争続を防ぐ3つのコツ~可児市相続講座講師~

いつもお読みいただき,ありがとうございます!
今回は,3月3日に可児市市民部人づくり課,人権・男女参画係と可児市民の有志からなる可児市市男女共同参画講座企画運営委員会に企画して戴いた相続講座の講師をさせていただいたので,ご報告します!

テーマは「サヨナラから始まる物語~争続を防ぐ3つのコツ」でした。

このテーマは,市民の方のアンケートを元に企画者の皆様が考えて下さいました!

市民の方々が聞きたい,知りたいと思うことを企画する,という在り方が素晴らしいと思いました。

会場は,可児市広見にある「広見公民館ゆとりぴあ」。
可児市のみなさん,お年寄りだけでなく,若い方も集まって下さり,参加者は約40名と聞いています。男性が多かったことが印象的でした。


~私の事務所は,確かに離婚事件が多いのですが,弁護士になってからずっと力を入れたいと思っていた「高齢者」に関わる分野。
弁護士になってから17年間,ずっと高齢者の法律問題を専門的に研究する「高齢者」の委員会にも入っています。
「想い」だけは通じて,ご縁をいただき,地元の東濃成年後見センターの監事をさせてもらっています。


私は,両親が共に働いていたので,おばあちゃん子として育ち,おばあちゃんと一緒に寝たり,お墓参りをしたり,ブロックで自分が入れる家を作ったり・・・沢山の時間を過ごしました。
おばあちゃんは厳しい人だったけれど,大好きでした。
・・・私が中学校2年生のときにおばあちゃんは亡くなったけれど,孫の中で泣いていたのは私だけだった,と母に言われました。

私のおばあちゃんは,最期まで自分の意思がはっきりしていて,幸せに亡くなった・・と私は思います。
しかし,弁護士になって相談を受けると,実際には,おじいさん,おばあさんが亡くなった後に相続で揉めてしまって,純粋におばあさん達の死を悲しめない状況・・・
また,亡くなる以前でも,認知症により判断能力が低下すると,財産管理や医療のあり方,介護施設の利用などで子どもたちが揉めている状況を沢山みることになりました。
本当は大好きな父母,祖父母のはずなのに,もめてしまう,,,,というのは,「おばあちゃん子」の私としてはとても辛く思いました。

私のおばあちゃんのように「最期まで自分らしく生きる」」子どもたち(相続人)にも愛される」ためにお役に立ちたい,という想いで,今回もお話しました。

みなさん,うなづきながら,メモを取って下さったり,真剣に聞いて下さって本当に嬉しかったです。

「亡くなったときに揉めないためのコツ≒争続を防ぐコツ」とは何でしょうか?

なぜ,仲の良かったはずの兄弟が揉めてしまうのか?その原因は?
どんなことに気をつければ,「争続」を防ぐことが出来るのか?
当日お話しした「3つのポイント」をご紹介します♪

 

1 相続の基本を知る~サヨナラから始まる  


もし,今,みなさんが亡くなったらどんなことが起こりそうですか?

私の場合,相続人は,夫と子ども達2人。

子どもたちが未成年なので,子ども達は自分で遺産のうち,なにをどれだけもらいたいか,判断する能力がない。
しかし,夫が沢山私の遺産をもらえば,子ども達の遺産をもらう分は減ってしまう・・・

つまり,夫の利益と子ども達の利益は相反してしまうので,法律上,夫は子ども達の代わりに遺産の分け方を決めることが出来ないことになっているのです。
そのため,私の遺産分割協議をするために,夫は家庭裁判所に申立をして,子どもたちの代わりに遺産について協議する「特別代理人」を選任しないといけません。


突然私が亡くなっただけで,子ども達のお世話などで混乱しそうな夫・・・
それに加えて,私の遺産の相続手続きに面倒をかけてしまうので,申し訳なく思います。


このように「もし,いまあなたがサヨナラしてしまったらどうなるか?」を意識しておくこと,抽象的な問題ではない,みなさんご自身の具体的な相続の課題,問題が分かります。

亡くなったときにどうなるか,については,相続人,法定相続分,遺留分,遺言,相続放棄など意味,効果など「相続の基本」を知らないと,想像できません。

そのために,「相続の基本」について,お話をさせて戴きました。

 

それでも,うちは揉めるはずはない・・・と思っていませんか?


そう思われていたケースが実際にはどうなっているか,私の大切な可児市の友人「向井税理士」の作成した動画を見ていただきました▼

http://www.mukaikaikei.jp/14867825443912


また,多治見ききょう法律事務所で作成した「相続危険度チェックシート」もご紹介しました▼

http://tajimi-law.com/igon/checksheet.pdf


揉めるはずはない・・と思われていた事案で,揉めてしまってご相談に来られるのが弁護士の事務所です。
どんな相続事案で揉めやすいのか事前に分かったら予防できるかも!という想いで「チェックシート」を作りましたが,動画を拝見すると,必ずしも揉める事案ばかりにあたるわけではない「税理士」さんも争続になりそうな事案のポイントと感じているところは共通していることに「やっぱり」と納得しました。


みなさんは,今日,自分が亡くなっても,夫,妻,子どもさん達が困りませんか?
どのようなことが起こるか,想像できますか?
みなさんの事案は,本当に「争続」にならないと言えますか?

 


2 意思を明確に伝える
 

今,もしみなさんが亡くなったら,何が起こるか想像できましたでしょうか?
その状態は,みなさんの望む結果でしょうか?

それとも,例えば,障がいのある子のために多めに遺産を残ししたい,など,このまま亡くなってしまった場合とは,違う形で遺産を分けたい,という希望があるでしょうか?

もし,求める「結果」「未来の希望像」「現状(このまま亡くなったら,訪れるであろう未来)」が違うのであれば,その差が「課題」「問題」となります。


「問題」に対する対策として重要なのが,ご自身の意思を明確に,かつ法律的に有効な方法で伝えておくことになります。

その方法として「遺言書の作成」,「終末医療に関する意思」,「任意後見の制度」をご紹介しました。


「争続」は亡くなった後に揉めることですが,弁護士として相続の紛争に関わっていますと,被相続人の亡くなる前の「介護」「医療」に関することが後の「争続」の大きな原因になっていると実感します。

これを防ぐには,ご紹介した「遺言書の作成」,「終末医療に関する意思」,「任意後見の制度」が重要な対策だと思っています。


私自身も,今私が死んだら困ることが分かっているので,自筆証書ですが,「遺言書」を書いています。
とは言っても,なかなか書こうと思いつつ,書けないのが遺言・・・なので,今回の講座でも時間を取って,試しに自筆証書遺言を書いてもらいました。

将来的には,私も公正証書遺言にしていこうと思っています。


そして,医療に関すること・・

前にもご紹介しましたが・・・

認知症の専門医である長谷川医師が言っていたこと。

「胃ろう」(食事による栄養が取れない場合に胃に穴を空けて,栄養を取る方法)について,つくるかどうかで子どもの間で揉めることがある。
特に,今までずっと一緒に生活してきた子どもは,父母とも相談して,胃ろうは作らない,と決めていた場合に,それまでは,父母の介護に関わっていなかった遠方の子どもが,やってきて,胃ろうを作るように言い,もめてしまうこともあるとか・・・


医療や介護には,お金がかかることも事実なので,主に面倒を看てくれる子どもにとって,この問題は肉体的にだけでなく,経済的にも大きな負担となり,後に相続の場面でも揉める原因となりやすいのです。

ですので,「自分らしく最期まで生きる」ためには,終末期医療をどうするのか,意思表示をしておくことも,とても大切なことだと思います。
点滴による水分補給・人工呼吸器・心臓マッサージ・・・
私の父も,「延命治療はしなくていい」とは言いますが,実際の場面では,父に判断能力(意識)がないことも多いだろうから,どうなるのかな,思います。

実際,終末期医療について,このようにしたい,と思うけれど,どうしたら,お医者さんは尊重してくれますか?とご相談者に聞かれたことがあったので,医療関係者の方に聞いてみたところ,「公正証書」などで明確にされれば,基本的に尊重している,とのことでした。

医師は,基本的には出来るだけ生命を守りたい,という気持ちでお仕事をされているため,絶対にご本人の意思を尊重してくれると言い切ることは出来ませんが,本人の明確な意思に反して「医療行為」をすると,後にかかった医療費,介護費などを損害として請求される恐れもあるので,その意味でも,尊重してくれることが多そうです。
一方,認知症などでご本人の判断能力がない,意識がない,場合には相続人予定者の誰かが反対されると,できるだけ無難な延命に繋がる治療を選択する,ということになりそうです。

この「医療費の使い方」での方針の違いも「争続」の原因となります。

同様に,介護費や介護を担っている家族が使っている生活費なども,「争続」の原因となります。
父のお金を父の介護をしている長男が勝手に自分たちの車を買うお金に使ったのではないか?と,他の兄弟に疑われる,など,「お金の使い道」の不明瞭さが「争続」を引き起こします。

これを防ぐのが,「任意後見制度」でしっかりとご本人の意思に基づいて,お金の使い道を分かりやすくしておくことではないかと思っています。

みなさんの「争続」を防ぐための課題は何ですか?
そのために,法律的にも有効な対策をしていますか?

 

3 相続人への思いやり~もめない相続は愛


ご紹介した向井税理士の動画をよく見ていただくと分かるのですが・・・

相続紛争に関わる弁護士として強く感じるのは・・・
「争続」のとても大きな原因は,相続人の「愛の不公平感」ではないか,と。

お前は,介護を避け,オレは父の介護をさせられた
葬式の手配だってした,囲碁クラブやハイキングクラブの連絡もした・・
父の口座が凍結したから,自分の口座を解約して葬儀費用も出した・・
お前は中学から私立を出て学費を支払ってもらってた
お前は,車を二台も買ってもらってた,一緒に住んでいて楽な思いをしていたけれど,自分は,住宅ローンを抱え,子ども達の進学もあるから大変なんだ

・・・など。

(ブログでは,こちらに書きました)

 

兄弟は仲が良かったとしても,それぞれ成長し,配偶者と結婚して,子どもが出来,守るものがあるようになれば,兄弟だけのときのような話は通らないことが多くなります。

妻は,自分自身が相続で平等に分けてもらっていれば,夫の相続でも平等に分けてもらうのが当然と思うこともありますし,反対に自分は家で両親を看ている長男に全て遺産を譲ったのだから,夫が長男であれば,私たちは夫婦で夫の両親を看てきたのだから,他の兄弟は当然全ての遺産を譲ってくれるはず・・と思うこともあります。

こうした両親から同じように(経済的支援も含め)愛情を受けていなかったのでは,という想いや「公平感」「平等感」に関する感覚の違いが「争続」を引き起こします。

これを防ぐ対策として「付言等で感謝を伝える」「遺産が分かるようにしておく」「葬儀・遺品整理・お墓への対処」をご紹介しました。

預金通帳はどこにあるのか,遺産の全てが分からない・・・と,亡くなった後の相続手続きはとても大変なものとなります。

そのため,その手続きを主体として行った相続人には,こんなに大変なのに,なんにもしていない弟と同じ遺産しかもらえないの?と不満を生じやすくなります。

葬儀の手配,ゴミの処理,お墓を守ったり,法事を執り行ったりして大変でも,もらえる遺産は同じなの?ということに不公平感を持つのです。

そのために「遺言書」で遺産の分け方を変えておくことと共に,出来るだけ,相続人の負担感を減らすよう,被相続人側が準備しておくことが「争続」を防ぎます。


また,形のある財産,経済的な価値のある財産でなくとも,感謝の言葉は相続人の気持ちを穏やかにする,と感じます。


本当に私は兄と同じように愛されていたのだろうか?
兄は男性という理由だけで,私立の大学にまで進学できたのに,女には学問は要らないと大学進学を許してもらえなかった・・・など,相続人には複雑な気持ちがあると感じます。

・・私は姉と二人姉妹ですが,やはり,父,母から同じように愛情を受けていたのか,と悩み続けているなあ・・と実感します。

姉の方が経済的に支援を受けてもらってるのでは??
私の方が,なんでもかんでも母に手伝ってもらって,子ども達の面倒も看てもらっている,私立大学にも行かせてもらっているのでは??

お互いにそんな想いを抱えている気がするのですが,母に言うと,「お金」では無い部分で,今でもどれだけ自分の方が面倒を看てもらっているのかに気づかされたりします。

伝わっていると思っていても,相続人には愛情が伝わっていない・・と感じることも多いです。そのために「愛の不公平感」を感じ,「争続」の原因となることが多いと実感します。

これを防ぐには,「遺言書の付言」で子ども達への感謝の思いをそれぞれの子ども毎に個別に伝えたり,今の時代でしたら動画で撮って話してもいいと思いますし,お手紙で残しても良いかな・・と思います。

注意点としては,介護に主に関わってくれた相続人に多めに遺産を残す理由を「ちゃんと長女は面倒を看てくれたが,長男は全く看てくれなかったので」などとマイナスに感じる表現は避けて欲しい・・ということです。

それでも,長男も,愛していた,自立している長男を信頼しているんだ,と伝わる表現にしてもらうことが,長女と長男の精神的対立,「争続」を防ぐと私は思います。

みなさんは,お父さん,お母さんから平等に愛を受けている,と感じられますか?
みなさんのお子様には,平等に愛が伝わっていると自信がありますか?


まとめ


私は,おばあちゃんが亡くなってからも,純粋におばあちゃんのことを大好きと思えましたし,その死をただ悲しい,と思って悲しむ時間をいただけました。

しかし,相続でもし,母が揉めてしまって,親戚との仲が悪くなってしまったら・・・純粋にそう思えたのかな?と思います。
なぜかというと,うちに相談に来られる方々は,こんなにもめるなら,家で看ずに施設に入所してもらっておけば良かった・・・
どうして,遺言書を作ってくれなかったのだろう・・・と言われるからです。

また,激しく揉めたわけではありませんでしたが,子どもさんがいらっしゃらないケースでは,「遺言書」がなかったために,夫の兄弟,甥姪と連絡を取ったりしなければならず,とても精神的に辛かった。

夫が急死してしまったことだけで本当に辛いのに,こんなに手続きのことで大変な思いをするとは思わなかった,ゆっくりと悲しみに浸ることさえ出来ない・・
と言われたこともあります。

私たちが女性士業41girlsとして無料相談会を開催していることもご存じで,弁護士事務所には相談しに行きにくいけれど,そういう相談会を開いてくれることは本当に有り難いと思っています,私も専門知識はなくとも,自分のように大事な方が亡くなられたときに支えてあげられる活動をしたいと思います,と言われたこともありました。


私としては,自分の祖先を亡くなっても純粋に「愛している」と言え,「愛されていた」と感じられるために,「争続対策」を早めにとって欲しい,と常々思っていますが,これが本当に必要な方にはなかなか届かない・・・

弁護士の所には,亡くなられた後,本当に困ったときにしか相談に来られないことが多いので,今回のような講座で,少しでも事前に「争続対策」の大切さが伝わったらいいな・・・と思います。

弁護士に相続手続きを依頼してもらうために言うんだろう・・・と言われることもあるのですが,弁護士は他士業とは違い,紛争になってから,遺産分割調停,裁判等の手続きをさせていただく方が,沢山の報酬を頂戴できます。
その意味では,不適切な言い方となってしまうのですが,「争続」になった方が,仕事になる職業です。

それでも,誤解はされてしまうので,是非,私たちではなく,この話を聞いて下さった受講生の皆さん,このブログを読んで下さった一般の方々が少しでも,気付きがあれば「争続対策」の大切さ,意味を広めていって下さると嬉しいです。


亡くなってからも,生前に勉強をし,適切な相続対策をしてくれた先祖に「尊敬」の気持ちをもち,子孫が先祖からの「愛情」を感じ,先祖に対して「愛情」を持ち続けられる関係になるように,私も機会をいただける限り,「おもいやり相続」ノウハウを伝えて行きたいと思います。

~65歳になったら,一度,「相続危険度チェックシート」もやってみて下さいね。~
このブログが,「子々孫々まで敬愛される相続のポイント」「自分らしく最期まで生きる」ことに気づく,きっかけになりますように。

最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

 

この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり18年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
著書「離婚調停は話し方で変わる」は,Amazonランキング「法律」部門ほか5部門で第1位を獲得。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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