フラダンスの振り付けが著作物だといえる場合 ほか

第1.フラダンスの振り付けが著作物だと言える場合

1.フラダンスの振り付け〜大阪地裁の判断

ハワイ在住のフラダンス指導者が,自ら創作したフラダンスの振り付けを許諾なく使われて著作権を侵害されたとして,振り付けの上演の差止めや損害賠償賠償を求め,大阪地裁に起こした訴訟。9月20日(木)に判決が出ました。

大阪地裁の裁判官の下した判断は……

各社の報道によると,大阪地裁は,著作権侵害を認め,会員への指導や国内施設での上演禁止と,43万円の支払いを命じたとのことでした。

2.過去に裁判所が振り付けについて下した判断

Shall we ダンス?を巡る訴訟

振り付けといえば,過去には,社交ダンスの振り付けになりますが,映画「Shall we ダンス?」の振付・演出をした舞踏家が,角川映画株式会社(後に株式会社角川書店が訴訟承継)に対し,自己の著作権を侵害したとして賠償を求めて,東京地裁に訴訟を提起した事案があります。

この事案では,あとで示すような判断基準を示した上で,振り付けはありふれたものであり,著作物性はないとしました。

これに対して,今回の大阪地裁の判決は,おそらくは, Shall we ダンス?の事案と異なり,問題となったフラダンスの振り付けに,単なる既存のステップの組合せにとどまらない顕著な特徴を有するといった独創性を備わっていたからこそ,著作物性が認められ,著作権侵害も認められたのだと思います。

東京地裁の判断

平成24年2月28日東京地裁判決では,まず,社交ダンスの振り付けを構成する要素である個々のステップや身体の動き自体には,著作物性は認められないというべきである。としています。

その理由は,

  • 社交ダンスが,原則として,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップを自由に組み合わせて踊られるものである
  • だからこそ,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップは,ごく短いものであり,かつ,社交ダンスで一般的に用いられるごくありふれたものであるから,これらに著作物性は認められない。

 

  • また,基本ステップの諸要素にアレンジを加えることも一般的に行われているし,基本ステップがごく短いものでありふれたものであるといえる
  • 基本ステップにアレンジを加えたとしても,アレンジの対象となった基本ステップを認識することができるようなものは,基本ステップの範ちゅうに属するありふれたものとして著作物性は認められない。

 

  • さらに,社交ダンスの振り付けにおいて,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを取り入れることがあるが,このような新しいステップや身体の動きは,既存のステップと組み合わされて社交ダンスの振り付け全体を構成する一部分となる短いものにとどまるということができる。このような短い身体の動き自体に著作物性を認め,特定の者にその独占を認めることは,本来自由であるべき人の身体の動きを過度に制約することになりかねず,妥当でない。

といったことからです。また,既存のステップの組合せを基本とする社交ダンスの振り付けが著作物に該当するというためには,それが単なる既存のステップの組合せにとどまらない顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であると解するのが相当であるとしています。

その理由について東京地裁は,

  • なぜなら,社交ダンスは,そもそも既存のステップを適宜自由に組み合わせて踊られることが前提とされているものであり,競技者のみならず一般の愛好家にも広く踊られていることにかんがみると,振り付けについての独創性を緩和し,組合せに何らかの特徴があれば著作物性が認められるとすると,わずかな差異を有するにすぎない無数の振り付けについて著作権が成立し,特定の者の独占が許されることになる結果,振り付けの自由度が過度に制約されることになりかねないからである。このことは,既存のステップの組合せに加えて,アレンジを加えたステップや,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを組み合わせた場合であっても同様であるというべきである。

と指摘しています。

3.今回の大阪地裁事案は?

今回の大阪地裁の事案は,今日の時点で,判決文が裁判所のサイトに掲載されていないため,詳細は不明です。
しかし,おそらくは, Shall we ダンス?の事案と異なり,問題となったフラダンスの振り付けに,単なる既存のステップの組合せにとどまらない顕著な特徴を有するといった独創性を備えていたからこそ,著作物性が認められ,著作権侵害も認められたのだと思います。

第2.商標権の効力と地域団体商標について

ついでに,前回のブログの続きで,商標権の話もちょっとだけしておきます。

前回お伝えしたとおり,商標権の効力として

  • 指定された商品やサービスについて登録商標と同じ商標を使うこと

さらには,

  • 指定された商品やサービスについて登録商標と似た商標を使うこと
  • 指定された商品やサービスと似た商品やサービスについて登録商標と同じ商標を使うこと
  • 指定された商品やサービスと似た商品やサービスについて登録商標と似た商標を使うこと

を禁止することができます。

商標権の効力の限界と防御標章の登録

これは,つまり,指定された商品やサービスやこれと似た商品やサービスについて登録商標と同じ商標や似た商標を使うことを禁止することができますが,指定された商品やサービスと似ていない商品やサービスについては,登録商標と同じ商標を使っても問題ないということになりそうです。

確かに通常の商標については,指定された商品やサービスと似ていない商品やサービスについては,登録商標と同じ商標を使っても問題ありません。

しかし,著名な登録商標については,似ていない商品やサービスについても登録商標の使用を禁止させることができる制度があります。これを,防護標章制度(商標法64条)といいます。

地域団体商標とその例

最近では地域団体商標という制度もあります。

「地域ブランド」として用いられることが多い地域の名称及び商品 ・サービスの名称等からなる文字商標について,地域に根ざした団体が登録しやすいようにしたものです。

多治見の近くですと,

  • 下呂温泉旅館協同組合の下呂温泉(登録番号5010201)
  • 岐阜県陶磁器工業協同組合連合会・岐阜県陶磁器卸商業協同組合連合会の美濃焼(登録番号5027724)
  • 岐阜県木材協同組合連合会・岐阜県森林組合連合会の東濃桧(登録番号5299888)

があります。

  1. 事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合,商工会,商工会議所,特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国の法人が出願すること
  2. その構成員に使用をさせる商標であること
  3. 地域の名称商品又は役務の名称等のみからなること
  4. その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること

の4つをクリアしている必要があります。

下呂温泉は,下呂+温泉というように,地名と温泉という普通名詞,美濃焼も,美濃+焼というように,地名と焼き物を意味する「焼」という普通名詞,東濃桧も東濃+桧(ひのき)というように,地名と桧(ひのき)という普通名詞の組み合わせとなっています。

次回は商標権を侵害しているかどうかをどのように判断するのかについてお話できればと思います。

ちなみに写真は,多治見市役所本庁舎の近く,NARROW ROAD BLDG 1FのALLEY CAT CAFFEEのハンバーガーランチです。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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