「学び」の夏〜立秋の候に感じること

岩村藩出身の儒学者・佐藤一斎の言葉

旧岩村藩(恵那市岩村地区)が生んだ佐藤一斎の遺した言葉に,次のようなものがあります。

少にして学べば,即ち壮にして為すこと有り。

壮にして学べば,即ち老いて衰えず。

老いて学べば,即ち死して朽ちず。

〜佐藤一斎『言志晩録』60番

若いときに学んでおけば壮年になってそれが役に立ち,壮年時に学べば老いても衰えることはなく,老年になっても学んでいれば,死んでも朽ち果てないような存在になる。

この業界にいると,このことは強く感じるもので,その言葉通りの生き様の法律家もいれば,そうでない人もいて,「学び」は法律家として差がつく原因のひとつだと感じております。

若いときに学んでおけばとはありますが,別に,「若い」かどうかビミョーな年代である30代,40代であっても,学んだことは後々役に立つのだとも感じております。

高校生という若いときに学んだことはきっと今後役に立つ。

今月に入り,そんなことを感じる機会に恵まれました。

今回は法律の解説を離れて,「学び」を中心に,仕事のことやわが街・多治見のことについて書いていきたいと思います。


高校生模擬裁判選手権 (多治見よりやや涼しい)金沢での白熱した戦い

先週は金沢に

先週の土曜日(8月4日)は,40度近い多治見を離れ,北陸・金沢にいました。

 

先週の土曜日に,日本弁護士連合会主催の第12回高校生模擬裁判選手権が,東京(関東大会),大阪(関西大会),石川(中部北陸大会),徳島(四国大会)の全国4か所で開催されまたした。

金沢ではそのうちの中部北陸大会が開かれていました。

実は,今回,地元の私立の高校である私立多治見西高校がこの高校生模擬裁判選手権の中部北陸大会(金沢地方裁判所)に初参加しました。

そこで,岐阜県弁護士会の法教育委員会では,多治見西高校の模擬裁判選手権に向けた準備を支援するため,弁護士会から3人の弁護士を派遣することとなりました。

私はその中の一人として,約1か月半,多治見西高校の生徒たちをサポートしていました。

金沢に行ったのも,参加する多治見西高校の生徒をサポートするためです。

高校生模擬裁判選手権とは?

高校生模擬裁判選手権では,高校生がとある事件を素材に,支援弁護士らの支援を受けながら,検察官チーム・弁護人チームを組織し,高校生自ら争点を見つけだして,本物の裁判所の法廷で,本物の刑事裁判のように,証人尋問・被告人質問をして,検察官チームであれば被告人はこういう理由から有罪だという論告を,弁護人チームであれば被告人はこういう理由から無罪であるという弁論を行います。


各校とも検察官と弁護人の立場でそれぞれ一度ずつ,架空の刑事裁判に臨みます。

それぞれ採点され,6校が参加する中部北陸大会では,優勝・準優勝まで決まります。

具体的な題材は?

今回の模擬裁判選手権では,次のような架空の事件が題材となりました。

被告人は,明らかに様子のおかしい高校時代の先輩を自宅マンションに半日滞在させたことをきっかけに,その先輩が殺人を犯したことを知った上で匿ったのではないのかということで,犯人隠避・蔵匿罪で起訴されました。

被告人は,その先輩が殺人を犯したことを知った上で,先輩を匿ったのかどうか。犯人隠避・蔵匿の故意があったのか否かを,故意の存在を推測させるような事実やそれを否定する事実につながる事実をピックアップした上で,常識に照らしてどれだけしっかりと裁判官役の審査員を納得させる主張ができるか,主張を裏付ける内容をどれだけ証人や被告人の口から語ってもらえるか。どの学校の高校生も頑張っていました。

多治見西高校の奮闘ぶり

参加を希望する学校が多い県では,予選が開催されその予選を勝ち抜いてきた学校が参加します。参加生徒が10人を超えるところもあります。

これに対して,初出場の多治見西高校は,3人の少数精鋭でした。

生徒たちは,本番を迎えるその日まで,論告・弁論を何度も書き直し,回を重ねるごとにレベルアップしていきました。

(準備の様子は先日発刊の「東濃新報」にも載っていました)

大会当日は,優勝・準優勝こそなりませんでしたが,参加した3人の生徒は,初出場とは思えない堂々とした感じだったと褒められていました。特に審査に携わった地検の検事正からは,名指しで尋問を褒められるほどでした。

模擬裁判選手権を通じて学ぶこと

模擬裁判選手権は,高校生が架空の刑事裁判に触れることを通じて,自ら考え表現する力,具体的には,物事を論理的にとらえ,それを筋道立ててわかりやすく表現する力を高めてもらうものです。

参加した生徒たちも,模擬裁判選手権の準備を通じて,論理的に考え表現する力が鍛えられたという感想を残していました。

3人の生徒は,悔しい思いもあったでしょうが,法学部志望と聞いておりますので,主張や尋問事項を何度も練り直した経験や,本物の法廷に立って北陸の生徒たちと議論を戦わせた経験を,今後の糧にしていただければと思います。

模擬裁判選手権を通じて感じたこと

来年も,多治見西高校の生徒が高校生模擬裁判選手権に参加されることを願っておりますし,ほかにも岐阜県内で私立・公立問わず,参加を希望する学校が出てくればと思います。

このような形で,多治見市内の学校の活躍,生徒の成長を手助けすることができ,嬉しく思います。

最近読んだ本

好きな仕事で食べていく

最近

弁護士「好きな仕事×経営」のすすめ―分野を絞っても経営を成り立たせる手法

という,弁護士の仕事や弁護士事務所の経営に関する本を読みました。

タイトルのとおり,

好きな仕事を仕事にしつつ事務所の経営も十分にやってゆくにはどうしたらよいのか

という観点から13人の有名な先生が取り上げられ,どのように自分の好きな仕事で専門性を高め,オンリーワンの存在になっているのかがまとめられていました。

共通する経営の方向性・戦略

複数の先生に共通する方向性は,極力,競争相手の少ない分野を自分の専門分野として選び,まずはその分野に特化して質を高める,というものです。

マーケティング用語でいうブルーオーシャン戦略とランチェスター戦略に沿って経営の柱を創っていくことの大切さが語られており,勉強になりました。

この本の内容に加えて大切な2つのこと

この本に書かれている内容に加えて,競争相手の少ない分野を選ぶだけでなく,競争相手の少ない地域を選ぶのも大事だと考えております。

地域密着を売りにしつつ,何か専門特化する分野も見つけ,それを高めていく。

司法試験合格後は,どこでどのように働くか,どうすれば自分が活躍でき,自分が満足できるのかを常にぼんやりと考え,行きついた先が,多治見のこの事務所でした。

仕事をする上では,単に戦略的に考えるだけでは足りず,健全な理念や共感できる哲学を持つことも大切でしょう。

佐藤一斎は次のような言葉も遺しています。

志有るの士は利刃の如し。百邪辟易す(言志録33)

もちろん,理念先行で現実・実践が伴わないというのもダメですが,理念なしに戦略をもてあそぶだけでは,一歩間違えれば,お金儲けをしているだけのイメージしか持たれません。

私は,(どこまで実現できているかはさておき)常々,地域経済の健全な発展と地域社会の安寧にどう貢献するかを,仕事をする上での理念,志として大事にしています。

多治見で「好きな仕事×経営」を実現するには

また,地域社会への貢献との関係では,私たちの事務所は,地方の小さな街の法律事務所ですから,地元の弁護士だということで私たちの事務所を訪れる方も多いのが実情です。

離婚や不動産,知財に限らず,様々な種類の案件について相談や依頼を受けます。

そのおかげで,私も,都市部の事務所の弁護士よりも幅広い分野を早くから経験できていると実感します。

もちろん,幅広い分野の案件が舞い込んでくるということは,常に研鑽を怠らず,様々な案件に対応できるだけの力を高めていかなくてはならないということでもあります。

  1. 仕事に対する理念・哲学を持つ。
  2. その上で,この事務所の中で自分もオンリーワンのスペシャリストになれるよう努力する。
  3. 地域密着の事務所で働く弁護士として,自分も幅広い案件に対応できるジェネラリストとしての力も鍛えていく。

司法試験後に考えた,どこでどのように働くか,どうすれば自分が活躍でき,自分が満足できるのかの答えが,このあたりにあるかなと感じております。

そんなわけで,『弁護士「好きな仕事×経営」のすすめ―分野を絞っても経営を成り立たせる手法』を一読し,自分の弁護士としての在り方を再確認することができました。

まちづくりの勉強会への参加

儲けるための商店街づくり朝会

勉強といえば,地域密着の弁護士だからかどうなのか,先月より,商店街の朝の勉強会「儲けるための商店街づくり朝会」にも参加しています。

このままだとマズいという危機感を持ちつつ,どのようにしてこの街に展望ある未来を切り開いていくのか,そのヒントを戦略的に勉強していくものだと勝手に解釈しています。

まだ2回しか参加していませんが,毎回興味深い話を聞くことができ,勉強になります。

事務所や自分のPRの参考にもさせていただいております。

街の成長に必要なこと

最近,感じるのは,地域の消費者の悩みと店とをつなげる地域に密着したメディアの必要性です。

消費者の側は,課題を解決するにはどこに行けばいいのかという悩みがある。

このような悩みに対して,経営者の側がうちの店はこうなんです,こんな風に皆さんの課題を解決できますというように社会の中での役割をどのように提示するのか,そして,店と消費者の悩みをどうすればマッチングさせることができるのかが大切だと感じています。

各店がホームページを開設したりSNSを利用して,消費者に直接リーチするのも大切だとは思いますが,マッチングがうまくいくためには,マッチングを手伝うメディアの存在も不可欠だと考えています。

多治見であれば,地元政財界の動きを詳しく報じるものと,クーポンと紐づけして店を紹介するものはありますが,そのあたりのマッチングをカバーするメディアがこれまでなかったように思います。

今年から,「A2~あっつう」という情報紙が多治見市内各所で配られるようになりましたが,これも試みの一つでしょう。

元マスコミ関係者としては,紙であれ放送であれネットであれ,地域の消費者の悩みと店とをつなげる,地域に密着したメディアが成長していくことで,街自体も成長していくのではと感じております。

お知らせ

以上,今回は,「学び」を軸に,仕事のことやわが街・多治見のことについて書いていきました。

さて,私どもの事務所は,「ワーク・アンド・ライフ・バランス」を重視しており,来週1週間,弁護士も事務員も全員,お盆休みとなります。

ご迷惑をおかけするかもしれませんが,業務再開は20日からとなりますので,どうぞ宜しくお願いいたします。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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