
今回も交通事故による高次脳機能障害とは?介護費認定の問題点,高次脳機能障害による将来介護費・具体的な損害認定額は?に引き続き,交通事故に遭って,被害者が重度の高次脳機能障害となり,被害者の家族が介護をする必要がある場合の介護費用について,どんな場合にどのくらいの損害として認めてもらえるのか,問題になる点をお伝えします。
高次脳機能障害の場合,介護をする方は,従来から想定されている日常生活動作を介護する場合と異なり,「見守り」「声かけ」中心とする「看視的付添」が中心となりますが,損害の算定額,方法に従来型の「介護的付添」による損害算定と違いがあるのでしょうか?
被害者本人でない,被害者の家族の介護の負担は,損害として,どのように計算されるのでしょうか?
高次脳機能障害を残した被害者に対する介護負担の損害日額は,いくらくらい?
介護体制(方法)が後に変わる場合,損害額の算定はどのようにされる?そのためにすべきことは?
今回は,高次脳機能障害がある場合の,介護負担の損害について認めた裁判例からどのようにしたら,損害認定が適切になされるのか,検討した点をお伝えします。
1 後遺障害等級による違い
後遺障害等級1級と2級では,当然ではありますが,1級の方が高額の日額の介護費が損害としてに認定されています。
1級では,2万円に近く,2級では1万円を下回るあたりが多くなります。
「高次脳機能障害による将来介護費・具体的な損害認定額は?」の具体的な裁判例からすると,高次脳機能障害と脊髄損傷で比較すると,同じ等級でも高次脳機能障害事案の方が高く認定されているようにも見えます。
しかし,このことだけで,裁判所が看視的付添(日常生活動作を介護するのではなく「見守り」「声かけ」中心とする付添)が大変である,と判断しているために金額が高く認定されているということは決められないかなと思います。
もっとも,裁判例の中でで介護の内容として「見守り」や「声かけ」の負担があるとの事実認定をしたうえで,将来介護費を認定しているので,看視的付添の負担もが少ないと判断しているわけではなく,看視的負担を介護費を計算する際に損害額算定の基礎として,同様に損害算定を判断してくれる余地はあると思いました。
2 事案ごとに丁寧に事実をあげること
こうしてみると,看視的付添か,一般的な付添(日常生活動作に対する介護的付添)かだけで,介護費の認定に大きな差があるというわけではないかなと思います。
比較的重度の高次脳機能障害事例では,脳外傷により,高次脳機能障害だけではなく,身体性機能障害(麻痺・運動障害)もあり,そもそも日常生活動作の介護の負担が重い事案がほとんどのため,介護の内容が看視的付添いにとどまっていないことも多いです。
他方で,「高次脳機能障害による将来介護費・具体的な損害認定額は?」で比較したせき髄の障害事例の場合は,遺障害等級1級の場合でも,上肢が自由な場合など,日常生活動作の一部(多く)が自立できている被害者もいるので,その場合には,介護費が抑えられている例もあると思われますので,平均値として,せき髄の障害の事例よりも,高次脳機能障害の事例の方が,将来介護費の認定額が高額になったと考えられると思います。
つまり,それぞれの個別の事案によって介護の内容や負担に差異があることを前提に丁寧にご自身の交通事故による介護の負担について具体的に状況を伝えるのが重要だと思います。
3 介護体制の変更がある場合
介護体制はずっと同じ状況が続くわけではなく,交通事故被害者である親族の心身の状況や,介護する側の状況によって,介護体制が変わること,変えざるを得ないことも出てきます。
こういう介護体制の変更がある場合,将来介護費の認定は,どうなるのでしょうか?
高次脳機能障害に限りませんが,特に在宅介護の場合,親族による介護からスタートしつつも,親族が高齢になった以降は職業人による介護に切り替える(介護体制の変更)ことも多いので,介護体制の変更を前提とした介護費の請求がなされることも多いです。
今回ご紹介した事例(せき髄の障害を含む)のうち14例で,裁判所は,介護体制の変更を前提とせず,被害者の平均余命まで一律の金額の将来介護費を認定しています。
そのうちの12例は,そもそも被害者側で介護体制の変更を前提とした請求をせず,被害者側で介護体制の変更がないことを前提として一律の将来介護費の請求をした事例です。
そのため,積極的に介護体制の変更があることを主張しない場合,基本的には,請求通り,介護体制の変更を前提としない一律の将来介護費が認定されているので,裁判所が,介護体制の変更の認定をするか否かは,原告の請求によることが多いと考えられます。
介護体制の変更が見込まれ,それによって介護費の負担が増えそうな場合には,積極的に介護体制の変更される可能性が高いという点,その場合の介護費の負担について,主張,立証をしていくという必要があります。
まとめ 選んで伝える
今回も,引き続き,看視的「介護」の負担を算定する場合,どのように算定されているのか,一般的な介護的付添と違うのか,について,お伝えしました。
しかし,検討してみると,抽象的に「看視的」「介護的」付添だから,という理由で金額に差があるわけでもない状況がみえてきます。
そして,将来に介護体制の変更がある場合にも,当然に変更を前提として介護費が認定されるわけではなく,具体的に主張をしなければ,損害額の算定には反映されにくいことも分かります。
そのために,ご自身で具体的な介護の状況を選んで,伝えていくことが重要かなと思います。
その際に,裁判所がどのように考えているか・・を知らないと,思ったような損害が認められないことに苦しい思いをされてしまうのではないかと思いますので,裁判所の「考え方」,計算方法の傾向を知っておくことは大切ですので,この点は引き続きご紹介したいと思います!
このまま紛争を継続して裁判になった場合の結果を予測しながら,そのとき,どんな事実(状況)を選んで損害の主張をするのか,自分の事案で損害認定を適切にしてもらうためにどんな事実を選択してどのように伝えるのか,など決めていくことも重要だと思います。
細かな算定方法,裁判での手続きなどは分からなくても,大まかな流れやどんなことが裁判では問題になるのか,などが分かることで,自分の場合はどのような点を意識して交通事故後の手続きを進めたらいいのか,不安や不満を解消して,被害回復の回避,回復ために出来ることを知るヒントとなると思って,お伝えしています。
知っておくことで,最適な損害回復が出来る可能性が上がります。
また,「知識」を得ることで,自ら「選択」して,万一加害者として交通事故を引き起こしてしまった場合にも,相手に十分な賠償金額を支払ったり,自分自身も十分な補償を受けられることに繋がります。
これからも,そのための「知識」についてお伝えできればと思います。
それでは,今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました!!