多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

不当要求(悪質クレーマー)に立ち向かうための心得~岐阜県暴力追放推進センター森泉先生

不当要求(悪質クレーマー)に立ち向かうための心得~岐阜県暴力追放推進センター森泉先生

「おいこら!どうしてくれるんだ!」「土下座するなら許してやる。土下座しろ!」
「誠意を見せろ!」「謝って済むなら警察はいらないんだよ」
「以前は(ほかの会社は)やってくれたぞ。なぜできない!」
「表沙汰にしていいのか?」

・・などなど。

顧客対応をしていると,困ってしまう場面。
対応で心身ともに疲弊する職員。
思わず,相手の「不当な要求」を受け容れてしまうことも。

もちろん通常の「クレーム」の対応は必要なので,安易に相手を「悪質クレーマー」と認定するのは問題なのですが,「クレーム対応・反社対応」で記載している通り,要求の「内容」または「手段方法」が不当な場合には,不当要求者=悪質クレーマーとして適切に対応することが被害を回避,増大させないために重要。

どう対応したらいいのか?について,先日多治見ロータリーの卓話にて,岐阜県暴力追放推進センター(略して暴追センター)専務理事で元県警刑事部長,岐阜市役所にも勤めて不当要求対応をしてきた森泉先生からお話をしてもらった。
改めて今の時代の顧客対応の心得として重要だと思いましたので,シェアします♪

不当要求者(悪質クレーマー)の対応で最も大切な「心構え」「考え方」は?
不当要求者(悪質クレーマー)の対応で失敗しないための手順は?
不当要求者(悪質クレーマー)が怒鳴り続けていたら,どうしたらいい?
不当要求者(悪質クレーマー)の言動を録音していい?録音に同意は必要?

不当要求者(悪質クレーマー)の対応として大事だと感じたこと,よく現場で問題になることだな,と思ったことを3つを絞ってお伝えします。

1 心構え(考え方)

不当要求者(悪質クレーマー)と対峙する時の心構え,考え方の基本。

「受け入れるのではなく,排除する事を念頭に,戦略的に対応」する。

許してもらえるまで謝罪を続けさせられる,
長時間居座り,対応を強要される・・

結果,職員が疲弊し,心を病んでしまう。
要求を受け入れて,本来やってはいけないことをやってしまう。

こういう「被害事案に共通するのは」相手が「主導権」を握り,こちらに「拒否権」がない(という思い込み)ため。

だからこそ,こちらが「主導権を握る」ことで,最終的には「排除」しても問題ないという形になるよう進めていく。
そのために,その手順が「違法」「不当」などと言われ,後に損害賠償等の問題にならないように進めることが重要。

では,具体的に何を意識して最終的な「排除」まで進めればいいのか?
「守りながら闘う」というマインド,考え方で進めることが大事。

  1. 正当性を担保する。・・クレームを言われている内容についての対応に問題はないか?
  2. 必要な手順を履行する・・排除という段階に至るまでに必要な手順を踏む。
  3. やるべきことをやる!(1,2が自信をもってできていることを背景に必要にして十分な対応をする)

自問自答すべき3項目

  1. ミスへの対処は適切か?・・謝罪とリカバリー(是正措置)。
     履行すればOKで相手が受け入れたかどうかは関係ない点が大事。
  2. 説明責任を果たしたか?・・判断要素:内容・時間・回数(説明内容・かける時間に過不足がないか)
    説明責任を果たせばOK。相手を納得させる責任ではない。
  3. 要求拒否は適正か(充分検討したか)?・・判断を間違っていないか?根拠と妥当性があるか,業界通念等に照らして判断する。
    拒否判断に自信が持てなければ無理は禁物。「組織内で検討させていただきます。後日回答致しますので今日のところは引き取りください」で対応。

弁護士として対応する場合にも,相手にどんなに説明しても理解してもらえない,納得してもらえない場合というのは存在する。ご相談を受けていると,相談者が「悪質クレーマー」と判断される人への対応で疲弊してしまっているケースも少なくない。

そういう場合,なんとか「納得してもらおう」(納得してもらいたい)という意識,「心構え」「考え方」で進めてしまうと,進め方がブレてしまい,相手のペースに乗せられてしまう。
だから,途中で納得して引き下がってくれればラッキーというようなつもりで,淡々とこちらとして(主導権をもって)問題ないように一歩ずつ進めていくという「考え方」が重要だと思いました。

みなさんは,「悪質クレーマー」と判断した場合の最終的なゴールを考えて対応していますか?

2 怒鳴るのをやめない場合

よくあるクレーマー対応で困る場面についても解説して下さった。
例えば,相手が「怒鳴る」のをやめず,会話ができない状態の場合。
どうしたらいいのか?

「怖いです」
「怒鳴るのはやめてください」
「怒鳴られてはお話ができません」
「怒鳴るのをやめていただかなければ,対応を打ち切らせていただきます」
「怒鳴るのをやめていただかなければ退去していただくことになります」
・・数回繰り返す。(この正当な手順を踏んだことを)録音し,記録に残す。

「怒鳴るのをやめていただけないので,対応を打ち切らせていただきます。お引き取りください。」
「もう対応致しません。あなたに退去を要請します」
「お引き取りいただけないなら警察を呼びますよ」
・・対応終了宣言・退去要請をする

これで実際に退去しなければ,110番通報をする。

以前,私自身も個人的なことで自宅に相手方に来られた際,「一筆かけ」と言われた経験がある(相手は私が弁護士とは知らなかったと思う)
その際も,なかなか帰ってもらえないので,警察に最終的には連絡をした。

警察に連絡すると,近所にも分かりそうで躊躇することもあるかもしれないけれど,勇気をもって最終的には警察を頼ることは大事だと思う。
警察官は,そういうとき,とても頼りになります。ありがたいです!
冷静にこちらが対応するためにも,組織で対応する時には,複数で一人は録音・記録を担当するなどして対応するのも大事だと思う。

3 録音の有効性

不当クレーム対応をする場合,録音することはとても重要で有効。

  1. 刑事事件(脅迫等)の決定的な証拠になる
  2. 自身の正当性(正当な手順を踏んだことなど)を担保する重要な客観証拠になる。
  3. 恫喝への抑止効果がある(録音している旨の告知をすることで,相手も冷静に話をしやすくなる)

録音します,と告知する場合,どのように言ったらいいのか?

「齟齬があってもいけませんので」などと言う。
ポイントは相手の了承は不要ということ。録音事実を告知するだけで,録音の同意を求めるわけではない。

「なんで録音なんてするんや!」「他の奴にもやってるのか!」などと言われたら?

「当社の方針です。そのようにご理解ください」という返答だけで十分。
それ以上詳しく説明しようとすると,揚げ足取りの材料になりやすいので注意。

「録音についての説明は以上です。ところで本題ですが・・・」とすぐ切り替えて,素早く会話を進めていくことが重要。

それでも,「録音をやめろ!」などと(録音にこだわって)言われたら?
「録音については以上です。他にお話がなければお引き取りいただくことになりますが,よろしいですか?」という形で戻す。

録音をそもそも告知した方がいいのか,しない方がいいのか?告知を必ずしなければならないのか?

これは,よく私も聞かれるのですが,相手に録音することを「告知」しなければいけないわけではない。
(相手も録音しているかもしれないことを念頭に対応することも重要)

告知した方がいいのは,録音効果として③をメインで考えているときかな,と思います。
一方で,①を特に中心に考えている場合,この相手方は脅迫行為等の言動をしそうだな,と想像できる場合には,証拠を残すことでしっかりと警察官に対応してもらえるようになるので,告知せずに録音することもあり得ると思います(森先生もおおむねそのような回答だったと思います)

まとめ 事前準備が被害を防ぐ

今回の森先生のお話を聞いて,改めて悪質クレーマーへの対応も事前準備が大事なのを実感しました。
相手がこういうことをするかもしれない,言うかもしれない・・と予測していると,「お!やはりそう来ましたか」と少し余裕が持てる気がする。
そして,Aという場合にはBという対応をしようと準備しておけば,その場で動揺しにくく,冷静に対応できる。

結果として,心身が大きく疲弊してしまったり・・
楽になりたい思いから,相手の要求を呑んでしまって本来ならばしてはいけないことしてしまう,という被害を防ぐことが出来る。

こちらに何らかの「ミス」がある場合には,ある意味で弱みもあり,相手の要求にのってしまいやすい・・というのは私自身の経験からも思います。
確かに「ミス」をしたのであれば,適切な謝罪や事後的に可能な範囲で修正するための是正措置は必要だけれど,それをし尽くしたならば,それ以上の要求に応じる必要はない。
損害賠償責任が発生するなど,まだ今後にこれからの対応が一部必要な場合には,弁護士に依頼するなどして,その対応は弁護士に任せることで,今自分ができる対応は尽くしたと言える。

「怒鳴る」「帰ってくれない」「録音に納得しない」なとよくある場面を想定しても,それ以外の予測しない言動も生じることはあるけれど・・・
その場合には,「考え方」「心構え」に立ち戻って,どんな場合も必要で正当な手順を踏んで進めていく,ということが大事かなと思います。

女性弁護士である私は,「女性」ということだけで,いわゆる「なめられる」という経験をすることもありますし・・
筋肉隆々の体格の良い男性のような威圧感も実際の腕力もありませんので,自分一人での対応が困難だなと感じるときも正直あります。

そのような場合には,いわゆる「民暴」「民事介入暴力」を専門的に取り扱っている男性弁護士に協力を求めながら進めているケースもあります。
みなさんも,必要な範囲で弁護士,警察官などにも頼りながら対応していただけたらと思います。

今は「カスハラ」への適切な対応が企業,会社としても強く求められるようになってきた時代。
会社,職員を守るためにも,悪質クレーマー対応については,しっかりと学んで対応することが重要です。

このブログを読んで下さった経営者,顧客担当者の方にとって,悪質クレーマー対応のためのヒントとなりますように。
そして,すべての皆様にとって,「怒鳴ってくる相手」「理解してもらえない相手」との対応をする際のヒントになりますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!