運行供用者責任とは何なのか?

IMG_0224[1]皆さん、こんにちは。

今回は、自動車事故により人身傷害が発生した場合に、交通事故の被害者が責任追及する相手方について考えてみたいと思います。

1 運行供用者とは

事故が起こった場合に、被害者は、加害者たる運転者や(民法709条)、場合によっては運転者の使用者(民法715条)に対して賠償請求することができます。しかし、運転者に十分な賠償能力がない場合などに被害者は困ってしまいます。実は、法律は、さらに「運行供用者」という主体に対しても賠償請求することを認めています。それでは、この「運行供用者」とは何なのでしょうか?

自動車損害賠償法3条によれば、「自己のために自動車を運行する用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と定めています。この「自己のために自動車を運行する用に供する者」を運行供用者といいます。この責任は、危険責任や報償責任の考えに基づくものです。運行供用者責任は、①自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、②被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと、③自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことの3つの事項を証明しない限り免責されません(同条但書)。被害者の救済を実現するため、自動車事故についての故意・過失の立証責任を被害者から加害者に転換しているのです。

まず、確認しておかなければならない点は、この運行供用者責任は、「他人の生命又は身体を害したとき」に問えるとされていることです。ですので、物損事故では問題となりません。

 

2 運行供用者の判断基準

では、どのような場合に「運行供用者」とされるのでしょうか。この点について、判例は、自動車の運行を支配し(運行支配)、その運行から利益を得ている(運行利益)者という二元説的考え方をしています。これは、上記の危険責任や報償責任といった法の趣旨から導かれるものですが、その判断については、相当拡大して抽象化しています。

例えば、自動車の所有者、自動車を他人に貸した者、レンタカーの貸主、子会社が親会社に専属して業務を行っている場合の親会社、従業員の自動車を雇用主が業務用に使用させている場合の雇用主などは、運行供用者になり得ます。ただ、このあたりはどうしても事案に則した評価の問題が絡んできますので、個別の裁判例を参考にして具体的に検討するしかありません。

 

3 判例など

盗難事例について、所有者が車を降りるときに忘れずに鍵を抜くなどして管理に問題がなかったにもかかわらず、盗難に遭い人身事故を起こした場合には、法の趣旨からしても、一般的な感覚からしても運行供用者には当たらないと思います。一方、エンジンキーを付けたまま、車を公道上に放置するなど所有者に管理上の過失が認められ、盗難と事故との時間的間隔が密接しているなどの事情が認められる場合には、所有者に運行供用者責任が認められてしまうこともあります(最高裁昭和57年4月2日判決)。

最近の事例では、20歳の女性が父親所有の乗用車を乗り出し、飲酒・泥酔したため、一緒に飲酒した友人が当該女性を車に乗せ運転した際の事故につき、泥酔していたとはいえ、友人の運転には当該女性の容認があり、娘が乗り出した以上、所有者である父親の「容認の範囲内にあったと見られてもやむを得ない」として、当該女性の父親に運行供用者責任を認めたものがあります(最高裁平成20年9月12日判決)。

 

今年も、あと半月ほどで終了なんですね・・・それでは、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました!!

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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