弁護士田中敦ブログ

多治見ききょう法律事務所所属弁護士田中敦のブログです。

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債権法改正シリーズ第5回目 保証契約について

債権法改正シリーズ第5回目は,保証に関する部分です。

 

今回の改正により、この保証、根保証の分野に、大幅な改正が加えられることになりました。

これにより、契約書の見直しも必須となることが見込まれる重要分野の一つです。

 

 

1 保証契約について

 

保証契約は、とても身近なものです。

例えば、不動産賃貸をしている方であれば、借主が家賃を滞納した場合のために保証人をたててもらうのが通常です。

このとき、多くの場合が「連帯保証契約」であり、且つ「根保証契約」をしていることになります。

 

  あまり意識されないかも知れませんが、通常の「保証人」と「連帯保証人」には大きな違いがあります。

  

 「保証人」は、債権者が、いきなり保証人に請求をしてきた場合に、「まずは主債務者に請求して下さい」と主張することができます(これを「催告の抗弁」といいます)。また、主債務者に返済資力がある場合には、「まずは主債務者から返済してもらって下さい」と主張することができます(これを「捜索の抗弁」といいます)。さらに、保証人が複数いる場合、保証人の人数で按分した金額だけを負担すればよいことになっています(これを「分別の利益」といいます)。

 

一方、連帯保証人には、「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」がありません。また、解釈上「分別の利益」もありません。よって、保証人と比較した場合、かなり重い責任を課されることになります。

 

 

  次に、「根保証」とは「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」を言います。

 

このような根保証契約の典型は、銀行と事業者との貸金取引など継続的な取引契約が結ばれる場合です。しかし、根保証契約は、契約時においては、保証人がどれだけのリスクを負担するのか分かりづらいという特徴があります。そこで、平成16年の民法改正では、こういった貸金等根保証契約について保証人保護のための規定が設けられていました。

 

しかし、根保証契約は、こういった貸金等の根保証に限られません。不動産の賃貸借契約から生じる賃借人の賃料債務の保証や、雇用契約における身元保証も、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とするので、根保証契約に当たります(なお、身元保証については、昭和8年に身元保証に関する法律が制定されています。)。

 

今回の改正では、こういった貸金等根保証以外の根保証についても新たな規律が定められたため、実務への影響は大きいと言えます。

 

  

  それでは、実務への影響が大きいと思われる改正部分について見ていきましょう。

 

 

 

2 個人根保証における極度額の設定義務

 

 

改正法により、個人根保証契約は、極度額を書面で定めなければ、その効力を生じないとされます(新法465条の2以下)。

 

「極度額」とは、保証人が負う責任の上限額のことです。

個人根保証契約の場合は、この極度額を、書面で定めなければ、契約自体が無効となってしまいます。

 この書面は、公正証書である必要はなく、契約書で足ります。

 

つまり、今後は、賃貸借契約において賃借人の親族などの個人に根保証を求める場合には、契約書の中で極度額を定めておかなければならないということになります。

この極度額は、一定の金額を定めておく方法や、賃料の2か月分といった定めであっても、賃料の額が特定されていて上限額を確定できるのであれば有効です。

 

 

3 事業のための個人保証の制限

 

改正法により、個人保証のうち、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、原則として、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書により保証債務を履行する意思を表示して行わなければ、無効とされます(新法465条の6)。

 

これには、例外があります。

 

いわゆる経営者保証の場合です。

 

つまり、

① 主債務者の取締役

② 総株主の議決権の過半数を有する者

③ 主債務者が個人事業主である場合の共同事業者や主債務者が行う事業に従事している主債務者の配偶者

 

が保証人となる保証契約については、当該保証のリスクを十分理解できると考えられるため、適用除外とされています(新法465条の9)。

 

 

4 主債務者の保証人に対する情報提供義務

 

改正法により、主債務者の情報提供義務についての規律が設けられました(新法465条の10)。

 

すなわち、主債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業の為に負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受けた保証人に対し、以下に関する情報を提供しなければならないとされました。

① 財産及び収支の状況

② 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

③ 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

 

  そして、主債務者が、上記情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り、又は知ることができたときは、保証人は、当該保証契約を取り消すことができることになりました。

 

  そうすると、債権者としては、主債務者からの情報提供が果たされたか否かについて、確認しておかなければなりません。

  後の紛争を防止するためには、情報提供が果たされたことを書面化しておく必要があります。

 

 

5 保証人に対する債権者の情報提供義務

 

改正法は、債権者から保証人に対する情報提供義務についても明示しました。

 

  すなわち、保証人から請求があったとき、債権者は、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければなりません(新法458条の2)。

 

  これは、継続的契約が長期に及ぶものであることから、保証人に、その都度、債権者からリスクを開示させる権利を与えるものです。

 

 

  また、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務についても、次のような規律が設けられることになりました。

    

主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2か月以内に、その旨を通知しなければなりません。

上記期間内に通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から上記の通知をするまでに生ずべき遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することはできません(新法458条の3)。

 

これは、期限の利益を喪失した場合、主債務者から保証人に対して情報提供されることがあまり期待できないために、債権者からの通知を義務付けるとともの、保証人に対する遅延損害金が膨らんでいくことに歯止めをかける趣旨です。

 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!

 

 

2018年2月12日

債権法改正シリーズ第4回 法定利率の改正について

 

債権法改正シリーズ第4回目は,法定利率に関する部分です。

 

 

1「法定利率」とは

 

「法定利率」とは,利息が当事者の合意によって発生する場合に、利率が合意により決まっていない場合や、法律の規定により利息が発生する場合に適用される利率をいいます。

 

旧法は、法定利率を年5分(5%)と定めています(旧法404条)。

 

この法定利率は、利息債権の場面だけではなく、金銭債務の損害賠償額の算定に関する特則(旧法419条)、生命侵害などによる中間利息控除の場合の基準として、重要な意味を有しています。また、不法行為による損害賠償請求権や、不当利得の返還請求権の遅延損害金の場面においても、法利率が適用されています。ですから、この「法定利率」の変更が実務に与える影響は、とても大きいものがあります。

 

 

「中間利息控除」という聞き慣れない言葉が出てきました。

 

中間利息控除とは、例えば、給料をもらっている人が交通事故で死亡した場合に、将来にわたって受け取るはずであった給料の総額を、現在において一括して受け取る場合に、一括して受け取る金銭を銀行に預けておけば利息がつくはずであるから、その分を前もって控除しておこうという操作です。実務上は、法定利息に準じて5%の中間利息が控除されていました。しかし、現実的には、銀行に預けておいて5%の利息がつくことなどあり得ませんよね。

 

この点については、従来から、5%の中間利息控除が被害者側に不利であるとして争われたこともありました。しかし、一括して受け取る損害賠償の遅延損害金も法定利率により算定されるので、法的安定性や統一的処理の観点からすれば、5%の中間利息控除にも合理性があるとされてきました。その根本が変更になることになります。

 

では、債権法改正により、法定利率がどのように変更になるのか見ていきたいと思います。

 

 

2 新法における法定利率

 

 改正の重要ポイントは、3つです。

 

①法定利率が法改正の施行時に年3%となる

 

法定利率は、年3%となります(新法4042項)

 

問題は、いつから適用になるかです。

この点、債権法改正の施行日は、202041日と決まりました。

 

金銭債務の不履行による損害賠償は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率により定めると規定しています(新法4191項本文)。ですから、遅延損害金の利率は、遅滞に陥った時点の法定利率によることになります。なお、約定利率が、法定利率を超えるときには、約定利率になります(新法419条但書)。

 

中間利息控除について、新法においては、生命侵害等の損害賠償額の算定における中間利息控除の利率が「法定利率」によることが明示されることになりました。そして、その利率の基準時は、損害賠償請求権の発生時、つまり事故日が基準とされることになります(新法417条の2722条)。

 

 

② 固定制ではなく3年を1期として緩やかな変動制を採用

 

新法においては、今後は、3年を1期として、1期ごとに法定利率を見直すことになりました(新法4043項)。

 

㋐ 各期の法定利率は、法定利率に変動があった期のうち直近のもの(直近変動期)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(1%未満切り捨て)を直近変動期における法定利率に加算・減算した割合とする(新法4044項)。

 

㋑ 「基準割合」とは、過去5年間(各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月まで)の各月における短期貸付けの平均利率の合計を60で除して計算した割合して法務大臣が告示するものをいう(新法4045項)。

 

例えば、最初の3年(第1期)における基準割合が0.8、第2期の基準割合が1.4のときは、その差が0.51%未満ですので、法定利率の見直しはありません。第3期の基準割合が1.9となった場合、第1期との差が1.1となり1%以上となりますので、1%が加算対象となり、第4期の法定利率は、4%となるという恰好です。

 

なお、債権の利率は、別段の意思表示のない限り、その利息が発生した最初の地点の法定利率で固定し、その後は変動しません(新法4041項)。そうしないと、利息の計算が困難になってしまいますね。

 

 

③商事法定利率は廃止される

 

 商法514条は削除され、商事法定利率年6㌫は廃止することになりました。よって、商行為によって生じた債権についても、民法と同じ法定利率となります。

 

以上の3つを覚えておいていただければ大丈夫だと思います。

 

 

 

3 法定利率の改正に向けた準備

 

 今回の改正では、当事者間の約定がない場合、遅延損害金の利率が、施行時に5%から3%になり、旧法よりも低くなることになります。また、商行為の場合であっても、6%ではなく民法の利率が適用になります。

 

そうすると、これまで以上に、遅延損害金の利率を契約書において定めておく必要性が高まったと言えます。

 

例えば、売買契約書を作成するにしても、売主としては、代金不払いに備えて遅延損害金の定めがあるかどうかをよく確認しなければなりません。売主の立場からすれば、従来の商習慣(日歩4銭)から、14.6%の遅延損害金を主張するなど、積極的な手当てが必要になります。

 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!

 

2018年1月21日

本年もお世話になりました!

 

大晦日ですね!

このブログを読んでいただいている皆様、ありがとうございます。

 

毎年、大晦日に思うことは、紛争が年を越してしまう、ということです。

新年を新たな気持ちで迎えたい、できることなら紛争は年内に終了させておきたいと思われる方がほとんどだと思いますが、やはり多数の事件が年を越していきます。

来年こそは、妥当な解決、よりよい解決、納得のできる解決で終わらせたい、そう決意を新たにするのが、毎年の年末の私の心境です。

(さらに…)

2017年12月31日

債権法改正シリーズ第3回 消滅時効の改正について

 

債権法改正シリーズ第3回目は,時効に関する部分です。

 

今回の債権法改正において,「消滅時効」の部分は大幅な改正が加えられることになりました。

 

「消滅時効」とは,一定期間権利を行使しないと,その権利が消滅して請求をすることができなくなってしまう制度で,皆さんにとっても,馴染みのある法律用語だと思います。

 

今回は,「消滅時効」制度の変更の概要と,私たちにどのような影響が生じるかについて見てきたいと思います。

(さらに…)

2017年12月10日

債権法改正シリーズ第2回 錯誤について

債権法改正シリーズ第2回目は、意思表示に関する部分です。

 

今回の民法改正は、主として民法の債権法部分を改正するものですが、「第一編 総則」も一部改正されています。今回は、総則のうち意思表示に関する部分の改正から見ていきたいと思います。

 

今回は、錯誤(民法95条)です。

(さらに…)

2017年11月19日