介護ビジネスの罠?身元保証のリスク~東濃成年後見センターシンポジウム

003いつも読んでいただき,ありがとうございます。

今回は,岐阜県土岐市にあるセラトピア土岐で開催された権利擁護シンポジウム身元保証などの老後の不安解消を謳うサービスの実態」についての報告です。


このシンポジウムは毎年1回開かれているもので,私が監事をしている東濃成年後見センターのほか,多治見市・土岐市・瑞浪市・恵那市・中津川市の社会福祉協議会などが共催しています。

病院への入院・介護施設への入所の際に求められる「身元保証人」。
身内が遠方にしかいないお年寄り,身寄りがいないお年寄りには探すのが大変です。
そんな「ニーズ」に答えてくれる「身元保証人」を引き受けるサービス。

しかし,これを利用したために,お年寄りに大きなトラブル・損失がおきることもあるようです。

「身元保証人」サービスは,なぜ,トラブルが生じやすいのか?
「身元保証人」サービスを利用する場合には,どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?
「身元保証人」に替わるサービスは?
そもそも,「身元保証人」って必要なのでしょうか?

 


1 介護ビジネスの罠

身元保証人を大規模に引き受けていた公益財団法人「日本ライフ協会」が少し前に破綻した。
日本ライフ協会の「身元保証プラン」では,基本として,身元保証の引き受け,安否確認,緊急時の駆けつけ,死亡後の葬儀・納骨引き受けなどの費用として約165万円を一括して支払われていた。

破綻のきっかけは,葬儀・納骨に充てるために「預かったお金」のうち,約2億7000万円を代表者が自分の関係会社などの資金へ利用し,私物化していたことが発覚したため。

つまり,内閣府の監理下にはあったけれど,そのチェック機能が機能していなかった。
当初は,「預かり金」については,弁護士・司法書士事務所に預託することを想定して,「公益認定」を受けていたのに,実際の説明では,弁護士等に預託するサービスを利用すると費用が余分にかかることから,直接自分たちの法人が預かることを選択するよう誘導していたとの話だった。

やはり,人のお金を管理していると,魔が差すことがあるようです・・

結局,「身元保証」を依頼していた多くのお年寄りは,破綻によって,そのサービスが受けられなくなりますが,預けたお金のうちどの部分が返す対象になるのか,などとても難しい問題となりそうです。


このような問題がおきるのは,「身元保証」事業が許認可事業ではなく,だれでも自由に開業できるものであることも,関係していそうです。
今回は「公益財団法人」でしたが,そのような「法人」でなくとも,することは可能です。


実は,大きなお金を預かることもある事業ですがしっかりとした規制がなされていないこの分野。
契約者である「お年寄り」が,自分だけで,契約相手の信頼性,監督機能が充実しているのか,など判断するのは難しそうです。

そのために,思いもかけないトラブルが生じている,という実態があるようです。
みなさんのご家族,ご両親が契約されている「身元保証サービス」は大丈夫ですか?

 

 

2 トラブル事例と注意点

根本的には,「身元保証サービス」の中身が,その言葉からは,具体的にどんなサービスをしてくれるのか,はっきりと分からないことからトラブルが起きるようです。


例えば,
「安否確認をする」となっていても,次第に確認しに来なくなる。
「急病時に病院に駆けつける」となっていても,来てくれない。医療同意(手術への同意など)をしてくれない。 など。


身元保証をつけたい,という希望の中には,
①入院・施設入所時のお金の支払いの連帯保証をして欲しい
②判断能力を失った場合,家族の同意が得られない場合の手術同意・延命治療等の選択をして欲しい
③入院・施設入所・転院等の場合時の手続きをする身元引受人となってほしい
④入院・施設入所等した場合・あるいは,自宅にいる場合の生活支援(日用品の買い物・金融機関への払い出し等手続き代行)
⑤危篤時に病院・施設等へ駆けつける,遺体の引き取り手配・葬儀社との打合せをしてほしい
⑥亡くなった後は,葬儀の手配をして欲しい,喪主の就任,お布施等の支払をして欲しい

など,老後に入所,入院し,亡くなった後までの「お年寄りの不安」を解消したい,という様々な希望が含まれています。

その中で,何をどのようにしてもらうのか,具体的に「身元保証サービス」に関する「契約書」に記載しておく必要があります。

例えば,安否確認は,月何回,いつ頃に,どのような方法でしてもらうのか(来訪なのか,電話確認なのかなど)を決めておく,
「急病時」に駆けつける,というのは,具体的に入院の際には,その日のうちに病院に来訪する,手術については,あらかじめ,このように対応して欲しいと「書面」で渡す方法を考えるなどの対処が必要そうです。

具体的には,一度,信頼できるケアマネさんや,弁護士などに契約書をチェックしてもらう方がいいのではないかと思います。

 


3 身元保証にかわるサービスは

そもそも,「身元保証」はなぜ必要なのでしょうか?
分けて考えると,以下のようなことのため,となりそうです。
その「必要性」の項目毎に,他に使える手段がないか,シンポジウムで熊田弁護士が考えられていました。

①本人が賃料・入所費用・入院費用を支払わない場合の備え
→判断能力が不十分なため財産管理ができない,ということであれば,成年後見制度を利用して,施設等に安心してもらう。
(実際に,東濃成年後見センターが後見人になっている事例では,入所等の際に「身元保証」を請求された事例はないようです)
→そもそも,収入が足りない場合には,生活保護等の公的援助で対処する

②死亡した場合の葬儀,残置物の引き取りに対する備え
→死後に葬儀社等へ手配をするような,死後事務の委任契約をしておく(本人の判断能力が不十分な場合は,成年後見人等が締結する)

③本人に手術が必要になったときの備え
→そもそも手術等の同意権は本人だけにある(一身専属権。なので,成年後見人にも,同意権はありません)。
なので,判断能力が多少低下していても,可能である限り本人に説明して同意をもらうことになる。家族の同意は,「本人の意思を推測できる」という意味しか無い。
この同意権を「身元保証事業者」という第三者に予め委任しておいてもらう,というのは「本人の意思を推定できる」と言えるか疑問。
「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」上も問題がある。

④本人が他の入所者や施設・病院に損害を与えたときの備え
→本人の判断能力の低下などにより損害を与えた場合は,身元保証人に責任を負わせるのは難しいのではないか。
ケア体制を整備すべき施設等が保険などにより,リスクを負担するより,仕方ないのではないか。

⑤本人に見守りが必要になったときの備え
→認知症による徘徊などに「身元保証事業」で対応するのは困難。
国が進める認知症施策・GPSなどでの見守り作業を進めていく。

⑥本人が入院・入所した場合の身の回り品の準備
→成年後見人等がいれば,その人に手配してもらう。
いない場合には,本人からの依頼に基づいて,病院・施設側の相談支援の中で出入り業者に依頼する,通信販売を利用する。


このような「身元保証」にかわるやり方を利用すれば,「身元保証サービス」を使わなくてすむでしょうか??
しかし,やっぱり,自分が,この状況になった場合を考えると,もし身寄りがなければ,こまったときには,何でも頼んでおける人がいて欲しい,というのが人情のような気がします。
私が成年後見人をしている案件でも,実際に施設から「身元保証」を求められたことがありました。弁護士なので,立場を説明し,最終的には,身元保証をすることはなくすみましたが,法的な知識が十分でない場合には,施設,病院側から求められれば,「身元保証」をつけなければいけない,と思うだろう,と思います。

 


まとめ

こう考えると,確かに「身元保証サービス」は,いろいろと問題があるのですが,利用する「お年寄り」側や病院,施設側としては,できれば「身元保証人」がいて欲しい,という実態はかわらない気がします。

私も病院の顧問をさせていただいているので,その気持ちもよく分かります。


なので,個人的には,「名称」を「身元保証」とするかどうかはともかく,老後の見守り事業,保証事業的なものの必要性は今後も続いていく,と思います。

私自身は,判断能力が低下した後も,自分の意思に基づいて,財産を使ったり,施設に入所したり,医療行為をできるように,判断能力が十分にある頃や死後事務の対応も含めた形での委任契約,「任意後見契約」をすることが一番いいと思っています。
(任意後見・医療同意等の必要性については,こちらに書きました)

ただ,その相手方,財産を預ける相手方を誰にするのか・・・難しい問題です。
「誰を信頼していいのか」・・・

今回は,「公益財団法人」に預けたけれど,破綻してしまった。
親しい友人にお願いした場合,自分の判断能力が低下した場合でも本当にきちんと管理してくれるのか・・・
支援してくれているケアマネさんはどうなのだろう?
遠いけれど親戚の●●さんは・・・?

本当は,このような事業をする場合には,少なくとも「許認可」方式にして,行政庁の監督ができるようにしておくべきなのかな,と思います。

あとは,私たちのような弁護士・司法書士などの専門職に依頼すると,少しはリスクが下がるかな,と思います。

裁判所が監督機関となる点も,いい点だと思います(ただ,あまり,監督機能が十分働いていない,という問題はあります)

とても,残念なことですが,後見人案件で,弁護士等の専門職が使い込んだ事例もあるので,その選択も絶対ではないでしょうが,「資格」で仕事をしているところがあるので,そのようなことをすれば,仕事ができなくなる,という意味で抑制がかかることが一般的だと思います。

あとは大きな財産は「信託」しておくのか・・・
最近は,被後見人の財産額が多い場合,裁判所から一部を信託銀行に信託するように指導されている,という実態がありますね。それはそれで,信託報酬を払わないといけないので,まじめに後見人をされている方からは不満も多いところです。

信託銀行等も破綻の可能性を考えると絶対ではありませんが,その規模や「銀行」になるための金融庁の「免許」が必要なこと,「信託業」をするための「認可」も必要とされていることなどから,ある程度の信用性は確保されている,ということになるでしょうか?

弁護士らしい意見ではないでしょうが,結局は,普段の生活の中で,財政的にも十分資産がある方,人間的も信用できる方「信頼できる誰か」を見つけることしかないような気がします。そのためには,「学ぶこと」,色々な方と出会うこと,が大事ですね。

今日はこれから「家族信託」「民事信託」に関係する研修を受けます。
このような方法が,本当に利用できるのか,信頼できる制度となり得るのか・・・身元保証に替わる方法となり得るのか,学んできます♪


今回は,おちのない,まじめな話でしたが,最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり18年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
著書「離婚調停は話し方で変わる」は,Amazonランキング「法律」部門ほか5部門で第1位を獲得。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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