困った社員に対する対処法・予防法~②勤務成績・勤務態度不良の社員に対する対処法

当事務所では、使用者側の労働問題に注力し、経営者のサポートをさせていただいておりますが、経営者の方から相談されることが多い「困った社員に対する対処法及び予防法」について、引き続き、記載していきたいと思います。

第1回目は、「経歴詐称をした社員に対する対処法」について記載しましたが、第2回目となる今回は、「勤務成績・勤務態度不良の社員に対する対処法」について取り上げたいと思います。

 

1 職務遂行能力の判断基準

社員の職種や業務内容を特定しない場合、社員が現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十分にできないとしても、能力・経験・地位・会社の規模・業種・会社における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして、社員が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができる場合には、債務の本旨に従った労務の提供があるとされます。つまり、職務遂行能力の有無は、現在従事している業務だけでなく、配置可能な業務も基準に判断されるのです。

したがって、現在の業務の遂行に問題がある社員であっても、それだけで労務の提供がないと評価することはできず、会社側には、社員に対し、配置可能な他の業務を与えて社員の職務遂行能力を発揮させる努力をすることが求められます。

 

2 対処法

(1)注意・指導

社員の職務遂行状況に問題がある場合は注意・指導を行いますが、会社がいつ・どのような内容の注意指導を行ったのかを明確にし、会社が社員の改善のために努力をしたという証拠を残すためにも、文書を用いることが望ましいです。

(2)配置転換

前述のとおり、社員が配置可能な他の業務について労務提供可能であれば、会社はそれに応える配置転換を検討する必要があります。社員に複数の職務を経験させ、その結果が芳しくない場合には、その記録を残すことが必要です。

(3)適切な目標設定と適切な人事考課

社員は、労働契約の合意内容の枠内で、労働の内容・遂行方法・場所等に関する会社の指示に従った労働を誠実に遂行する義務を負っておりますが、人事考課制度は、会社の指示内容を明らかにし、社員の労働が指示に従ったものであるかどうかの評価を行うものです。人事考課制度を適切に設計し、運用することで、社員の公正な処遇や能力開発、ひいては会社の目標を達成することが可能になります。

①厳正な態度を堅持し、主観・人情・偏見に左右されないこと②日常の観察及び指導により得た資料に基づいて的確な判断を下すこと③考課は仕事を基準とし、職務内容の同等である考課対象者は同一基準で判定することで、社員が提供した労務の価値を適切に評価したといえるようにすることが必要です。社員に対して求める職務遂行能力(目標)を明確にして社員に周知させ、社員の仕事の結果を昇給や賞与、配置転換等に適正に反映させることで、社員の公正な処遇や能力開発を行い、会社の目標を達成していくようにしましょう。

(4)懲戒処分

社員の勤務成績・勤務態度不良の程度が著しく、就業規則上の懲戒事由に該当すれば、懲戒処分を行うことができます。

(5)降格(管理職の場合)

管理職は、部下を指揮監督し、組織の運営を担当する権限を有している点で一般社員と異なるため、管理職が部下を指揮監督する能力を有していない場合には、一般社員への降格を検討することになります。降格については、就業規則に根拠規定がなくても、人事権の行使として裁量的判断により行うことができるとされています。

(6)退職勧奨・解雇

社員としての適性がないほどに勤務成績・勤務態度が甚だしく劣悪であり、改善の見込みが無い場合には、社員に対して、合意退職や自主退職を促すことになります。

社員が退職勧奨に応じない場合には、解雇を検討することになります。もっとも、解雇の有効性が争われた場合に、解雇権の濫用に当たると判断されないようにするため、①会社経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じるおそれがあり、当該社員を会社から排除しなければならない程度に至っていること②当該社員に今後の改善の見込みがないこと③会社側の不当な人事(社員に宥恕すべき事情)がないこと④配転や降格ができない事情があることについて、十分検討することが必要です。

 

困った社員への対応を誤ると、重大なトラブルに発展してしまうこともあります。

多治見ききょう法律事務所では、使用者側の労働問題のご相談・ご依頼、セミナー等を承っておりますので、ぜひご利用ください。

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