多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

相続による事業承継の注意点は

相続による事業承継の注意点は

022いつも読んで下さって,ありがとうございます!
急に最近冷え込んできましたが,みなさま,風邪などひいていませんか?

今回は,先代社長が亡くなったことによって事業承継する場合の注意点,つまり,相続による事業承継における注意点をお伝えします!
これまで,ホームページブログでお伝えしてきましたとおり,事業承継は,先代社長が生きている頃から準備するのが大切です。

しかし,突然の事故などで先代社長が亡くなってしまい,相続による事業承継を考えなければいけない場合もでてきます。
この場合,生前の事業承継とは異なる注意点があります。

どんなことに注意したら良いでしょうか?

 

1.配偶者(妻)が承継する場合の注意点

夫が,事業の経営者をしていたところ,亡くなって相続が開始した場合を考えてみます。
夫には,妻と二人の子がいました。妻は,夫の生前中に夫が事業のために借りた借金5000万円の連帯保証人をしています。

このような事案のため,保証をしていない子どもたちは,相続で借金を承継するのを避けるため,相続放棄手続きをしました。

これで,全て,妻が事業に必要な不動産,株式,負債も承継しました!

 

・・・・とは,実はならないのです。

 

第2順位の相続人である夫の両親(祖父母),夫の両親達が亡くなっていれば,夫の兄弟が相続権を持つことになります。
そのため,夫の両親(通常は亡くなっていることが多いです),兄弟が相続の放棄をされない限り,妻が全ての事業を承継することは出来ない状態です。

配偶者である妻は,夫と血のつながりがなく,子供,両親,兄弟のような「血族」とは違う相続人です。
そのため,血族である相続人には,配偶者とは別に相続させるべき,というのが法律の考え方です。
つまり,血族の第1順位の子供さん達が相続放棄をすると,最初から子供がいなかった場合と同じ状態と考えるということです。

反対に,配偶者である妻が放棄して,子供のうち一人だけが放棄をしない場合は,血族の第1順位の子が相続しているので,両親,兄弟に相続権はうつりません。

ですので,円滑に相続による事業承継をするには,配偶者に承継させるべきかどうか子供に承継させた方がいいのか,この点からも考えて,注意する必要があります。

 

2.覚悟を決める

事業者が亡くなった場合,その時点から,相続して事業を承継していくのか,相続放棄をするのかすぐに決断しなければなりません。
相続開始を知ってから3ヶ月以内に相続放棄の手続きをしなければ,相続放棄は出来なくなります。
期間の伸長は手続きをすれば出来ますが,その間も,事業のための仕入れ,在庫販売などをどうするかの決断を避けては通れません。

このとき,相続放棄を選択をする前に,相続財産を売却してしまうなどの処分をしてしまうと,「単純承認した」,つまり「相続した」とみなされることもあるので注意が必要です。

・・・かといって,相続放棄も考えているから,とりあえずは,在庫(相続財産,遺産)に手は付けずに考えたい,などとしていれば,せっかく先代社長が築き上げてきた顧客が離れていってしまい,その後,相続して事業承継する,と決めたとしても,事業としての価値はかなりさがってしまった状態になってしまいます。

そのため,事業者が亡くなって,相続が開始した場合には,早急に承継するかどうか,覚悟を決めることが大切です
この判断に迷う場合には,どちらがいいのか,出来るだけ早くに自分の立場に立って考えてくれる弁護士に相談すべきです。

相談時には,先代社長がお願いしていた顧問税理士さんを同行して相談するなど,経営状況が分かる状態で相談することが大切です。
また,負債,資産の状況,税金の滞納はないか,だれが保証人になっているのか,相続人は誰なのかなど基本的な情報はそろえた状態で相談することで,弁護士もより的確なアドバイスをすることが出来ます。

このような状態のときには,周りで「うまくいった事例がある」などという話も出るようですが,実際に,その「良い解決方法」が今回の自分の事業承継においても実現可能なのか,法的リスクはないのか,そういっている方々が自分のために何をやってくれるのか,見極めなければいけません。

私としては,これは「法律問題」ですので,素人の方ではなく,早急に弁護士に相談することが必要不可欠だと思っています。
しかも,「これは今まで自分が体験してきた実現可能なことなので,大丈夫です。でも,遠方なので今回はできません」という弁護士ではなく,相談にのってもらえ,費用などの条件さえ合えば,引き受けてもらえる弁護士に相談することが大切です。

 

3.保証債務の解除は可能か

先代の社長(父)が個人事業主であった場合は,非常に難しい問題となってしまうのですが・・・

先代社長の事業が,法人(有限会社,株式会社など)であった場合,先代社長個人が会社の負債について連帯保証人になっていることがあります。

この場合,相続する息子達は,会社の事業を承継する覚悟は出来たとしても,父の連帯保証債務を承継してしまうことに恐怖があります。

会社の資産や,亡くなった父の遺産は,もし,事業がうまくいかなければ,とられてしまっても仕方ない,と覚悟は出来ても,自分がこれまで別のところで働いて,購入した自宅や,預金などはとられることは困る,妻や子供の理解も得られない,ということはもっともなことです。

この場合,今は「経営者保証に関するガイドライン」により,事業承継をきっかけに,保証債務を解除できる場合があることになっています。

実際には,生前の事業承継でなければ,事業の状態を把握するのが難しいので,相続による承継の場合には,難しいことも多いでしょうが,「事業承継」をしてもらうことに債権者である金融機関が価値を感じ,「保証債務の解除」が事業承継するかどうかの決め手になっている場合には,可能性としては,あり得ると思います。

もっとも,承継する会社が黒字経営であるなど事業状態が良く,事業用資産が法人(会社)所有であること,会社から社長への個人貸付けがない,会社資産と社長の個人資産が分離されていること,社内管理体制ができていることなど・・・が必要です。

国でも「保証債務」の存在が事業の統廃合,積極的な事業展開,事業承継などを難しくしているという意識があるので,このようなガイドラインが出来ているのですね。

相続による事業承継の場合には,事業内容の把握がより難しいので,ガイドラインを使った保証債務の解除は難しいことも多いでしょうが,もし,「保証債務」が事業承継をする際にネックになっているのであれば,このようなことも頭に入れて,金融機関と話が出来るといいと思います。

日本弁護士連合会では,今,経営者保証ガイドラインに基づくソフトランディングにも力を入れており,私ももう少し,勉強して報告したいと思います。

まとめ 本年は事業承継元年

今回のブログで,今年の私が担当するブログは終了です。
1年間,ありがとうございました!!

今年は,公的機関で「事業承継」に関わるなど,色々な形で「事業承継」に関わることが出来るようになった最初の年となりました。
中小企業の数,起業希望者は年々減ってきていますので,今ある事業をどのように事業承継していくか,統廃合していくのかによって,地域の事業活動が衰退してしまうのか,活性化するのか,就業先は確保できるのか,など変わってきます。

地元多治見の事業活動がこれからも,継続,発展していくためには,事業承継問題はとても重要だと感じています。
来年も,事業承継については,引き続き力を入れていきたいと思います。

今年は,東京,東北などのご相談者から多数問い合わせを戴き,わざわざ多治見にご相談に来ていただけたこともあって,とてもやりがいを感じた1年でした。
地元多治見で岐阜成功塾もたちあげることができ,継続的な経営セミナー開催にも関わることが出来ました。
地元の女性士業団体41ガールズのメンバーとして,セミナー講師をさせてもらったり,多治見市とコラボして相談会をすることなども出来ました。
多治見市の子どもたち向けに,多治見ふるさと仕事塾にも参加して,弁護士の仕事を紹介させてもらったり,子育て支援に関わる方々向けの研修講師もさせていただけ,少しでも地元の子どもたちに役に立てた気がしました。

これも,商工会議所,地元金融機関の皆様,地元で子育て支援を真剣にされている方々,地元多治見市長,多治見市の職員の方々,一緒に活動してくれている41ガールズのメンバー,多治見ロータリークラブの皆様,遠方から多治見まで来てくれる岐阜成功塾の仲間,素敵な出会いの場を作って下さって応援して下さるみなさまのおかげです。

本当にありがとうございました。

そして,普段から当事務所をサービスを信頼して下さっている地元企業,病院の顧問先の方々,ご相談者の方々,そして,支えてくれる家族のみんながいなければ,そもそも弁護士木下貴子,多治見ききょう法律事務所は存在出来ません!いつも本当にありがとうございます。

また,来年も更にパワーアップして,頑張りますので,どうぞ,宜しくお願い致します♪

みなさまの1年も,素敵な1年でありますように…

今年も本当に,ありがとうございました!