
「改正民法で離婚後も共同親権が選択できるようになったことはよく聞きますが,これによって養育費も支払われるようになるのですか?」
「離婚後の共同親権は,離婚後も父母が責任をもって子どもを養育するということですよね?だから,離婚後共同親権を選んだ場合,大学費用などの養育費も責任をもって支払ってもらえますか?」
離婚後に子供と一緒に住む予定の同居親(監護親)からは,改正民法によって何が変わるのか,離婚後共同親権を選択した場合の効果として「養育費」の支払いについて尋ねられることがある。
一方で,
「離婚後共同親権親権を選べば,(共同で育てるのだから)養育費は払わなくていいんですよね?」
子どもと離れて住む親(多くは父親)からは,改正民法で離婚後共同親権が認められるようになって,「共同親権」を選択すれば,養育費を支払わなくてよい,と思っている方がいることを知って,驚くことがある。
・・しかし,これはいずれも「誤解」です。
改正民法が施行される前から,親権者でない親であっても,養育費は支払わないといけませんでしたので,それは改正民法後も同じです。
そのため,共同親権を選択したら,大学費用等の養育費として問題なく支払ってもらえることになるわけではありません。
離婚前の別居中で「共同親権」がある状態でも,それだけで現状,「大学費用」を支払ってもらえるわけではないことからしても,「共同親権」であることと,養育費を支払ってもらえるかどうか,は別の問題である,ということは想像しやすいのではないかと思います。
また,「共同親権」を持つことと「共同養育(交替監護)」出来るかどうかというのも別の話です。
共同親権を得たら直ちに養育費を支払わなくてよい,養育費の金額を減らせる,というわけでもありません。
この点,法務省のQ&A,Q3-2でも,共同親権になったとしても,養育費や親子交流の在り方,監護の在り方(どのように子供を養育していくか)は連動しないこと,「別途,子の利益を最も優先して,協議等によって取決めをすること」が必要であることを説明しています。
共同親権と養育費・親子交流の勘違いとして,とても多い「誤解」として,こちらの動画でも解説していますので,参考にしてもらえたらと思います▼
https://youtu.be/PaaMSoL47cY
・・そのため,離婚後共同親権を選択するかどうか,と「養育費」の問題は別であることを前提に,改正民法で「養育費」について何が変わるのか,を正確に知ることが重要です。
民法改正で,「共同親権」,「親子交流(旧面会交流)の充実」が別居親の強い希望で進められたものであるのに対し,同居親からは,支払い続けてもらうことが難しい「養育費」の支払確保についてこそ,「子の利益」のために強く求められてきた点でもあります。
では,民法改正によって,「養育費」の取扱いはどのように変わるのか?
「養育費」については,3つの改正のポイントがありますので,変更点をご紹介しながら,順番に分かりやすく解説していきたいと思います。
今回は第1のポイント「2026年4月スタート・法定養育費とは?共同親権と養育費の関係は?」第2のポイント「2026年4月スタート・公正証書でなくとも養育費の差押え可能?養育費の先取特権とは?」に引き続き,第3点目のポイント「ワンストップ民事執行」について見ていきましょう。
1 ワンストップ民事執行の概要
改正法の施行によって,これまでは一つずつ申立てをする必要があった以下の①~③の手続が1回の申立て(①)を行うことだけで,できるようになりました。
- ①財産開示手続
- ②債務者の給与債権に係る情報取得手続
- ③当該債権の差押えの手続
これによって,養育費を支払ってもらえない場合の差押手続きの負担を減らすことで,より子供にとって大切な養育費の確保を容易にすることを目指しています。
2 養育費差押え手続きの具体的な流れ
養育費を支払ってもらえない場合,「民事執行」(差押え)によって,強制的に回収することになります。
しかし,これまでは,差押えをしようとしても,差押えの対象となる別居親の財産が不明のため,養育費を回収することが,困難な状況がありました。
この点,令和2年の改正により,この財産内容を開示してもらう「財産開示手続」(①)を実効的にするための制裁規定などが強化されました(詳しくは,私のHP↓に記載しています)。
https://tajimi-law.com/rikon/yoikuhi-kaishu-new.html
しかし,回収の効果が高いと考えられる「どこから給与をもらっているか」という給与を差押えるための情報を得る手続き(前記②)は,①が終了してから,改めて申立てをしなければいけませんでした。
差押え対象となる財産が判明した後に,改めて差押え手続き(③)をする必要があるなど,養育費を請求する方にとって負担が大きいものでした。
今回の改正によって,これらが一度の申立てで,「ワンストップ」で出来るようになりました。
それでも,申立てをすること自体の負担も大きいため,海外のように,国が一旦養育費を立て替えて支払い,その後,強制的に別居親の給与などから養育費を回収する方法も検討されましたが,こちらは見送られたことになります。
3 改正前の養育費の取り扱いと注意点
令和8年3月以前に既に発生している養育費について,施行前に発生している養育費についても,「ワンストップ民事執行」は使うことが出来ます。
しかし・・・
この「ワンストップ民事執行」は,
①の財産開示手続きをしても,預金を開示しない人の預金が分かるようになる手続きではありません。
また,例えば,別居親が不動産(持ち家)を所有(単独で所有,若しくは共有持ち分を持っているなど)していることが分かっているようなケースの場合,この不動産執行しても,回収できないことの疎明(197条1項2号「知れている財産に対する強制執行を実施しても,申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明」)が必要になりますが,これが出来ていないということで①の財産開示手続き段階で却下される可能性があります。
不動産の換価手続き(競売)は負担も大きく,特に共有持分を持っているだけの場合には,持分だけで買ってくれる人を見つけづらく,競売手続きをしても養育費の回収は困難なことが多いと考えられますが,「共有持分」を強制競売しても落札されるか分からず,落札されなかった場合に強制競売が取消され,手続費用分の損をする,という程度の事情では,裁判所がこの「疎明」があったと扱ってくれないのではないかと思われるところです。
そのため,このようなケースでは,改正法施行後も,給与債権等の差押えをするまでに,不動産(持ち家)の共有持分の競売を実際に実行するなどが必要になるのではないかと思います。
このあたりをふまえて,ご自身のケースで①財産開示手続が効果的なのか,弁護士とも相談しながら,進めていくことが必要でしょう。
「養育費」についての全般的な注意点については,改正民法をふまえた変更点も含めて,ホームページを更新して記載していますので併せて参考にしてもらえたらと思います▼
https://tajimi-law.com/rikon/yoikuhi.html
まとめ 一般論と具体的な適用を区別する
このブログを読んでくださった皆さんは,どんなことを感じましたか?
また教えていただけたら,嬉しいです。
改正民法による変化として,一般論として何が変わるのか,「ざっくりと」把握することも重要ですが・・
ご自身のケースでは,具体的にどのように利用できるのか,利用出来ないのか,利用するためにどのようなことをしなければいけないのかについては,一般論とは区別して具体的に適用できるのかどうか,を知ることも養育費の確保の点から大事だと思っています。
改正民法の施行による「養育費」に関する3つのポイントとなる変更によって,「具体的」に何が変わり,何は変わらないのか,「共同親権」が選択できるかどうかとは別に「養育費」という問題としての「具体的な変更点」は何なのか?
自分のケースでは実際にどんなことが変わるのか?
そのために,どんなことに注意しなければいけないのか?
出来るだけ具体的な場面を考えながら,このブログでもまた伝えていけたらと思います。
これからも,
男性,女性,同居親,別居親などそれぞれの立場の方がこれまでとは違う視点で考えてみることができるよう,私が出来ることとして,これまでうまくいっていると思える実践例やそれぞれの立場の方が感じていること,自分自身が母親として,また,両親の紛争下で育った子どもとして感じてきたことなども含め,発信していけたらと思っています。
うちに相談に来て下さる依頼者の方々のため,そして自分自身の子ども達,家族,友人のため,弁護士として,母として,幸せに生きるための方法,考えていきたいと思います。
また,改正民法による具体的な変化,共同親権を含めた具体的な運用の変更点などについて,引続き研究発表,致しますね!
それでは,
このブログを読んで下さった皆さまにとって,改正民法によって何が変わるのかを具体的に知るヒント,離婚後の養育費についての変更点,自分の望む未来のために,どのように行動したらいいのか,どのような行動は注意すべきなのか,考えるヒントとなりますように。
今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!