労働問題・解雇

弁護士矢野沙織のブログから,労働問題・解雇に関する記事を集めました。

矢野沙織ブログ~労働問題・解雇

企業のパワハラ対策

これまで、本ブログでセクハラ問題について取り上げてきましたが、今回は、セクハラ同様、職場秩序に反し、企業能率を低下させるパワハラ問題について取り上げたいと思います。

 

1 パワーハラスメント(パワハラ)とは

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいうとされています(厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の提言より)。

職場のパワハラの行為類型は、以下のとおりです。

○身体的な攻撃(暴行・傷害)

○精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)

○人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

○過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する等)

○過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる・仕事を与えない等)

○プライバシーの侵害(私的なことに過度に立ち入る)

 

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2019年3月16日

企業のセクハラ対策(客などの第三者によるセクハラ被害の対処法)

前回のブログ(平成31年2月2日掲載)で、従業員によるセクハラ被害に対する企業の対応策について記載しましたが、客によるセクハラ被害に関する最高裁判例を受けて、今回は、客などの第三者によるセクハラ被害に対する企業の対応策について記載したいと思います。

 

1 最高裁判例(平成30年11月16日 最高裁第三小法廷 判決)

地方公共団体の男性職員が勤務時間中に訪れたンビニエンスストアの女性従業員に対して、不適切な行為(女性従業員の手を握って店内を歩行し、女性従業員の手を自らの下半身に接触させようとする、胸を触る、男性の裸の写真を見せる、胸元をのぞき込む、「乳硬いのう」「乳小さいのう」「制服の下、何つけとん」「胸が揺れとる。何カップや。」といった不快な発言をする)をしたことを理由に停職6か月の懲戒処分を受け、処分の取消しを求めた事案です。

1審・2審判決では、女性従業員が「終始笑顔で行動しており、これ(男性職員による身体的接触)について渋々ながらも同意していたと認められる」とし、男性職員の処分が重すぎると判断しました。

これに対し、最高裁判決では、女性従業員が「終始笑顔で行動し、(男性職員による)身体的接触に抵抗を示さなかったとしても、それは客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり、身体的接触についての同意があったとして、これを男性職員に有利に評価することは相当でない」とし、男性職員の処分が著しく妥当性を欠くものではないと判断して、男性職員の請求を棄却しました。

コンビニエンスストアの従業員は、立場上、利用客の迷惑行為に対して嫌悪や拒絶の意思を明確に示すことや、店舗の利用を拒絶する、接客をしないといった対応をとることが困難であり、女性従業員が男性職員の不適切な行為に対して明確に拒否する言動をしていないことを捉えて、女性従業員がセクハラ行為について渋々ながらも同意していたと判断した1審・2審判決には、違和感を覚えます。

店舗のオーナーは、男性職員の不快な言動について女性従業員から頻繁に報告を受けており、これを理由の一つとして退職した女性従業員がいたにもかかわらず、商売に支障が生じないよう、しばらくの間、黙認していたとのことですが、客であるからといって、社会的にも強く非難されるべき破廉恥なセクハラ行為を黙認すべきではありません。

 

2 セクハラ被害に関する企業の法的責任

加害者が会社の従業員なのか、客などの第三者であるかにかかわらず、企業には従業員をセクハラ被害から守り、職場環境を整える義務があるため、加害者が第三者であるからといって企業の法的責任が軽減されることはない点について注意が必要です。

①債務不履行責任…企業は、労働者に対し、労働者との間の雇用契約に基づく付随義務として、労働者の労働環境を調整し、快適な環境を提供する義務があるとされます。したがって、セクハラ被害を認知したにもかかわらず放置したような場合には、この義務を怠ったものとして債務不履行責任を負うことがあります。

②男女雇用機会均等法11条違反…労働者がセクハラ被害を受けている場合には、企業はセクハラ行為を止めさせるために必要な措置を講じる必要があります。それにもかかわらず、セクハラ被害を放置ないし黙認すれば、それ自体が法律違反となり、損害賠償責任を負うことがあります。

③労災補償責任…企業がセクハラ被害を放置ないし黙認したことにより、労働者が精神疾患等のメンタル不全を招来した場合には、仮に企業に過失がなくとも、労災補償責任を負うことになります(無過失責任)。

 

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2019年2月23日

企業のセクハラ対策

多治見ききょう法律事務所では、地域経済の活性化のために、地元企業の皆様の力になりたいという思いから、企業法務に力を入れております。本ブログを通じ、様々な労働問題について、企業側の目線に立った解決策等を提案していきたいと思います。

今日は、女性活躍推進法の施行日(2016年4月1日)からまもなく3年が経つにもかかわらず、後を絶たないセクシャルハラスメント(セクハラ)問題について、取り上げたいと思います。


1 セクシャルハラスメント(セクハラ)とは

職場におけるセクハラについては、男女雇用機会均等法に規定があります。この法律で、セクハラとは、

「①職場において行われる②性的な言動に対する雇用労働者の対応により③労働者がその労働条件につき、不利益を受け、または当該性的な言動により④当該労働者の就業環境が害されること」と定義されています。

①「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を指します。必ずしも事業所内に限定されるわけではなく、出張先や取引先も含まれます。また、業務を遂行していれば必ずしも勤務時間内であることまでは必要なく、例えば「宴会」であったとしても、その趣旨、参加者、参加の自由度によっては、勤務の延長として職場とみなされることがあります。

②「性的な言動」とは、スリーサイズなど身体的特徴を話題にしたり、性的な経験や性生活について質問するなどの性的な内容の発言、または、身体に不必要に接触する、性的な関係を強要するなどの性的な行動を指します。

③「労働者がその労働条件につき、不利益を受け」るものとは、「対価型セクシャル・ハラスメント」と言われ、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることを指します。

④「当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害される」ものとは、「環境型セクシャル・ハラスメント」と言われ、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

そうすると、意に反するものであったか就業環境を悪化させるものであったか、が重要な判断基準となりますが、仮に、本人が明示的に反対せず応じているように思えても、その言動が相手の望まない言動である以上、セクハラとなることに注意を要します。その判断基準は、客観的に判断しなければなりませんので、「平均的な(男性・女性)労働者」が通常どのように感じるかで判断されることになります。

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2019年2月2日