よくわかる知的財産権〜デザイン編 第3回:不正競争(2)

土岐川沿いのソメイヨシノも見頃を過ぎ,本格的な春の陽気が続いています。

先週は,多治見市内を歩き,多治見の桜を楽しんできました。(写真は多治見市民病院の対岸の桜です)

「桜」から,どんな曲を思い浮かべるか。

ケツメイシ,森山直太朗,宇多田ヒカル,AKB48

……思い浮かべる桜ソングによって年齢がわかってしまいます。

今回,「たまごっち」を巡る事件を紹介するのですが,「たまごっち」も年齢や世代を推知する機能を果たすように思います。

「たまごっち」と聞いて卵の形をした小型のゲーム機がぱっと思い浮かぶのは,特定の年代に限られてしまうのではないでしょうか。

 

第4.不正競争防止法を使う(2)〜商品等表示

1.「たまごっち」を巡る争い

1997年「たまごっち」が大ブームに

20年以上前,「たまごっち」という卵の形をした小型のゲーム機が中高生の間で大ヒットしましたが,知っている人や覚えている人はいますでしょうか。

安室奈美恵さんが歌うドラマ「バージンロード」の主題歌Can You Celebrate?​ がダブルミリオンを記録し,映画「タイタニック」が大ヒット,渡辺淳一さんの『失楽園』がベストセラーとなり,経済の面ではアジア通貨危機山一證券廃業,北海道拓殖銀行破綻などがあった1997年(平成9年)。中高生の間では「たまごっち」ブームが起こりました。

たまごっち事件

このブームの中,「たまごっち」によく似た「ニュータマゴウォッチ」や「ドラゴッチ」というゲーム機が販売され,訴訟に発展しました。

「たまごっち」を販売していた株式会社バンダイと株式会社ウイズ(現ウィズ)が,「ニュータマゴウォッチ」や「ドラゴッチ」を輸入・販売していた会社を不正競争防止法違反意匠法違反で訴えたのです。

そして,翌年,「ニュータマゴウォッチ」と「ドラゴッチ」の販売・輸入等の差止め,廃棄,損害賠償請求が認められました(東京地裁平成10年2月25日判決。判タNo.973 P.239)。

意匠出願中に類似品が販売

ここで問題となったのは,「ニュータマゴウォッチ」の販売が始まったのは平成9年4月5日。「たまごっち」が意匠登録されたのは6月13日

意匠権は,意匠登録後しか行使することできません。

そこで,意匠出願中に販売された「ニュータマゴウォッチ」については,意匠法違反ではなく不正競争防止法違反で訴えました。

デザインを特許庁に意匠として登録していなくても,デザインを守ることができる場合として,前回解説した不正競争防止法2条1項3号に定められている制度が使われたのです。

不正競争防止法で対応する

このように,意匠権が取得できるまでの間でも丸パクリ(デッドコピー)については前回説明しました不正競争防止法2条1項3号を使うことで対応することができます。

 また,「ニュータマゴウォッチ」については,不正競争防止法に定められた制度のうち,商品等の表示を保護する制度不正競争防止法2条1項1号)も使われました。

2.周知表示混同惹起行為

商品形態模倣行為(不正競争防止法2条1項3号)の弱点

前回解説したように,不正競争防止法2条1項3号に定められている制度(商品形態模倣行為)は,3年という期間制限があり,それを過ぎてしまうと,この制度を利用してやめるよう求めたり損害の賠償を求めたりすることができません。

商品等の表示を保護する制度

そこで,ほかにデザインを保護する制度として,(認められるためのハードルはかなり高いのですが)不正競争防止法に定められた制度のうち,商品等の表示を保護する制度を使う方法があります。

不正競争防止法2条1項1号は,

他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の商品等表示を使用するなどして,他人の商品や営業と混同を生じさせる行為

を不正競争行為としています(周知表示混同惹起行為)。

なお,不正競争防止法2条1項2号は,自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一または類似のものを使用したりする行為を不正競争としています(著名表示冒用行為)が,この制度は,表示が単に広く認識されているだけでなく全国的に世間一般に知られていることが必要なので,今回は説明を省略します。

商品等表示とは

「商品等表示」とは,商品の出所や営業の主体を表す表示のことを言います。

例えば,「ウォークマン

この文字列を見れば,多くの人は,すぐさま,ソニーが出しているあの商品だ,とイメージするでしょう。

ソニーと全くの関係のない会社が「ウォークマン」という表示を使ったとしたら……

本当は全く関係がないのに,ソニーと何か関係があるように思いますし,ソニーがやっているように思ってしまうかもしれません。

商品の出所や営業の主体を混同するおそれが生じるため,これをやめさせる必要があります。

過去には,ソニーとは全く関係のないところが,この「ウォークマン」という表示を勝手に看板などに使ったり,“有限会社ウォークマン”という商号として使ったりしていたため,「ウォークマン」という表示の使用の禁止や商号の抹消が認められたことがあります。

商品等表示がデザイン保護に使える場合

では,このような,商品等の表示を守る制度を利用して,商品のデザインを守ることができないのでしょうか。

商品のかたちそのもの商品の出所を表し,まさに商品などの表示といえる場合があるのではないのでしょうか。

そして,そういう場合には商品等の表示を守る制度を利用して,商品のデザインを守ることができるのではないのではないのでしょうか。

例えば,「たまごっち」のかたちは,それまでのゲームになかった特異性のあるかたちであり,発売以来記録的なヒット商品として全国的に大量に販売され,マスコミで頻繁に取り上げられていました。

「たまごっち」を見れば,すぐさまバンダイの商品とイメージするくらいになっていたと言えないでしょうか。

たしかに,商品の形態は,本来は出所を表示する目的を持つものではありません。

しかし,商品の形態そのものが商品の出所を表示する機能を持つ場合があります。

ではどういう場合に,商品等の表示を守る制度を利用して,商品のデザインを守ることができるのでしょうか。

特別顕著性+周知性

平成24年12月26日の知的財産高等裁判所の判決では,

「商品等表示」に該当するためには,

  • (1)商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),

かつ,

  • (2)その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により(周知性),

需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること

が必要であるとしています。

「たまごっち」について,東京地裁は,この知財高裁の判決から遡ること十数年,この知財高裁の判決と同じような特別顕著性周知性の判断枠組みを使って,日本のこの種の商品の取引者・需要者の間において,バンダイの商品であることを示す表示として周知の状態になっているとしました。

そして,「たまごっち」と「ニュータマゴウォッチ」は,商品の形態が実質的に同じといえ,需要者において「たまごっち」と「ニュータマゴウォッチ」はかたちが大変良く似ておりゲームの内容も包装も名称も似ており,需要者層がかなりの低年齢層にも広く及ぶと考えられることなどから混同のおそれがあるとして,周知表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)にあたるとしています。

3.次回予告

量産品のデザインを守るための制度として,意匠法不正競争防止法について解説していきました。場合によっては,著作権法もその1つに含まれることがあります。

著作権といえば,最近,自由貿易協定の締結に伴い著作権の保護期間が延びることが話題になっていますし,マンガがタダで見られてしまうサイトが大きな問題となっています。

そこで次回からは連続して,著作権著作権法について解説をしていきたいと思います。

多治見では今日と明日の2日間,たじみ陶器まつりが開催されます。

天気が心配ではありますが,私も足を運んでみようと思っています。

それでは,良い週末を。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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