多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

トラブルを防ぐ契約書のチェックポイント~弁護士はここを見ている

トラブルを防ぐ契約書のチェックポイント~弁護士はここを見ている

契約締結いつも読んで下さって,ありがとうございます!
今週は,暖かくて,ぽかぽか春の訪れを感じますね♪
そう!と言えば,「契約」の季節です(←ホントに!?)
就職すれば雇用契約,引っ越しすれば,新しいマンションでの賃貸借契約,旅行をすれば旅行契約
…実は,私たちの生活は,「契約」であふれていますね。
今回は,弁護士が契約書を確認するとき,どんなチェックポイントで見ているのか?をお話しします。

弁護士は,トラブルが起きた場合に解決するために仕事をしています…
ということは,自分にトラブルが無ければ,弁護士には頼まなくても良い…
…そう,あなたも,「弁護士はできれば一生関わり合いたくない人」と思っていませんか(泣)?

しかし!だからこそ,弁護士はトラブルを防ぐためのポイントが分かるのです。

弁護士は,沢山のトラブル(紛争)現場を体験しています。
なので!弁護士がこの知識,経験を伝えることこそ,お役に立てる,と思っています。
…ということで,今回は,身近な「住宅の建築契約書(請負契約)」作成の際,トラブル防ぐため,どんなことについて注意したらいいのか,考えてみます。

1.「何を」(目的物)を特定する!

カントリー風の家にしたいな~という妻の要望で,一戸建てを新築することにしたあなた。
しかし,できあがった家は妻の意向にそぐわない…「こんなはずではなかったのに(怒)!」

…これは何が問題だったのでしょうか?
これは妻の思う「カントリー風の家」(目的物)と建築業者の思う「カントリー風の家」の食い違いからトラブルとなっています。
つまり,人によって感じる「カントリー風の家」というのは違うのです。

こんなトラブルを防ぐには,できるだけ,相対的な表現を避け,だれが読んでも,「同じ物」とわかる絶対的な表現にしなければいけません。
例えば,素材が重要ならば,どんな材木を使うのか,色が重要ならば,どんな色にして欲しいのか,形が重要であれば,どんな形にして欲しいのか…
言葉で表現することが難しい場合には,図面,写真をつけるなどして,「どんな家」を作ることを頼んだのか,頼まれたのか,お互いに確かめておくことがトラブルを防ぎます。

「こんな家を頼んだのではないから直して欲しい!」と言っても,裁判所では「では,どんな家を作るのを頼んだのですか?」と言われます。
こういう素材で,機能で,色で,形で…合意しました,と立証できなければ,「契約違反」とも言えないのです。

あなたの頼んだ家はどんな家ですか?「契約書」を読めば,その場にいなかった裁判官でも分かりますか?

 

2.変更の場合も合意書作成!

目の前にある商品を買う場合と違って,家の建築をしていく場合には,途中でイメージと違うな,ということもでてきます。
例えば,当初の予定では普通の窓にしようと思っていたけど,「出窓」の方が素敵だな…とか。
妻が,現場で工事している方に「やっぱり出窓にしてくれない?」と言い,工事担当者は「いいですよ。」と…家が完成。
建築業者は,出窓にしたことで,費用が増大したため,その分を「追加工事100万円」として費用請求…
…あなた:「きいてないよ~」
…妻:「予算は伝えてあるから,予算の範囲内でやってくれると思ってたわ」

と,いうことで,追加工事の費用を払ってくれない…という相談を建築業者側からよく受けます。
一方で,家の建築を依頼した方側からは,「こんなに追加費用がかかるとは聞いていない」というご相談もあります。

トラブルを防ぐには,「変更契約」も現場の口頭やりとりですまさず,建築業者の社長さん,ご依頼主との間で,「追加工事契約書」として,合意の内容をはっきりさせておく必要があります。

…どこまでが本体工事で,どこからが追加工事なのかが分からない

…いくらで追加工事を請けたのか,分からない…という契約がとても多いです。

完成期限の変更も必要になることもあるでしょう。

刻々と変わる現場でいちいち「契約書」を作成してはいられない,そういう業態では無い,と言われることも多いです。
確かにそうかも知れません…しかし,この場合には,相手方が追加工事費を支払ってくれなかったら,裁判での請求は難しい,という覚悟が必要です。
追加工事が多額になり,軽視できない場合には,せめて,見積書だけでも送り,署名してもらうことでトラブルが防げます。

3.損害賠償額の定め(違約金)

新築の家が出来たら,引っ越しして新しい生活が始まる…
と思っていたら・・・なんと!不備(瑕疵)があって,修補に時間もかかり,完成期限に,家が完成しなかった。
そのために,前の賃貸マンションを継続しなければならず,家賃が嵩んだ…
勤務先から遠いままで通勤しなければならず,精神的負担も続いた…
やり直ししてもらうための交渉で,疲れ切った…

この損害を賠償して欲しい,というご相談もよくあります。
確かに建築業者は「契約書」できめた期限に完成できず,契約違反をしていますから,損害賠償請求できます。
しかし!この損害の立証がとても難しいのです。精神的な苦痛に対するお金の換算,細かい損害金(マンションの家賃代,通勤費など)の算出など,とても手間がかかります。
そこで,予め「この契約の第○条に違反した場合には,金××円を支払う」という「損害賠償額の定め」をしておくと,このような細かい損害金の立証が要らなくなるので,トラブルを少なく出来ます。
ただし,この場合には,原則として,××円以上の損害があったとしても,その超過分の損害は請求できません。
別途,請求したい場合には,併せて「違約金の額を超える損害が発生したときは、その超過額を請求することができる」としておくと,さらにいいですね。

建築業者側からも,突然,依頼主の気持ちが変わって,「別の業者にします」と言われた,という相談を受けます。
建築開始前なのか,建築開始後なのかで,その損害額も違うでしょう。
このような場合にも,損害額の立証が難しくなりますので,予め定めておくと,トラブルが軽減されます。

4.まとめ 契約書はあなたを守るためにある!

弁護士は,契約書の確認を依頼されると,目の前のご相談者にとって,権利を守るためにはどうしたらいいのか,を考えます。
契約書は,自分の権利を守り,自分のかなえたいことを実現し,トラブルになるのを防ぎ,なったとしても,被害が最小限になるようにつくるものです
相手の権利を守るためだけになされる「契約書」は自分にとっては,不要ですね。
…そう考えると,相手方が作成した契約書は「相手方の権利を守る」契約書になっていることも多いことがわかります(笑)
…特に,相手方の「弁護士」が作ってきた契約書は要注意(笑)
少しでも,不安や疑問を感じたらお気軽に弁護士に相談して下さいね。

このブログが,「契約書のどこをチェックしたらいいのか分からない」という個人の皆様,会社で総務を担当する部署の方々のお役に立てますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!