我が子や多治見の子供たちにも受けさせてあげたい,と思いました。

みなさんは,法教育授業,どう思いますか?

 

2 ブラック校則

岐阜県内の高校で行われている「いじめ防止等対策委員会」で,今「ブラック校則」の問題が出てきている,という話を聞きました。

そういう言葉が現場でも問題になりつつあるんだ・・・(驚)

ブラック校則って,正式な定義はなさそうですが,「合理的な理由なしに制限する理不尽な校則」というイメージのようです。

私も確かに,合理的な理由のない校則については・・こちらで書いたような理不尽な思いはある。

けれど,嬉しかったのは,今特に何か問題があるわけではないけれど,
こういう社会の変化,学校に求められるものの変化をとらえて,学校側が積極的に,校則に問題はないでしょうか?と意見を聞いて下さったこと。

(ちなみに,その学校の校則はとてもシンプルで,規制は少ない方だと思いました)

今までは,「校則」という分野で私たちのような学校現場以外の人の意見を踏まえて,決めるってことはあまりなかったのじゃないかな・・

その感覚がすごい!と思いました。

その背景には,文科省も,「生徒の自主性」を重んじている,というのがあるからだと思う。
なので,学校外でアルバイトすることをどこまで禁じられるのか・・という悩みもあった。

部活動についても,運動部については,

「中学校、高等学校の学習指導要領の総則においては、部活動は、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とあるように、同好の生徒の自主的・自発的な参加により行われるものです。
 こうした学習指導要領の趣旨を踏まえ、各学校においては、生徒の自主性を尊重し、部活動への参加を強いることがないよう、留意しなければなりません」

となっていて,これからは部活動を熱心に行っている学校でも公立学校の場合には,参加を強いることは出来ないという方向性・・

自分たちが育ってきた頃とは隔世の感があります。

スポーツするのは,頭にも身体にもいい,というの実感として分かってるんだけど,この辺りは「学校教育」にとって譲れない本質は何か,という話になるのかな,と思いました。
私立と違って,義務教育の公立小中学校,高校でも公立の場合には,親や子供側を個々の学校の理念に合わせるように言うのは基本的に難しいので・・・

年齢や成長段階によっても違うと思いますが,今の世の中でも,公立の学校が「教育の目的」を達成するために子供たちに求めることが出来るもの(規制できるもの)はどの範囲なのか,を見極めることが大切で,
それ以外については子供たちの「自主性」に任せていくことになるのかな・・と思いました。

みなさんは,「ブラック校則」どう思いますか?

3 脅しに屈せず,適切にクレーム対応できる環境

以前も書いたけれど,野田市で起きてしまった幼い命が失われた事件。

心愛ちゃんが書いたいじめアンケート。
報道では,父親から虐待を受けていた事で学校のいじめアンケートに助けを求めるメッセージが書かれていたとされています。

教育委員会が,そのアンケートを加害者の父親に渡していたことがわかり,野田市に苦情が寄せられている,とのこと。

確かに,もし我が子がいる多治見市で同じことが起こったとしたら・・・

秘密は守られる,自分を守ってくれると信じた子どもたちがあまりにもかわいそうで,教育委員でもある自分自身も本当に申し訳ない。

報道記事によるとですが・・

父親は,「威圧的な態度で要求した」ということ。

それに対して,アンケートを渡した教育委員会の次長は

「恐怖感を覚え精神的にも追い詰められて影響を深く考えられなかった。守れる命を守れなかったと考えると配慮が足りないだけでは済まされない、取り返しのつかないことをしてしまった」と謝罪。

「恐怖感を覚えて渡してしまった」という対応についても,問題視されているところですが,

弁護士をしていると,予め準備していなければ,自分を守りたいという本能,恐怖から逃れて適切な対応をするのは難しい・・と感じます。

これは,1つは「適切に対応すべき相手,とクレーマーとの境界」,「正当なクレームと不当なクレームとの違い」が分からず,
対応していることにあると思います。

この違いを決める具体的な判断基準は,

1つ目は,クレームの内容が異常であること。
2つ目は,クレーム行為の態様が異常なクレーム。

とされています。

この中で,特に対応が迎合的になりがちなのは,自分(こちら側)にも悪いところ,
指摘されても仕方ないところがあったかもしれない,という場合です。

こちらの対応が悪かったという「負い目」のようなものがあると,客観的には態様が異常と思われるような激しい言動に対しても,

しっかりと自分が責任をもって対応しなければ,と思いがちです。

その結果,他の人に相談することもなく,対処しようとして,脅され,恐怖から屈してしまう・・・

恐怖に屈してしまうのを避けるのは,「本能」に抗うことなので,とても難しい・・・

だからこそ,そういうことになる前にクレームへの初期対応知識は少なくとも先生も,行政の職員も持っていないといけないと思います。

うちに入所してくれた矢野弁護士は,以前大手の法律事務所に勤務して,とても多くのクレーム対応をしてきたそうです。

その中には,こちら側の言動で非があるな,と感じるものもあったそうですが,類型ごとに分けて,対応してきたことを教えてくれました。

事務局に対して威圧的な言い方をする人には,○○という方法を使う,傷つけられた,と訴えてくる方には,△△という対応が基本です,など・・

なるほどと思う工夫がありました。

(うちの事務所でも正しいクレーム対応とは何か?について,こちらで解説しています。民間企業向けですが,基本対応は同じです)

弁護士の方が,クレーム対応については,知識,経験を活かした適切な対応が出来るので,繋いでほしいのですが,

そもそも,これって教育者が保護者である親に対する対応として,自分たちで責任を持って対応すべきなのか,
弁護士に繋いでいいのか迷う・・という場合には,

2の方の基準,相手の態様が異常と感じるか,怖い,と感じるかを基準に考えてもらえるといいかな,と思います。

最も一見冷静にみえても,明らかに非常識な要求をしてくることもあります。

今回の野田市のような「子どもが自分について書いた虐待の内容を見せる要求」というのは,
危険度の高い,一時保護の抗議というクレームの範囲から脱した,過剰な要求ですので,仮に冷静な態様であったとしても,類型ごとに考えて,
その内容が過剰だと感じる場合には,直ちに弁護士に繋いでもらえたら・・と思いました。

とはいえ,普段何のお付き合いもない弁護士に個々の教員,行政職員が相談するのは,簡単ではない・・と思うので,
スクールロイヤーのような形で平時から各学校に訪問する,相談しやすい弁護士との関係を各学校ごとに確保しておくか,

教育委員会には,教員職で一時的に教育員会に所属している方もいるので,そういう教員とつながりの深い人を選んで,市教委の△△さんに相談して,とか,○○という部署に相談してね,という相談窓口を設置して,周知しておくことが大事だと思います。

そして,あとは,その相談窓口の方と弁護士とが気軽に相談できる関係を構築しておくこと,
これは行政機関が組織として形成しておくことが大切かな,と改めて思いました。

「正当なクレーム」と「不当なクレーム」の見極めも難しいと思うので,クレームの見極めと初期対応の研修も必要かな,と思います。

子どもたちに安心して学校を頼りに出来る環境と思ってもらえるよう,多治見市でも改めて

そういう相談体制,仕組み作りが進んで行くことを教育委員としても市に強く希望していくし,
自分も弁護士として出来ることは協力していきたいと思いました。

野田市の事案を受けて,

「先生だったら,どうしたらいいと思いますか?」「スクールロイヤーがいれば,あんなことは避けられたのではないでしょうか」「父親を厳罰にした方がいい」など,沢山の意見や質問をいただきましたが,

私としては,自分が身の回りで出来ることとしては,そういうことに協力していきたい,と思っています。

みなさんは,身の回りで地域の子どもたちを守るために,自分自身はどんなことが出来そう,だと思いますか?

まとめ

カッコよく言うと,99人がそれでいいと言っても,ただ1人の人権を侵害するのであれば,それは守らなければいけない・・
というのが弁護士の基本的な考え方です。

この考え方と知識は,多数決で決してはいけない範囲が何なのかを知ったり,多様性を知り,バランス感覚を身に着けるのに役立つのではないかな,と思います。

時代が変われば価値観も変わるので,以前は「人権」と思われていなかった学校における服装の自由,余暇の過ごし方の自由なども重要な権利として,次第に制限は限定的に変更されていく方向性なので,

客観的に見て,過剰な規制ではないのか,という見直しは必要だと思います。

こういう場面,法教育の分野や校則などの見直しなどでも,弁護士の知識とスキルを利用してもらえたら・・と思います。

また,脅しから安全安心な職場を守る,環境を守る,というのは,本来的に弁護士が得意としてきた業務なので,教育現場,行政組織でも,そのために是非弁護士を利用してもらえたらと思います。

そうすることで,多治見の子どもたちが,安心して,先生を頼りにしたり,色々な「特性」「違い」を自然に受け止め,認められる子が育つようになるといいな,

同じ事実でも違う捉え方が出来る,いろいろな考え方が出来る,と自分の頭で考えて論理的に説明できる子どもたちが育つようになるといいな,と思います。

それが広がると,私がこうなって欲しいと思う多治見の子ども達が「大人になったときの姿」「身につけて欲しい能力」に近づくと思います。

「それぞれが自分の良さ」を遠慮せず,最大限に伸ばすことが出来る。
他の子と違うことを恐れず,それぞれの「良さ」毎に自信を持ち,お互いに違う「他人の良さ」も認め合うことが出来る。
認められているという安心感から,自分の意見も自信をもって言うことが出来る。

自分の苦手なところ,仲間の苦手なところも許し合える。
そして,苦手なところ,不足しているところを補い合える大人になってもらえたら・・・いいなあ。

・・今日も,まじめで落ちがなくすみません(笑)。

子どものときに与えられる影響がとても大きいこと,大人になってから変わるのはとても難しいこと・・は
以前刑事弁護をしていた時に強く感じたことなので,子供のころの「教育」の大切さは,本当に実感しています。

このブログを読んで下さったみなさまにも,これからの地域,日本そのものの未来を担う子ども達にどんな大人になってもらいたいか,
そのためにどんな教育環境があればいいのか,何をしたらいいのか
考えるきっかけとなりますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり20年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
著書「離婚調停は話し方で変わる」は,Amazonランキング「法律」部門ほか5部門で第1位を獲得。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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