相続でもめないために,今できること~Part4

015いつもお読みいただき,ありがとうございます!
今回は,弁護士としてお役に立てる話をします♪

またまたまたまた,しばらく続編を放置しておりました……
相続でもめないために,今できること」シリーズ最終回!!

Part4!「相続でもめそうな事例でとるべき対策=実践編!」です。

先日の相続法律相談で,一人きりの子供さんを突然亡くし,その後,配偶者を連続して亡くされた方が,これまで交流のなかった配偶者の甥,姪などに相続のための連絡を取らなければいけないことになり,大変ご苦労されていました。
配偶者が存命中は,お互い辛い体験をする中で,「相続」や「遺言書」のことなど考えられず,また,頭をよぎっても言うこともできなかったそうです。
……でも,亡くなられてから大変なことに気づいて,もし,少し前のタイミングで弁護士に相談できていたら…と言われました。
しかし,実際に愛する家族が亡くなった,病気になって亡くなりそう,という段階で冷静に弁護士に相談する余裕はないだろうな,と改めて思います。
なので,周りの友人,親族の方などが,紛争になりそうなケース紛争になりそうな場面に気づいて,アドバイスをしたり,場合によっては代わりに弁護士に相談してもらえたら…と思います。

…この「相続でもめないために今できること」の連続ブログが,そのための参考になって,大切なお友達,兄弟,親族が困っているときに思い出してもらえたら,と本当に思います。

~そんな気持ちを込めて,このシリーズ最後のブログを書きますので,最後まで読んでもらえたら嬉しいです~

弁護士は,相続で実際に困ったとき,もめてしまったときに相談される職業なので,これを活かして,事前の予防策を伝えていくことも,使命だと思っています。

今回のテーマ ポイント4~感情面の対策

今回の予防策は,以前Part2に記載した法律的対策ではなく,「感情的」「人生教訓として」の実践的対策です。
沢山の相続紛争の相談をうけ,遺産分割調停の現場を体験する中で,「どうしてもめてしまったのだろう」「何に気をつけたらもめずにすんだのだろう」「自分の子供たちはもめないだろうか」「自分の両親が亡くなったときはもめないだろうか」と考え続けた私の人生観も大きく混じった(笑)ものです。

遺産分割調停,相続に関する裁判などをしていると,紛争が長期化してしまう場合,その根本にあるのは,やはり「感情だと実感します。
弁護士として「法的予防対策」を勧めるのは当然ですが,それだけでは,やはり「相続でもめる」ことを防ぎきれないな…と思います。
反対に,この「感情面」の対策ができていれば,(弁護士としては少し残念ですが)法的対策ができていないとしても,多く相続紛争を防げると思います!

~ということで,今回は,実は法的対策以上に大切な,「感情面」の対策について,お伝えしたいと思います~


1 相続人に感謝(愛)を伝える

愛の不平等感

もめる事例を見ていると,相続人が「愛の不平等感」を感じていることが,他の相続人との対立を激しくさせる,と感じます。
例えば,子供が相続する場合,長男ばかり生前からお金のかかる私立の大学に行かせてもらって,色々な物を買ってもらったのに,自分は娘で嫁ぐ身だからと何ももらえなかった。父が亡くなったときも,何ももらえなかった。せめて母のときは,少しはもらえてもいいのではないか…
父は,母を捨てて,女と出て行って再婚した。僕は,それから父にも会えなかった。母はとても苦労していた。再婚相手の子供は不自由なく生活してきたはず…など。

考え方のずれ

相続でもめるケースでは,亡くなった方(被相続人)が,生前中にもう少し,相続人の方に愛を伝えていられたらな…と思うケースが多いです。
揉める事例では,亡くなった方(被相続人)の「思い込み」と相続人の「気持ちとのずれ」があったのではないか,と感じます。
昔から,長男が家督相続する,という考え方がある被相続人世代と「男女平等」「個人の尊重」が浸透し,同じ子供として愛されたいという考え方が生まれた相続人の世代には「考え方のギャップ」があると思います。
また,前妻の子と離婚後全く連絡を取っていなかったような事例では,「なんで父は・・あちらばかり。僕はどうでもいいのか」という声にならない激しい感情が,相続人である再婚相手,再婚相手の子に向けられると感じます。これも,父(被相続人)としては,離婚後引き取られた子は相続には関係ない,という「思い込み」があったように思います。

予防策

これを防ぐには,どうしたらいいでしょうか?
普段から,どの子供にも同じように「愛してるよ」を伝えて欲しいと思います。
連絡をずっと取っていなかった子供(相続人)がいるのであれば,亡くなる前に連絡をして,関係を少しでも良くしておいて欲しいと思います。
もし,「遺言書」で誰かひとりに相続させる場合であっても,ただ単に「付言」として「遺言書」に残すだけでなく,生前中からなぜ,そうするのか分かるような言葉を相続人に伝えていくといいな,と思います。
それは,「長男だから全て相続させるから」ということではなく,「本当はみんなに同じようにしたいけれど,長男は○○ということで助けてくれているし,家業も分けてしまったら,続けられないかも知れない,おまえ達にも結果として迷惑をかけてもいけないから,本当はみんなに同じようにしたいけれど,長男にあげることになる。本当に他の子には感謝しているよ。ありがとう」等…
「言葉」だけでは,やはり「不平等感」を感じてしまうことも多いので,普段から,他の子(相続人)にも孫の祝いには何か買ってあげる,困ったときは経済的支援をするなどもある程度は必要だと思います。金銭的に同金額を渡していなくても,「愛を感じる渡し方」で渡してもらえたらな~と思います。
自分を振り返って思うのですが,自分が沢山愛をもらい,親に助けてもらっていても,自分がしてもらったことは,感じにくいものです。
姉には食事代,旅行代など出すのに,それに比べて私には,母親がお金出してくれんよね…と思ったりするときに,母親から「あんたのことは仕事をやるために,ものすごく助けてやってる」と言われ,そうだなと実感します。姉に言わせれば,「私ばっかり助けて…」と思っているようです(笑)。
なので,親としては,目に見えにくい部分を嫌みではない感じで(難しいですが),あんたには,こういうこともしてきたよね…と気づかせてあげる,こともコミュニケーションとして必要かな,と思います。


2 嫁,婿とのコミュニケーション

配偶者の不満足

相続問題に関わっていると,血のつながっていない配偶者(嫁,婿)が相続に強く関わってくると,紛争が悪化すると感じます。

これは,実の兄弟,姉妹の場合,同じ家に生まれ育ち,同じ家庭文化を持ち,考え方もそれなりに共通するのに対し,配偶者は生まれ育った文化,考え方が大きく違う場合も多いからだと思います。
また,それぞれの兄弟がどんな性格で,お金に困っているのかどうか,学生のとき,姉には色々世話になったな…など,兄弟として生活する中でわかりあえる「感情」があるのに対し,配偶者にはこのようなことは,自分の受けた体験としてはなく,分からないからではないかな,と思います。
私が,相続紛争のことで事務局に話をしていると,自分自身は,兄弟が苦労しているから,自分は少なくてもいい,と思うけれど,夫の相続の場合は,「平等でいいかな」って思ってしまいますもんね(笑)と言っていました(口出しする気はもちろん無いそうです)。

配偶者の不満の理由

配偶者は相続人ではないから,口を出さなければいいのに,と言われることも多いのですが…
実際の事例では,長男に嫁いだ妻から,自分は嫁いだ身だから,自分の父が亡くなったときは,全て譲って長男が相続したのに,自分の夫(長男)の妹たちは,「平等」だと言ってゆずってくれない,損してばかり…納得できない,などとも言われます。
特に,夫の両親の看護は妻が中心的にしていることが多いので,夫がもめたくないから,平等でいいじゃないか,と言っても,この苦労も知らないで…と妻が思うのも分からなくありません。
夫の父の相続のときには,口出しせず,夫の言うままに譲ったせいで,長男ばかり得をして,自分たちは苦労した。母の相続のときには,勝手に決めて欲しくない

このような配偶者の「不平等感」が,兄弟であれば「まーまー」と言って何とか終われていたことも,紛争を悪化させると感じます。
夫,妻としては,もし,夫婦として共同生活を助けてくれる相手が不満に思っている内容で相続を決めてしまうと,後々自分が責められて苦しいので,配偶者の意向を全く無視して決めるのは難しくなります。

予防策

これを防ぐには,どうしたらいいのでしょうか?
予め,子供たちの配偶者,孫を含めたコミュニケーションの場をできるだけ持てるといいと思います。
その中で,うちはどんな家庭として育ってきたのか,兄弟でどのように世話になってきたのか,子供の配偶者(嫁,婿)が亡くなったときは,どんな相続の仕方をしたのか,など予め情報を得て,できるだけ共通の理解をしておけるといいですね。
そのなかで,長男の妻が看護してくれているのであれば,どのようにお世話になっているのか,どんな苦労があるのか,など共通の理解もあるといいと思います。
例えば,親(被相続人)の立場であれば,息子の嫁に対して,「息子をもらってくれてありがとう。優しい嫁で息子は幸せだ」と言っておいたり,誕生日にお祝いしてみたり・・・などもいいかもしれません。
また,子供の立場であれば,予め夫婦間で「相続」に対する考え方を話し合っておき,配偶者が自分の親に対する不満があるようだったら,それを解消するようなコミュニケーションを自分が親との間でしておく,というのも有効だと思います。

私は弁護士の仕事をしていて,配偶者が意見を言うことで相続がもめてしまうのはよく分かっているので,夫から意見を求められない限りは何も言うつもりはありません。
しかし,多くの事例では,配偶者は自分の苦しい気持ち,苦労,考え方を配偶者にも理解してもらえず,そのやり場のない「感情」が激しい相続紛争となってあらわれることが避けられないので,事前にコミュニケーションをしておくことが大切だと思います。


3 相続人間のコミュニケーション

相続人間の考え方のギャップ

実の兄弟姉妹でももめてしまうケースは,相続人間のコミュニケーションができず,「考え方のギャップ」が解消されないままに相続が開始してしまった,と感じます。
例えば,長男は古くからの「長男が全て相続する」という考え方を持っている一方,弟,妹たちはそのように思っていない,親の面倒を看てくれたから,多少は多く相続してくれてもいいけれど,あの威張りきった言い方はない,最低限の希望を伝えただけなのに,長男の妻から「こんなに要求して強欲だ。二度と来るな」と言われるのが許せない…。
父の相続の際にもらったわずかな遺産も,事業に必要だから,と母から言われ,長男の言うとおりに名義変更したり,処分させられた。母の相続のときには,思い通りにされたくない…など。
これらのケースでは,もう少し,「当然」という言い方ではなく,「すまないけれど…」と言っていれば,ここまでもめずにまとまったのに,と思います。
多くの事例では,「長男だから当然全部もらえる」「親の面倒を看たから当然全部もらえる」という考え方と「当然ではない」という考え方のギャップから,感情が対立し,紛争が悪化しています。

予防策

これを防ぐにはどうしたらいいでしょうか?
やはり,普段から「あたりまえ」「当然」と思っていないか,他の兄弟に「感謝」できているか,を振り返ってみることが必要だと思います。
お互いに相手の立場,苦労は想像しづらいのですが,相手の立場になって,どう見えているのだろうか…と想像してみることが大事だと思います。
今の平等的な法制度で二男が譲ってくれるというのは当然のことなのだろうか,反対に,介護施設,制度も整備されている現在で,長男が多く相続するのだからといって,「親を家で看て当然」と思っていなかったのだろうか,と相手の立場に立って,「本当に当然なのか」を考えてみると良いと思います。

…私が,相談を受ける中で話される介護の実態は「泥棒呼ばわりされて,ののしられたり」「糞尿が飛び散っていたり」と本当に大変だと感じるものですし,10年以上もかけて相続紛争が続いているケースがあるのをみると,自分の相続分を少しでも譲ってくれるご兄弟は本当に有り難い存在だな,と思います。

もし,周りの方で「長男だから当然相続できる」と思われている方,反対に「長男だから親の面倒を看て当然」と思われている方がみえたら,違う見方もあるよ~,「有り難い」ことなんだよ~と伝えてもらえたら嬉しいです。
「当然」と思う気持ちが少なくなれば,相続人間での「感情」の対立は少なくなると思います。
また,異母兄弟,異父兄弟,配偶者のご兄弟,甥,姪など,相続人でありながら,これまで全く連絡を取っていなかった方もあると思います。もし,このブログで,そういう相続人がいることを知った場合には,被相続人が生きている頃から,少しずつコミュニケーションを取っていくと,「感情の対立」が少なくなると思います。

 

まとめ 感情対策と法的対策は相続紛争を防ぐ両輪

コミュニケーションが難しい場合

最初に「感情の対策」ができれば,「法的な対策」はいらなくなる,と書きましたが,実際には,離婚,再婚の事情,これまでの親子関係,兄弟関係の事情から,感情の対立を防ぐための「コミュニケーション」自体が難しいことも多いのが実態です。
その場合には,やはり「法的な対策」をしておくことも必要になります。
また,相続人が誰になるのか,その場合,どんな問題がおきそうか,実際の相続の紛争現場ではどんなことが問題になっており,解決するまでにどれくらいの時間,費用,精神的負担がかかるのか,知っていることで,相手方となる他の相続人が「これだけ譲ってくれたなら感謝すべき」と思えることも多いものです。
民法で相続はどうなっているのかを知らないまま,「当然こうなるはず」と思いこんでいた場合には,「なぜこうならないのだ」と感じることが,法制度を知ることによって見方が変わり,「これだけでも譲ってくれれば感謝すべきなのだな」と分かることもあります。
「実際に親の面倒を看た人は弁護士にこんな苦労を訴えているんだな」ということが分かれば,感謝の気持ちも生まれ,最初の時点で,感情的対立を防ぐような交渉が出来ると思います。

その意味で,紛争が起きそうなケース紛争が起きそうな場面を知り,そのための法的な対策感情的な対策を知っておくことは,どちらも両輪として大事です。
紛争の当事者になると,自分の立場しか見えなくなってしまいがちで,相手の立場,気持ちを理解するのは難しくなります。

弁護士に相談する理由・時期

弁護士は,場面を変えれば,どちら側の立場の話も詳しく聞くことができ,あるときには長男の相談を受けて,長時間気持ちをヒアリングし,苦労を理解して代弁し,あるときには,妹の立場での話を聞いて,不平等感に共感も感じて,気持ちを代弁します。その中で,反対の立場に立つと見える気持ち,苦労,感情にきづくことも多いのです

交渉開始後よりは,開始前の相続開始してからすぐ,相続開始後よりは,相続開始前の段階で,弁護士に相談してもらえれば,後にもめないためにできる「法的対策」「感情の対策」手段は多くなります
法的な見込みも知らないまま,交渉を開始し,「感情の対立」が激しくなってからでは,もめることをとめるのは非常に難しいです。
是非,少しでも早めに弁護士に相談してもらえたらな…と思います。

相続でもめないためのチェックポイント

この「相続でもめないために今できること」シリーズのまとめとして,再度注意して欲しい点を伝えます。

  • 自分の事案が相続でもめる可能性の高い事案かどうかを知る(類型:Part1,具体的事例:Part3,Vol1~3)
  • 相続でもめないためにできる法的対策を知っておく(Part2)
  • 相続でもめないためにできる感情の対策を知っておく(Part4)
  • 相続でもめる可能性が高い場合には,早期に法的,感情的対策をする

65歳になったらもめない相続チェック

もっとも,自分が亡くなることを想像して相続対策をしたり,親が亡くなることを想定して子供から相続対策をお願いすることは「金目当てか」などと言われ,難しいという話もよく聞きます。
なので,提案ですが,「65歳になったら,みんな一度は相続でもめないか検討してもらう!」が慣習になるといいと思います。
「みんな,65歳になったら,もめない相続チェックをしているから,一度やってみない?それで問題なければ安心だもんね」と親,友人などを誘えるようになるといいな…と思います。
実際に,65歳であれば,多くの方は定年を迎えて,誰に今後面倒を看てもらおうか,誰に事業を引き継がせたいか,など具体的に考えられる時期かなと思います。
また,子供さんがいなかったり,離婚,再婚しているような場合であれば,自分が今亡くなったとしたら,遺産は何があるのだろう誰が相続人になるのだろう,と洗い出してもらえると,いざというときに連絡を取らないといけない人も分かり事前に対策しないといけないことに気づけると思います。

~65歳になったら,一度,弁護士による「もめる相続度チェック!」受けてみて下さいね。~

このブログシリーズが,「相続でもめないために今できることはなんだろう」と気づく,きっかけになりますように。

相続でもめないために今できること」シリーズ,最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

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この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり18年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
著書「離婚調停は話し方で変わる」は,Amazonランキング「法律」部門ほか5部門で第1位を獲得。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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