多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

面会交流支援団体が支援現場で感じるトラブル回避のための注意点

面会交流支援団体が支援現場で感じるトラブル回避のための注意点

いつも読んでいただき,ありがとうございます。
以前,勉強会に参加させていただき,面会交流が出来るよう支援する立場ながら,面会交流することが子の利益のために良くないケースも含め,バランスよく情報を提供してくださっていて感動した内容を「面会交流は本当に子どものために必要か?」としてご紹介しました。

この勉強会を実施して下さった面会交流を支援している団体「親子のふれあいと絆を大切にする会」,今は,面会交流.comさんとして活動されています。
その支援者の方(男性)から,最近私が配信している面会交流(離れて住む親と子の面会)の動画について,嬉しい感想とさらに面会交流支援の現場での体験から,トラブル回避をするための実践的なアドバイス,具体的なアドバイスをいただきましたので,ご紹介します。

当事者だけで面会交流がうまくいかない場合に,支援するための団体が増えてきています。
どんな団体を選んだらいいのか?選び方の基準も難しいところです。

最近,私の思想が一部の方に誤解されている感が否めないのですが…(笑)
私自身は,従来から,子どもが愛されているという実感を得て育つために,面会交流をすることも,とても大切だと思ってきました。

しかし,一方で,面会交流ではトラブルもとても多く,会わせることが苦痛と言われる同居親のご相談も多いのは事実です。
そして,「子の利益」が最優先で決められるのが面会交流ですから,「子の利益」とならない面会交流であれば,制限されるべき場合も,もちろんあります。

本当に子に負担の少ない「子の利益」となる面会交流,継続できる面会交流となるには,
出来るだけ面会交流をする際のトラブルを回避することも,とても重要だと思っています。

面会交流を実施する際には,どんな点でトラブルになりやすいのでしょうか?
最近の傾向から,面会交流でトラブルが生じやすい場面とは?
面会交流を支援してくれる機関は,どこが信用できるのでしょうか?

子どもにとって,本当に良い影響がある面会交流,子どもも幸せになれる面会交流には,トラブル回避をするための注意点があります。

面会交流時のトラブルを回避して子が安心して面会出来るためのポイントとして,教えていただいたことを,私自身の動画のご紹介も含めつつ(!)シェアします。

1 面会交流でトラブル回避するためにおさえておくと良い13のポイント

私のYouTube動画では,現在面会交流をテーマに,連続してお話しています。
その際,「面会交流で取り決めるべき内容は?面会交流でトラブル回避するために取り決める内容としておさえておくと良い13のポイント」
というテーマで解説した動画▼を観て下さって,お褒めの言葉をいただきました。

「他のところの動画チャンネルでは見られないくらい,きめ細かな説明や解説をされていて,本当に凄い!と思っています。困っている方や悩まれている方には,是非,木下先生の動画を見てほしいと思います。」

…すごく励みになりました。嬉しいです。

私は,同居親,女性側の依頼だけを受けているわけではなく,別居親,男性側の依頼も受けています。
また,私自身が子の立場として,親の紛争状況をどのように感じていたのか,自分自身の体験としても分かりますし,弁護士として関わる事案においても,どのようにお子さんが感じているのかが分かる場面も沢山あります。

なので,それぞれの感情もあって難しいことを実感しつつ,それでも,「子の利益」を考えて面会交流について考えてもらえたらいいな,という思いから,出来るだけバランスよく,双方の立場の方がどのようなことを思っているのか,どの点でつらい思いをされるのか,それによって,どのように子に影響があるのか,を伝えていきたいと思っています。

弁護士として個別の案件について依頼を受け,代理人の立場になる場合には,別居親として面会交流を求める立場,同居親として面会交流を求められる立場として,それぞれの依頼者の立場に寄り添って「子の利益」に合致するよう支援をしていくので,その時のその事案における依頼者の立場から見た「子の利益」の追求になりますが,動画解説では,立場を離れて,出来るだけ,どちらの立場の方の視点も紹介することで,自分自身の視点と相手方の視点を知りながら,双方の立場の方が「子の利益」のためにどうしたらいいのか?を考えてもらえたらと思って解説をしています。

面会交流実施の際,トラブル回避のため,どのような点を取り決める内容として意識するといいでしょうか?
どのような点でトラブルになることが多いのでしょうか?参考になれば嬉しいです。

2 トラブルの生じる具体的場面と回避方法

冒頭の支援団体の方から,面会交流支援をしている際に,経験からトラブルになる事例として,気になることを教えてもらいましたので,ご紹介します。

①写真や動画の撮影の可否およびSNS等へのアップの可否

←よく勝手にしてしまう別居親がいる,とのこと。

②面会交流中の飲食の可否および別居親が弁当(←手作りの場合あり)やお菓子の持参の可否

③毎回のプレゼントの可否

←プレゼントは,誕生日やクリスマスに限らず,子どもにプレゼント(おもちゃとか)を渡したいと別居親はよく持参することがある。
ダメですよ!と何度言っても持ってきたりすることがある,とのこと。

④面会交流中の様子(どんなことをして過ごしたか?)などの別居親から同居親への報告はどうするか? 必要か?

←実際にどんな風に面会交流がなされたかを知りたい同居親もいますし,同居親が子どもに面会交流の様子を根掘り葉掘り聞いてしまって,子どもに圧をかける同居親もいるようです。
面会交流支援では,支援担当者が同居親に面会交流中の様子を,必要な場合や同居親から要望があった場合に伝えています,とのこと。

・・・なるほど,さすがに面会交流を実際に支援している立場の方からは,現場として,どんな場合にトラブルがあるのか,分かりやすいです!

確かに,①の動画撮影,写真撮影のトラブルは私自身も経験としてよくありますが,さらにそれをSNSに投稿する,というところが,現代的な問題点だなと思いました。
面会交流をしている,ということを知られたくない同居親もいると思いますし,子ども自身も知られたくない,少なくともSNSで自分の知らない多くの人に伝えるのはやめて欲しい,と思っていることもあると思います。

法律的に言うと,肖像権の問題などもあって,親権者,子どもは投稿することをどう思っているのか‥?というのも,視点として考えて欲しいところかな,と思います。
難しい法律論はともかく,お子さんがどう思うか,親同士がトラブルになること自体がお子さんにとっては負担になると思いますから,トラブルなく面会交流を継続するためにどうしたらいいのか?ということを考えてもらえるといいな,と思います。別居親の方には注意をして欲しいところです。

②の飲食に関することも,確かにトラブルになりやすいですね。幼い子の場合,まだ食べさせていない食べ物によるアレルギーなどの心配,お菓子は出来るだけ食べさせてくないと思っている同居親に対し,別居親が面会交流時に関係なくお菓子を与えることによるトラブルなども確かにあります。
私自身の経験としては,アレルギーもあって,同居親側がお弁当を作って持たせる,というようなパターンもありましたが,別居親が弁当を合意無くして準備してしまうことも,トラブルになるんだな,と改めて思いました。注意して欲しいところですね。

③のプレゼントについては,裁判所が作成しているパンフレットにも注意事項として書かれていることですが,やはり現場でもトラブルになることなのですね。
別居親としては,大好きな子どものためにプレゼントをしたい,という純粋な気持ちのことも多いと思いますが…なぜそれがトラブルになるのか,面会交流の充実のために,なぜ避けた方がいいのか,私も動画でも解説していきますが,別居親の方には,トラブル回避の視点として持っていただきたいな,と思います。

④は,なるほど!と思いました。ここは,私も少し見落としていた視点だなと思いました。
確かに,面会交流中にけがをしたのに別居親から報告が無かった,などと同居親から今後の面会交流の継続への不安や不信感を言われることがあります。
なので,面会交流中の様子の報告は,今後も安心して面会交流を継続してもらうために,考えると良い視点だな,と思いました。

面会交流支援者が面会交流の様子を見ている際には,この点を伝えてもらえるのも安心だな,と思い,支援を受けられる方のメリットだなとも思いました。

ついつい,面会交流についての様子を子どもに聞いてしまって子の負担になってしまう同居親さんもいる,ということなので,より積極的に伝える方法として,
交流ノートのやり取りをするという方法として,明石市の「こどもと親の交流ノート」を教えてもらいました▼
https://www.city.akashi.lg.jp/seisaku/soudan_shitsu/kodomo-kyoiku/youikushien/documents/1youikutecyou.pdf

(父母双方に子どものことに注目してもらいたい! ということで明石市はしているんじゃないかなと思います,とコメントを下さいました)

別居親としても,同居親との生活状況が気になって,それを子に聞いてしまって負担をかけることも問題となっており,面会交流時の注意事項として避けるように指摘されているところですが,確かに同居親との生活状況が気になる,ということは避けられませんし,より積極的な意味に考えると,同居親との生活状況だけでなく,学校での状況,子に起きたイベント(習い事で賞を取ったなど)を知っていると,面会交流時に話題も弾んで,別居親からもお子さんの頑張りを認めてもらえる機会になるなど,聞かれる前にこちらから伝える,という考え方も大切だな,と思いました。

とは言え,こちらの子との過ごし方などの状況を伝えると,それに対して文句を言ってこられるので言いたくない…というケースも私が関わる事案では少なくないので,難しいところだと思いますし,紛争の大きなケースでは電話で気軽に事前に伝える,なども難しいことも多いと思いますが,お互いに相手と子が過ごす状況を頭ごなしに非難しない,というルールを徹底して,交流ノートのような文書に書く方式で,まずは負担の少ないこと,可能な範囲でいいので,お互い伝えていけるといいな,と思いました。

面会交流を実施する際に,どんなことが現場で問題になっているか,知っていますか?
子に聞きたくなる前に,子の状況を積極的に相手に伝えることで,相手にも子どものことに注目してもらう,安心してもらう,という方法,考えたことありますか?

3 面会交流支援団体と面会交流日程調整

面会交流の支援団体がどこにあるのか,は冒頭の面会交流.comさんでもご紹介していますが,
現在は,法務省のホームページにも,面会交流の指針と支援団体の一覧として掲載され始めています▼

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00285.html

私に教えて下さった面会交流支援者さんによると,全国のだいたい3分の1くらいの団体が,現在一覧表に載っているとのこと。
今のところは,希望すれば,そのままなんの審査もなく,掲載される現状のようなので,どの団体が良いのか,は素人にはやはり,判断が難しそうです。

私自身は,これまでの研修でのお話や活動を拝見して,バランスの良い活動をされていると感じる面会交流.comさんを信頼していますが‥
法務省が掲載している指針に沿って支援してくれているのか,その団体の支援方針を確認したり,実際に利用などもしてみて,検討するしかないのかな,と思います。

また,日程調整や面会の様子の伝達に使える国内唯一無二のシステムとして「ハッピーシェアリングのマッチングシステム」も教えてもらいました。
少しずつバージョンアップしていて,PDFファイルや写真や動画も送れるのではないか,とのこと▼

https://apl.happysharing.net

文明の利器,新しいツールを使いながら,接触,調整による親自身の負担を出来るだけ軽減しつつ,お子さんの状況を共有しあえるといいな,と思います。

面会交流の日程調整や,面会時の情報の伝達をどうしたらいいのか,とお困りの方は,参考にしてもらえたらと思います。

お子さんのために双方考えるべき!そう思っても,実際には離婚する夫婦,特に紛争性の高い事案での面会交流の調整の負担は大きいもの。
親だってとても大切な命,人生ですから,親自身も出来るだけ自分の負担を減らす仕組みや支援を受けながら,それぞれが自分自身の精神状況の平穏を守り,孤独やつらい気持ちのケアをしていく余裕を持つことで,お子さんの面会交流について,穏やかに考えられていくといいな,と思います。

まとめ 本当の子の視点・子の利益という考え方

私自身は,今でも,面会交流が円滑に行われれば,子どもが離れている親からも愛されていると感じられる,自信を持って育つことが出きる,ということで,基本的には積極的に面会交流をさせた方が良い,という考え方を持っています。

ただ,もちろん,「子の利益」のために会わせられない場合がある,と思っています。
そして,最近は,「子の面会交流の制限をすべき場合がある」というだけで,それが「子の利益」の視点からであるにもかかわらず,別居親の立場の方から激しい攻撃を受けることに驚いています。
「リーガルハラスメント」として紹介されていて,こんなことが本当にあるんだ,と実感しています。

「共同親権」を推進するという名のもとに,弁護士事務所の前で街宣行動をしたり,裁判所の前で街宣行動をしたり‥
威圧的な行動をすればするほど,こういう人とは関わりたくない,と思うはずですが…

それを見る子どもたちは,実際そのような活動をする親をどう思っているのかな?ということが気になります。
子どもだって,ある程度の年齢になれば,その活動の意味は理解できますから,その活動に感謝していれば,調査官にそのことを伝えることも出来ますし,自ら会いに行くことだって出来るようになりますから,面会交流は会える方向になるはずでしょうが,実際にそれで会えるようになった,という事例を私自身は知りません。

今回,ご紹介した支援団体の方が言われていたことも印象的です。

面会交流を説明や解説をされている大半が,法務省もそうですが主語が「子どもと離れて暮らしている父母の一方が」と別居親なんですよねぇ~。
せめて「離れて暮らしている親子」のようにしてほしいなぁと思っています。

で,面会交流支援って別居親への支援なんだよねって,思われている方が多いんじゃないかなぁ~と。
確かに現実は,子どもと離れて暮らしている親が子どもに会いたい! とアクションを起こすところから始まります。
面会交流の相談をお受けする中には,子どもと離れて暮らす親に子どもに会ってほしい! と希望する同居親もいらっしゃるかと思いますが,なにせ別居親に子どもに会う意思というか意欲がないので話すら進まない。
また,子ども自身が,離れて暮らす親に会いたい! と本当は願っていても,言う先がきちんとないというのもそもそもの部分で問題なんじゃなかろうかと思います。

で,言う先のこと以前に離れて暮らす親に会いたいと思っていいんだということ,会いたい! と意思を表明していいんだ! 方法があるんだよと少しでも伝えたくて動画をつくったわけです。(動画はこちらです▼)

で,ふと動画サイト内で「面会交流」を検索したとき,おとなな話の多いことか
やむを得ないことだとしても,あまりにも子どもたちのことを蔑ろにしすぎなような気がします。
このあたりのことも,変えていかないといけないんじゃないかと思います。

私自身も攻撃を受けて感じるのは,私を攻撃してくるのも別居親の立場の方々であって子ども自身ではない,ということ。
そして,悲しいことに最初は,物凄く面会交流に熱意を持っていた別居親も,離婚後新しい交際相手が出来,再婚して子どもも出来たりすると,子どもが会いたいと言っていても会ってさえくれないことがあり,今の状況は,それをどうすることもできないこと…

子ども自身が,同居親の立場とも別居親の立場とも離れて,本当に意見を言える場,子ども自身に情報を届ける場が裁判所内外の手続きにおいても確保されるようになるといいな,と思っています。

そのために,ご紹介した動画を子どもたちが見る機会があるよう,皆さんにもシェアしてもらえたら嬉しいです♪

それでは,このブログを読んで下さった皆さまが,面会交流がどんな場合に子どもにとって良いものとなるのか,そのために必要な支援は何なのか,面会交流でのトラブルを避けて安心して子どもが面会交流を続けられるために注意すべきことは何なのか,今自分が子ども達のために出来ること何なのか?に気づくヒントとなりますように・・,

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!