地図にない道 地図を巡る2つの話

春は多治見にも

2週間ほど前,名古屋市東区のオオカンザクラの桜並木を見に行きました。

多治見駅周辺の枝垂れ桜も見頃を迎えています。

先週,多治見駅北,安養寺の枝垂れ桜を撮りました。

そして,来週には,多治見でもソメイヨシノが満開になるようです。

地図を巡る2つの騒動

Google マップ 突然変わる

最近,地図に関する話題が2つ,巷間で取り沙汰されました。

そのうちの一つが,Google マップが突然「変わった」ことでした。

地図にない道,現る Google マップ

これまでGoogleマップには株式会社ゼンリンの地図が使われていましたが,3月の半ばから突如として,Google独自の地図に変わりました。

そのため,Googleマップでは,多治見ききょう法律事務所の南側に実際には存在しない道が表示されたり事務所の南側の駐車場のど真ん中に実際には存在しない建物が表示されたりしています。まさに,地図にない道,現る,です。

地図にも著作権があります

往々にして忘れがちなのが,地図にも著作権があるという点です。

著作権法10条1項6号で,「地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物」は著作権法上の著作物だと明示されています

市販されている地図は,情報の取捨選択や情報を平面に表現する際の線や色付けに個性が反映されています。

昭和53年9月22日の富山地方裁判所判決は,確かに

「地図は,地球上の現象を所定の記号によって、客観的に表現するものにすぎないものであつて,個性的表現の余地が少く,文字、音楽、造形美術上の著作に比して,著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例」

ですが,

「各種素材の取捨選択,配列及びその表示の方法に関しては,地図作成者の個性,学識,経験等が重要な役割を果たすものであるから,なおそこに創作性の表出があるものということができる」

として,

「素材の選択,配列及び表現方法を総合したところに,地図の著作物性を認めることができる」

としています。

株式会社ゼンリンの地図からGoogle独自の地図に変わったことで混乱が生じたのは,まさに,情報をどのように収集取捨選択した上で地図に反映させたかという点に,他社の地図では真似できない株式会社ゼンリンの個性が現れていたからにほかなりません。

この裁判例の事案は原告の請求を棄却していますが,これは,地図の著作物性について論じつつ,この事案については,全体的にみて,原告の地図と被告会社のそれとの間の違いが著しいものであり,普通の人が見ても,被告会社の地図から原告の地図の著作物としての特徴を認識することは困難であると判断したからでした。

私的使用の場合を除き,地図をそのままコピーして使う場合は,地図の著作権を侵害することは明らかです。

地図サービスの利用時は,しっかり確認を

インターネットで提供されている地図サービスについては,私的使用の場合など著作権が制限される場合を除き,地図の著作者や地図サービスを提供する者が許している使い方通りに使わないと,著作権侵害となる可能性があります

例えば,Yahoo!地図の地図(そして航空写真・衛星写真)については,「Yahoo!地図ヘルプ」の「リンク・転載・二次利用について」において,印刷広告やちらし,その他の種類の印刷物には使ってはいけないと明記されています。

地図サービスの二次利用がどの範囲まで許されるのか,しっかり確認して利用する必要があるのです

破産者マップを巡る法的問題

破産者マップとはなんだったのか

さて,地図といえば,最近大きな問題となったのが破産者マップです。

全国の破産者の情報(住所,氏名,事件番号)を,Googleマップを使って地図上に表示するサービスが提供され,物議を醸しました。

本人の名前と住所という生存する個人を特定する情報が,本人の同意なく大量に収集され,しかも本人の同意なく地図上のピンとして地図に紐付けられて全世界に公表されるという事態が生じていたのです。

個人情報保護法違反の疑い

結局,個人情報保護委員会が個人情報保護法41条に定める行政指導がなされ,サイトは閉鎖されました。

報道によると,個人情報保護法の「利用目的を,本人に通知し,又は公表しなければならない」(18条)といった規定や,「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」(23条)といった規定に違反していることを理由に行政指導をしたとのことでした。

大量の個人情報が本人の同意なく大量に公表される事態は,本人に対して,精神的な苦痛はもちろん,経済的な損害を与えかねません。そもそもこのような地図サービスを提供する必要性がありませんし,サービスの提供を正当化するだけの法的に妥当な理由が見当たりません。

その他にもプライバシー侵害や名誉毀損の疑い

このような地図サービスは,個人情報保護法違反に当たるだけでなく,各破産者のプライバシーを侵害したり,名誉を毀損したりする可能性も高いものでした。

いよいよ4月,春本番に!

今週は,地図に関する話題を2つお届けしました。

あっという間に3月が終わり,4月,新年度・新学期となります。

私は,しばし,桜を楽しみたいと思います。

天気はあまり良くないようですが,皆様もよい週末をお過ごしください。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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