とても身近で重要な相続法改正(第3回)遺留分関連についての改正

 
いつも読んでいただきありがとうございます。
 
今回は相続法改正のうち「遺留分」関連の改正について見ていきたいと思います。
 
 

1 遺留分とは


「遺留分」とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことをいいます(民法1028条以下)。
 
例えば、被相続人が、その遺産を特定の者だけに相続させるという遺言書を作成していた場合、残された相続人には酷となる場合があります。そこで、民法では、最低限相続できる財産を「遺留分」として保障しています。
 
遺留分が保障されている相続人は、配偶者、子、直系尊属(父母など)であり、兄弟姉妹については遺留分を保障されていません。
 
また、侵害された遺留分を確保するためには請求をする必要があります。請求しなければ、遺言書どおりの権利関係となります。
そして、相続が開始して自己の遺留分が侵害されていることを知った日から1年、若しくはそれを知らなくても相続開始の日から10年を過ぎると遺留分による請求をすることはできなくなります。
 
それでは、大きく変わった点を具体的に見ていきましょう。
 

2 遺留分減殺請求が金銭債権化されます

 
現行法上、遺留分減殺(げんさいと読みます。)請求により、当然に物権的な効力が生ずることとされていました。今回の改正により、この遺留分減殺請求権の法的性質が大きく変わることになりました。
 
現行法では、遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使した場合、遺留分を侵害する贈与や遺贈は、侵害の限度で失効し、多くの場合には、贈与や遺贈の目的物は受贈者・受遺者と減殺請求者との共有関係となります。
 
そうすると、被相続人が相続人へ事業用資産を保有している場合でも、これらの財産が他の相続人との共有状態となり、その後の共有物分割の場面で長期にわたって新たな紛争を生じさせるケースもありました。遺言者の意思に反して、事業承継がうまくいかないといった問題点が指摘されていました。
 
要は、遺留分権利者としては、現物での返還しか求めることができず、現物で返還するか金銭で弁償するか(1041条)は相手方にしか選択肢がないことが問題でした。
 
そこで、今回の改正により、「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。」(新法1046条)と改められることになりました。
 
これにより、遺留分権利者の側からも、遺留分侵害額をすべて金銭で請求することができるようになました。むしろ、金銭でしか請求できなくなります。
 
これに伴い「遺留分減殺請求」という言葉も、「遺留分侵害額請求」と改められることになりました。
 
 
 
このように、遺留分侵害額請求を受けた側としては、金銭で支払う選択肢しかなくなるわけなので、直ちに金銭が用意できない場合にどうすればよいかという問題が生じます。
 
この点については、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、遺留分侵害額債務の全部又は一部の支払について、相当の期限を許与してもらうことができると定めることになっています(1047条5項)。
 


3 遺留分額算定の基礎となる財産(生前贈与)が限定されます

 
現行法では、遺留分の算定に入れる贈与について、
 
相続人以外の第三者に対する贈与は相続開始前の1年間にされた贈与に限られ、
相続人に対する贈与については生計の資本としてされた贈与(特別受益)は、時間的制限がなく、遺留分減殺請求を認めることが当該相続人に酷であるなどの特段の事情がない限り、遺留分減殺の対象とされてきました(最判平成10年3月24日)。
 
すなわち、相続人に対する特別受益に該当する贈与は、相続開始の何年も前になされたものであっても、基本的に、遺留分額算定の基礎となる財産に算入されていたのです。
 
今回の改正により、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間にあれたものに限り、その価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入することとされました(新法1043条)。
 
これにより、相続人に対し、相続開始より10年以上前に贈与された財産は、遺留分を算定するための財産の価額に算入されないことになります。
 
 

4  遺留分侵害額算定における債務の取扱いについて

 

 

相続債務について、遺留分権利者が相続放棄をしていない以上は、債権者との関係では相続人として相続債務を負うことになります。これは、債権者からすると、たとえ一切の権利義務を特定の者に相続させるという遺言書を作成するなどしていた場合でも、債権者の期待を害するべきではないからです。
 
一方で、遺贈・贈与を受けた受遺者・受贈者としては、相続債務をすべて支払ってしまうことも多く存在します。しかし、現行法上は、このような相続債務の取り扱いについては、遺留分侵害額の算定とは別に解決をする必要がありました。
 
しかし、上記のような場合には、遺留分侵害額の算定に当たって同時に処理した方が、法律関係が複雑にならずに済みます。

 

そこで、今回の改正により、遺留分侵害額請求を受けた場合において、その受遺者又は受贈者が、遺留分権利者の相続債務を消滅させる行為を行った場合には、その消滅した債務の額について、遺留分権利者に対する意思表示を行うことで、遺留分侵害額債務のうち遺留分権利者の代わりに支払った相続債務分を消滅させることができるようになりました(新法1047条3項)。
 
なお、この遺留分に関する部分の改正の施行日は、公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。 

 

 

 

 
 

 
それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!
 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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