多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

交通事故で不利になるのは?事故直後にすべき3つのこと

交通事故で不利になるのは?事故直後にすべき3つのこと

いつも読んでいただきありがとうございます。突然ですが,交通事故にあった際,事故直後に何をしないといけないのでしょうか?
実は交通事故のご相談を受けていると,事故直後にこうしておけば良かった,と後悔されるケースも少なくありません。
事故直後の対応を誤るとご自身に不利になり,反対に,正しく対応していれば,不利になることを回避することも可能です。

今回は,交通事故に遭ってしまったとき,特に「事故直後にするべきこと」について,ご相談を受けている中で大事だと感じる3つのことことをお伝えします。

1警察と保険会社への連絡

交通事故が発生した場合には,運転者には警察官への報告義務が生じます(道路交通法72条1項)。
この報告義務は,けが人のない物損事故であっても生じます。

報告義務違反には罰則も設けられています(道路交通法119条第1項10号)。

交通事故により負傷者(けが人)がいる場合には,その救護をする義務があります(道路交通法72条1項)。

負傷者を安全な場所に移動させて,救急車を手配するなどの必要に応じた救護活動をする必要があります。

この救護義務違反は「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられることがあり,加害運転者が救護義務を怠った場合については,「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という軽くない法定刑が定められています。

時々,中央分離帯などの建造物に衝突したものの,自分の車両だけが壊れただけと思い,そのまま運転を続けて,自分の知っている自動車修理工場(自動車屋さん)まで行ってしまう,というケースを見かけます。そのまま停車すると危険があることなどから2次被害防止のためという話もされるのですが,交通事故現場から大きく離れてしまうと,結果として負傷者がいる場合には(例えば中央分離帯にぶつかったことで反対車線で事故が起き,けが人が出たようなケースなど),ご本人は逃げたつもりはなくとも,この「救護義務違反」として扱われてしまうこともあります。

物損,人身事故のいずれでも,報告義務はあるので,まずは,事故現場に近い安全な場所に車両を停め,警察に連絡しましょう。

報告を受けた警察官は,事故報告書や実況見分調書(人身事故の場合)を作成します。
これらの書類は,交通事故の状況を確認して示談交渉をしていく場合には,基本となる重要な資料となります。
交通事故が確かにあったのかどうかや過失割合(どちらにどれくらいの落ち度があったのか)を判断する場合に使います。

警察に通報しなければ,これらの資料も使えないことになるので,示談の交渉をする際にとても不利になり得ます。

また,警察に交通事故の報告をせずにいると,損害があっても保険会社の保険金でカバーできない場合もあり得ますので,注意しましょう。
事故にあった場合には,警察への連絡とともに,ご自身が加入している任意保険会社に連絡を入れましょう。
私も経験がありますが,交通事故にあうと,やはり動揺します。ご自身が加入している保険会社に連絡すること(代理店で契約している場合には,代理店のよく知っている方に対応してもらえると安心できると思います)で,初期対応のアドバイスや相手方との対応もしてもらえます。

2 相手方の住所・氏名,連絡先を交換する

あなたが交通事故の被害者と言える場合,交通事故後,速やかに示談交渉がされ,被害を回復して欲しいと思います。
そのためには,相手方の加入する保険会社や相手方の連絡先を知っておくことが重要です。
相手運転手の業務中の事故であれば,勤務する会社にも損害を請求できる場合もありますので,その点も意識して,車の所有者なども確認していきましょう。

車を運転していた相手方運転手の『住所』『氏名』『連絡先』『車のナンバー』『自賠責保険』『加入している任意保険会社名』を必ず確認しましょう。
運転免許証や加入している保険(自賠責保険証および任意保険証)の分かる資料(保険会社の名称および証明書番号など)を確認させてもらうと良いでしょう。
車検証と一緒に保管されていることも多いので,尋ねてみましょう。

名刺などをもらって,勤務先も確認できるとより,後の交渉時に困らないでしょう。

勤務先の車両を使っていた場合のように,自動車の所有者や管理者が加害者(相手方運転手)とは違う場合には,自動車の所有者の氏名,連絡先などを確認出来るとより良いと思います。
(なかなか,そこまでの心の余裕がないかもしれないのですが・・・)

相手側が協力してくれない場合でも,自動車のナンバーを写真に撮ったり,相手方の情報が分かるようにメモをしましょう。
車体に会社名などが書かれている場合には,これもメモしましょう。

3 事故現場の証拠を残す

最近は,スマホで簡単に写真撮影が出来るようになったこともあり,写真を撮って証拠を残す,ということは,何となくやらなければならないこととして皆さんやられているかなと思います。

確かに,事故態様に争いがない場合や,その後円満に示談が成立する場合には,これで十分なこともあります。
しかし,中にはこれだけでは不十分というケースがあります。
弁護士として接する事故は,事故態様に争いがあるものが殆どですので「事故現場でこれをしていてもらえたら・・・」と思うことが多々あります。

証拠は警察に通報すれば,警察が残してくれるから大丈夫,と思われるかも知れないのですが,実は,それを全て簡単に使えるわけではありません。
警察は,犯罪の捜査をする機関ですから,交通事故の刑事事件(ないし行政処分)としての部分の捜査はしますが,民事の部分には不介入の姿勢です。
刑事事件として作成した書類を当然に相手方との交渉(民事部分)に警察は使わせてくれるわけではありません。弁護士会照会などの一定の手順を踏んだ場合に,限られて許される資料が開示されるにすぎないので,その点は注意しましょう。

また,刑事事件の対象となる人身事故については,「実況見分調書」いう詳細な事故状況図等が作成されますが,物損事故については「物件事故報告書」という手書きの簡単な図のようなものしか作成されません。

「実況見分調書」,事故状況を記載するプロの警察官が作成するものですから,客観的事故現場の状況や,本人の指示に基づいて作成される客観的資料ですが,この調書を作る時点で,事故から数日経過して作成されることが一般的です。そのため,事故当時には存在した証拠が失われてしまったり,記憶も薄れてしますので,証拠としては不十分な点が生じてしまします。
「物件事故報告書」は,ごくごく簡単な図面ですから,どうしても証拠としての価値は劣ってしまいます。

保険会社も事後的に事故状況図などを作成してくれることもありますが,やはり,事後的に作成されるために,同様に不十分な点が生じます。

ですから,是非,事故に遭われた際には,どこで衝突したのか,どこで車両が停止したのか,ブレーキ痕がどこについていたのかなど,できる範囲で証拠を残していただきたいと思います。現在は,スマホでなくとも,写真撮影機能の付いている携帯電話が殆どだと思います。したがって,写真を撮って残しておくことは比較的簡単になってきたと思います。

事故直後は気が動転してそれどころではないと思いますし,後々事故態様に争いが生じるなどということは考えられないとも思います。

しかし,このブログを読んでいただいている方々には,どこか頭の片隅に「証拠を残す」ということを意識して頂ければと思います。

事故後にあれだけ謝罪していた相手が,突然思いもよらないことを言い始めて事故態様に争いが生じるということも,実は少なくありません。

この意味で,当事者の会話を自分で録音しておくことも大事だと思います。
相手方とのやりとり,警察に話した内容など事故に関する内容は全て録音しておくと良いと思います。

また,ドライブレコーダーによる記録があれば,事故態様についての双方の食い違いによる交渉の遅れもかなり減らせます。ドライブレコーダーの設置も考えてもらえたらと思います。

後に紛争となっても,証拠がない,ということで悔しい思いをされている方々に接し,これに関わる私たち弁護士も立証の過程で悔しさを感じることが多々ありますので,今回は交通事故直後の注意点についてお伝えしました。

それでは,今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!