交通事故における経済的全損

s_090みなさんこんにちは。

お盆休みはどこかへドライブに行かれる方も多いと思いますが交通事故にはくれぐれもお気をつけ下さい!それでは、今回も交通事故の話題です(笑)

今回の話題は「経済的全損」です。

1 経済的全損とは

事故で車両が損傷した場合に修理代は全て損害賠償の対象となるかというと、実はそうではありません。

 

実務においては、「物理的全損」つまり被害車両が修理不能の状態、もしくは「経済的全損」つまり修理費が時価額(と買替諸費用)を上回る状態となった場合には、事故直前の車両交換価格をもとに賠償額を算定し、そうでない場合には修理費相当額をもとに損害額を算定することとされています。

たとえば、大切に乗り続けていた愛車が、事故の時には30万円(買替諸費用を加えても40万円程度)の価値しかなかった場合、修理費用として100万円を要するということであれば、「経済的全損」として100万円の修理費は原則として補償されません。

その根底には、中古車市場で、同種、同等の自動車を入手することができれば、被害者の原状回復はなされるという考えがあります。損害賠償では金銭賠償を原則としていますので、物そのものを事故前の状態に戻すというより、損害を金銭的に評価して事故前の財産状態に戻すために、被害車両と同種・同等の車両を購入するための費用を賠償すれば足りると考えられているわけです。

2 時価額の認定

経済的全損かどうかは、車両の時価額の評価にかかることになるわけですが、その評価方法としては、裁判上の鑑定による場合のほか、レッドブック(オートガイド自動車価格月報)やイエローブック(中古車価格ガイドブック)の販売価格を参考にするのが一般的です。

しかし、相談をお受けしていると、レッドブック等の価格には納得できないという方が多々いらっしゃいますし、お気持ちとてもよく分かります。やはり経済的全損という考え方には限界があるように思います。しかし、中古車市場にある程度のタマ数が出ている車両については、レッドブック等の数値はある程度の客観性を有していると考えられるので、この価格を覆すのは大変です。一方で、特殊車両で市場にあまり流通していない車両などについては時価額の算定は難しくなる反面、独自の時価額を主張しやすくなっていきます。

3 買替諸費用

全損の場合で、被害者が車両の買替えをした場合、買い替え後の車両の自賠責保険料、自動車重量税、被害車両の未経過の自動車税、自賠責保険料は損害とは認められていません。車両の取得行為に付随して必要となる費用ではなく、車両を現に所有していること等に伴って生ずる費用で、いずれも、事故によって車両が全損となった場合には、所定の手続を執ることにより未経過分の還付を受けることができるものだからです。

一方、買替えのために必要な検査・登録費用、車庫証明手数料、納車費用、廃車費用のうち法定手数料や同程度の中古車取得に要する自動車取得税、被害車両の未経過期間の自動車重量税は損害と認められると考えられています。

被害車両の自動車重量税は、自動車検査証の有効期間に末経過分があったとしても、自動車税や自賠責保険料のように還付されることはないので、事故時における自動車検査証の有効期間の未経過分に相当する金額は、例外的に還付された場合を除いて事故による損害と認められます。
また、検査・登録費用及び車庫証明費用は、車両を取得する都度支出を余儀なくされる法定の費用であり、これら代行費用及び納車費用は、販売店の提供する労務に対する報酬ですが、車両購入者が通常それらを販売店に依頼している実情から、これらの費用も買替えに付随するものとして賠償の対象となるとされています。

このように、買替諸費用も損害の対象と考えられることから、経済的全損か否かの判断に当たって、修理費の額と比較すべき金額としては、車両時価額に限定すべき理由はなく、全損を前提にした場合に事故による損害と認められるべき車検費用や車両購入諸費用等を含めた金額と解すべきという判断もなされています(東京地判平成14年9月9日)。

それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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