今、どうしてセクハラ対策が重要なのか

 

今回は、債権法改正の話題はお休みにして、色々と話題になっているハラスメント、特に、セクシュアルハラスメント(いわゆるセクハラ)について書いてみようと思います。

 

今、どうしてセクハラが問題となっているのでしょうか?

それは、残念ながらセクハラに対する意識が低い方が一定数おられる一方、ハラスメントに対する意識が高まってきているからだと思います。

 

このことは、厚生労働省が公開している個別労働紛争解決制度の施行状況のデータを見ても明らかです。労働紛争の中の民事上の個別労働紛争に関するデータを見ると、相談件数のトップは、いじめ・嫌がらせ、つまりハラスメント問題なのです。

 

そして、相談件数の推移を見ると、この10年間で、いじめ・嫌がらせについての相談件数は、右肩上がりであることが分かります。

 

 

 

そうすると、企業としては、セクハラなどのハラスメント対策がいかに重要なのかが分かります。また、注意しなければならないことは、職場におけるハラスメント問題が生じた場合には、対応を誤ると、職場環境を更に悪化させ、企業にとって致命的なダメージが生じかねないということです。

昨今の報道からしても、ハラスメントの被害申告があった場合の事後的対応が、いかに難しいかを物語っていると思います。そうすると、企業としては、ハラスメント被害を生じさせない職場環境、いかに事前対応をするかが、とても重要であることがお分かりいただけると思います。

 

 

1 セクハラとは何か?

 

そもそも、セクハラについて明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、「相手の意に反する性的言動」を指します。

法律上は、男女雇用機会均等法11条に、職場におけるセクハラについての規定があり、

職場において行われる、性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けたり、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されたりすることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定めています。

 

ここで、職場とは、就業場所に限らず、取引先、出張先、業務の延長と考えられるものも含まれます。

 

また、性的な言動の主体は、上司に限られるものではなく、同僚も行為者となり得ますし、男性・女性とも行為者になり得ます。

よくセクハラは、相手方の受け取り方によるという言い方がされます。セクハラが「相手の意に反する性的言動」である以上、相手方の受け止め方によるというのは間違いありません。しかし、意に反するかどうかという相手の内心は分かりませんから、セクハラに該当する言動は慎むべきということになります。

 

それでは、どのような性的言動、つまり①性的な内容の発言や、②性的な行動がセクハラに当たるのでしょう?

①性的な内容の発言としては、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなどが挙げられます。

②性的な行動としては、性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、強制わいせつ・強姦などは当然です。

 

どのような言動がセクハラに当たるのか、会社で議論などしてみると、理解が深まりますね。

 

職場におけるセクハラには、2つの態様があるとされています。

一つは、性的な言動を拒否したことで、解雇、降格、減給などの動労条件につき不利益を受けるという「対価型セクハラ」

いま一つは、当該性的な言動により職場の環境が不快なものとなったため、労働者が就業する上で見過ごすことができない程度の支障が生じる「環境型セクハラ」です。

 

 

2 セクハラ対策として求められる雇用管理上の措置とは?

 

均等法11条に基づき事業主が講じるべき措置に関しては、厚生労働大臣が具体的な指針を定めています。

「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚労省告示第615号)です。

 

指針では、事業主が職場におけるこのようなセクシュアルハラスメントを防止するために講じなければならない措置として、

 

① 事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③ 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応(事実関係の迅速かつ正確な確認、行為者および被害者に対する適正な措置、再発防止に向けた措置)

④ ①~③の措置にあわせて講じるべき措置(相談者・行為者等のプライバシーの保護、相談や事実確認への協力を理由とする不利益取り扱いの禁止の周知・啓発)

を定めています。

 

この指針は、経営者の方であれば必読です。

ご自身の会社が、指針を満たしているかをチェックされてみて下さい。

事業主がこれらの措置を講じない場合、厚労大臣による行政指導などの対象となります(均等法29条以下)。

 

よくある間違いは、セクハラ問題をあくまで当事者間の問題と捉えて、解決を当事者任せにしてしまう事例です。

職場におけるセクハラ被害が生じた場合、被害者は、加害者に対して民法709条に基づく不法行為責任を追及できるだけではなく、これが事業の執行について行われた場合には、企業に対して使用者責任(民法715条)を追及することができます。また、企業が、セクハラ被害の申告があったにもかかわらず、適切な対応をとらず、これを放置した結果、職場環境が悪化したような場合には、職場環境配慮義務違反(民法415条)に基づいて、損害賠償責任が認められることになります。

 

セクハラ問題は、当事者間のトラブルではなく、会社の問題であることを自覚して、当事者意識をもって対策を講じ、対応をしなければならないことを肝に銘じておかなければなりません。

 

 

3 セクハラ被害が生じてしまった場合の対応について

 

セクハラ被害への対応については、上記指針において定められています。

具体的には、相談の受付→相談後の処置→調査→措置という順序で進めますが、スピード感をもって進めることが何より重要です。

 

ここでは、対応における注意点を書いておきたいと思います。

 

まずは、いわゆる二次被害の防止です。

 

被害者が被害申告したにもかかわらず、大したセクハラではないのではないかと決めつけ、被害者の行動を責めるなどして、被害者が二次的に傷付けられることを「二次被害」と言います。

二次被害を防止するためには、被害者の心理状態や対処行動を理解して相談者を責めないこと、相談者の意思を尊重する姿勢を示すこと、どうしたらいいか一緒に考える姿勢を示すことが重要です。

 

 

二次被害と関連しますが、被害者の心理状態に寄り添うことが必要です。

被害者の心理状態について重要な指摘があります。

それは、労災の認定における「心理的負荷による精神障害の労災認定基準指針」の中にあります。

この指針は、以下のように指摘しています。

 

2 セクシュアルハラスメント事案の留意事項

セクシュアルハラスメントが原因で対象疾病を発病したとして労災請求がなされた事案の心理的負荷の評価に際しては、特に次の事項に留意する。

① セクシュアルハラスメントを受けた者(以下「被害者」という。)は、勤務を継続したいとか、セクシュアルハラスメントを行った者(以下「行為者」という。)からのセクシュアルハラスメントの被害をできるだけ軽くしたいとの心理などから、やむを得ず行為者に迎合するようなメール等を送ることや、行為者の誘いを受け入れることがあるが、これらの事実がセクシュアルハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならないこと。

② 被害者は、被害を受けてからすぐに相談行動をとらないことがあるが、この事実が心理的負荷が弱いと単純に判断する理由にはならないこと。

③ 被害者は、医療機関でもセクシュアルハラスメントを受けたということをすぐに話せないこともあるが、初診時にセクシュアルハラスメントの事実を申し立てていないことが心理的負荷が弱いと単純に判断する理由にはならないこと。

④ 行為者が上司であり被害者が部下である場合、行為者が正規職員であり被害者が非正規労働者である場合等、行為者が雇用関係上被害者に対して優越的な立場にある事実は心理的負荷を強める要素となり得ること。

 

私も、同感です。まさにこのような状況で苦しんでみえる方を間近で見てきました。

セクハラ相談窓口で対応される方も、是非このような視点をもって対応していただければと思います。

 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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