退職後に元職員に同じ仕事をしないように言えるのか?

a0003_001886いつも読んで下さって,ありがとうございます!

今年は雪の降り始めが早いですが,みなさま,は大丈夫でしょうか?
子供たちは,雪だるま作り,雪合戦など,とても楽しそうでした~~♪

さて,今年,私は,ご縁があって,京都で女性1番の社会保険労務士,池田少折(さおり)先生のグループ新聞「スマイル新聞」に定期的に寄稿しています。

今回は,その記事から,社員が退職してから,自社と同じ仕事を始めて,顧客を奪うこと(競業)が許されるのか?
競業を止めることが出来るのか?について,考えてみます!

1.原則は縛れない

退職後,元職員には,「職業選択の自由」が認められています。
そのため,例えば,会社が時間をかけ,教え込んだ金型製造ノウハウ,技術を用いて,元職員が会社と同業の金型製造業(競業)を始めることも原則として自由です。
しかし,元社員が,会社が開拓した顧客に営業をし,顧客を奪っていったとしたら,納得できるでしょうか?

2.競業避止義務に関する合意の有効要件

このようなことを防ぐためには,あらかじめ「競業避止義務」を定めた就業規則,合意をしておくことが大切です。
但し,「職業選択の自由」との関係から,「合理的範囲」と言えなければ無効となってしまいます。

その際のポイントは,裁判例を検討すると,
①労働者の地位
②使用者の固有の秘密・ノウハウの保護を目的とすること
③競業制限の対象職種・期間・地域が不当な制約にならないこと
④代償措置の有無

にあるとされます。

…といっても,あまりピンときませんよね?

3.企業側の出来る対策とは~裁判例より

2のポイントをふまえて,具体的に競業避止義務の「合理性」の判断をしてみます。

営業職の場合,内勤の職員に比べて,その「地位」から合理性が認められやすいでしょう。
技術系専門職の場合,長期間,他の会社でもその専門技術を身につけ,活かして仕事をしてきたのに,その専門を活かす仕事がまったく出来ないとなると,合理性が認められにくい方向に働きます。

顧客台帳,技術,ノウハウが「秘密」として,特定の職員にしかアクセスできないなど,保護,管理されている場合,「ノウハウ」の保護のため,競業避止義務が認められやすいでしょう。
裁判例では,先に専用電話をリースしてもらい,秘書代行をするサービスで,既に専用電話を持っている顧客をターゲットに,元職員が同業の秘書代行をするという事案で,顧客開拓に,時間,資本の必要な事業について,競業避止を認める合理性がある,としています。

大手司法試験予備校の人気講師だった○○先生が,独立して予備校を作ったときも,裁判となり,この問題が大きく取り上げられましたね♪

期間については,1年以内,最長でも2年以内を目途にした方がいいでしょう。
例えば,在職中に営業を担当した地域およびその隣接地域は競業禁止とする,など,地域,職種も限定しておかないと,合理性が否定されやすいです。

④競業避止義務を課すかわりに,金銭の支給があると認められやすい方向になります。

しばらくは,職業を縛ることになるので,労働の対価とされる「退職金」に加えて「秘密保持手当」等の支給がある方が,よりよいでしょう。
大まかに言うと,希望する職業が出来ないことによる元職員の不利益があまりに大きく,それに対して,会社側の守るべき利益が少ない場合には,合理性が認められません。

つまり,会社がノウハウ構築,顧客台帳構築などにどれほどの時間と費用をかけてきたのか,それを奪われることの損害がどれほど大きいのか,他方,元職員は,競業できないことによって,どれほど就職の機会を奪われそうか,競合する地域で就職すべき理由がどれほどあるのか,専門技術職に就けないことによる給与額がどれほど下がりそうか,などを比較考慮することになりますね。
合理的かどうかを迷う場合には,社会保険労務士,弁護士にお気軽にご相談くださいね。
また,退職時になってから,あわてて合意をすることは,かえってもめますので,就職時に就業規則で定めておくか,合意書を作成しておきましょう。
このブログを読んだ方は大丈夫でしょうが(笑),万一就業規則が無かったとしても,顧客台帳を持ち出して,営業をかける,こちらの業務の妨害をする,など背信性が高い場合には,損害賠償が認められることもありますので,弁護士にご相談下さいね。

 

4.まとめ 競業でなく,協業をめざして

法的な予防策は,これまで書いたとおりですが,やはり,法律上の予防策には限界がある…と私は感じます。
色々な理由で退職されるので,社長との関係が悪化して,退職する場合もあるでしょう。
しかし,そのような場合であっても,できるだけ,「競業しない」方が,双方にとって,メリットがありますよね。
「A地域は,うちがやっているから,君は地元で,地縁もあるB地域を頼むよ,そちらのお客さんがいたら紹介するよ」
・・・という,「協業」ができたら理想的ですね。

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個人的には,新米社労士ドタバタ日記 奮闘編(http://www.mag2.com/m/0001508350.html)がストーリー形式で面白いです!

このブログが,労務管理をする部署の方々,企業の経営者の方,また働いている皆様がお互いに「いい関係」となるお役に立てますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり18年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
著書「離婚調停は話し方で変わる」は,Amazonランキング「法律」部門ほか5部門で第1位を獲得。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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