多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

なぜローカル経済から日本は甦るのか

なぜローカル経済から日本は甦るのか

なぜローカル経済から日本は甦るのかいつも読んでいただき,ありがとうございます♪
今回は,東濃信用金庫理事長の市原さんがご紹介してくれた本「なぜローカル経済から日本は甦るのか冨山和彦著)」から,気づいたことをお伝えします!
著者は「オムロン」などの「大企業」かつ「グローバル」に活躍する企業の社外取締役をしながら,「みちのりホールディンクス」という約3500人の従業員を持つ「大企業」でありながら,「ローカル」に活躍している東北地方のバス,タクシー運営会社も子会社として経営しています。JALカネボウの再生支援にも関わっておられます。
その中で,経済政策は「大企業」と「中小企業」という分け方ではなく,「グローバル」企業と「ローカル」企業で分ける,という考え方が重要とされています。

日本経済を引っ張っていっているようにみえる「上場企業」の経済活動ですが,実は日本のGDPに占める割合は30%程度,雇用割合は更に少なくて,企業数で言えば数パーセントに過ぎないのです。
…ということは,むしろ「ローカル」型産業を活性化することこそ,日本全体を元気にする力になるのですね!

地元「多治見市」という「ローカル」な地域で「ローカル」な企業が活性化するために大切なことは何でしょうか?
「ローカル」産業にはどんな特徴があるのか?
やはり,「経済学者」という立場でなく,ご自身で「経営者」として体験されている方の話,というのは説得力がありますね…

どうしたら,「ローカル」な産業として労働人口減少社会で生き残れるのか?
「ローカル」な産業を支援する金融機関,商工会議所などは,何に注目して支援をしたらいいのでしょうか?

 

1 ローカルは「県大会」のチャンピオンをめざす

製造業を代表とする「モノ」に関する産業は,消費者が世界各国に存在でき,「グローバル」な社会での完全競争に立ち向かうことになる。
ここでは,「ジョブズ」のような,「高度人材」が必要となり,求められるレベルも「世界オリンピックのチャンピオン」ということになる。
トヨタ,パナソニック,オムロンなどが典型。

これに対して,非製造業で「泊まること」「治すこと」のように「コト」に関する産業は,すぐ近くの「地域で生活する」顧客が消費者となる。
ホテル,旅館などの宿泊施設,医療・介護などの社会福祉施設などが典型となりますね。
(弁護士も,今の制度を前提とすると,多くの業務は「コト」にかんする産業になりますね!)
この場合,例えば,「運ぶこと」を事業とする路線バス会社なら,同じバス会社であっても,岩手県の会社と宮崎県の会社では競合関係が無い。

つまり,対面サービスを中心とする「ローカル」産業では,「オリンピックチャンピオン」ではなく,「県大会」「市大会」で優勝できるレベルであれば,十分生き残っていけるのですね!

日本の多くの方は,この「ローカル産業」に携わっているので,経済効果からすれば,この「ローカル産業」で県大会でチャンピオンになれる経営者,企業を作り,雇用を増やす方が,一人のオリンピックチャンピオンを作るよりも高い効果がありますね。

…では,どうしたら,「県大会」チャンピオンとなれるのでしょうか?

 

2 女性が家で子どもを育てるのが日本の淳風美俗とは本当か

日本のローカル経済圏では構造的に「人手不足」に直面している。
私自身,事務局を増やしたいな~と思っていたところ,現在の事務局(小学校低学年,中学年の子ども有りのママ)に聞いてみると,周りの殆どのお母さんは既に働いている,といわれた。
5年前に「子育て中のお母さん」で誰か働いてくれないかな~と言っていたころは,すぐに見つかったのに…

女性の就労率と出生率は都市部より,地方部が高いそうです。
著者は,以前の典型的家族モデルであった「家族を支える700万円を夫一人が稼ぐ」というのは,既に変わり,「年収600~800万円を夫婦2人で稼ぐ」というモデルに変わってきている,と言っています。
…そして,そもそも「夫婦共働き型」は,日本にとって斬新な家族モデルへの進化ではない!とのこと。
江戸時代までは,人口の大半を占める農家,商家ではこの形だった。農家では,妻が子どもを背負って農作業に精をだし,商家では旦那さんが営業に歩き,女将さんが店を切り盛りしていたのだ…

お公家様やお武家様たちの「日本の伝統論」はくそくらえ,と言っておられます・・(笑)

「日本人は殆どの人が夫婦で一緒に働いて一緒に子どもを育ててきた。現代人には,むしろ平均的な日本人本来の姿に戻れと言いたい」と言っています。
東大卒で一線で活躍している「エリート」男性の著者が言って下さると,働く女性としてはすごく嬉しいです♪
(やはり,働く女性は,日本では,まだまだ「子どもが可愛そう…」という目で見られるのが辛いです…)
そのためには,「職場と子育ての場所が近く,その周辺に子育てを助ける人達がいる環境を現代的な産業構造の中でどう構築するか」がポイントのようです!

これは,私も委員として入っている多治見市の「女性活躍会議」の中でも,考えていきたいテーマだなと改めて思います。
そして,「ローカル」企業としては,女性が働きやすい環境をいかにしてつくれるか,「考え方」をいかに変えられるか,も生き残るために必要に感じます。
…私も,自分自身が母に助けられて仕事が出来ているので,「女性が働きやすい環境」をこれからも大切にしていきたいと思います。

 

3 地域住民との「共創」関係の構築

地域密着型の「ローカル産業」は,地域と共存しなければ生き残れない,と著者は言っています。
自分のバス会社で言えば,東北震災後,自分も被災しながらも,経営者,従業員が一心同体となって救護活動を行ったそうです。
地域の利益,公共責任と折り合わなければ,「ローカル」企業は生き残れない…
地域に生かされている企業の責任として,持続的に収益を上げ,その中から適正額を再投資に回し(より安全,便利な運行システムの開発など),賃金と安定雇用として実現していくことが重要!とのことです。
この上手なバランスの取り方が「ローカル」企業の経営者には必要な資質,ということになりますね。
介護や看護など「コト」を仕事とする「ローカル」な仕事は,人間に対する愛情に加え,使命感,誇りがあるからこそ,大変な仕事であっても続けることが出来る,この人達を支える仕事に臨むには,何らかの「使命感」が必要になると思う,と著者は言います。

そう考えると,「ローカル」の経営者は,まず,自分自身が地域に貢献するための「使命感」を持ち,そういう使命感を持ってくれる職員に「入りたい」と思ってもらえる会社にすること,入ってからも「職員に使命感を感じさせられる」仕組み作りが必要になりますね。

毎日のように公共交通機関を動かし,地域の人の足になっていることに誇りを持てる,地域住民から感謝される,そんな日常の中に,それぞれの人生の夢や職業人としての誇りを持って頑張れる…
「ローカル経済圏」のサービス産業は,公共サービス系の仕事が多い。本質的に,誇りや社会的意味合いを持ちやすい仕事です。
スマートフォン向けのソーシャルゲームを作るよりも,「俺はよっぽどいい仕事をしている」という感覚を持てるのではないだろうか…と言われています。

私もやはり,地元の皆様に「ありがとう」「助かりました」「気持ちが楽になりました」と言ってもらえるので,やりがいを感じます。
これからも持続的に継続するための収益を確保しながら,働いてくれ,地域住民でもある職員,そして,ご依頼者である地域の方々にご恩返しが出来るような法律事務所でありたいと思います。

 

まとめ ローカル産業は労働生産性の向上が鍵!

今回は,「ローカル」企業が生き残るために必要なこと,を中心的に書きましたが,著者は,グローバル企業はグローバル企業として必要であり,ローカル企業はローカル企業として必要,という立場を取っています。そして,その活性化対策は分けて考えるべき…という考え方です。

ローカル企業が生き残るための最大のポイントは「労働生産性」の向上と言っています。
労働生産性=労働者一人一人が作り出す「価値」があがれば,賃金も当然上げていくことが出来ますよね!

日本では,「モノ」産業である製造業での労働生産性はトップレベルであるのに対し,「コト」産業であるサービス業では,先進国の中でかなり低いのが現実。
コト」産業であるローカル産業では,まだまだ「労働生産性」をあげる余力があることになりますね!

これからは,「労働生産性」が低いローカル企業は退出し,労働生産性の高いローカル企業に統合されていくことが望まれる,とも言われています。
私たちは,自分たちの企業が生き残るためには,やはり「労働生産性」をあげなければいけないのですね。

そのためには,経営者自身が自社のサービスの「価値」をあげることに意識を集中して行動し,職員にもその意識をいかに伝えて行くかも重要となりそうです。
この本を読んで,改めて,「価値の高め方」を重視した岐阜成功塾をローカル産業で「県大会レベル」のチャンピオン経営者,職員を作るための活動として,広めていきたいと思いました。
そうすることが,私自身,地元で生かされている法律事務所として,地元に貢献するための恩返しの一つだと思っています。

誰か一人が「オリンピックチャンピオン」となるのではなく(そういう企業が地元から出たら,それはそれで,とても嬉しいですが!),地元企業の経営者が少しずつ「価値」をあげられ,全体が底上げできれば,地元の安定的雇用,地元の公共的サービスの向上につながり,結果として,地元地域の住民の「生活しやすさ」「幸せ」につながると信じています♪

今回のブログが,地元で「コト」産業をする経営者の皆様,経営者を支援する皆さまに「ローカル地域で生き残っていくため」の「気づき」がありますように!!

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!