多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

これからの男の子たちへ~加害しない男性,されない女性になるために

これからの男の子たちへ~加害しない男性,されない女性になるために

いつも読んでいただき,ありがとうございます♪
太田啓子弁護士(女性,2児の男の子の母)が書かれた著書「これからの男の子たちへ~男の子らしさから自由になるためのレッスン」を読んで,私が気づいた,これからの時代を生きる男の子,男性が知っておいてもらえると,男性も女性もより生きやすくなる,男性が気づかないうちに,女性に対して,モラハラ,セクハラ,性犯罪などという形で加害してしまうことも減っていくのでは,と思ったポイントをお伝えします~

私自身も弁護士として,離婚相談を受けていると,特に弁護士のところに相談に来られる事案だからなのかも知れませんが,最近は「モラハラ」と言える傾向のある事案が多いことを感じます。
もちろん,女性から男性に対するモラハラのご相談もあるのですが,やはり,数,割合としては圧倒的に男性(夫)から女性(妻)に対するモラハラの相談の方が多い。
父親の母親に対する暴力的な対応,言動を見て,自分はそうなりたくない,自分自身も今でも父親に気を遣っている,と思いながら,自分が妻にしていることも同じようなことでは?・・という男性からの話を聞くこともありました。

多治見ききょう法律事務所の女性スタッフなどとも話すのですが,どうしたら,「モラハラ」ってなくなるのだろう・・・ということ。
自分の娘には「モラハラ」をするような男性を選んで欲しくないし,息子にはもちろん,「モラハラ」をする人になって欲しくない。
そのためには,どんな子育てをしたらいいのか・・?子ども達には何を伝えたらいいのか?

一方で,「男性だから」という理由で,夫が簡単に仕事を辞めるなんて家庭のことを考えてない,と言われることもある。
まだまだ一家の大黒柱,と言われる収入を得る役割が大きく男性に期待されている現在で,急に収入がなくなると,妻,子どもが困る状況があるのも現実。

しかし,女性の転職以上にまだまだ柔軟に仕事を変えることが許されない雰囲気のある男性も,しんどいのではないかな,と思うこともあります。
男性自身も,「男」だからということから,もう少し自由になるためには,どうしたらいいのか?

そういう思いもあって,手にした本が今回ご紹介する本です。

女性に加害しない大人になるために,男の子が知っておくと良いことは?
女の子が,加害されないために知っておくと良いことは?
男の子が,「男らしさ」から自由になって,幸せに生きるには?
…そもそも「男らしさ」って何?

気づいたことを3つ,お伝えします。

1 「有害な男らしさ」を知る(男の子へ)

「有害」というと,言葉のインパクトが強いと思いますが…
「男らしい」という言葉のイメージで思いつくのは,そもそも,どんなことでしょうか?

この本では,「男らしさの終焉」(グレイソン・ペリー著)で紹介されされている社会心理学者による「男性性の4要素」が紹介されています。それは,
①意気地なしはダメ②大物感③動じない強さ④ぶちのめせ

「弱音を吐かず,社会的な成功と地位を積極的に追求し,危機的な状況があっても動じずにたくましく切り抜け,攻撃的で暴力的な態度をとることも含めて,社会の中で「男らしさ」と言われている」

確かに,危機的な状況に動じないこと,などは,良い面があると思うのですが,その一方で,攻撃的な(有害な)「男らしさ」に気づいていないと,男性集団の中で,「有害な男らしさ」を競い合う状況になったり(集団での性暴力事案などの背景),「男らしく」あろうと,自分自身をも追い込んでしまう。

「「過労死」は,圧倒的に男性が多数。肉体的,精神的に限界なのに「つらい」「辞めたい」と言い出せない。
責任ある立場に着くと,自分が頑張って何とかしなくてはと思い,誰かの助けを借りるという発想が出てこない。」

介護殺人,心中の事案についても,家族介護者 の7割以上が女性であるに もかかわらず, 介護殺人 ・心中事件の加害者(介護者)の 多くは男性 により占められる,と指摘もされるので,
ここにも,「男らしく」動じないで,自分が頑張って何とかしなくてはと思い,追い込んでしまっているのではないかな・・と思いました。

みなさんは,「男らしさ」の良い面の反対の側面として,「有害」になってしまう面,気づいていますか?
私も,息子には,「男の子だから」という言葉を使うのは避けているつもりですが・・・自分自身や誰かを守るために勇気をもって行動することが必要な時は男女問わずあると思うし,そのとき,筋力がある男性は,女性よりも頼りにされることもあるかもしれない,けれど,攻撃的,暴力的にふるまうこと自体が「カッコイイ」ことではないこと,誰でも弱さも見せていいし,人を頼ってもいいこと,逃げられるときは,逃げてもいいこと,など,改めて伝えていきたいと思いました。

2 「嫌だ」といえる(女の子へ)

私は女性ではありますが,弁護士でもあるので,必要があれば法的に戦うことに躊躇はありません。
しかし,見た目からなのか,結構侮った言動をしてくるな,と思う方(男性)に時々遭遇します。
少し前も・・犯罪行為をされたり,違法行為をされたりする,などもありました。
(知人の男性友人には,弁護士相手に著作権侵害とか信じられない!と言われていますが,本当にそうだと思います・・)

でも,振り返って考えると,私自身の成育状況から,どこかしら自分のことを低く見られても仕方ない・・と思っていたのではないか,
自分で自分をそのように扱っているからこそ,他人からも,攻撃される対象になる部分もあるのではないか,と最近思うようになりました。

時々ブログでも書いていますが,私の家は,父と母は仲が良くなく,父は母に身体的な暴力をふるうこともあったので,子どもの頃,母に対する言動には怒りを持っていたのに,自分にまで,被害が及ばないよう,上手く父の機嫌を取るようになっていた,
そして,大変な母にも迷惑や負担をかけたくない,と思って,自分の気持ちを押し殺してしまうようになっていたなあ・・と思います。

そんな私にとっては,女性弁護士って正義の味方で,女性で,身体的には力が弱くても,母親を守れる仕事だな,と思って選んだところもあります。
なので,仕事をしているときの私は,依頼者のために,「こうすべき」「こうあるべき」という主張をすることには躊躇はありません。

けれど,自分自身のこと,に対してはどうだったのか・・?
大人になってからも,そして,つい最近になってからも,相手と衝突するのが嫌で,「嫌だ」となかなか言えなかったと気づきました。

モラハラを受けやすい女性は,「DVにさらされる子ども達~面会交流での子への悪影響を見抜くポイントと伝え方」で記載したように,そういう状況下で育つことで,女性が自分が悪い,攻撃されても仕方ない存在である,と間違って,学んでしまうことにあると改めて思います。

なので,この書籍にも書かれていますが,「女の子に伝えたいこと」は,「相手が異性でも同性でも,好きな人ができてつきあうことになったら,どんなに好きな相手からでも,嫌なことをされたらちゃんと怒れるように,「嫌だ」と言えるようにエンパワーしてあげたい」と,私も思います。

妻から「モラハラ」と言われる男性は,「言ってくれればよかったのに」「妻が家を出て行く直前まで,とても仲が良かった」などと言われることもとても多いのですが,そこには,女性側の,言うのが怖い,「嫌だ」と言っても,怖い顔ですごまれると(夫にはそういう認識もないことも多いと感じますが),実際に暴力などをふるわれなくても,それだけで怖く感じるので,とても言えない,という状況であることを女性側のお話からは実感します。

今の自分の娘の様子を見ていると,「嫌だ」とすぐに自分の意見を言うタイプではないように思いますが,嫌なことを我慢してやる,嫌なことでも誰かに従う,ということはなく,どうしても「嫌」だと感じたら,私よりも早い段階で,はっきり言える,と感じます。これは,娘の父親である夫のおかげでもあるので,とても感謝しています。

みなさんは,「嫌だ」と思ったら,気軽にすっと,「嫌です」と言ったり,「怒っています」と伝えられますか?
女子は,「優しく」「笑顔」で,だけでなくて,嫌なことには「嫌です」とド真剣に言っていい,と娘に伝えたい,と思います。

3 新しい常識

この書籍(67頁)で紹介されているエマ・ワトソンが国連スピーチで語ったこと。

「もし,男性として認められるために男性が攻撃的になる必要が無ければ,女性が服従的になるのを強いられることはないでしょう。もし,男性がコントロールする必要が無ければ,女性はコントロールされることはないでしょう。

男性も女性も,繊細でいられる自由,強くいられる自由があるべきです。今こそ,対立した二つの考えではなく,広範囲な視点で性別を捉える時です」

今は,男性,女性という区分けだけでなく,LGBTQなどの様々な「性」の在り方が当然視される時代。
「男らしさ」「女らしさ」に縛られたりせず,それぞれの「個人」が自分らしく,自由にいられると男の子,女の子,男性,女性問わず,それぞれの幸せを追求しあえるのではないかな,とこの言葉を読んで,改めて思いました。

この書籍は,主に,「これからの男の子たちへ」向けたメッセージを伝えて下さっていて,また,そのために周りの大人が出来ること,を伝えて下さっています。
書籍で紹介されているように,「男の子」が,「有害な男らしさ」や,男性であることだけで「特権」がある(なぜなのか,は詳しくは書籍に書かれているので是非,読んでほしいと思います),ということに気づいて,行動してくれること,とても大切だと思います。
そのために身近にいる母親,父親が息子である「男の子」たちに伝えていくことも,とても大切だと思いました。

そして,さらに,私は,「女の子」「女性」として出来ることとして,冒頭のスピーチにあるように,男性,男の子が「攻撃的になる必要がない」こと,「繊細でいていい」,そういう男性も,それぞれ素敵であることを伝えていけたらいいなと思いました。
「女の子」「女性」に対しても,「強く」生きていい,それも伝えていけたらと思いました。

女性の中に,どこかしら,お金も稼げて,力も強くて,堂々としている男性がカッコイイ!と思っているところがないかな・・と自分自身も振り返ると思います。
どうしても,性差として筋力,体格の差はあるから,女性が心身の攻撃をされれば,男性を頼ってしまうところもあるかな,と思います。

でも,これが行き過ぎてしまうと,男性として認められるためには「強く」なければいけない,「強い」方がカッコイイ・・という方向になりがち。
心配,不安で,どうしたらいい?と戸惑う女性に対して,俺が守らなければいけない,という気持ちが,俺の言うことを聞いていれば大丈夫,安心だろ,と女性をコントロールする方向に行ってしまいがちなことも,分かる気がしました。

女性には,「優しさ」「笑顔」,ということが求められがちなところもあるけれど・・・
そうすると,きっぱりと言いたいことが言える「強さ」を出せない,出さない方がいい,という方向になりがち。

意識して,強い部分も,優しい部分も,繊細な部分も,他者との関係では,その「使われ方」が大事で,男性も女性も,それぞれ,適切な場面で適切に使うことが出来れば素敵,適切に出しても,その人の魅力はそがれたりしない,ということを伝えていきたいな,と思いました。

みなさんは,新しい時代の常識として,子ども達にどんなことを伝えていきたいですか?
自分自身にも,男性はこうあるべき,女性はこうあるべき,という古い「常識」ありそうですか?

まとめ 子どもたちから学ぶこと

この書籍では,その他にも「鬼滅の刃」や「ドラえもん」(しずかちゃんの入浴シーンなど)に出てくる場面やユーチューバーの発言から感じる「男らしさ」「女らしさ」のバイアスについても,触れられていて,日常に,いかに,自然で気づかないような形で,私たちが「男」ってこんな感じ,「女」ってこんな感じ,と思い込んでしまっているのか・・思い知らされたりします。

今回は私にとって,身近な学びについて取り上げましたが,この書籍はもっと広く,「男の子の日常にかかるジェンダーバイアスの膜」「男の子にかけられる呪い」「セックスする前に男子に知っておいてほしいこと」「セクハラ・性暴力について男子にどう教える?」「カンチガイを生む表現を考える」「これからの男の子たちへ」という項目で,日本社会で生活する上で刷り込まれてしまいやすい価値観を意識した上で,新しい,「男らしさ」「女らしさ」から自由になるための具体的な方法について,伝えていますし,ここに書いたことは,あくまで私が主観的に感じたことを中心に書いているので,是非別途読んでいただけたらと思います。

この書籍にも書かれているのですが,それでも,少しずつ世の中は,より自由になる方向へ,「良い」と考えられる方向へ向かっている,と思います。
以前はよくあった「スカートめくり」をする男の子,最近は見なくなりましたし・・
私の時代にはあった女子だけ体育のときに着用する「ブルマ」も男性と同じようなズボンになったり,女子の水着も変わってきています。

ランドセルも,段々と色々な色を見かけるようになりました。
制服も,女子生徒がパンツスタイルを選べるように変わりつつあります。

少しずつだけど,時代は良くなっている・・・と思うし,今はすぐに受け容れられないことも,自分のできる範囲でよりよい世界になるように,男性も女性も生きやすい世界になるように出来ることをしていきたいなと思っています。

大人が意識して子ども達に伝えられることもあるけれど・・・
私は,子ども達からも多くのことを学ばせてもらっています。

息子からは,男の子だけ,水着の上半身はなぜ裸のままなのか(これも学校によっては,上半身にラッシュガードの着用が認められていることもあるけれど,そうでないこともある)と言われた時にハッとしたり,診察のとき,当然上半身裸になるのか?と言われて,なるほど,と思ったこともあります。

娘は,昔の価値観で言えば,どちらかと言えば「男っぽい」感じで,言わなければ分からない,察するとか無理,というタイプですが,息子の方は,私が泣いていると慰めに来てくれたり,とか,「女子っぽい」共感力がある,と感じることも多いので(これ自体,ジェンダーバイアスとも言えますよね),男性,女性で共通する傾向,というのも,子ども達を見ると,少なくなってきているな,と思います。

私自身は,生物として,男性と女性という性差が生まれたのには,少なくとも,その当時は,生存可能性を上げるために何らかの意味があったことで,現在も筋力などに差があることからすると・・全く同じ役割を果たす,ということは難しい場面があるし,非効率な場面もある,と思っていますが,これからは社会の変化と共に,それらの差の意味も無くなれば,生物としての構造差なども長い目で見たら変わってくるのかな・・と思ったりして,それはそれで,楽しく学んでいきたいな,と思っています。

2年くらい前に父から聞いた話。自分の父親(私から見て祖父)が,母親(私から見て祖母)に対して酷い暴力をしているのを見て,一度,子どもの頃,兄と一緒に父親に反抗した(戦った)ことがある,と言っていたのが忘れられません。お父さんにもそういうときがあったんだな・・・と。
それでも,大人になって,私の母(自分の妻)に暴力をしてしまうときがあった。
その話を聞いたときに,思った以上に,子どものときに,見聞きすることから得てしまう影響って大きい,と改めて思った。

外では,とても,「いい人」としてふるまっていて,「先生」として,信頼されていることも知っていたから,
今思うと,外ではいい面での「男らしく」,弱みも見せずに頑張っていたことが,家の中で,弱い部分を見せる,という形ではなくて,「有害」な男らしさ,として,出てしまったのかな・・と思ったりする。そう思って,父の子どもの頃のエピソードも考えると,父は父でつらい思いをしてきたのではないかな,と思う。
そして,でも多分,ずっと,祖父のときよりは,良くなろうとしてて,良くなっている・・と思う。

そうして,少しずつでも,世の中は変わっていくと信じているし,そうなるために,今すぐには理解してもらえない事でも,それぞれの人が幸せになるために,自分も出来ることを一つずつでも,めげずに,していきたい,と思う。

今の時代の子ども達の方が・・本当に多様で,色々な価値観を持っていると思うから,子どもの意見も本当に対等に,大切にして,学んでいきたいと改めて思います。

これからも,自分自身の子ども達,家族,友人のため,
そして,弁護士として,うちに相談に来て下さる依頼者の方々のため,
母としても,自分自身も周りにいる家族や友人,男性も,女性も,男の子も,女の子も,多様な一人一人の人たちが,「幸せに生きるための方法」「軽く,楽しく,健康的,心豊かに生きる方法」「ごきげんでいる方法」学んでいきたいと思います。

引き続き,研究報告,活動発表,致します!

それでは,
このブログを読んで下さった,女性,お母さん,そして,男の子も女の子も,より自由になれる新しい常識を一緒に考えてようとしてくれる男性,お父さん,新しい時代の考え方を経営や仕事に活かそうと考えて下さる会社に勤める方,経営者の方たちが,自分自身にもありそうな「バイアス」に気づいて,見方,捉え方,を変えてみるための方法として一つのヒントとなりますように。

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!