変わる相続のルール 事業承継から考える相続法改正

約40年ぶりに大きく変わる 相続のルール

昨年,民法の中の相続に関するルールが改正されました。

ビジネス雑誌でも,昨年から,

「40年ぶりに相続が大きく変わる」

「変わる相続法 40年ぶりの大改正」

といった特集が組まれています。

今年の7月1日に,改正されたルールの大部分が施行されることとなります。

今回は,事業承継の視点から,民法の相続に関するルール(以下,「相続法」といいます)の改正を踏まえ,

  • どのような点に気をつければいいのか,
  • 何に備えておくべか,

について説明していきたいと思います。

事業承継への備え

企業の経営者や自営業者が,自分が亡くなった後に,後継者にどのように円滑に事業を承継させるか。

自社の株式を後継者にどう承継させるか,自営業者であれば事業用資産をどう後継者に承継させるか。

これまでも,「遺言書」を作成することと「遺留分」への備えが大切だと言われていました。

相続法改正により,今までと変わる部分はたくさんあります。

事業承継との関係では,今回の相続法改正については,特に次の3つが重要です。

  1. 「遺言」について新たな制度ができます。
  2. 「遺留分」のルールが変わります。
  3.  相続に伴う財産・権利の承継についてのルールが変わります。

[1]「遺言」〜自筆証書遺言のルールが変わります

遺言については,おおまかに,遺言を遺したい人自らが書く自筆証書遺言と,公証役場で作成する公正証書遺言があります。

今回の相続法改正で,自筆証書遺言について制度が変わります。

さらに,一部は既に1月13日から変わっています。

(1)1月13日から変わったこと

遺言書の本文については,これまで通り手書きで作成しなければなりません。

しかし,財産目録は,1月13日から,手書きで作成する必要がなく,パソコンで目録を作成したり,通帳のコピーを添付したりすることができるようになりました。

もっとも,財産目録の各ページに署名押印をする必要があります

(2)来年7月10日から変わること

さらに,自筆証書遺言を法務局に保管する制度が,来年(2020年)7月10日から始まります。

これまで,自筆証書遺言は,裁判所で検認という手続きを経る必要がありました。

これに対し,保管制度を利用した場合,検認は不要となり,速やかに遺言の執行に着手できます

法務局で保管するため,遺言を紛失したり,誰かに隠されたり,改ざんされたりするおそれがなくなります

もっとも,遺言そのものは自筆でないといけません。

[2]「遺留分」のルールが変わります

(1)遺留分とは

遺留分とは,被相続人から多額の遺贈又は贈与を受けた者に対して,兄弟姉妹以外の相続人が最低限の取り分を確保する制度です。

7月1日から,遺留分をどのように計算するか,遺留分を侵害された場合に何を求めることができるか,が変わります。

(2)遺留分をどのように計算するかが少し変わります

最低の取り分である遺留分を算定する際,相続人が生前に受けた贈与も遺留分の算定の際に含めていました。

今回,その算定の範囲となる贈与を,原則として亡くなった時から10年前のものまでに限定することとなりました。

ただし,当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした時はそれ以前の贈与も含みます。

(3)遺留分を侵害された場合に何を求めることができるかが変わります

最低の取り分である遺留分から,実際に遺留分がどれくらい侵害されたのかを計算します。

これまでは,遺留分減殺請求権という権利を行使することで,遺留分侵害額に応じて,財産を共有することになっていました。

7月1日からは,遺留分を侵害された人が遺留分侵害額に相当する金銭の支払を求める権利に変わります。

また,裁判所が金銭の支払いのため,相当の期限を許与する制度も新設されました。

今後は,遺留分を侵害されたと主張する人から,遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求められる制度に変わるため,事業承継の場合は,遺留分侵害額に相当する金銭をしっかり準備しておくことが重要になります。

[3]相続に伴う財産・権利の承継についてのルールが変わります

遺産分割であれ,遺言であれ,法定相続分を超える財産や権利を取得する場合速やかに登記をしないと第三者に財産や権利の取得を主張できないことになりました。

そのため,遺言により法定相続分を超える財産を後継者に承継させる場合には,速やかに遺言の内容を実現し,登記をしなければなりません

遺言執行者を定めるのはもちろん,遺言を速やかに執行できるよう,

  • 公正証書遺言で作成するか,
  • 自筆証書遺言でも検認の不要な遺言書保管法による自筆証書遺言保管制度を利用する

必要があります。

まとめ

(1)これから事業承継の準備を始める場合

今後の事業承継においては,「財産・権利承継」のルールの変更に備え,

遺言に関する新たな制度を活用するなどして,

  1. 迅速な「遺言執行」が可能な「遺言」を用意するとともに,
  2. 遺留分侵害を主張された場合に対応できる程度の資金を用意すること

が重要となります。

(2)既に事業承継に備えて遺言を作成している場合

既に,事業承継に備えて,遺言を作成している場合は,

  • 作成した遺言が,相続法改正に対応したものか,問題がないか確認すること

が必要となります。具体的には,

  1. 「遺留分」のルールが変わることで問題がないか,
  2. 特に資金調達の備えが万全か
  3. 既に作成している遺言が,迅速な遺言執行が可能なものか

チェックする必要があります。

(3)ぜひご相談を!

7月1日まで半年を切りました。

多治見ききょう法律事務所は企業や自営業者の事業承継も手厚くサポートします。

既に事業承継の準備を始めた方も,準備がこれからの方も,相続法改正を機に,是非,ご相談ください。

陶都中学校や多治見西高校で教える

(1)中学生に仕事を語る

さて,先日,多治見西ロータリークラブの出前授業で多治見市立陶都中学校を訪ね,テレビの仕事と弁護士の仕事について話してきました。

(2)高校生の模擬裁判の授業にも

また,多治見西高校の国語の授業の一環で模擬裁判が行われ,最後に専門家として生徒にアドバイスをしました。この授業は,企画段階からお手伝いをしていました。

いずれも,東濃新報,中日新聞,岐阜新聞に紹介されています。(多治見西高校の模擬裁判の授業の様子は,おりべネットワークでも放送されていました)

(3)陶都中学校の生徒の感想文を拝読しました

今週,私の授業を聞いた陶都中学校の生徒約40名分の感想文をいただきました。

弁護士の仕事については,刑事弁護人が警察官等の立ち会いなく被疑者・被告人と話すことができること,司法試験や司法修習の修了考試の試験時間・日程に驚いた人が多かったようです。

弁護士というと裁判や法廷のイメージが強いですが, それ以外にも法律の専門家としての仕事,依頼者の権利・利益(場合によっては人の命)を守るための仕事など様々な仕事があることを理解していただけたようです。

生徒の前では,様々な人の立場に立ってその気持ちを考えること,人の話に耳を傾けることの大切さを伝えましたが,印象に残った点として挙げている方が多かったです。

テレビの仕事については,番組制作の裏側を中心に大変さと楽しさをお伝えしました。

一つの番組のほんの数分のコーナーでも作るのにどれだけの手間ひまがかかるかを説明しましたが,このことに驚いた方が多かったようです。普段なんとなく見ているテレビ番組ですが,その裏側にはたくさんの人が関わっており,その人たちの手間や労力があって初めて放送にこぎつけていることを理解していただけたようです。

(4)さらに活動の場を広げていきます

このように,高校生には模擬裁判を通じて法的思考,論理的に考え,論理的に説得・表現する大切さを伝え,中学生には自分が過去に携わり又は現在携わっている職業の魅力を伝える仕事もしています。

今年は,多治見を拠点にさらに活動の場を広げていきたいと思います。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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