よくわかる知的財産権〜デザイン編 第2回:不正競争(1)

3月に入り,暖かい日が続いております。

東京では本日,ソメイヨシノの開花が発表され,このあたりでも大寒桜など早咲きの桜が見頃となっています。

多治見にも桜並木や枝垂れ桜など桜の名所が幾つかありますので,休みの日は,多治見市内をカメラ片手に散策し,多治見の春を堪能したいと思います。

ちなみに,写真は,1枚目は昨年の春(平成29年4月3日)に東京・上野公園で撮ったもの,2枚目は4月5日に横浜・山下公園で撮ったものになります。

第3.不正競争防止法を使う(1)〜商品形態模倣行為

1.はじめに

さて,前回は,意匠法を使って,どのように量産品のデザインを守るのか,逆に,訴えられた時にどう対応すればよいのか,解説しました。

では,デザインを特許庁に意匠として登録していなくても,デザインを守ることができる場合はないのでしょうか。

 

今回は,不正競争防止法で定められている不正競争のうち,商品形態模倣行為に関する規定を使って,どのようにデザインを守ることができるのか,説明していきます。

2.不正競争としていること

(1)商品形態模倣行為

不正競争防止法は,他人の商品の形態まねた商品を販売したりすることを「不正競争」の一つとしています(商品形態模倣行為。不正競争防止法2条1項3号)。

(2)なぜ不正競争とされているのか

なぜ不正競争防止法は,このような行為を不正競争としているのでしょうか。

他に様々な選択肢があるのに,他の人がお金や手間ひまをかけて開発・商品化した商品の形態をことさらにまねて自分の商品として市場に出す。

これは,先に開発した者の築いた成果にタダ乗りする行為です。

また,こうした不正をしてお金や手間ひまをかけずに先に開発・商品化した者と競合することは,新商品を開発する意欲(インセンティブ)を大きく損ねることになります。

そこで,不正競争防止法は,こうした不正な行為を規制して,先に開発した者の利益を守ることとしています。

(3)「商品の形態」とは?

他人の商品の形態をまねた商品を販売したりすることを「不正競争」の一つとしていますが,「商品の形態」とは,具体的にどのようなものをいうのでしょうか。

「商品の形態」とは,

需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感

をいいます。かなり砕いて言うと,普通に使う場合に目などでわかる,商品の外側や内側の形,そしてその形と結びついた模様,色彩,光沢,質感といったものを指します。

商品全体の形状をいい,商品の一部分の形状は含まないとされています。

また,商品の機能を確保するために不可欠な形態は保護の対象とはなりません。

(4)「他人の商品」とは?

では,「他人の商品」とは具体的にどのようなものをいうのでしょうか。商品は実際に販売されていないといけないのでしょうか。

これついて示したものとして,例えば知財高裁の平成28年11月30日の判決がありますが,この判決にあらわれている考え方は,噛みくだくと次のようになります。

そもそも,他人の商品の形態をまねた商品を販売したりすることを「不正競争」の一つとしているのは,先に商品を開発した者の利益を守るためです。

開発・商品化は完了したものの,販売される前に他者にまねされて先に販売された場合に保護されないとなると,先に商品を開発した者の利益が守られなくなってしまいます。

そこで,「商品化」を完了した物品であればよく,物品が販売されているまでの必要はないと考えられています。

(5)「模倣する」とは?

次に,他人の商品の形態をまねた商品を販売したりすることを「不正競争」の一つとしていますが,まねる(模倣する)とはどういうことをいうのでしょうか。

まねる(「模倣する」)とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいいます(不正競争防止法2条5項)。

それでは,他人の商品に,「依拠」して,これと「実質的に同一の形態の商品を作り出す」とはどういうことでしょうか。

依拠」とは,他人の商品の形態を知っていて,これとよく似た商品を作り出すことを認識していることをいいます。

では,「実質的に同一の形態の商品」はどういうものを指すのでしょうか。

不正競争防止法の規定は,デッドコピー(丸パクリ)を規制するために設けられたものなので,「実質的に同一の形態の商品」とは,デッドコピー(丸パクリ)をいうとされています。

もちろん,多少手が加わっていても,それでも実質的に同一の形態の商品といえるのであれば,規制の対象となります。

そうすると,まねる(「模倣する」)とは,噛み砕くと,

他人の商品の形態を知っていて,これとよく似た商品を作り出すことを認識しつつ,丸パクリをすること

となります。

商品形態模倣かどうかは,2つの製品を並べて比較して判断します。

3.3つの注意点

他人が,自分の商品の形態をまねた商品を販売したりしている場合には,その行為をやめるよう求めたり,損害賠償を請求することができます。

その際,注意すべき点が3つあります。

(1)注意点1〜対象となる行為

不正競争防止法は,まねる行為自体は不正競争としていません

まねた商品を譲渡等する行為のみを不正競争としています。

(2)注意点2〜相手方の過失

意匠法では損害の賠償を請求する場合,行為者の過失を推定する規定がありますが,不正競争防止法にはそのような規定がありません。相手方の過失を理由に損害の賠償を請求する場合には,相手方の過失も立証する必要があります。

(3)注意点3〜3年の期間制限

3年の期間制限があります。

日本国内で最初に販売された日から3年を経過すると行為を差し止めたり,損害の賠償を求めたりすることができません。そもそもデザインを特許庁に意匠として登録していないのに長期間保護を受けるとなるのは逆によくありません。そこで,先行者が開発のために投資した分を回収するのに必要な期間は3年程度で,それ以上長く保護する必要はないと考え,このような期間制限が設けられています。

保護期間のスタート地点は,どう考えるべきかについては,先ほど紹介した知財高裁の平成28年11月30日の判決では,開発・商品化を完了し,販売できる段階に至ったことが外見的に明らかになった時だとしています。

なぜそうなるのか。そもそも3年の期間制限は,先行者が投資した分を回収するのに必要な期間として定められています。そうすると,投資した分の回収を始めることができる時点から保護期間が始まると考えるべきであり,実際には,開発・商品化を完了し,販売できる段階に至ったことが外見的に明らかになった時に投資した分の回収を始めることができると考えられるからです。

4.ほかに方法はないのか?

不正競争防止法2条1項3号(商品形態模倣行為)の場合,3年という期間制限があり,それを過ぎてしまうと,この制度を利用してやめるよう求めたり損害の賠償を求めたりすることができません。では,そのほかに何か,デザインを保護する制度はないのでしょうか。

実は,利用するハードルは大変高いのですが,不正競争防止法の別の制度を利用することが考えられます。

次回は,不正競争防止法の商品等の表示に関する制度を利用して保護する方法について解説していきます。

この記事を書いた弁護士

藤田 聖典
藤田 聖典
長崎県出身,愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学経済学部経済学科卒。
大学卒業後,テレビ放送局ディレクターを経て法科大学院に入学。法科大学院修了後,東京都内の有名進学塾の副校長在職中に司法試験に合格し,弁護士資格を取得。
法科大学院では,知的財産法を専攻。合格後の司法修習中も東京地方裁判所の知的財産権部や知的財産高等裁判所(知財高裁)で知的財産を中心に学ぶ。
中小企業の法律問題では,著作権,商標権,意匠権,不正競争防止法,契約書の作成・確認,不動産賃貸借,建築紛争,クレーム対応などが主な取扱い分野。
地域密着の弁護士を目指し,多治見市での就業を選択。
相続・離婚など家庭での法律問題も取り扱っています。

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