多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

これからの時代を生きぬくために子どもに必要とされる教育・身に着けるべきスキルは?主体的・対話的で深い学び~アクティブラーニング

これからの時代を生きぬくために子どもに必要とされる教育・身に着けるべきスキルは?主体的・対話的で深い学び~アクティブラーニング

いつも読んでいただき,本当にありがとうございます。今回は,少し前になりますが,教育委員として,岐阜県市町村教育委員連合会の研究総会に参加した際,「令和の日本型学校教育を考える」というテーマで話して下さった玉置崇先生(元小中学校教諭・校長・岐阜県教育委員会教育事務所長で文部科学省にて教育の情報化に関する手引き等も作成,落語家でもあり,話も分かりやすく,楽しかったです!)の講演内容から,これから変わりゆく世界で日本の子どもたちが身に着けるべきスキル,そのためにどのような教育がなされるべきか,について,気づいたことをシェアします。

AIが進化した時代,国際化社会となっていく未来でも,日本人が生き残っていくために必要なスキルは何でしょうか?
未来の社会でも,必要とされる人材となるために子どもたちが学び,身に着けるべきスキルは何でしょうか?
21世紀に生き残る人材となるために必要な学習とされる「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)とは?
私たち親,教育に関わるものは,21世紀を生きる子どもたちのために何を意識していけばいいのか?

について,3つ気づいたことをお伝えします。

1 主体的な学びとは

未来を生き抜く力を育てるため,現在の学習指導要領では,主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)が必要とされています。
でも,主体的な学びってそもそも何?どのように学んだら「主体的な」学びになるのか?
これだけだと抽象的で実践しにくいところです。

この点,玉置先生は,具体的に
「授業の中に,1回,自己選択をさせる場面を入れよう」と提案されていて分かりやすかったです。

例えば,
常に先生からの指示を待つのではなくて,調べたいと思った人から必要なときに端末で調べる・・とか。
①~④の問題の中で,自分が間違えそうな問題からやってみましょう,と声をかけ,なぜ,それを選んだの?と聞いてみるとか。
数学のワークシートでも先生が準備して与えてしまうのではなくて,この四角形でなくていいから,色々な四角形で考えてみて・・とか。

玉置先生の話は具体例があるので,とても分かりやすいです。
何かを教える場合,具体例,例え話があると理解しやすいのを改めて感じました。
本当にちょっとしたことだけれど,先生に言われるままにすべて同じようにやる,のではなくて,こどもたちが自己選択をする場面を入れることで,「自分だったらどうするか」と考える習慣が出来て,主体的に学べる,ということなのですね・・・

誰かから勉強せよ!と言われなくても,自分から進んで主体的に取り組んでくれたら親としても嬉しい。
そのためには,自分で「選んでる」という感覚はとても大切なようです。
私も自分の子どもたちに,つい,○○してね!と言ってしまいますが・・・どうする?何からする?と声掛けしていきたいと思いました。

2 対話的な学びとは

未来を生き抜く力を育てるために必要な学び方とされる「対話的な学び」。
「対話的な学び」って具体的にはどんな学び方をしたらいいのだろう?
そもそも,「対話」って何?

この点について,「対話」「議論」「雑談=会話」とは違うものとして説明して下さったのが,私としてはすごく分かりやすくて感動しました~

「議論」は,Aさんが,○○が正しい,と言い,Bさんが△△が正しいという。その論拠をそれぞれ説明。議論は意思決定のためになされる。
←これはまさに,法廷で弁護士がやっていることだと思いました。どちらかが正しくて,どちらかが正しくない,Aが勝ち,Bが負け,等の結論が出る。

「雑談=会話」は,Aさんが○○という意見を言う,Bは△△,Cは××,それぞれ意見を言って聞きあうけれど,そこで終了。意見の統一を必要としない。
それ以上自分の意見,考え方が深まることは無い・・という感じ。

これに対して,「対話」とは。
Aさんが○○という意見を言う。Bは△△という意見を言う。それぞれの話を聞いて,なるほど,自分は○○と思うけれど,△△という考え方もあるんだ,という相互に異なる視点を得ること。でも,元々の主張である○○,△△という意見,主張自体が必ず変わるわけではない。

「対話」出来る力って,異質な集団で交流する際に,自分とは違う意見を持つ人,他人といい関係を作るのに必要な能力,異なる意見を持つ人とも協力できる能力,意見が衝突して争いになりそうでも,自分で争いを処理して解決するのに必要な能力とのこと。

自分たちで,争いが解決できずに,どちらも自分が「正しい」という意見,「議論」を続けていたら,解決するために必要な場合には,最終的には裁判所で結論を出してもらうしかない。
それが,私たち弁護士が裁判の場合にしている仕事。
…だから,「対話的」でない解決なので,相手方からは当然嫌われる可能性が高い仕事です(笑)

でも…弁護士の仕事をしていて実感するのは,判決でどちらかが「正しい」と決められたとしても,負けた方は納得する,という訳ではない。
押し付けられた結論は「不当なもの」として,受け入れられないことの方がむしろ通常です。

自分の意見が正しいことを主張するために,異なる意見を持つと思う相手を誹謗中傷する,威力を用いて脅して言うことを聞かせようとする・・・これは私に最近起き続けていることだけれど,そういう方たちが発信している内容を読むと,「反対の方,お話することは一切ありませんので絡まないでください」などと書かれていて,一切相手の意見を聞いてみる気はなく,「対話」をする気がないのが分かります・・・(それなのに,こちらには絡んでこられるので困りますが・・・)

人間は本来誰一人として同じではないので・・・
このような,「対話」を拒否する方法では,誰かとの関係をうまく築くことは出来ないだろうな,と改めて実感しています。

「お前は間違っている,俺(私)が正しい」と言い続ければ,職場でも,家庭でも「対話」は成り立たず,しんどくなって相手は離れたくなってしまうだろうな・・・と思います。

以前は,個人個人で能力を高めて戦うこと,競争することが必要とされた部分もあったと思うけれど,これからはそういう時代ではない。
意見の異なる人とも,どのようにいい関係を作り,協力してより良いものを作り出せるのか,自分たちで紛争を解決できる,ということが必要とされる時代,だと改めて思いました。

全員が「対話」する力を身に着けたら,紛争は無くなって,弁護士の仕事は必要なくなるのかもしれませんが・・・
そこまでには,まだまだ時間がかかりそうで,「対話」不可能な相手と紛争を解決するには,弁護士の仕事が必要かなと思っています。
また,裁判と異なって,話合いをサポートする「調停」では,弁護士も対話する力も重要になるところだと思っています。

そして!これからの子どもたちが「対話」出来る力を身に着けたら,人間関係をうまく構築することが出来て,意見の異なる他者ともうまく協力しながら,仕事でも力を発揮できそうです。

では,「対話」出来る力を身に着けるためには,どんな学び方をしたらいいのか?
これは,学校の先生が子どもたち同士をうまく「つなぐ」こと,具体的には,例えば,ある子どもの発言を他の子どもに「どう?」とつなげる,「それはどこでそう思った?」「どうしてそう考えたの?」と根拠や理由を尋ねて,さらにほかの子どもに繋げて学びを深めることが大事とのこと。

子どもたちが「あれ?」という表情をしていたら見逃さず,「どう思ったの?」と聞いてみたり,それぞれの子の考え方をメモなどで見たら,うなずいたり,「いいねー」と声をかけたりすることで発言しやすくする,というようなお話もあって,「対話」の生じるきっかけづくりも大切なのだな,と思いました。

みなさんの家庭や職場では,「対話」ありますか?
相手が職場の部下の場合でも,配偶者の場合でも,子どもの場合でも,自分より知識がない,未熟だと思っていると,特に,自分の意見が正しい,として,「○○でしょ!」と決めつけがち(これは私ですが・・)
対話する力を自分自身も磨いて,○○さんはどう思っているの?「なるほど~そうなんだね!」と言えるように意識していきたいと思いました~~

3 深い学びとは

各教科等で習得した概念や考え方活用した「見方・考え方」を働かせ,問いを見出して自分で解決したり,自己の考え方を形成し表したり,思いを基に構想,創造したりすることに向かうために必要なものが「深い学び」とのこと。

何となく,問題を発見して,解決をする能力のことかな・・と感じますが,これだけでは実際にどのように学んで,どんな力を身に着けたらいいのか分かりにくいですね。
「見方・考え方」ってそもそも何なのか・・?

この点,玉置先生は,「今日の授業で,一生覚えておくと良いことがら」≒本質と言われていました。

例えば,ウサギさんとリスさんが離れた場所で釣りをしていて,どちらの釣った魚が大きいか,電話で会話している。
ウサギ「こぶし3つ分の魚を釣ったよ」
リス「ぼくのはこぶし4つ分だよ。ぼくの方が1つ分長いね」という会話をする。

…ここであれ?と気づく。
こぶしの大きさがウサギとリスでは違う
→違う大きさのもので比べてはダメ
→比べるには単位をそろえる必要がある→それが「ものさし」なんだ。

この「比べるには単位をそろえる必要がある」ということを気付くことが,この授業で気づいてほしい「見方・考え方」,一生覚えておくと良いことがら≒本質ということのようです。

私も「考え方」って本当に大切だと思っています。
個々の知識を知っていても,それが全く同じ場面でしか使えなかったら,あまり人生では役立つ場面は少ない。
なぜかと言うと,人生では全く同じ場面,同じシチュエーションということはまず存在しないから。

でも,「考え方」「見方」≒本質を知っていれば,異なる場面でも,その「考え方」を使って対応できる。
「考え方」「本質」が分かっていれば,自分でその場面に必要なもの,「ものさし」を作れる。
魚釣りの場面でなくても,仕事上データを解析する場面でも,比較するには,単位,データをそろえて比較しないと正確な比較が出来ない,と気づける・・という感じかなと思います。

私たち弁護士の仕事も,関わる全ての事案は,どれも違っていて,全く同じケースはありません。
しかし,その場面で関係する法律条文の「考え方」(法の趣旨と言ったりします),裁判所が大切にしている「考え方」は共通していますから,それを用いて,個別の事案では,それをどのように使っていくべきなのか,本件ではその「考え方」を基にするとどう判断するべきなのか,を伝えていく仕事になります。

玉置先生も「深い学び」とは,「見方,考え方」を道具として使う学習教科等の教育と社会をつなぐもの,と伝えて下さったので,他の場面,日常社会でも,道具としてうまく使って問題を発見して解決するために使えるようにするのが「深い学び」,ということを伝えて下さったのかな,と思います。

みなさんは,個別の体験から,他の事柄にも共通して使えそうな本質,「見方・考え方」がある!と発見されたことはありますか?
「見方・考え方」を意識して,個別具体的な場面で,この「考え方」からすると,こう解決できそう!と発見されたことはありますか?

まとめ 自分と他者の多様な価値を尊重する

改訂学習指導要領の前文に書いてある言葉の紹介もして下さいました。

それは,
「これからの学校には…一人一人の児童(生徒)が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の作り手となることが出来るようにすることが求められる」です。

それぞれが違って,それぞれ素敵,お互いに意見は違うことがあっても,それだからこそ,むしろ,自分も他人も価値ある存在として尊重し合っていける人,協力しながら乗り越えていける人,そういう大人になれるよう学校が手助けしてもらえたら嬉しいな,と思いますし,それが求められているのだな,と改めて思います。

そのためには,やっぱり,「それって間違ってる!」と頭ごなしに言うのじゃなくて,
「あなたは,○○って思うんだね~なるほど」とそういう意見もあるんだなあ~と思ってみる「対話」する力は改めて大事だな,と思いました。
自分も大切,あなたも大切,それぞれ違っているけど,とても大切な存在,そう認めあえるところから,全ては始まるかな,と思います。(これも私の一意見ですが!)

相手の意見聞いて,取り入れてみても,別に相手と意見を一致させる必要はないし,自分の意見が正しい,と相手に認めさせる必要もない・・。
自分一人の考えでは,発想にも限界があるし,どうしても同じ傾向で決めてしまいがちで面白いものが作れない,という気がします。
お互いの違うところを認めて,それぞれの良いところを活かしながら,協力できる部分を見つけていく・・・ということが出来る大人になってくれたらいいな,と思います。

そのために私も,今回教えてもらった「主体的・対話的で深い学び(これをアクティブラーニングというようです)」が子どもたちが出来るよう,親としても気をつけていきたいなと思います。

先日,多治見市の小中学校の先生で,こういった現在求められている学び方を実践して,論文にまとめて下さった先生方の表彰式に参加させていただきましたが,本当に多治見市の子どもたちが,今まさに求められている,これらの力をつけるために実践してくださっている姿に感動しました。
何よりも,子どもたちが,授業,その勉強を「好きになる」ということを意識してくださっていることが嬉しかったです。

学ぶことが好きになれば,受け身で「やらされる」勉強ではなく,「主体的」,積極的に,他の子どもたちとも関わりながら,まさに,アクティブに学び続けていけると思うので,これから長い人生でも,学び続け,成長し続けていけると思います。ありがたいです!

玉置先生の話には,GIGAスクール構想のお話もありましたが,こうした子どもたちがこれからの社会で逞しく生きていくために身に着けるべき力,その学習効果を高めるために,うまく利用できるようになるといいな,と思っています。

それでは,

このブログを読んで下さったお父さん,お母さん,学校の先生方など教育に関わる方々がどうしたら,未来の社会でも役に立つ人となるための学び,スキルを身に着けることが出来るのかとなるのか,ワクワク楽しみながら,考えるヒントとなりますように・・・

事業主の皆様は,未来を担う子供たちに自分たちが教えてあげられることは何なのか?仕事としては,どのようにしたら異なる意見を活かしつつ,革新的なアイディアを実現できるチーム作りが出来るのか?を考えるヒントとなりますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!