多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

美濃焼ブランディングと吉野家の共通点

美濃焼ブランディングと吉野家の共通点

005みなさま,おはようございます!
今回は,多治見市,土岐市,瑞浪市で取り組んでいる美濃焼ブランディングについての本を読んだこと,事業承継フォーラムで牛丼の「吉野家」さんの事業承継の講演をきいて,共通することを感じましたので,シェアします♪


最盛期と比べて出荷量が7割も減少している地元東濃地方の美濃焼。
一度は,借金の返済が困難となり,会社更生法の適用を受けた「吉野家」。

しかし,「吉野家」は,その後異例の早さで更正債務を返済して復活し,東証1部に上場するまでになった。


どのようにしたら,一度低迷してきた事業を再築できるのでしょうか?

ひと言で言うと,
「変える勇気と守り抜く意思を持つ」ことがポイントのようです。

具体的に,どんなことに吉野家の安部前社長は気をつけていたのでしょうか??
美濃焼産業が生き残り,発展していくためのヒントは何でしょうか?

 

1 なぜ,美濃焼の販売は低迷したのか?

背景には,食文化の変化,ギフト商品における需要の低下,海外の安価な商品との競争がある,としている。
なかでも,1990年代から2000年代にかけて,中国から安い陶磁器が入ってきたため,競争が厳しくなった。

この頃と言えば,私がちょうど弁護士になった頃
確かに,当時,担当させてもらった破産事件には地元の陶磁器関係の会社が多かった。
そして,確かに安い中国の商品が沢山入ってきて,売れなくなった,とか,自分も売るために価格を下げて利益が出なくなり,倒産することになった,ときいた。

今は,中国での人件費も高騰化しているので,そのような話は少なくなってきたように思う。

そのための,解決の方法はなんでしょうか?


「高付加価値化」と「グローバル化」と言っています。


私の尊敬する地元の社長がアメリカに進出して,お寿司屋さんをやっている。
そこで,地元の陶磁器を使ったり,醤油を使ったり,日本らしい絵を壁面に装飾したり・・・してくれていた。

とても,素敵な取り組みだと思う。
どこで売ったら,高価値で売れるのか,何と組み合わせたら高価値で売れるのか・・・とても興味深いです。

地元のひとりひとりの取り組みもとても大切だし,むしろ,その集合体が,「ブランド」になるのかな,と思いますが,今回の本では多治見市,瑞浪市,土岐市の市長が座談会をして「美濃焼」を「ブランド」化することで高付加価値を追及することに取り組んでいることが書かれていました。

美濃焼は,これまで需要に応じて,他種類,多様に製造されてきた。そのために「有田焼」などに比べると,その特徴が全体として薄くなり,知名度が低くなっている

みなさんは,美濃焼のどこが好きですか?
特に,地元外からいらっしゃって,美濃焼を買われた方,なぜ,美濃焼を買ってくれましたか?
それが,分かると,美濃焼らしさ≒ブランディングのヒントになるような気がします。是非,教えて欲しいです。

 


2 他社ブランドの製造

美濃焼の製造に関わる地元企業の倒産現場で,もう一つ驚いたことがあった。
実は,京都で売られている有名な商品,横文字で書くような超有名ブランドの商品を地元の企業が作っていたこと。
倒産現場に,沢山の仕掛品,検品で返品されている物が並んでいて,とても驚いた。

・・そうか,こんな有名なブランドの陶磁器も,実は,こんな身近で作ってるんだ。
これらは,買うと高いけれど,地元企業は,ブランド会社に納入する際には,厳しく品質をチェックされた上,決して多くの利益を得ることはないのが,話から分かった。
「ブランド」力を持っている会社,売る力を持っている会社が,多くの利益を得る,という構造になっている。

今回の本でも,OEM=他社ブランド商品を製造することによる,低い利益率と,このブランド力を持つ企業からの受注が減れば,そのまま,利益も激減してしまうことが書かれていた。本当にそうだと思う。倒産現場では,まさに,それが起きていた。

一方で,そういう現場を間近で見て思った。
一流ブランドに納入するような技術を地元の美濃焼製造業者は持っている・・・

あとは,もし,本当に世間で売れている商品,望まれている商品が分かったら,どこで,どのような商品が売れているのかが分かったら・・・
直接,売ることができるかも。

実際に,知人の陶磁器会社は,不況下でも独自の商品展開でインターネットで直接販売をし,売上げをのばしていた。

私は,陶磁器産業に詳しいわけではないから,わからないけれど,OEMの仕事を通じて,どこで,どのような傾向の商品がよく望まれているのか,がもし,分析してわかったら,直接売るヒントにならないかな・・・と思いました。

せっかく,美濃焼は高い技術で,相手が望むものを表現する力,それも比較的安価に表現する力を持っているから,これが分かる人に直接届けられたら,と思う。

多治見市には陶磁器意匠研究所もあって,日本全国や世界からも作陶の技術を学びに来てくれている。
その人達の個性的なアイデア,デザインと美濃焼が元来持っていた技術が結びついて,結果として「美濃焼ブランド」ができたら,いいなと思う。

製造会社のみなさまは,最終的に買ってくれるお客様が望んでいる商品の傾向,その商品をどんなシチュエーションでどんな人が使い,その商品を手に入れることで,どんな気持ちになりたいのか,考えたことはありますか?
販売会社に,一度きいてみるのもいいかもしれませんね

 

3 変える勇気と守り抜く意思

美濃焼産業は低迷化し,今更,そんな産業にしがみついているのは,おかしい,という話をする厳しい会計士の先生がいる。
確かにそもそも「美濃焼」にこだわりすぎる必要は無いのかも知れない。

しかし,企業が存在してきた意義・歴史・技術は継承する,守り抜くことで,高付加価値を維持できることもあると思う。
これまでの経験と歴史が積み上げてきた技術は,意味があったはずで,これをゼロに戻してしまうのは,損失のような気がするのです・・


「吉野家」の前社長は「変える勇気」と「守り抜く意思」が企業の存続には必要,と言っていた。
「吉野家」で大事にしている価値観は「はやい・やすい・うまい」。

その価値を「守り抜いて」引き継いでいく必要はあるけれど,商品は「牛丼」にこだわる必要は無い,と言っていた。創業家の社長も「牛丼」なんかなくなってもいい,と言っていたらしい。


実際に,狂牛問題があったときには,豚丼をリリースし,乗り越えてきた。
「やすい」についても,商品の本来的な価値と見比べながら,値下げしたり,値上げしたり,材料を良くして,新価格を設定したりを繰り返している。

「美濃焼」も,分解すると,転写,焼成での様々な技術に支えられている,セラミックの素材としての特性は,電子部品,自動車部品にも応用されている,と言われている地元金融機関,東濃信用金庫の市原理事長。


確かに,「美濃焼」で大切にしていた「技術」「精神」は「守り抜く意思」が必要かも知れないけれど,商品はもしかしたら,「美濃焼」でなくてもいいのかも知れない。


「守り抜くもの」は,「美濃焼」そのものではなくて,その歴史,と技術,精神なのかも知れない・・ですね。
そうすると,もっと時代に合った商品に展開していける可能性もある,と思いました。

世界最古の会社「金剛組」も,その業務そのものの内容は時代に応じて変更しながら,技術を守り抜いてきたように「変える勇気」は必要ですね。


何が,「守り抜く」もので,なにが「変える」べきものなのか,難しいですね・・・


美濃焼で守り抜かなければならない本当の「価値観」はなんでしょうか?
美濃焼の作陶を通じて,日本全国に,世界に伝えたいことはなんでしょうか?

 

 

まとめ  まずは,想いの発信から?

私は,多治見生まれ,多治見育ちで,地元が大好きです。
なので,小さい頃にあった,陶磁器会社やタイル会社が大人になってから,どんどんなくなっていくのをみると,すごく淋しい気がしました。

弁護士は,倒産の処理をして,お金をもらって,その生活の再建のために役に立っているという気持ちはあるのだけれど,やっぱり淋しかった。

もっと,その前に自分が関われることがあれば・・という気持ちがあって,まだまだ勉強不足とは知っていたけれど,地元で他の士業や経営者の人達と一緒に経営セミナーも開催してきた。

「ブランディング」の話も,有り難いことに地元ラジオ局で話をさせてもらえた。

「陶磁器」のことを詳しく知っているわけではないし,「経営者」としての経験が豊富なわけでは無いから,私の考えは直接は,参考になることは少ないかも知れない。

けれど,有り難いことに,私自身は弁護士としての「想い」を沢山発信することで,ここ多治見にいながら,事務所を開業して,全国からも問い合わせがある事務所になることができた(これもずっと続くものではないとおもいますが)。

それは,私自身が,「私」のなかで大事にしている「価値観」に気づいて,想いを発信し,それを,見て下さった方々が,私らしい弁護士としてのサポートを他の弁護士とは違うものと感じてもらえたからかな・・と思う。(本当に,本当にありがとうございます!)

「ブランド」というと,すごく有名にならなければいけないのかな,と思うけれど,他社との違いをどのように認識してもらえるのか,この問題なら,このこだわりのあるこの人,この会社に是非頼みたい,と思ってもらえることなのじゃないかな,と思う。


「美濃焼」には,色々な種類があることを,地元民ながら,最近になって分かってきた。
私は,美濃焼の中でも,紅志野の「ぽってり」していて,薄ピンクのほんわかした感じ,触ったときのおもさ,さわりごこちがとても好きです。

日常生活の中ではあまり,使ってはいないけれど,ゆったりしたい気分のとき,お茶を飲むのに使ったりすると,なんか,リッチな気分になって,リラックスできます♪
紅志野の花瓶も,ピンクがかわいらしくて,好き~~♪

私にとっての美濃焼の価値は,普段にない豊かな時間を感じさせてくれること,かな。

けど,それが有田焼,萩焼,京焼とどう違うのか・・は追及し切れていません。

ただ,私は,地元が好きだから,やっぱり陶磁器は美濃焼,それも,知っている方の作品を使いたい,と思う。

 

みなさんは,美濃焼の中でも,どんな種類の陶器が好きですか?
それは,なぜ好きですか?

有田焼,萩焼などと違う魅力は何ですか?

作陶家の中で,好きな方はいらっしゃいますか?その作品の,どこが好きでしょうか?

 

自分では気づいていない「自分らしさ」≒「ブランド観」をお客さんが,実は感じて下さっていることもあるかも,です。
是非是非,買ってくれた方に聞いてみたいですね。

 

このブログが,地元美濃焼産業に関わる経営者の方々,行政の方々,自分自身の事業と地元の発展を心から望む方々のお役に立てますように~

今回も,最後まで読んで下さって,ありがとうございました!