営業職,出張でも割増賃金が必要?~阪急トラベルサポート事件!

a1180_013963いつも読んでいただき,ありがとうございます!

8月8日は,地元岐阜県東濃地区の基幹病院である岐阜県立多治見病院で講師としてお話させていただきました!
テーマは,『診療費等の債権管理と医業未収金の回収について』です。

・・医師の本業はみなさんの病気,けがを治療すること
・・これに安心して専念するため,病院スタッフの方々が,積極的に勉強をされ,努力されている姿が素晴らしいです。


私の子ども,父,親戚一同お世話になっている病院で,弁護士として,少しでもお役に立てたなら,とても嬉しいです!
さて,今回は,平成26年1月24日に出た最高裁判所判例より,「阪急トラベルサポート事件」についてです。
この判例では,「みなし労働時間制」は適用されず,労働時間を計算した上,時間外,休日割増賃金を支払うことが認められています。
・・しかし,外回りの営業職,旅行の添乗員などで出張する仕事の場合など,労働時間の管理が難しい…
どのような場合には,この「みなし労働時間制」が使えるのでしょうか???
判例を紹介しながら,企業側でできる対策(心構え)を考えてみます!

 

阪急トラベルサポート事件

平成26年1月24日、最高裁判所は旅行添乗員の業務につき,労働基準法38条の2,第1項にいう「労働時間を算定しがたいとき」にあたらない,と判断しました。
つまり、みなし労働時間で賃金を計算することは認められない、と判断した、ということです。

 

この事件のポイント

この事案では、添乗員の業務は予め旅行日程が定められ,これに従って行動するように管理されていること,変更の場合には,会社に確認がいることなどから,「労働時間を算定しがたいとき」にあたるとはいえない,としています。
労働基準法では,「事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」として「みなし労働時間制」を認めていますが,単に事業場外で業務に従事したということだけでは,「労働時間を算定しがたい」とは言えない,いうことです。
誤解を恐れずに言えば,営業職で,何時まで営業するのか,何件営業するのかを従業員に一切任せているような「使用者の具体的な指揮監督が及ばないような場合」でなければ「労働時間を算定」できる,と裁判所は考えている,ということがポイントです。

 

企業側の出来る対策とは

第1は、事業場外で働く従業員に具体的指揮,監督をしているかを検討することです
判例のように細かな指示がある場合,みなし労働時間制が適用されないと考えましょう。
第2に、みなし労働時間制の適用がない場合も考え,労働時間の把握をしましょう。
そして,支払う賃金の内訳を所定労働時間に対する賃金部分と所定時間外労働に対する割増賃金部分とに明確に区別して支払いましょう。
判例でも,日当には割増賃金部分が含まれている,という主張が会社側からされていますが,区別されていないことから認められていません。
第3に,従業員から割増賃金等の請求があった場合には,速やかに社会保険労務士,弁護士など専門家に相談して,解決をはかりましょう。
この裁判でも,賃金と同額の「付加金」が請求され,認められています。
2倍の賃金を支払うことになってしまいますので,裁判での見込みを素早く知って,出来れば裁判前に対処しましょう。

 

まとめ 使用者には労働時間を把握,算定する義務が課されている・・・

この最高裁判所判例の控訴審である東京高裁では,みなし労働時間制が認められている理由について,以下のように言っています。

『この制度は,労働者が事業場外で行う労働で,使用者の具体的な指揮監督が及ばないため,使用者による労働時間の把握が困難であり,実労働時間の算定が困難な場合に対処するために,実際の労働時間にできるだけ近づけた便宜的な労働時間の算定方法を定めるものであり,その限りで使用者に課されている労働時間の把握,算定義務を免除するものと解される』

・・長くなりましたが,原則として使用者(企業側)には,労働者の労働時間を把握しなければならない,という強い義務を認めているのですね。
現在はコンピューター機器の進化により,事業所外での労働時間の管理も比較的簡単にできるようになってきているのではないでしょうか・・
具体的な指揮監督が及ばない」という点もポイントの一つですね。
細かい指示,報告を求めているような場合には,みなし労働時間制を認めてもらうのは難しそうです。

今回は,私があまり書かない労働問題について,書きました(笑)!
これは,ご縁があって,京都で社会保険労務士をされている池田少折(さおり)先生のグループ新聞「スマイル新聞」に寄稿させていただくことになったからです。
女性社会保険労務士さんで,現在,家事調停委員もされているようです。就業規則,メンタルヘルスなど多くのセミナーも開催されています。
今回の判例は,労働法を選択した田中弁護士が調べてくれました。
今後はこの分野でも,地元企業のお手伝いが出来たら,嬉しく思います。

そんな,労務管理,経営に関するヒントが盛りだくさんな【人事労務管理&経営術向上】スマイル新聞(無料)は,http://www.mag2.com/m/0001603313.htmlから登録できますので,みなさまも是非ご登録下さい!
個人的には,新米社労士ドタバタ日記 奮闘編(http://www.mag2.com/m/0001508350.html)がストーリー形式で面白いです!

本日から,業務再開の皆様も多いと思います。
お忙しい中,お読みいただき,本当にどうもありがとうございました

このブログが,労務管理をする部署の方々,企業の経営者の方,また働いている皆様の少しでもお役に立てますように…

最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

 

この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり18年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
著書「離婚調停は話し方で変わる」は,Amazonランキング「法律」部門ほか5部門で第1位を獲得。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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