著作物を自由に使える場合(1)〜引用

2018年も折り返し地点

今日は,著作物を著作権者の許諾なく利用できる場合の1つ,引用について解説していきますが,カレンダーを見ると,今日は,6月30日。2018年も半分が過ぎようとしています。先日は,馬籠に足を運び,栗ソフトクリームを味わいました。

6月30日

私にとって,6月30日といえば,多治見で働き始めてから半年の節目の日となります。

「私は高校卒業まで名古屋に住んでいたものの,大学入学後はしばらく仕事で宮崎に赴任した以外はずっと横浜におり,多治見や東濃・中濃地方とのご縁は,観光を除けばほとんどありません。」

1年ほど前に木下弁護士宛に送った履歴書の志望理由欄は,そんな言葉で始まっています。

よくよく考えてみれば,多治見には一度も来たことがなく,東濃で行ったところといえば,大正村,恵那峡,馬籠,そして,名古屋市内の公立小学校に通う人であれば必ず行くことになる中津川くらいです。

それだけ多治見には縁がなかったのですが,今ではすっかり多治見や東濃,東美濃に根付いて仕事をしています。

弊所の経営理念の1つ,「ギラギラ企業つくり」にも魅力を感じたのですが,離婚問題を重点的に扱っているということで,離婚事件に高度かつ専門的に対応する力を身につけ,依頼者の新たな人生のスタートに力を尽くすことにも大きな魅力を感じていました。

司法修習中,例えば,アルコール依存症の夫からDVを受けているものの婚姻費用分担請求といった制度を知らなかったため,別居後の生活に不安を覚え別居に踏み出せずにいた方を目の当たりにしています。

悩みを抱えている人が悩みを抱え続けたまま権利や生命の危険にさらされるのではなく,その人達に自分の権利や生命を守るために役立つ法律知識が届くよう努めることも大切だと痛感しました。

切羽詰ったときに,気軽に相談でき,法的に妥当なアドバイスをする人になりたい。しかも,この人なら頼りになると思ってもらえる人になりたい。そういう思いで法曹を目指し,実際に多治見で働いて半年。

多治見の,この事務所を選んだのは,いい選択だったと思います。

著作物を自由に使える場合

さて,話を著作権法に移しましょう。

どのような場合にも著作権者の許諾を得ることが必要だとすると,かえって文化の発展が阻害されるのではないのか。

そういった理由から,定められた条件で,著作物を自由に使える場合があります。

具体的には,著作権法は,30条以下で,私的使用のための複製(30条),引用(32条),教育・試験のための使用(33条ないし36条),障害者等のための利用(37条ないし37条の2),営利を目的としない上映(38条)などなど,著作権を制限する事由を挙げています。

今回はそのうちの引用について紹介したいと思います。

著作権法の書きぶり

著作権法32条1項は次のように規定しています。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

このように,著作権法は,公表された著作物は,引用して利用できるとしています。

ただし,どんな引用も許されるわけではありません。

引用が許されるための条件

では,どのような引用であれば問題ないのか。

これについては,従来は,明瞭区別性主従関係が必要で,それを中心に引用が問題ないかどうかを考えるものとされてきました。

その考え方のもとになっているのは昭和55年3月28日の最高裁判決です(パロディ事件モンタージュ写真事件)。

従来の考え方:明瞭区別性と主従関係

最高裁は,

すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に自己の著作物中に節録引用することを容認しているが,ここにいう引用とは,紹介,参照,論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから,右引用にあたるというためには,引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と,引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ,かつ,右両著作物の間に前者が主,後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり(……)

と言及しており,引用にあたるといえるためには

  1. 引用を含む著作物の表現形式上,引用して利用する側の著作物と,引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができること
  2. 引用して利用する側の著作物が主,引用されて利用される側が従の関係があると認められること

が必要だとしています。

従来の考え方の問題点

しかし,この最高裁の判断枠組みについては,引用の要件をすべて示したものか不明であり,また,なにをもとに判断するのか考慮要素が不明だと指摘されていました。

さらに,先ほど紹介した現行著作権法32条1項にある「公正な慣行」「引用の目的上の正当な範囲内」との関係も不明です。

そこで,近時は,明瞭区別性と主従関係という2要件に言及しない裁判例が出てくるようになりました。

近時の裁判例の考え方

例えば,平成22年10月13日の知財高裁判決が挙げられます(美術鑑定書事件)。

この裁判例では,

他人の著作物を引用して利用することが許されるためには,引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり,かつ,引用の目的との関係で正当な範囲内,すなわち,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり,著作権法の上記目的をも念頭に置くと,引用としての利用に当たるか否かの判断においては,他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか,その方法や態様,利用される著作物の種類や性質,当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない

としています。

つまり,著作権法の32条1項の文言に沿い,引用して利用することが許されるためには,

  1. なんのために他の人の著作物を利用するのか
  2. どのように利用するのか
  3. 利用される著作物はどういったものか
  4. 利用される著作物の著作権者である他の人に及ぼす影響があるか,あるとすればどの程度か

といった観点から検討をし,これを踏まえて,

  • 引用して利用する方法や態様が「公正な慣行に合致したもの」であり,
  • 引用の目的との関係で「目的上正当な範囲内」である

といえなければならないということになります。

「マイタウンとうと」に載りました

さて,先日「マイタウンとうと」に,著作権に関するちょっとした解説を載せました。

大変限られた字数で,一般の方にわかるように書く。この二兎を追うことは大変難しいと痛感しました。

著作権(複製権又は翻案権)や著作者人格権(氏名表示権)の侵害を理由に侵害行為をやめさせることができるか。字数がたいへん限られていたため,このうちの複製権侵害をクローズアップした解説にしています。

  1. そもそも著作権が認められるか:著作物といえるか,著作権者といえるか
  2. 複製権侵害があるといえるのか:複製に当たるか

それぞれチェックする必要があるということを簡単にまとめています。

次回は,引用以外に,複製しても複製権侵害とならない場合について,紹介していきます。

本格的な夏が近づいていますが,夏バテしないよう頑張っていきたいものです。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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