債権法改正シリーズ第6回目 債権譲渡の改正ポイント

債権法改正シリーズ第6回目です。

 

今回は、現行法のルールから重要な改正がされることとなった「債権譲渡」について見ていきたいと思います。

 

 

1 債権譲渡とは

 

「債権」にはいくつかの客体があります。民法の規定する通常の債権を「指名債権」と言いますが、これは、債権者が特定し債権の成立及び譲渡について証書を要しないものを指します。

 

一方、手形とか小切手は、証書化した債権ということになります。民法には469条以下に証券化した債権についての規定がありますが、内容的には未熟で実際には用いられていません(今回の改正で削除されることになりました。)。

 

今回は、指名債権の債権譲渡について見てみます。

 

債権譲渡は、何故行われるのでしょうか?

 

債権譲渡には、様々な機能があると言われます。

 

一つには、投下資本の回収機能が挙げられます。例えば、債権の弁済期が1年後と定められていた場合であっても、債権者は、その債権を売買することにより、投下資本を回収することができます。債務者にしてみれば、投資が促進されることで、資金調達を得られやすくなる側面があると言えます。そういった資金調達の側面から、改正された箇所を見てみると分かりやすいと思います。

勿論、投下資本の回収としての機能を十分に果たすためには、その流通を保護し、譲受人が安心して弁済を受けられる必要がありますので、そのための手当てもされています。

 

 

2 譲渡制限特約の効力の見直し

 

旧民法4662項は,当事者間の合意により譲渡禁止特約を付すことができ,これを「悪意」の第三者に対抗することができるとしています。

判例・通説では、譲渡禁止特約に反する債権譲渡は無効であり、悪意または重過失の第三者に特約を対抗でき、特約に違反する譲渡は無効と解されています。

 

債権は自由に譲渡できるのが原則(旧4661項)であるとしながら,譲渡禁止特約にこのような強い効力が認められるとについては,債権譲渡による資金調達の支障となっているという問題が指摘されていました。

 

今回の改正により、債権の譲渡を禁止しまたは制限する旨の意思表示(譲渡制限特約)に反する債権譲渡についても、原則として有効とされました。これにより、譲受人が悪意または重過失の場合であっても、譲渡債権は、譲受人に帰属することとされました(新法4662項)。

 

そのうえで、譲渡制限特約を合意することにより、相手方を固定化することを望んだ債務者の利益にも配慮することとしました。

 

すはわち、譲受人が悪意・重過失(すなわち、債権譲渡の制限を知っていたか、容易に知り得た場合)のとき、債務者は、譲受人に対して債務の履行を拒み、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって譲受人に対抗することができます(新法4663項)。

  

  そうすると、債務者は、譲渡人にも譲受人にも弁済等をしなくてもよいかというと、そうはなりません。この場合、譲受人は、相当の期間を定めて譲渡人へ履行するように催告します。これに対して、債務者が譲渡人に弁済等をしない場合、譲受人は債務者に自らに支払うよう要求できることになります(新法4664項)。

また、債務者は、譲渡制限特約付の金銭債権が譲渡された場合には、供託を行うことも認められます(新法466条の2)。

  他方で、譲渡制限特約付の金銭債権の譲受人の利益を保護する観点から、譲渡人について破産手続開始の決定があった場合には、譲受人は、引き続き債務者に直接自らに弁済をするよう求めることはできませんが、債務者に対して金銭債権の全額に相当する金銭の供託を求めることができます(新法466条の3)。

 

 

 

3 将来債権譲渡の規定を新設

 

  旧法は、債権譲渡時に発生していない債権、すなわち将来債権の譲渡の可否に関する規定を置いていませんでした。

 

しかし、最高裁は、債権発生の可能性ないし確実性を問題とすることなく、将来債権譲渡契約の有効性を認めることを明らかにしていました(最判平成11129日)。

 

新法では、従来判例の認めていた将来債権についての規律が明文化されました(新法466条の6)。

 

 

 

4 異議をとどめない承諾による抗弁の切断制度の廃止

 

現行民法では、債務者が異議をとどめないで債権譲渡について承諾をしたときは、債務者が譲渡人に対抗することができた事由があっても、これを譲受人に対抗することができないとし(旧法4681項)、債務者の異議をとどめない承諾に抗弁の切断の効果を認めています。

 

もっとも、この規律については、債務者が単に債権譲渡を承諾した場合に、抗弁の切断という効果を認めることは、債務者の保護の観点から妥当ではないという指摘がなされていました。

 

 そこで、今回の改正により、旧法4681項の規定を削除し、異議をとどめない承諾によって抗弁を切断する制度を廃止しました。

 

そうすると、債務者が譲渡人に対して有する抗弁の影響を受けずに、譲受人が債権を譲り受けようとする場合には、どうすればよいのでしょうか。この場合には、債務者による抗弁の放棄、といった意思表示の一般的な規律によって対応すべきということになります。

 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!

 

 

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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