中小企業法務から見た女子体操の問題そして企業のブランド戦略

いよいよ9月

今日から9月が始まりました。写真は,富山市の富岩運河環水公園になります。

先週,愛知・岐阜・三重・富山・石川・福井の弁護士が集う中部弁護士連合会の夏期研修のため,富山に行っていました。

研修の内容は,民法改正,法人の破産申立て,事業承継など,多岐にわたりましたが,この研修で得た知識は,今後,企業の相談に生かしていきますので,どうぞよろしくお願いします。

最近,知財に関する相談が増えています

本日は,私が多治見ききょう法律事務所に入ってから,知的財産権に関する相談が増えてきたということもあり,商標について解説をしようと思っていました。

企業の大小にかかわらず,ブランド戦略が重要視されています。

しかし,このブログで,自社の商品名などを保護するための制度である商標についてお伝えしていませんでした。

そこで,今回は,商標について書こうと考えていました。

今週,女子体操をめぐり騒動が起きました

ところが,今週は,みなさんがご承知の通り,女子体操の世界でパワハラや暴力について大きな騒動が起こりました。

パワハラも懲戒処分の問題も,企業の側から見ても,働く側から見ても,けっして他人事,対岸の火事ではないと思います。

そこで,本日は,女子体操の世界で勃発した問題について簡単に触れつつ,商標について解説をしていきたいと思います。

第1.中小企業法務から見た女子体操の問題

1.パワーハラスメント問題と今後の見通し

そもそもパワーハラスメントとは?

今週は女子体操界が揺れていました。
パワハラ問題の真相は今のところよく分かりませんが,厚生労働省は職場のパワーハラスメントについては,


同じ職場で働く者に対して,

職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,

業務の適正な範囲を超えて,

精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

と定義づけています。
そして,職場に限らず,

  • 地位や人間関係の優位性を背景にした,
  • 適正な範囲を超えて
  • 精神的・身体的苦痛を与える行為や
    (アスリートの世界においては)練習環境を悪化させる行為

というのは,

パワーハラスメントと呼んでも問題ないのではないでしょうか。

今春,女子レスリングのパワハラ問題も大きく取り沙汰されました。

その際のレスリング協会の第三者委員会の調査報告書でも,職場のパワーハラスメントの定義を踏まえて,協会等におけるパワーハラスメントとはどういうものか定義した上で,個々の事実についてパワーハラスメントに当たるかどうか判断がなされていました。

パワーハラスメントの典型例

厚生労働省は,パワーハラスメントの典型例として,次の6つを挙げています。

  1. 身体的な攻撃…暴行・傷害
  2. 精神的な攻撃…脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
  3. 人間関係からの切り離し…隔離・仲間外し・無視
  4. 過大な要求…業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
  5. 過小な要求…業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
  6. 個の侵害…私的なことに過度に立ち入ること

今回の女子体操の事案では,今後,特に,精神的な攻撃,人間関係からの切り離し,過大な要求,個の侵害があったかどうかが議論の対象となりそうです。

2.暴力問題に対する「処分」は果たして妥当なものだったか

「処分」を決める側が守るべきこと

また,女子選手の会見の映像を見ていると,コーチに対する処分にも問題があるように思いました。

具体的に言いますと,会社や役所の中で何らかの「処分」をする際に,「処分」を決める側が守るべきことのうちのいくつかが守られていないように感じられました。

  • 暴力問題の被害者に十分な聞き取りをしていないなど,処分を決める際の手続きに問題があったのではないのか,
  • 実際の暴力の内容と比べて,処分の内容が重すぎるのではないのか,
  • そのような手続的にも実体的にも問題のありそうな処分が行われた背景には不当な目的がなかったのか。

この3点は,会社や役所の中で何らかの「処分」を下す際に,「処分」を下す側が気をつけなければならないことです。

今回の問題点

今回の件は,少なくとも最初の2つについては守られなかったように思われます。

結局,暴力問題を指摘されたコーチは処分を受け入れるそうですが,処分そのものを争う余地は十分あったと思います。

第2.自社の商品名などを保護するための制度

1.ブランドを保護するための手段の一つ 商標権

自社が提供するサービスの名前,自社のロゴなど,自社のブランドを保護するための手段の一つが,商標を登録し,商標権を持つことです。

商標権のメリットと注意すべきこと

中小企業であっても,商標権を持っていれば,第三者が同じ名称やよく似た名称で商品やサービスの提供をすることを防止することができます。

実際に同じ名称やよく似た名称で商品やサービスを提供している場合には,この名称を使うのをやめるよう求めたり,損害の賠償を求めたりすることができます。

逆に,自社がなにか新しい名称やロゴで商品やサービスを提供する場合には,その名称やロゴが商標登録されていないかしっかりチェックしておかないと,あとから商標権侵害で訴えられる場合があります。

2.そもそも商標とはどういうものか?

商標とは?

商標とは,文字や図形などの表示である標章で,商品やサービスについて使用するものをいいます。

標章」とは,通常は国語辞典においては「マーク」のことをいいますが,商標法上は,マークだけでなく,文字や立体的な形状,色彩,音なども対象としています。

商標法では,人の知覚によって認識することができるもののうち,文字,図形,記号,立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合,音その他政令で定めるもの(2条1項柱書)をいうとされています。

商標の種類

商標には,次のような種類があります。

  1. 文字商標
  2. 図形商標
  3. 記号商標
  4. 立体商標
  5. 結合商標
  6. 動き商標
  7. ホログラム商標
  8. 色彩のみからなる商標
  9. 音商標
  10. 位置商標

立体商標は,立体的な形状からなる商標ですが,ケンタッキー・フライド・チキンのお店で必ず置いてあるカーネルサンダース人形(商標登録第4153602号)などの店の前で使用されている看板などやヤクルトの容器(商標登録第5384525号)など商品や容器の形状が挙げられます。

動き商標とは,テレビCMやパソコン画面等に映し出される,変化する文字や図形など,文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標のことをいいます。
映画館で東宝の映画を見に行った際に始めに,東宝というマークが時間の経過に伴って変化する映像が映し出されると思います。

この,動く東宝のマークも動き商標の一つです(商標登録第5805759号)。

色彩のみからなる商標には,例えば,トンボ鉛筆のMONOの消しゴムのケースに使われる「青・白・黒」の色の組合せ(商標登録5930334号)などがあります。

音商標には,リポビタンDのCMで流れる「ファイトー,イッパーツ」(商標登録第5804565号)などがあります。

単に音だけの商標もあり,正露丸のラッパの音(商標登録第5985746号)などがあります。

3.商標の機能と効力

商標のもつ機能

商標は本質的には,自分と他者を識別する機能があるとされ,そこから派生する機能として,出所を表示する機能品質を保証する機能宣伝広告の機能が挙げられます。

商標権の効力

商標権の効力は,特許庁に出願をし,審査を経て,商標登録されることで発生します。

まず,商標権を持つことで,指定された商品やサービスについて独占的に登録商標を使うことができます(専用権)。

さらに,

  • 指定された商品やサービスについて登録商標と似た商標を使うこと
  • 指定された商品やサービスと似た商品やサービスについて登録商標と同じ商標を使うこと
  • 指定された商品やサービスと似た商品やサービスについて登録商標と似た商標を使うこと

を禁止することができます(禁止権)。

商標権は,設定登録の日から10年となりますが,更新登録の申請をすることで更新することができます。

したがって,更新により,商標権を永続的に保護することができるのです。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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