多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

サブリース契約(賃貸ビル業者への一括貸)の注意点

サブリース契約(賃貸ビル業者への一括貸)の注意点

chintai-keiyakuいつも読んで下さって,ありがとうございます!
最近朝晩は,寒くなってきましたが,みなさまは風邪など引いていませんか?

今回は,久しぶりに弁護士らしく!主に不動産のオーナーさん向けの法律のお話です。
ビルの一室を賃借して事業をしたり,マンションを借りて住んでいる方の注意点もありますので,「賃借人」の方も参考にしてもらえると嬉しいです。

みなさまは,「転貸借」って知っていますか?
ひと言でいうと,「誰かから借りた物を,さらに誰かに貸す」ということです。

不動産の場合なら,不動産のオーナー(所有者)Aから,Bがビルの一室を借り(原賃借人),BがそれをさらにCに貸す(転借人)という場合に,BとCの間の賃貸借関係をいいます。

転貸借の場合,通常の賃貸借とは違う注意点があります。
転貸借契約をする場合には,不動産所有者,転借人は,どんなことに注意をしたらいいのでしょうか?

また「転貸借」契約の一形態として,「サブリース契約」というものがあります。これは省略して説明すると,「所有者が建築した建物を賃貸ビル業者が一括して賃借して,個々のテナントに転貸する」契約です。
転貸借の一つの形態ですが,実は,通常の「転貸借」とはさらに違う注意点があります。
今回は,これら「転貸借」「サブリース契約」の特徴,注意点についてお話ししたいと思います!

  • 転貸借をするときの注意点とは?
  • サブリース契約の良い点は?
  • サブリース契約の注意点は?

1.転貸借の注意点

転貸借は,所有者Aと賃借人Bの賃貸借契約(原賃貸借契約)を土台として,なされるものなので,よく「親亀」「子亀」の関係に例えられます。
つまり,Bが,所有者Aに賃料を支払っておらず,Aが原賃貸借契約を債務不履行により解除してしまうと,いくら転借人CはBに賃料(転借料)を支払っていても,ある日突然,オーナーであるAの代理人弁護士から「原賃貸借契約が解除されましたので,出て行って下さい」と通知が来ることもあり得ます。
親亀がこけたら,子亀がこける」などとも言われます(弁護士業界だけ・・・かな,笑)

そのため,転借したビルの一室で事業をする経営者は間に入っているBが信頼できる方なのか・・・(この判断は難しいのですが)しっかりと見極めることが必要となります。
また,以前は,自分の母(B)が他人から借りて使っていた家を母が施設入所することになったので,その間,誰かに更に貸す,といったような居住用の住宅を転借する場合も,入居する転借人は,間に入っているBが信頼できる人なのか,気をつける必要があります。

実際に時々,転借人から,突然出ていくように言われました・・・というご相談を受けることもあります。
転貸借で不動産を借りる場合には,自分が一生懸命賃料を支払っていても,出て行かないといけない可能性があることを「リスク」として意識してもらえたらと思います。
もっとも,不動産のオーナーが何の理由もなくBとの間の原賃貸借契約を「合意解除」したり,Bが賃借権を放棄することで,転借人を追い出すことはできないと判例上されています。

2.サブリース契約とは

サブリース契約は「所有者が建築した建物を賃貸ビル業者が一括して賃借して,個々のテナントに転貸することで利益を得る」契約です。
特徴としては,以下のようなことがあります。

  • 賃借人(B)が不動産賃貸に関する知識,経験がある(不動産業者が多い)
  • 最初から賃借人(B)は自分で使用するのではなく,第三者(C)に転貸して,収益を上げることを予定している。
  • オーナー(A)と賃借人(B)はそれぞれの部屋毎に賃貸借契約をせず,建物一棟を借り上げる形式を取っていることが多い
  • 通常の転貸借は,転貸する度にオーナー(A)の承諾が必要だが,サブリースでは,包括的に承諾(同意)を得ていて,個別の同意をとっていないことが多い

これによって,オーナー(A)には,一般的に以下のようなメリットがあります。

  • 賃借人が知識,経験を活かして不動産の管理・運用をしてくれるので,不動産賃貸の詳しい知識がなくとも,「不動産賃貸業」をすることができる
  • 自分で各室を個別に賃貸借契約をする契約の際の手間,管理の手間,苦情対応,賃料等の請求の手間を省くことが出来る
  • 賃借人から安定的に賃料収入を得ることが出来る(個別の入居者の支払い状況にかかわらず)

このように,通常の転貸借の制度が所有者A,原賃借人B,転借人Cがそれぞれ独立して,契約をしている関係であるのに対して,「サブリース契約」の場合,オーナーであるAは,Bを利用することで得をし,Bと一体化してCに貸しているという構造があることに特徴があります。

 

3.サブリース契約の注意点

サブリース契約の場合,先ほど書いたような特徴があるので,通常の転貸借契約とは違う結果になることがありますので,この点はオーナーAさんが注意すべきことになります。

つまり,親亀がこけても,子亀がこけない・・・ということがあり得ます。

たとえば,賃貸ビル業者Bが,この物件は採算が合わないとして,撤退することとしてBから所有者Aに原賃貸借契約の更新をしない,と通知がされたとします。
この場合,期間満了により,AとBとの賃貸借契約は終了してしまいます。
転借人Cは,B会社の社長の友人で,いい感情も持てないので出て行って欲しい・・と思ったとしても,認められないことがあります。
平成14年3月28日の最高裁判所判例では,同様の事案で私が記載した「サブリース契約」の特徴を踏まえて,「信義則上」賃貸借契約の終了(AとB)をもって,再転借人(C)に対抗することが出来ないとされています。
つまり,AはBの知識,管理能力を利用してメリットも受けてきたのに,そのBがいなくなったからという理由で突然転借人Cに出て行け,というのは,Cに過酷である(Aの人選ミスなのに・・・)という感覚だと思います。

実際に,不動産の「管理」だけをBに任せ,メンテナンス,賃料の回収代行はBがするけれど,賃貸借契約自体はAとCとの間で直接結ばれるケースもありますが,このケースの場合,いくらAがB不動産管理を不服に思い,管理契約を解除したといっても,Cに出て行ってもらうことは出来ません。
このケースと比較した場合に,実態としては変わらないのに,Bを「賃借人」として「転貸借契約」の形を取るのかどうかで,結論が異なるのは違和感がありますね。

では,AB間の契約終了の理由がBが賃料を支払わなかったことによる場合はどうなのか,Bが暴力団関係者などで信頼関係が破壊され,解除された場合はどうなのか・・・と考えていくと,それでもCに出て行ってもらえないとすると所有者Aが酷な場合もあるかも知れません・・・

私は,「信義則」は「原則」を貫いた場合に,「公平感」「平等感」が保たれない場合にバランスを取るための理論だと思っています。
なので,BとCの一体性,密接性や,AB間の契約解除にCがどれだけ関与しているかによっては,やはりCに出て行って,と言える場合も出てくるのではないかと思います。

・・・ということで,不動産のオーナーさんは,不動産の賃貸ビル業者さんの「目利き力」が必要となりますね(これまた難しい問題ですが)
不動産建築会社が一括借り上げすることを前提に土地の所有者に建物(ビル,マンション)の建築をすすめることもありますが・・・建物を建てるために多額の負債も生じますので,このあたりのリスクも考えておきたいですね!

 

4.まとめ 転貸借によるリスクは弁護士に相談を

「リスク」を知った上で「サブリース契約」を利用するかどうかによって,所有者(オーナー)の覚悟は違います。
サブリース契約は説明したような良い面もあるので,リスクを知った上で,利用することはいいと思います。
しかし,知らずに利用しておりますと,いざ契約を解除したい,明け渡しして欲しい,または,管理会社から契約を解除されてしまった・・・というときに困るので,予め弁護士に相談されることをお薦めします。
(契約書の作成,チェックだけでは正直に言うと,あまり弁護士にとって「仕事」にはなりませんが・・・不動産が有効に活用されなかったり,不動産に関してトラブルが生じることは,不動産を利用している事業活動や居住環境に大きな打撃となり,地域経済にも影響するので,利用してもらえたらと心から思っています)
サブリースの場合,Bと比べれば所有者であるAには不動産管理,法律の知識がないことも多いのですが,やはり,転借するCとの間では,「私は知識がないからしりませんでした」ということは通りにくい,不動産を貸す以上,間に入る賃貸ビル業者(B)の選定ミスはこちらがとるべき,となることを知って欲しいと思います。

つまり,賃貸不動産のオーナーは,「消費者」ではなく,「事業者」としての高度の知識が求められているのですね!
もし,その知識が不足しているな・・・と感じるときは,是非知識を補充して下さいね。
弁護士は,「賃借人が入りそうかどうか」「利回り」「不動産としての資産価値」「不動産管理業者の信用性」などについては,詳しい知識はないので,当事務所では,不動産鑑定士(地元の不動産事情,不動産業者にも詳しいので,頼りにしています!)とも協力して,このあたりも含めた無料相談会もしております。

少しでも,不安や疑問を感じたらお気軽に私たち不動産相続総合無料相談-多治見に相談して下さいね。

このブログが,「不動産の転貸借契約を考えている」というオーナーの皆様転借したビルで事業をする予定の方,転借したマンションで住もうとしている方々のお役に立てますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!