自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

無題みなさんこんにちは。暑い日が続いていますが、昨日は、多治見市がまた日本で一番暑い気温を記録したようですね・・・。ニュースで取り上げていただけるのはよいのですが、それにしても39.9度ですよ・・・暑すぎです!皆様、どうか熱中症などにはお気を付け下さい。

さて、今日は、自動車を運転していて必要な注意を怠り人を死傷させる事故を起こしたとき、どのような法律が適用されるのかについて見ていきたいと思います。

1 自動車運転死傷行為処罰法の制定

自動車を運転して人を死傷させてしまった場合、刑法のどの条文が適用されるのでしょうか?・・・実は、刑法上に処罰の根拠はありません

かつては、刑法にある「業務上過失致死傷罪」が適用されていました。「業務」とは、「社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、生命身体に危険を生じ得るもの」をいいますが、自動車を運転することもこれに含まれるというわけです。

その後、刑法上に別途「自動車運転過失致死傷罪」という独立した条文が整備されるとともに、懲役・禁固の上限が、従来の業務上過失致死傷罪の「5年以下」から「7年以下」に引き上げられました。これと同時に、「危険運転致死傷罪」が新設されました。これが平成19年のことです。

そして、平成26年5月に施行された「自動車運転死傷行為処罰法(正式名称は、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律です)」が、刑法上に規定されていた「自動車運転過失致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」を抜き出して独立させ、特別法として作られました。これにより、従来の自動車運転過失致死傷罪は、適用要件などはそのままに、罪名が「過失運転致死傷罪」に変わりました。

 

2 自動車運転死傷行為処罰法による変更点

この自動車運転死傷行為処罰法による主な変更点は、次のとおりです。

① 1つ目に、これまであった「危険運転致死傷罪」と「自動車運転過失致死傷罪」の量刑の差が大きかったため、この中間に、「酒や薬物、特定の症状を伴う病気の影響で、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で事故を起こした場合」に適用される、新しい危険運転致死傷罪を設けました(3条)。最高刑は懲役15年です。

この「特定の病気」については、意識障害などをもたらす発作が再発するおそれがあるてんかんなどが、政令で定められています。

② 2つ目に、「過失運転致死傷アルコール影響等発覚免脱罪」という新しい罪の規定を設けられました(4条)。これは、事故の後、逃げて飲酒していたことなどを分からなくすると刑罰が軽くなるという「逃げ得」と呼ばれる問題を防ぐための規定で、酒や薬物の影響で事故を起こした後、そのことが発覚するのを免れるために逃走した場合などに適用されます。最高刑は懲役12年です。

③ 3つ目として、無免許で運転して上記の罪にあたる事故を起こした場合は、それぞれ刑罰を重くする規定が、新たに設けられました(6条)。

これは、未成年者である被告人が、無免許で7回にわたり普通乗用自動車を運転するとともに、京都府亀岡市の国道を走行中、いわゆる居眠り運転により集団登校中の小学生の列に突っ込み、保護者1名を含む3名を死亡させるとともに、7名に傷害を負わせたという事件が大きな契機となっています。遺族の方々は、危険運転致死傷罪の適用を希望しました。「進行を制御する技能を有しない走行」(旧・刑法第208条の2第1項後段)については、無免許運転だから直ちに技能を有しない走行であると認められるものではなく、実質的に進行を制御する技能を有しない未熟運転をいうと解釈されてきました。おかしな話ですが、無免許運転を繰り返していれば技能を有することになっていくのです。検察は、結局、法文を拡大解釈することなく、危険運転致死傷罪での起訴を断念して自動車運転過失致傷罪で起訴しました。立法的に解決されるべき問題であったといえます。

自動車を運転するものとしては、自動車が人を死傷させる大変危険な乗り物であることをまず自覚しなければなりません。また、近年、飲酒運転や無免許運転のような悪質で危険な運転に対する処罰が厳しくなっていることも認識しておかなければなりません。

それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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