債権法改正シリーズ第7回目 債務不履行に関する改正ポイント

 債権法改正シリーズ第7回目は,債務不履行に関する部分です。

 

 債務不履行が生じた場合には、基本的に以下の3つの方法をとることができます。

㋐強制履行

まず、ちゃんと債務の本旨に従った履行をして下さいよ、と債務者に求めることです。つまり強制履行を求めることです。

㋑契約解除

次に、たとえば、目的物を引き渡してもらう代わりに、自身もお金を支払うという契約をしていた場合には、お金を支払うという自己の債務から解放される必要があります。そのためには、契約を解除するということが必要となります。

   ㋒損害賠償

また、債務不履行によって、自身に損害が生じたという場合には、債務者に対して、制裁を課しましょう、その損害を賠償してもらいましょう、となります。

 

 ここで、㋐と㋒、㋑と㋒は、併せて行うことが可能です(民法414条4項、545条3項)。 

 まずは、債務不履行が生じた場合にとり得る手段を整理しておくことが重要だと思います。

 

 それでは、債権法改正により、どのような改正が行われたのかを見ていきましょう。

 

1 解除の要件から債務者の帰責事由を除外

 

 旧法は、履行不能による解除に関し,債務者に「帰責事由がないこと」による免責を認めています(民法543条但書参照)。

伝統的理論によれば,過失責任主義の観点から,履行不能における「帰責事由がないこと」を債務者に故意・過失又は信義則上これと同視すべき事由がないことと理解し,履行不能に限らず,すべての債務不履行解除に適用される要件であると解されてきました。

 

新法においては、債務者の帰責事由を解除の要件としないこととしました(新法541条、542条)。これにより、債務者の帰責事由を履行不能の解除の要件とする旧法543条但書の規定は削除されることになりました。

 

その理由は、「解除」は不履行をした債務者への制裁ではなく,その相手方を契約の拘束力から解放することを目的とする制度であるという理解から,不履行をした債務者の帰責事由を解除の要件とすべきではないという考え方に立脚しています。

 

一方、債務不履行により損害賠償を請求する場合には、まさに不履行をした債務者への制裁を課す場合なので、債務者の帰責事由を要するということになります(新法545条4項参照)。

 

 

なお、契約の解除に関する経過措置として、新法施行日前の契約が締結された場合におけるその契約の解除については、従前の例によるとされています。

もっとも、従来の判例においても,債務者の帰責事由が、解除の成否を左右するものとして重要な機能を営んでいるとはいえなかったため、実務への影響は小さいと考えられます。

 

 

2 催告による解除・催告によらない解除への整理

 

 旧法においては、「履行遅滞による解除」(旧法541条)、「定期行為の履行遅滞による解除」(旧法542条)、「履行不能による解除」(旧法543条)の3類型とされていましたが、新法では、

①催告による解除(旧法下の「履行遅滞による解除」)

②催告によらない解除(旧法下の「定期行為の履行遅滞による解除」、「履行不能による解除」に相当)

の2本立てに整理されました。

 

 

①催告による解除の場合には、不履行が取引上の社会通念等に照らして軽微であるときには、解除ができないことを規定しています(新法541条但書)。

 

この「軽微性」は、従来の判例法理(大判昭和14年12月13日、最判昭和36年11月21日)を明文化したものになります。

「軽微性」は、契約及び取引上の社会通念に照らして判断されることになるので、例えば、ある製品を製作するための部品を供給する契約において、債務者が供給しなかった部品が数量的には僅かであるものの、当該製品の製作にとっては必要不可欠である場合には、その不履行は当該契約及び取引通念に照らして軽微であるとは言えません。

 

 

②催告によらない解除については、改正法の規定を見てみることにしましょう。

 

(催告によらない解除)

第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

 一 債務の全部の履行が不能であるとき。

 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。

 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。

 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

 

 1号は、旧法543条と同趣旨です。

 2号は、債務者による明確な履行拒絶を理由とする解除ですが、裁判実務で認められていたものを明文化したものです。

 3号は、一部の履行不能又は一部の履行拒絶により、残存部分のみでは契約の目的達成が不可能であるときは、契約の全部解除ができるとするもので、旧法543条の解釈を明文化したものです。

 4号は、旧法542条と同趣旨です。

 5号は、前号に該当しない場合であっても、債権者が催告をしても契約目的達成に足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるときには解除を認めるものです。

 

 

 最後に、新法542条1項各号の「契約した目的を達することができなくなった」と評価される場合における無催告解除と、催告解除における「軽微性」との関係です。

 

 この点、判例(最判昭和43年2月23日)は、契約をした目的を達成することができる場合でも、不履行が契約締結の目的の達成に重大な影響を与えるものである(つまり不履行が軽微でない)ときは、催告をして相当期間が経過すれば、契約の解除をすることができる場合がある旨判示しています。

 

 よって、契約した目的を達成することができる場合であっても、債務不履行とはいえないときには、催告解除ができるという関係になります。

 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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